「納豆にはどれくらいたんぱく質が含まれるんだろう?」
「納豆だけで1日分のたんぱく質を摂ることはできるのかな?」
このように疑問に感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。
たんぱく質が豊富であることで知られる納豆ですが、どのくらいのたんぱく質を含んでいるのかといった点や、たんぱく質以外にどのような栄養素が摂れるのかといった点も気になるところですよね。
そこでこの記事では、納豆のたんぱく質の含有量や特徴、効果的な食べ方、納豆の摂取に関する注意点を解説します。
納豆の健康効果について詳しく知りたいという方はぜひ参考にしてくださいね。
1.納豆のたんぱく質含有量
「納豆ってどのくらいのたんぱく質が含まれているの?」
というのが最も気になるところですよね。
納豆には100g中16.5gのたんぱく質が含まれます[1]。
たんぱく質の摂取源となる代表的な食品と、たんぱく質の含有量を一覧表で比較してみましょう。
【良質なたんぱく質を含む代表的な食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 |
---|---|---|
くろまぐろ(赤身) | 生 | 26.4g |
ささみ | 生 | 23.9g |
豚ロース肉(赤肉) | 生 | 22.7g |
プロセスチーズ | - | 22.7g |
牛サーロイン(赤肉) | 生 | 22.0g |
まあじ | 皮付き、生 | 19.7g |
鶏もも肉 | 皮なし、生 | 19.0g |
納豆 | - | 16.5g |
鶏卵(全卵) | 生 | 12.2g |
木綿豆腐 | 生 | 7.0g |
普通牛乳 | - | 3.3g |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
肉や魚、チーズほどではありませんが、卵や豆腐に比べても納豆には多くのたんぱく質が含まれています。
肉類や魚類が苦手という方や、レシピを考えたり調理したりする手間を省きたいという場合にも、納豆は手軽にたんぱく質を補給できる食品であるといえるでしょう。
2.納豆に含まれるたんぱく質の特徴
食べ物に含まれている栄養素はその含有量だけでなく、体にとってどれだけ消化・吸収しやすいものであるかという点も重要です。
そこで納豆に含まれるたんぱく質にどのような特徴があるのかも気になるところですよね。
ここでは納豆のたんぱく質について詳しく解説しましょう。
2-1.良質なたんぱく質の一つ
納豆に含まれるたんぱく質は「良質なたんぱく質」であるといえます。
たんぱく質は20種類の「アミノ酸」という物質によって構成されており、どれか一つでも欠けるとたんぱく質を構成することができません[3]。
アミノ酸はさらに体内でつくることができないため食事からの摂取が必要な9種類の必須アミノ酸と、体内で合成が可能な11種類の非必須アミノ酸に分けられます[3]。
必須アミノ酸がヒトの体にとって望ましい量に対しどれくらいの割合で含まれているかを表す数値を「アミノ酸スコア」といいます。
アミノ酸スコアは100を上限とし、高ければ高いほど良質なたんぱく質であるとされます[4]。
一般的には動物性食品の方がアミノ酸スコアは高い傾向にあるといわれますが、納豆や大豆のアミノ酸スコアは100で、理想的なバランスで必須アミノ酸が含まれているといえます。
身近な食品のアミノ酸スコアを確認してみましょう。
【身近な食品のアミノ酸スコア】
食品名 | 加工状態 | アミノ酸スコア |
---|---|---|
納豆 | - | 100 |
鶏もも肉 | 皮付き、生 | 100 |
豚ばら肉 | 脂身付き、生 | 100 |
牛リブロース | 脂身付き、生 | 100 |
くろまぐろ | 赤身、生 | 100 |
鶏卵(全卵) | 生 | 100 |
じゃがいも | 皮なし、生 | 100 |
にんじん | 皮なし、生 | 100 |
絹ごし豆腐 | - | 100 |
グリンピース | 生 | 100 |
キャベツ | 生 | 95 |
ごはん(精白米、うるち米) | - | 91 |
トマト | 生 | 83 |
たまねぎ | 生 | 64 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition : report of a joint FAO/WHO/UNU expert consultation 」をもとに執筆者作成
植物性食品にはアミノ酸スコアが100を切っているものが多いことが分かりますね。
またたんぱく質含有量もあまり多くない傾向にあります。
2-2.消化吸収率が高い
納豆に含まれるたんぱく質は消化吸収率が高いことでも知られています。
これは納豆菌に含まれる「酵素」のはたらきによるものです。
納豆菌には酵素が豊富に含まれ、食事から摂取したたんぱく質や脂質などの成分を効率的に分解することができるのです。
消化吸収率の高い納豆は、たんぱく質を効率よく摂りたいという方にも向いている食品であるといえるでしょう。
3.納豆のたんぱく質以外の成分
「たんぱく質以外に納豆にはどんな栄養素が含まれているんだろう?」
納豆に含まれるたんぱく質以外の栄養素も気になるところですよね。
