ストレスからくる食欲不振がつらい!原因と対処法

2023年11月02日

2024年07月03日

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「最近、食欲が湧かない……」
「食欲がない原因はストレスなのかな……」

胃の痛みや胃もたれなどの症状があるけど、病院の検査で原因が分からなかった方もいるのではないでしょうか。ストレスによる食欲不振自体は深刻な病気ではありませんが、放置すると病気の原因となるリスクがあるため、注意が必要です。

この記事では、ストレスからくる食欲不振の原因と対処法について詳しく解説します。

1.食欲不振とは

食欲不振

食欲不振とはどのような状態なのでしょうか。

ここでは食欲不振のときに体の中で起こっていること、食欲不振を放っておくと危険である理由について解説します。

1-1.食事をしていないのに食欲が出ない状態

食欲不振とは、食事をしていないにもかかわらず食欲がない状態のことです。

本来は、食事をしないと血糖値が下がり、空っぽの胃が収縮する(おなかが鳴る)ことで、その信号を脳にある摂食中枢(視床下部)がキャッチして空腹を感じます。

しかし、何らかの理由で摂食中枢が信号をキャッチしにくくなると、食欲不振が起こりやすくなるのです。

悲しいことがあったり、ひどく疲れていたりすることで食欲不振となることはありますが、通常は数日で改善されます。

食欲不振となると、それ自体がストレスとなりさらに食欲不振となる場合もあります。数日以上に渡る食欲不振を放っておくと、体にとって危険な状態を招く恐れがあるため、注意が必要です。

1-2.食欲不振を放っておくと危険

食欲不振は食欲を感じにくい状態ですが、食事は必要です。なぜなら、食欲不振となり食事をしないままでいると体や心に悪影響を与えるからです。

例えば、ビタミンDが不足すると骨粗鬆症になりやすくなったり、ミネラルが不足するとさらに食欲不振が悪化したりなど、不足している栄養素に応じてさまざまな症状が見られるようになります。

そのため、何日も食欲不振が続く場合は、医療機関を受診する必要があります。

胃痛や発熱、吐き気、下痢などがある場合は消化器科や内科、ストレスや抑うつなどの場合は精神科や心療内科、持病がある場合はかかりつけ医へ相談すると良いでしょう。

2.食欲不振の原因

胃痛

食欲不振となる原因はいったい何なのでしょうか。食欲不振の主な原因には、以下の六つがあります。

  • 体の不調・病気によるもの
  • ストレス
  • 不規則な生活
  • 加齢
  • 過度な飲酒
  • 薬剤の副作用

以下で、一つずつ解説していきます。

2-1.体の不調・病気によるもの

食欲不振を起こす原因としてもっとも多いのは、体の不調・病気によるものです。

以下のような病気・症状がある場合は食欲不振になることが多くみられます。

  • 慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍など消化器の不調・病気
  • 心不全、慢性腎臓病、甲状腺機能低下症など、肺や心臓、腎臓、甲状腺の持病
  • 風邪、インフルエンザなどの感染症
  • むし歯、口内炎などの口腔疾患

