「なんだか足が痛いな……これって痛風?」
「そもそも痛風ってどんな病気なんだろう?」
健康診断で「尿酸値」の高さを指摘されたり足の関節が痛んだりして、「痛風」という病気について知りたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
痛風とは、尿酸値が基準値より高くなる「高尿酸血症」によって生じる関節炎のことです。
痛風は激痛を生じ、日常生活に支障を伴うこともあります。
できるなら高尿酸血症を防ぎたいところですが、既に痛みが出ているという方もいらっしゃるかもしれませんね。
そこでこの記事では、痛風とはどんな病気なのかということや痛風の原因である高尿酸血症の原因、予防法、痛みへの対処法まで詳しく解説します。
痛みを抑えて健康的な毎日を目指しましょう。
1.痛風とはなにか?
「そもそも痛風ってどんな病気なの?」
というのが最も気になるところですよね。
痛風とは足や膝などの関節に生じる関節炎(痛風関節炎)のことです。
痛風関節炎は、血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える「高尿酸血症」が続くことによって生じることがあります[1]。
血液中で増加した尿酸がこれ以上血液に溶けることのできない状態になると関節内に漏れ出し、結晶化します。
この結晶を白血球が壊そうとする際、関節に炎症が起こり、痛みを生じてしまうのです。
なお、痛風は女性と比べ男性に圧倒的に多くみられます。
これは女性ホルモンに尿酸の排出を促す作用があるためです。
しかし、女性ホルモンの分泌量が減少する閉経後には男女差はなくなります。
また、痛風関節炎は特に足の指の付け根に生じやすいとされますが、他に足関節(足首)や足の甲、膝関節、アキレス腱の付け根、手関節(手首)などにも生じることがあります。
痛風関節炎は「風が吹いても痛む」と表現されるように耐え難い激痛を引き起こします。
その一方で、痛みは1週間から10日前後で治り、その後は全く感じなくなります[2]。
しかし適切な治療を受けなかったり放置したりすると複数の関節に炎症が起こる他、痛みが生じる間隔も短くなっていくのです。
またそれだけでなく、腎臓の機能が低下したり腎臓や尿管、膀胱などに塊を形成して「尿路結石症」の原因になったりすることもあります。
このように重症化する前に予防に努めたいところですよね。
痛風の予防や改善には、適切な治療と生活習慣の改善が重要です。
痛風を予防するための生活習慣については、後ほど詳しく解説しましょう。
2.痛風の原因は?
「痛風の原因になる高尿酸血症は、何が原因なの?」
というのも気になるところですよね。
高尿酸血症は、さまざまな生活習慣が原因で生じることがあります。
ここでは高尿酸血症の主な原因について解説しましょう。
原因1 プリン体の過剰摂取や過食
高尿酸血症の主な原因の一つにプリン体の過剰摂取や過食が挙げられます。
プリン体は人間を含むあらゆる生物の細胞内に存在し、ほとんどの食品に含まれる成分です。
食事から摂取したプリン体は肝臓で代謝され、最終的に尿酸として体の外に排泄されます。
しかしプリン体を過剰に摂取して血液中に尿酸が増え過ぎると、血液中にたまり高尿酸血症を引き起こしてしまうことがあるのです。
プリン体は食品では肉類や魚類に多く、レバーやかつお、いわし、白子、あんこう(あん肝)などに含まれます。
またこのような食品を摂取する以外にも、過食や高カロリー食によって肥満傾向にあることも高尿酸血症のリスクを高めます。
食べ過ぎていたりプリン体を多く含む食品を摂り過ぎたりしている場合には注意が必要です。
原因2 アルコールの過剰摂取
高尿酸血症の主な原因の一つはアルコールの過剰摂取です。
アルコールは体内のエネルギー源である「ATP(アデノシン三リン酸)」を分解し、同時にプリン体が増加することで尿酸として体内に蓄積してしまうのです。
また、アルコール自体にもプリン体が含まれ、特にビールに多く含まれます。
加えて、飲酒時にはアルコールと一緒にプリン体を多く含むおつまみを摂取してしまうことも考えられます。
さらに、アルコールには食欲を増進させる作用もあるため、食べ過ぎにもつながります。
プリン体の含有量に関わらず、アルコールを過剰に摂取すること自体が高尿酸血症のリスクを高めるといえるでしょう。
原因3 腎機能の低下
腎機能の低下も高尿酸血症を引き起こす原因になります。
高尿酸血症には、体内でつくられた尿酸をうまく排出できないタイプと尿酸が過剰につくられてしまうタイプ、またこの両方を合併して発症するタイプがあります。
特に日本人では尿酸をうまく排出できないタイプの方が多いとされ、これには腎臓の機能が大きく影響しているといわれています。
腎機能が低下すると尿酸を排出しにくくなるため、体内に尿酸が蓄積して高尿酸血症を引き起こします。
さらに、高尿酸血症があることで腎機能の低下を進行させてしまうことも分かっているのです。
