「私の頭痛は緊張型頭痛なのかな?」
「緊張型頭痛を治すにはどうしたら良いんだろう……」
緊張型頭痛という言葉は知っていても、ご自身の頭痛が該当するのかよく分からないという方もいらっしゃるでしょう。
緊張型頭痛は主に心身のストレスが原因で起こる頭痛で、締め付けられるような鈍い痛みが続くことが特徴です。
この記事では緊張型頭痛の症状や原因について、また混同されることもある片頭痛との違いについて解説します。
緊張型頭痛を改善するためのポイントもご紹介しますので、参考にしてくださいね。
1.緊張型頭痛とは
「緊張型頭痛って、どんな頭痛なんだろう?」
緊張型頭痛は原因となる病気のない「一次性頭痛」の一種で、そのなかでも最も多い頭痛です。
実に世界人口の38%がこの緊張型頭痛を患っているといわれています[1]。
特に理由はないけれど頭が痛いという場合は、緊張型頭痛を疑ってみると良いでしょう。
この章では緊張型頭痛の主な症状や、起こる原因について詳しく解説します。
ご自身の頭痛に当てはまるか、チェックしてみてくださいね。
[1] 一般社団法人日本頭痛学会「緊張型頭痛」
【関連情報】 「ストレスの原因、引き起こされる症状や対処法を分かりやすく解説!」についての記事はこちら
1-1.緊張型頭痛の症状
緊張型頭痛の特徴は、頭全体が締め付けられるようなじわじわとした鈍い痛みです。
痛みは後頭部を中心に、頭の両側から首筋にかけて起こります。
また首や肩、後頭部などのこりや眼精疲労、ふわふわするような目まい、立ちくらみなどを伴う場合もあります。
多くの場合、緊張型頭痛の痛みは我慢できないほどひどくないため、能率は落ちても仕事や家事を続けることが可能です。
痛みは短時間で治まる場合もありますが、数時間から数日の間隔で頭痛と回復を繰り返したり、数日から数カ月間にわたって持続したりすることもあります。
緊張型頭痛には「反復性緊張型頭痛」と「慢性緊張型頭痛」があります。
緊張型頭痛の頻度が平均して1カ月に15日未満の場合は反復性緊張型頭痛に分類されます[2]。
反復性緊張型頭痛の多くは痛みが軽めで、短時間で治るといわれています。
緊張型頭痛が3カ月を超えて、平均して1カ月に15日以上起こる場合は慢性緊張型頭痛に分類されます[2]。
慢性緊張型頭痛は中程度の痛みの場合が多く、数時間から数日間絶え間なく痛みが持続したり、軽い吐き気を伴ったりする場合があるといわれています。
[2] 一般社団法人日本頭痛学会「緊張型頭痛」
1-2.緊張型頭痛の原因
緊張型頭痛の原因は、主に身体的・精神的なストレスであると考えられています。
緊張型頭痛の原因となる身体的なストレスは、主に肩や首、後頭部の筋肉が緊張し、こり固まって血流が悪くなることです。
これにより筋肉から出た老廃物が正常に排出されず、神経を刺激することで頭痛が起こるとされています。
具体的には、長時間うつむいた姿勢でPC作業やデスクワークなどを行った場合などに起こります。
他にはショルダーバッグを肩に掛けたり、無理な姿勢を続けたりしても起こることがあります。
また精神的なストレスを受け続けて緊張した状態が長く続くと、脳の自律神経のバランスが崩れます。
自律神経のバランスが崩れると脳の痛みを調整する部位が機能不全に陥り、緊張型頭痛が引き起こされることがあります。
精神的なストレスによる緊張型頭痛は、生真面目な方や几帳面な方に起こりやすいといわれています。
なお、ストレス以外の要因が引き金となって緊張型頭痛が起こる場合もあります。
睡眠障害や顎(がく)関節の病気、眼精疲労などがある場合は緊張型頭痛が誘発されることがあるので注意してくださいね。
2.緊張型頭痛と片頭痛の違い
「緊張型頭痛と片頭痛って何が違うんだろう?」
一次性頭痛には、緊張型頭痛以外に「片頭痛」と「群発頭痛」があります。
日本における一次性頭痛の有病率は、緊張型頭痛が約20%で片頭痛が5~10%とされています[3]。