このような病気・症状があることで、食欲不振を引き起こしてしまう原因となります。

また、体の不調・病気などは老若男女問わず、食欲不振を発症することが多くみられます。

2-2.ストレス

精神的なストレスが続いている、うつ病をはじめとした心の病気にかかったという方は食欲不振となることがあります。

なぜなら、不安や焦燥、抑うつなどに悩まされることで摂食中枢が鈍くなり、おなかがすいたことを感じにくくなることで食欲が低下してしまうからです。

また、ストレスによる食欲不振は、味覚障害を発症することもあります。味覚障害によって食べ物の味がしなくなり、さらなる食欲不振へと繋がってしまいます。

うつ病をはじめ、心の病気は味覚症状など体に症状が出るため、本人も家族も気づきにくいことが多い傾向にあります。

病院で体の検査をしても原因が分からない場合は、精神科に相談してみると良いでしょう。

【関連情報】 「ストレスの原因、引き起こされる症状や対処法を分かりやすく解説!」についての記事はこちら

2-3.不規則な生活

不規則な生活を送っていると、食欲不振になってしまうことがあります。運動不足や睡眠不足が続くことで自律神経が乱れ、食欲不振となってしまうためです。

また、運動量が少ない(運動不足)ことで、必要なエネルギー量が少なくなり、食欲が低下することもあります。

自律神経の交感神経・副交感神経のバランスが崩れることで、胃腸の働きが乱れて胃痛の原因となることもあります。

毎日の起きる時間、寝る時間、食事の時間などを一定にすることがおすすめです。

2-4.加齢

加齢も食欲不振の原因になり得ます。これは、年齢を重ねることにより胃腸の機能低下や嚥下機能の低下(飲み込む力が弱くなる)が起こってしまうことに起因しています。

また、加齢による味覚の低下も食欲不振になる要因の一つです。

さらに、筋力の低下にともなって運動量が減ると、必要とするエネルギー量も減少し、空腹を感じにくくなり、食欲低下につながりかねません。

年を重ねることでさまざまな機能が低下してしまうため、徐々に食欲がなくなっていく方が多くいます。

2-5.過度な飲酒

過度な飲酒をすることも食欲不振が起こる原因の一つです。理由は、お酒を飲み過ぎると肝臓に負担がかかってしまうからです。

肝臓の負担が大きくなることで解毒作用が低下し、アルコールを分解・吸収する時間が長くなってしまいます。アルコールを吸収・分解に時間がかかることで、体のだるさや吐き気などによって食欲が低下します。

過度な飲酒は避け、適度に飲むことで食欲が改善される可能性があります。

2-6.薬剤の副作用

薬剤の副作用が原因で食欲不振となることもあります。薬剤には、副作用として消化管障害や悪心(おしん)、嘔吐、下痢、味覚障害などを発症してしまうものがあるためです。

これらの症状が現れる薬剤には、痛み止めや強心剤、抗がん剤などがあります。

また、高齢者の場合は生理機能の低下により薬が効き過ぎることがあり、それが食欲を低下させることもあります。

3.ストレスからくる食欲不振はなぜ起こる

ストレス

現代社会では精神的なストレスを抱えることが多く、それが原因となり食欲不振を起こしてしまうことも多くあります。

ここからは、ストレスからくる食欲不振はなぜ起こるのかを解説します。

3-1.消化管と脳は密接につながっている

摂食中枢と満腹中枢は脳の視床下部にあり、胃腸などの消化管と脳は密接な関係があります。

食欲が起こる仕組みは、以下のとおりです。

 胃からグレリンというホルモンが分泌される
  ↓
 血糖値の低下や摂食中枢を刺激する
  ↓
 食欲が高まる

食事のにおいや味、あるいは食べ物が消化管に入ることで、胃で消化管ホルモンが生成され、胃液の分泌・胃の運動調整などの消化活動を開始します。食べ物の摂取後、胃での消化を終えると、十二指腸や小腸に運ばれます。

すると、腸粘膜から胃の活動を抑制する消化管ホルモンが生成され、食欲の抑制を働きかける仕組みです。

さらに、血糖値が上がると脂肪細胞からレプチンという満腹中枢に働きかけるホルモンが分泌され、満腹を感じて食事を終了するように促します。

このように、胃や腸などの消化管と脳は連携し合い、密接につながっています。

3-2.ストレスにより消化管の運動異常や知覚過敏が起こる

消化管と脳は密接につながっているため、ストレスを溜め込み過ぎるとホルモンの分泌が適切に行われなくなり、消化管の運動異常や知覚過敏が起こってしまいます。

具体的には、ホルモン分泌がうまくいかないことで、十二指腸に食事がうまく運ばれず胃もたれを起こす、腸内にガスが貯留し、おなかが膨れたような感覚になる、といった症状が起こります。