腎機能の低下を指摘されている場合には高尿酸血症の合併にも気を付けたいところですね。
原因4 メタボリックシンドローム
「メタボリックシンドローム」も高尿酸血症や痛風の原因になることが分かっています。
メタボリックシンドロームでは血糖値が高くなることがあり、血糖値を下げるはたらきのある「インスリン」というホルモンが大量に分泌されます。
インスリンには血糖値を下げる以外に尿酸の排出を抑える作用があることも分かっています。
つまり、血糖値が高いとインスリンが多く分泌され、体内の尿酸が排出されにくくなって増加するため、高尿酸血症のリスクを高めてしまうのですね。
内臓脂肪型肥満や高血圧、高血糖などを指摘されている場合にも、抗尿酸血症には注意が必要です。
原因5 ストレスや激しい運動
ストレスや激しい運動も尿酸値を上昇させる原因になります。
激しい運動をした際に大量の汗をかくと、体内の水分が不足し尿酸の排出量が減少します。
そのため尿酸値が一時的に高くなるのです。
またこのときに十分な水分摂取ができていないと尿酸値が下がらず、高尿酸血症につながることがあります。
また、マウスによる研究ではストレスが尿酸値を増加させるということが分かっています[3]。
ストレスはインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」を招きます。
インスリン抵抗性は、本来排出されるはずの尿酸を再び取り込む「再吸収」によって尿酸値を上昇させるのです。
さらに、ストレスは体内で尿酸を産生する「酵素」の一種を活発にすることも分かっています。
そのため、この酵素の作用が活性化されることによって尿酸値を高め、高尿酸血症を発症する恐れがあります。
食生活だけでなく、運動習慣やストレスにも注意が必要です。
3.痛風の予防法
「痛風の原因は分かったけど、予防するにはどうしたら良いんだろう?」
高尿酸血症や痛風の予防法も気になるところですよね。
ここでは痛風の予防法を五つ紹介しましょう。
予防法1 早期に医師などの専門家に相談する
高尿酸血症は、早期に医師などの専門家に相談をすることが重要です。
尿酸値が高い状態が続くと、痛風関節炎を生じ強い痛みを伴う恐れがあります。
またそれだけでなく、繰り返し痛み発作を生じたり腎機能を悪化させたりしてしまう場合もあるのです。
適切な治療を受ければ、痛みを伴わず通常どおりの生活を送ることができます。
無症状であっても放置せず早めに医療機関を受診し、痛風を予防するとともに尿酸値のコントロールに努めましょう。
予防法2 アルコールの摂取を控える
痛風の予防にはアルコールの摂取を控えることが重要です。
アルコールはそれ自体にプリン体を含むだけでなく、体内で尿酸値を増加させます。
ビールに限らず、アルコールは適度な摂取量にとどめるようにしましょう。
具体的には、男性では純アルコール換算で1日20g、女性ではその半分〜3分の2程度までの摂取が勧められています[4]。
アルコールによる健康への影響は、摂取したお酒の量ではなく純アルコールの量によります。
そのため、飲酒する際は純アルコール量を意識して量を調整することが大切です。
アルコールに含まれる純アルコールの量は、アルコール飲料のラベルに記載されている度数と量から計算できます。
以下に純アルコール量20gに対するお酒の種類と量を紹介しましょう。
尿酸値の高さを指摘されている場合には、飲酒量を見直してみましょう。
予防法3 食事内容を見直す
高尿酸血症や痛風の予防には、過食を避け1日3食規則正しい食習慣を守ることが大切です。
さらに、脂っこい食事や高カロリー(高エネルギー)の食品、和菓子や洋菓子なども控えましょう。
既に高尿酸血症と診断されている場合には、プリン体の摂取を控え、十分な水分摂取とともに食事から適切なカロリーを摂取するように心掛けましょう。
一般的に、食品100g当たり200mg以上のプリン体を含むものは「高プリン食」と呼ばれます[5]。
代表的な高プリン食は以下のとおりです。
【高プリン食】
プリン体含有量 | 食品名 |
---|---|
極めて多い(300mg以上) | あん肝酒蒸し、いさき白子、鰹節、鶏レバー、煮干し、干し椎茸、まいわし干物 |
多い(200〜300mg) | かつお、さんま干物、大正エビ、牛レバー、豚レバー、まあじ干物、まいわし |
既に高尿酸血症と診断されている場合には、一日のプリン体摂取量が400mgを超えないように注意しましょう[5]。
また、適切な摂取カロリーは「身体活動レベル」や体重によって異なります。
身体活動レベルとは日常生活でどのくらい体を動かしているのかを表す指標で、以下のように分類されています。
【身体活動レベル】
身体活動レベル | 活動内容 |
---|---|
低い(Ⅰ) | 生活の大部分を座って過ごし、体を動かすことが少ない。 |
普通(Ⅱ) | デスクワーク中心だが、移動や立って行う作業がある。通勤や買い物などでの移動、家事、軽い運動を行っている。 |