緊張型頭痛より少ないとはいえ、片頭痛も身近な頭痛の一つといえるでしょう。
片頭痛の特徴は、頭の片側または両側のこめかみ付近にずきんずきんと脈打つような非常に強い痛みが繰り返し起こることです。
緊張型頭痛では脈打つような痛みはあまり起こらないため、この点が大きな違いといえます。
また片頭痛では体を動かすと悪化する場合が多く、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢を伴うことも少なくありません。
加えて普段は気にならないような光や音、気圧の変化に過敏になる場合もあります。
慢性緊張型頭痛の場合は吐き気を伴うことがありますが、これらの症状が複数見られるような場合は片頭痛の可能性を疑ってみても良いでしょう。
片頭痛の痛みは仕事や家事を続けられなくなるほど激烈なため、日常生活に大きな支障を来します。
このため、頭痛がしんどいと感じても仕事や家事を続けられる程度であれば、緊張型頭痛の可能性が高いといえるでしょう。
なお、片頭痛が始まる前には「閃輝暗点(せんきあんてん)」や肩こり、目まい、しびれなどの前兆が現れる場合があります。
頭痛の前にこれらの前兆が現れる場合は片頭痛を疑ってみてください。
ただし、慢性緊張型頭痛では吐き気以外にも片頭痛に似た症状を訴える方がいます。
また緊張型頭痛と片頭痛は併発する場合もあります。
緊張型頭痛が慢性化している方や、いつも頭が重い状態が続いている方は自己判断を避け、専門医の診断を受けるようにしてください。
[3] 一般社団法人日本頭痛学会「頭痛診療への誘い~若手医師、医学生の皆さんへ~」
3.緊張型頭痛の改善のポイント
「緊張型頭痛はどうすれば改善できるんだろう?」
長時間のPC作業やデスクワークに従事し、緊張型頭痛に悩まされているという方もいらっしゃるでしょう。
緊張型頭痛は首や肩周りの筋肉の緊張が大きな原因であるため、これらの筋肉を緩めてほぐすことが効果的です。
また精神的なストレスも緊張型頭痛の原因となるため、日々の生活のなかで解消していくことが重要です。
この章では緊張型頭痛の改善に効果のある対策をご紹介しますので、参考にしてくださいね。
ポイント1 ストレッチやマッサージを行う
緊張型頭痛の改善にはストレッチやマッサージが効果的です。
緊張型頭痛は首や肩回りの筋肉の緊張やこりによって引き起こされるため、ストレッチして血行を良くすることで緩和することが期待できます。
仕事中などに頭の重さや肩のこりを感じたら、いったん休憩して首筋や肩のマッサージをしたり、簡単なストレッチや体操をしたりして体全体をほぐしましょう。
緊張型頭痛を改善するには「頭痛体操」が効果的です。
頭痛体操には「腕を振る体操」と「肩を回す体操」があります。
腕を振る体操はまず立って正面を向き、足を肩幅に開きます。
頭を動かさず、首の骨を軸にして両肩を左右に大きく回転させて戻します。
この動きをリズミカルに2分間続けましょう。
肩を回転させる際に腕の力を抜くのがコツですよ。
この体操は椅子に座ったままでもできるため、仕事の合間などにも行ってみてくださいね。
肩を回す体操はまず正面を向いて、足を肩幅に開きます。
両肘を軽く曲げ、肩を中心にして前から後ろへ、上着を脱ぐ感じで大きく6回回します。
次に後ろから前へ、リュックサックを背負う感じで大きく6回回します。
頭痛体操は頭痛が起凝る前に行うことで予防効果が期待できます。
また頭痛が起こってしまった場合でも、頭痛体操をすることで改善効果が期待できます。
ポイント2 首や肩を温める
緊張型頭痛を改善するには首や肩を温めましょう。
首や肩周りの筋肉の緊張が緊張型頭痛の原因となるため、これらの部位を温めて血行を良くすることで改善が見込めます。
具体的には、蒸しタオルや温湿布などで首や肩周りを温めると良いでしょう。