これらの症状が原因で不安感や抑うつ感を感じるようになり、さらにストレスとなって症状を悪化させてしまうのです。

4.ストレスからくる食欲不振で考えられる病気

ストレスによって食欲不振となると、病気になるリスクも高くなってしまいます。リスクのある病気は以下の三つです。

  • 機能性ディスペプシア
  • 過敏性腸症候群
  • うつ病

それぞれ詳しく解説します。

4-1.機能性ディスペプシア

ストレスからくる食欲不振で機能性ディスペプシアとなる可能性があります。

機能性ディスペプシアとは、胃の痛みや胃もたれ、胃に不快感などが生じている病気のことです。さまざまな検査を行っても、はっきりとした原因が見つからない場合が多くみられます。

症状はさまざまで、例えば胃の痛みや胃もたれ、胃が熱く感じる、すぐに満腹になるなどがあります。

機能性ディスペプシアの原因はほとんどがストレスとされており、健康診断を受けた人のうち11〜17%が発症しているといわれています[1]。

[1] 日本消化器病学会「機能性ディスペプシア(FD)ガイド2023」

4-2.過敏性腸症候群

ストレスからくる食欲不振は、過敏性腸症候群が起こる原因の一つともいわれています。

過敏性腸症候群とは、検査をしても腸に異常が見られないのにもかかわらず、下痢や便秘、腹痛を繰り返す病気のことです。

症状としては、慢性的な下痢や便秘、腹痛、腹部の不快感などがあり、ストレスや緊張、不安、睡眠不足、疲労などで症状が悪化するのが大きな特徴です。また、頭痛やめまい、不安感、疲労感などの症状も同時に現れることがあります。

日本人の10〜15%に認められているともいわれており、消化器疾患のなかで最も頻度が多く、先進国の人に多いとされています[2]。

[2] 社会福祉法人 恩賜財団 済生会「過敏性腸症候群」

4-3.うつ病

ストレスからくる食欲不振は、うつ病を発症してしまうこともあります。

うつ病は心の病気ですが、不眠や胃の不快感、倦怠感など体の症状として現れることが多いため、自覚しにくい病気です。

ご飯を食べることができないという不安が焦燥感となり、無意識のうちにストレスを溜めてしまい、うつ病を発症してしまいます。

うつ病の場合は症状の原因がわからないことが多く、本人や家族も気づきにくい病気といわれています。

5.ストレスからくる食欲不振の対処法

先述したとおり、ストレスからくる食欲不振が数日以上にわたって続いている場合は、医療機関への受診をおすすめします。

ストレスが原因による食欲不振を予防するためには、日頃からストレスを溜め込まないように過ごすことが大切です。

最後に、ストレスを溜めないための1日の過ごし方について、六つのポイントを踏まえて紹介します。以下のポイントを押さえることで、心身ともに健康的な状態を保つことができます。

  • 朝日を浴びる
  • 1日3食規則正しく摂取する
  • 深呼吸を心掛ける
  • 運動習慣を身につける
  • 就寝時間3時間前に食事を済ませる
  • 就寝時間1時間前にスマホの電源をOFFにする

5-1.朝日を浴びる

一つ目は「朝日を浴びる」です。ストレスがあると不眠となったり、朝起きられなかったり(過眠)することが多くあります。

毎朝同じ時間に起き、朝日を浴びることによって、睡眠リズムを整えやすくなります。

毎日同じ時間に朝日を浴びることで、メラトニンという睡眠を促すホルモンの分泌が止まり、約15時間後に再びメラトニンが分泌されるようにセットされます。

また、メラトニンの分泌が止まることで、精神を安定させる作用を持つホルモンの「セロトニン」と快楽の感情を生み出すホルモンの「ドーパミン」が分泌されるため、体が活動する準備が整います。