高い(Ⅲ) | 移動や立って行う作業の多い仕事をしている。または、スポーツなどの運動習慣がある。 |
身体活動レベルが分かったら、さらにご自身の標準体重を割り出してみましょう。
標準体重は肥満度を表す指標である「BMI」が22のときの体重で、「身長(m)×身長(m)×22」で算出できます[6]。
さらに、以下の表で該当する体重1kg当たりの推定エネルギー必要量を標準体重にかけたものが1日に摂取すべきカロリーです。
【体重1kgあたりの推定エネルギー必要量】
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
18〜29歳 | 35.5 | 41.5 | 47.4 | 33.2 | 38.7 | 44.2 |
30〜49歳 | 33.7 | 39.3 | 44.9 | 32.9 | 38.4 | 43.9 |
50〜64歳 | 32.7 | 38.2 | 43.6 | 31.1 | 36.2 | 41.4 |
65〜74歳 | 31.3 | 36.7 | 42.1 | 30.0 | 35.2 | 40.4 |
75歳以上 | 30.1 | 35.5 | - | 29.0 | 34.2 | - |
身長170cm、身体活動レベルが普通に該当する30代男性の場合、標準体重は1.70×1.70×22=63.58kg、推定必要カロリーは63.58×39.3=2,500kcal(小数点第1位で四捨五入)となります。
食べ過ぎやカロリーの摂り過ぎは体内でプリン体を増やす恐れがあります。
そのため、適正カロリーを超えないことが重要なのですね。
医師の指示のもと食事管理や治療を継続し、痛みを予防しましょう。
予防法4 適度な運動を行う
痛風の予防には、適度な運動によって肥満を予防・改善することも大切です。
高尿酸血症の運動療法では、「有酸素運動」が推奨されています。
有酸素運動について詳しくは以下の記事をご覧ください。
有酸素運動とは?効果や無酸素運動との違い、おすすめの運動を紹介
有酸素運動は肥満の他に高血圧や脂質異常症など、高尿酸血症に合併しやすい疾患の改善にも役立ちます。
特に肥満を指摘されている場合には適正体重を目標とし、毎日続けられる有酸素運動を行うと良いでしょう。
予防法5 ストレスをため込まない
痛風の予防には、ストレスをため込まないようにすることも大切です。
ストレスは尿酸値を高める原因になります。
治療や食生活の改善、運動とともにストレスの解消を心掛けましょう。
スポーツや旅行、音楽鑑賞など、ご自身に合ったストレス解消法を見つけてみましょう。
ゴルフやウォーキングなどはストレス解消だけでなく肥満の予防にも効果が期待できおすすめです。
ストレス発散に効果的な方法については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてくださいね。
ストレス発散に効果的な方法は?手軽にスッキリできるおすすめ解消法
4.痛みへの対処法
ここまで高尿酸血症や痛風の予防法について解説しましたが、なかには既に痛みを生じているという方もいらっしゃるかもしれませんね。
そこでここでは痛風による痛みの対処法を紹介しましょう。
対処法1 早めに受診する
痛みが出ている場合には、なるべく早く受診し治療を受けることが大切です。
痛風の痛みは鎮痛薬で緩和できることもありますが、市販薬のなかには痛風の痛みを悪化させる成分(アスピリン)の入っているものもあるため注意が必要です。
薬は医療機関で処方されたものを使用するようにしましょう。
また痛風の治療では一時的な痛みを和らげるだけでなく、原因となる高尿酸血症を改善させ腎機能低下などの合併症を予防する必要があります。
痛みが和らいでも放置せず、適切な治療を受け再発防止と改善に努めましょう。
対処法2 患部の冷却や安静
痛みが出ているときには、患部をできるだけ安静に保つことが大切です。
また、患部は温めるのではなく冷やすようにすると良いでしょう。
マッサージは痛みを悪化させる恐れがあるため控えましょう。
さらに、痛みが出ている間は禁酒とし、できるだけ早く医療機関を受診してください。
5.痛風についてのまとめ
痛風とは、足や膝などの関節に生じる関節炎(痛風関節炎)のことです。
尿酸値が7.0mg/dLを超える高尿酸血症が持続することによって生じることがあります[7]。
高尿酸血症はプリン体やアルコールの過剰摂取、腎機能の低下、メタボリックシンドロームなどにより発症リスクを高めます。
高尿酸血症や痛風を予防するためには、プリン体やアルコールの摂取を控え、適度な運動やストレスの解消などを心掛けましょう。
既に痛みを生じているという場合には、患部を安静に保ち冷却すると良いでしょう。
また、痛みが出ていなくても高尿酸血症と診断されている場合にはできるだけ早く医療機関を受診することが大切です。
生活習慣に加え適切な治療を受け痛みの予防に努めましょう。