またホットアイマスクなどで目元を温めることも効果的です。
入浴の際も湯船につかり、しっかり首や肩を温めるようにしてくださいね。
ポイント3 風呂につかる
風呂につかって温まると心身のストレスを緩和できるため、緊張型頭痛の改善が期待できます。
お湯につかると体が温まって血管が広がるとともに、水圧がかかることで血流が改善されます。
これにより緊張した筋肉にたまった老廃物が流れるため、緊張型頭痛の緩和が期待できます。
また適度な温度のお湯につかると副交感神経が優位になり、心身をリラックスさせることができます。
お湯につかりながらゆっくりと好きな音楽を聴いたり読書したりするのも良いでしょう。
加えて、首周りや肩などをストレッチしたりマッサージしたりすると、さらなるリラックス効果が期待できますよ。
また就寝前にぬるめのお湯につかることには、寝付きを良くし、睡眠の質を向上させる効果もあります。
質の良い睡眠と緊張型頭痛については次の章で詳しく解説します。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」
ポイント4 質の良い睡眠をとる
緊張型頭痛には睡眠不足が影響するため、良質な睡眠をとるように心掛けましょう。
睡眠不足は生理的ストレッサーの一つであるため、緊張型頭痛の直接的な原因となります。
また睡眠不足になると、常に筋肉が緊張してこわばった状態になります。
これは首や肩周りの筋肉のこりにつながるため、緊張型頭痛につながります。
さらに睡眠不足は「自律神経失調症」の原因ともなります。
自律神経のバランスの乱れは脳の痛みを調整する部位の機能を低下させるため、緊張型頭痛が起こりやすくなります。
睡眠時間に加えて睡眠の環境や質も重要です。
寝相が悪いまま長時間眠ると筋肉がこわばって血行が悪化し、緊張型頭痛が起こることがあります。
こうした場合は枕やベッドなどの寝具が体に合っていない場合もあるため、交換することも考えましょう。
また筋肉がこわばったままで就寝することも緊張型頭痛の原因となります。
就寝前にしっかり湯船につかったり、マッサージやストレッチをしたりして筋肉をほぐす習慣を付けると良いでしょう。
眠れない場合の対処法については以下の記事で詳しく解説しています。
ポイント5 ストレスを解消する
緊張型頭痛の改善にはストレスの解消が重要です。
ストレスは自律神経のバランスを乱す上に眠れない原因ともなり、緊張型頭痛の発症リスクを高めます。
生活していく上でストレスを完全になくすことは難しいため、日々意識的に解消するようにしましょう。
ストレスの発散には自分の好きなことに打ち込んで気分転換することが効果的です。
ヒトは一度にいくつもの物事に意識を向けることはできません。
そのため好きなことに熱中して楽しむことでストレスの原因から意識を遠ざけられるのです。
映画鑑賞やショッピング、スポーツ、音楽、アウトドア、家族や友人とのおしゃべりなど、 楽しんで続けられる趣味を探してみましょう。
また運動もストレス解消に効果的です。
運動をすると、心を落ち着かせたり、幸せを感じさせたりするはたらきを持つホルモンの分泌量が増加します。
特にウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動が効果的といわれています。
またヨガやストレッチはこり固まった筋肉をほぐして血流を改善し、深い呼吸で精神もリラックスさせてくれるためストレス解消に有効です。
先に紹介した睡眠や入浴もストレスを解消してくれます。
睡眠には脳や体を休めるはたらきがあるため、十分に睡眠をとることでストレスを解消できます。
ただしストレスで寝付けない場合は無理に眠ろうとせず、リラックスできる時間を過ごしましょう。
入浴すると副交感神経が優位になってリラックスできるため、ストレスが和らぎます。
シャワーだけで済まさず、湯船にじっくりつかるようにしましょう。