朝日を浴びてホルモン分泌を促すことで、ストレスからくる食欲不振を改善することに期待できます。

5-2.1日3食規則正しく摂取する

1日3食しっかり食事を摂ることも、食欲不振の予防策として効果的です。胃を動かさないと、どんどん機能が低下してしまいます。

食欲がない場合は、消化の良い食べ物を摂取することで、食欲不振の改善につながると考えられます。

特に朝食は抜きがちになる方が多いですが、簡単な食事でも摂るようにしましょう。

5―3.深呼吸を心掛ける

深呼吸を心掛けることで、ストレスを溜め込みにくくなります。深呼吸をすると、副交感神経(リラックス)が優位になります。

緊張や不安が続いている場合は、深呼吸でリラックスすることを心掛けてみましょう。

また、深呼吸をすることで横隔膜が鍛えられ、食事や胃酸の逆流を防ぐ下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)のはたらきが改善されます。深呼吸は正しい姿勢で行うことで効果が高まるため、意識してみてください。

猫背やうつむいた姿勢でいると、マイナスな感情を抱きやすくなります。常に正しい姿勢をキープできるように過ごしましょう。

5-4.運動習慣を身につける

適度な運動は、ストレスの軽減や心身のリラックスに効果があるといわれています。

特に、体に酸素を取り込み、糖や脂肪をエネルギー源として行う有酸素運動がおすすめです。筋肉に負荷がかかりにくい運動であるため、日頃から運動する習慣がない方でも始めやすいです。

運動を習慣化するのであれば、まずは軽いストレッチやウォーキング、ジョギング、筋トレなどから始めてみましょう。

1日20分を目安に継続して行うと、ストレスの軽減が見込めます。

また、心臓病、脳卒中などの生活習慣病になるリスクも低下するなど、継続的な運動習慣を身につけることは健康の維持に貢献してくれるでしょう。

5-5.就寝3時間前に食事を済ませる

胃の調子を整える上で、就寝3時間前までに食事を済ませることも大事です。

なぜなら、胃は深夜から朝にかけて、胃の中に残っているカスなどを十二指腸・小腸へ送り出しているからです。

寝る際、胃の中にたくさん食べ物が入っていたら、カスなどの処理ができず胃もたれをはじめとした症状の原因となることがあります。

そのため、就寝3時間前までに食事を済ませることで、胃や腸などの消化器の調子が整い、食欲不振の改善につながります。

5-6.就寝1時間前にスマホの電源をOFFにする

睡眠の質の低下でストレスを溜め込まないよう、就寝1時間前にスマホの電源をOFFにすることを心掛けましょう。スマホやタブレットなどから出るブルーライトは睡眠を促すメラトニンの分泌を抑制してしまいます。

せっかく朝日を浴びて体内時計がリセットされても、メラトニンの分泌が抑制されると寝つきが悪くなったり、睡眠が浅くなったりします。

寝る1時間前には、スマホやタブレットなどを触らないように徹底することで、睡眠リズムが整えられ、ストレス解消になるほか、食欲不振の予防が期待できます。

6.ストレスからくる食欲不振についてのまとめ

食欲不振はストレスによって起こることもあります。

精神的ストレスによって消化管のホルモン分泌がうまく働かなくなったり、自律神経が乱れたりすることで食欲不振が起こったりすることがあります。ストレスからくる食欲不振を起こさないためにも、日頃からストレスを解消し、健康的な生活を送ることが大切です。

今回、お伝えした対処法は以下の六つです。

  • 朝日を浴びる
  • 1日3食規則正しく摂取する
  • 深呼吸を心掛ける
  • 運動習慣を身につける
  • 就寝の3時間前に食事を済ませる
  • 就寝の1時間前にスマホの電源をOFFにする

また、これらの対処法以外にも家族や友人に相談することもストレスの軽減につながります。

できるだけストレスを溜めないように対処し、健康な毎日を過ごしていきましょう。

この記事の監修者

小鷹 悠二
小鷹 悠二
おだかクリニック
副院長

【経歴】
総合病院・大学病院での勤務を経て、2018年よりおだかクリニックの副院長として診療・経営にあたる。専門の循環器疾患(虚血性心疾患、心不全、不整脈など)はもちろんのこと、高血圧や高脂血症、糖尿病等の生活習慣病や内科疾患全般の診療に従事。現在は、医療コンサルト・アドバイザー業務や、ライティング業務などにもあたっている。

【おだかクリニックのHP情報】
»医療法人日和会 おだかクリニック

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