納豆はたんぱく質だけでなく、ビタミンや食物繊維といった体に良い成分も豊富です。
ここでは健康に役立つ納豆の五つの成分をご紹介しましょう。
3-1.ビタミンB群
納豆にはビタミンB群が含まれます。
【納豆の100g当たりのビタミンB群の含有量】
栄養素 | 100g当たりの含有量 |
---|---|
ビタミンB1 | 0.13μg |
ビタミンB2 | 0.30mg |
ビタミンB6 | 0.24mg |
ビタミンB12 | 微量 |
ナイアシン(当量) | 4.60mg |
パントテン酸 | 3.63mg |
葉酸 | 130μg |
ビオチン | 18.2μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
なかでも多く含まれるのがビタミンB2やナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンです。
ビタミンB2は脂質代謝を助けるビタミンで、脂っこい食事が多い方やダイエット中の方に重要な栄養素といえます。
パントテン酸は脂質や糖質の代謝に重要な役割を果たすほか、体内で過剰分となったコレステロールを回収し血管が硬くなるのを予防する「善玉コレステロール」を増やしたりホルモンを産生したりする作用があります。
葉酸は赤血球の合成や細胞の生産・再生などの作用があり、体の発育に重要な成分です。
特に胎児の発育に重要とされ、妊娠中に十分な葉酸を摂取することで、先天異常の一つである「神経管閉鎖障害」のリスクを低下させるといわれています。
ビオチンは皮膚や粘膜、爪、髪の毛などの健康に深く関わる成分として知られています。
納豆に含まれるビタミンB群は、総じて健康や美容に欠かせないものといえるでしょう。
3-2.ビタミンK
ビタミンKも納豆に多く含まれる成分の一つです。
納豆には100g当たり870μgのビタミンKが含まれています[5]。そのため、納豆20gで厚生労働省が定める18歳以上の男女の1日当たりの摂取目安量(150μg)を摂取できます[6]。
ビタミンKには血液を凝固してけがをしたときの止血の役割があるほか、骨へのカルシウムの沈着を助け、骨粗しょう症の予防に効果が期待できます。
ビタミンKはさまざまな食品に含まれるほか、体内で腸内細菌によってもつくられるため不足することはまれであるといわれています。
しかし、加齢や抗生物質の長期内服などにより欠乏するケースもあるため注意が必要です。
特に女性は閉経を迎えるとホルモンバランスの変化により骨粗しょう症になるリスクが高まるとされているため、納豆で手軽にビタミンKを補えるのは心強いといえるでしょう。
3-3.食物繊維
納豆には100g当たり6.7gの食物繊維も含まれています[7]。
食物繊維は食べ物に含まれるヒトの消化酵素では消化することのできない成分です。
おなかの調子を整える作用があることはよく知られていますよね。
また食物繊維には、脂質や糖質、ナトリウム(塩分)などを吸着して体外に排出するはたらきがあるとされています。
そのためこれらの過剰摂取によって引き起こされる肥満や生活習慣病の予防・改善効果が期待できるとされているのです。
しかし日本人の食物繊維摂取量は食生活変化に伴い減少傾向にあり、多くの方が食物繊維の不足しがちな食生活を送っているといわれています。
まずは1日当たり3g〜4g摂取量を増やすことが推奨されており、1食分の納豆に含まれる食物繊維は2〜3gです[8]。
食物繊維が豊富な納豆は、お通じを良くするだけでなくダイエットの味方にもなってくれるといえるかもしれませんね。
3-4.ナットウキナーゼ
納豆には「ナットウキナーゼ」も含まれます。
ナットウキナーゼは納豆のネバネバ部分に含まれるたんぱく質を分解する酵素の一種です。
ナットウキナーゼには「血栓」を溶かす作用のほか、高血圧を予防する効果や血流を改善する効果なども期待できます。
血栓は血管内に生じる血液の塊で、血管に詰まった場合には血流が途絶え、その先にある臓器に血液が供給されなくなることで「脳梗塞」や「心筋梗塞」など命に関わる病気の原因にもなります。
特に加齢や喫煙・飲酒習慣、過度のストレス、高血圧などの生活習慣病を発症している場合には血栓を生じるリスクが高く、注意が必要です。
血栓や高血圧などを予防したい場合には積極的に納豆を取り入れたいところですね。
3-5.大豆イソフラボン
大豆イソフラボンも納豆に多く含まれる成分の一つです。
大豆イソフラボンは女性ホルモンの一種「エストロゲン」と分子構造が似ており、女性ホルモンの減少による女性の「更年期障害」の症状を改善させる効果や骨粗しょう症を予防する効果、美肌効果などが期待できるといわれています。
しかし一方で、一部では大豆イソフラボンによる乳がんの発症や再発のリスクを高める可能性も考えられています[10]。
このように聞くと納豆などの大豆製品を食べることを懸念される方もいらっしゃるかもしれませんが、大豆製品を食べることによる健康への悪影響は現状では確認されていません。
大豆製品は良質なたんぱく質であり、イソフラボン以外にも健康に良いとされるたくさんの栄養が含まれます。
サプリメントなどでイソフラボンを過剰に摂取することは避け、大豆製品を含めバランスの良い食生活を心掛けましょう。
4.納豆の効果的な食べ方は?