お湯につかりながら読書や音楽鑑賞をするとさらにリラックスできますよ。
ご自身に合ったストレスの解消法を探してみてくださいね。
ポイント6 鎮痛剤を服用する
緊張型頭痛がつらいときは我慢せずに鎮痛剤を服用しましょう。
ほとんどの緊張型頭痛はロキソプロフェンやイブプロフェン、アセトアミノフェン、アスピリンといった成分の含まれる市販の鎮痛剤によって緩和できます。
ただし鎮痛剤を飲むのは痛みを軽減するだけで、緊張型頭痛の根本的な改善につながらない対症療法であることに注意が必要です。
鎮痛剤を服用する場合は、これまでご紹介した緊張型頭痛の改善方法を併用すると良いでしょう。
また鎮痛剤を長期間服用し続けることで、かえって頭痛が増えたり慢性化したりすることもあります。
月に15日以上頭痛が起こり、10日以上(単一成分の鎮痛剤の場合は月に15日以上)市販の鎮痛剤や処方薬を服用する状態が3カ月を超えても回復しない場合は「薬物乱用頭痛」と診断されます[5]。
緊張型頭痛が長期間続き、鎮痛剤が手放せないような場合は医療機関を受診してください。
[5] 厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 頭痛」
4.緊張型頭痛が長く続く場合は受診する
緊張型頭痛が長く続く場合は、他の病気が潜んでいる可能性があるため医療機関を受診しましょう。
ご自身では緊張型頭痛だと思っていても、実は他の病気が原因で頭痛が起こる「二次性頭痛」の場合があります。
二次性頭痛はくも膜下出血や脳梗塞といった、緊急性が高く致命的な病気によって引き起こされる場合があります。
突然これまでに経験したことのない激烈な頭痛に見舞われた場合や、発熱、意識の混濁、体の麻痺(まひ)、一つのものが二つに見えるといった症状がある場合は、至急救急車を呼んで救急医療を受けてください。
また緊急性が高くなくとも、脳腫瘍や髄膜炎、硬膜炎といった命の危険に直結する病気が原因の場合があります。
他にも副鼻腔炎や下垂体炎、低髄液圧症候群、睡眠時無呼吸症候群、緑内障、高血圧性脳症といった病気によって二次性頭痛が起こることがあります。
頭痛薬が効かない場合や、時間経過とともに頻度が増す傾向にある場合は、神経内科などでCTやMRIなどの検査を受けましょう。
また二次性頭痛はスポーツや事故での頭部の外傷や、一酸化炭素中毒などによって起こることもあります。
頭痛が長く続く場合やいつもと違うと感じた場合は医療機関を受診してください。
5.緊張型頭痛についてのまとめ
緊張型頭痛は原因となる病気のない一次性頭痛の一種で、そのなかでも最も多い頭痛です。
緊張型頭痛の主な原因は、デスクワークなどによるうつむいた姿勢での首や肩の筋肉の緊張といった身体的ストレスや、精神的ストレスに起因する自律神経の乱れなどです。
緊張型頭痛は頭全体がじわじわと締め付けられるような鈍い痛みが特徴で、数時間で治まることもあれば、数カ月間にわたって持続する場合もあります。
同じ一次性頭痛の片頭痛は、脈打つような強烈な痛みや吐き気・嘔吐が起こり、体を動かしたり強い音や光を浴びたりすることで悪化し、閃輝暗点などの前兆があることが緊張型頭痛との大きな違いです。
緊張型頭痛の改善には、ストレッチやマッサージを行う、首や肩を温める、風呂につかる、十分な睡眠をとる、ストレスを解消するといった対策が効果的です。
ほとんどの場合、緊張型頭痛は市販の鎮痛剤で緩和できますが、長く頻繁に服用すると薬物乱用頭痛という別の頭痛の原因となるため注意が必要です
頭痛が長く続く場合やいつもと違った頭痛が起こった場合は、別の病気が原因で起こる二次性頭痛の可能性があります。
二次性頭痛はくも膜下出血や脳梗塞といった致命的な病気によって起こる場合もあるため、速やかに医療機関を受診してください。
この記事を参考に心身のストレスを解消し、緊張型頭痛を改善してくださいね。