「納豆っていつ食べるのが効果的なんだろう?」
納豆を食べるタイミングも気になるところですよね。
納豆を朝食に食べる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は夕食時に食べた方がより高い効果が期待できるといわれています。
ナットウキナーゼには先述したように健康へのさまざまな効果が確認されていますが、なかでも多くの作用が確認されているのが血栓を溶かす効果です。
血栓は深夜から早朝にかけてできやすいとされているため、夕食時にナットウキナーゼを摂取するとより効果的とされているのです。
またそれだけでなく、納豆の原料である大豆には「アルギニン」というアミノ酸が豊富に含まれます。
アルギニンは、代謝を活発にしたり傷ついた臓器を修復したりする作用のある「成長ホルモン」の分泌を促すほか、筋肉の増強や免疫力の向上、美肌効果などさまざまな効果が期待できます。
成長ホルモンは深夜に分泌されるため、夕食時に納豆を食べることで成長ホルモンの分泌を促進する効果が期待できるのです。
納豆の効果をより高めたいという場合には、夕食の献立に納豆を取り入れてみてはいかがでしょうか。
5.納豆の摂取に関する注意点
良質なたんぱく質として積極的に食べたい納豆ですが、食べる際にはいくつか気を付けるべき注意点があります。
ここでは納豆を摂取する際に知っておきたい注意点を解説していきます。
注意点1 食べ過ぎは禁物
健康にさまざまな効果が期待できる納豆ですが、食べ過ぎは禁物です。
納豆に含まれる大豆イソフラボンや「プリン体」は過剰に摂取することで健康に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
長期間にわたり大豆イソフラボン錠剤を多量に摂取することで「子宮内膜増殖症」の発症率を高めるとされ、大豆イソフラボンの1日の摂取上限量は70〜75mgと設定されています[11]。
大豆製品の摂取による明らかな健康への悪影響は確認されていないものの、上限量を超えないよう注意しましょう。
一方、プリン体はあらゆる生物の細胞に存在する成分で、食品には「うま味」成分として含まれています。
食事から摂取したプリン体は通常肝臓で代謝され「尿酸」という物質に変化し尿として排出されます。
しかし尿酸が多くなると血液中に尿酸がたまり「高尿酸血症」を招く原因になります。
高尿酸血症の状態が続くと、尿酸が結晶化して関節や腎臓に沈着し、足の指の付け根や関節などに激痛発作を生じる「痛風」や腎臓障害などを引き起こすことがあるのです。
納豆100gには平均73.5mgの大豆イソフラボンと113.9mgのプリン体が含まれています[12][13]。
大豆イソフラボンやプリン体は納豆以外の食品から摂取する可能性があることも考慮し、納豆は1日1、2パック程度にとどめておいた方が無難でしょう。
注意点2 納豆だけでは十分なたんぱく質は摂れない
良質なたんぱく質である納豆ですが、単品では十分なたんぱく質を摂取することはできません。
たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は以下のように設定されています。
【たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量】
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18歳〜29歳 | 65g | 50g |
30歳〜49歳 | 65g | 50g |
50歳〜64歳 | 65g | 50g |
65歳〜74歳 | 60g | 50g |
75歳以上 | 60g | 50g |
納豆に含まれるたんぱく質量は100g中16.5gなので、1日に必要なたんぱく質を全て納豆から補うのは現実的ではないことが分かりますね。
アミノ酸のバランスなども考慮し、1日に必要なたんぱく質を摂取するためには納豆だけでなく肉類や魚類などいろんな食品を摂取する必要があるといえるでしょう。
注意点3 ワルファリン服用中は食べてはいけない
「ワルファリン」という薬を内服している場合には納豆は食べないようにしてください。
ワルファリンは血液を固まりにくくし、血栓ができるのを防ぐ作用があります。
血液が固まるにはビタミンKのはたらきが必要ですが、ワルファリンはビタミンKのはたらきを妨げることで血液を固まりにくくしているのです。
しかし納豆に含まれる「納豆菌」には体内でのビタミンKの産生を促す作用があるため、ワルファリン内服中の血液を固まりにくくする効果を弱めてしまいます。
ワルファリンを処方される際には、納豆は食べないよう注意しましょう。
6.納豆のたんぱく質についてのまとめ
納豆には多くのたんぱく質が含まれています。
納豆はアミノ酸の配合バランスが良く消化・吸収もしやすい上、ビタミンB群や食物繊維など健康に欠かせない成分を豊富に含むことから、積極的に摂取したい食品といえます。
しかし一方で、健康への悪影響が否定しきれない大豆イソフラボンや痛風の原因になることもあるプリン体なども多く含むため、食べ過ぎには注意が必要です。
1日当たり1、2パック程度にとどめておいた方が無難といえるでしょう。
このほか血液が固まるのを防ぐワルファリンを内服中の方は納豆の摂取に関しては医師の指示に従ってください。
また納豆だけでは1日分のたんぱく質量としては足りないため、肉類や魚類などのたんぱく質とともにバランスよく摂取するよう心掛けましょう。