歯周病とは?原因や症状、進行の要因、予防のポイントについて解説

2024年07月29日

2024年10月30日

「歯周病ってどんな病気なんだろう……」

このように気になっている方も少なくないかもしれませんね。

歯周病は細菌の感染によって口内に炎症が起こり、歯茎や歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。

歯と歯茎の間の溝に汚れがたまるとそこに多くの細菌が集まり、炎症が起こり赤くなったり腫れたりします。

また歯を支える骨が溶けてぐらつくと、歯を失う原因にもなり得ます。

さらに歯周病は口内だけの病気と思われがちですが、実は全身の健康にも影響を及ぼすことが明らかになっています。

この記事では歯周病の原因や症状、歯周病を進行させる要因について解説します。

歯周病を予防するポイントについてもご紹介するので、参考にしてくださいね。

1.歯周病とは

歯磨きをする女性の口元

「自分の症状は歯周病なのかな?」

このように気になっている方もいらっしゃいますよね。

歯周病とは、歯と歯茎の隙間から侵入した細菌に感染することで起こる炎症性の病気です。

また、歯茎や歯を支える骨などを溶かし、歯をぐらぐらにしてしまうこともあります。

メモ
歯茎に炎症が起こってている状態を「歯肉炎」といい、その状態に加えて歯を支える骨が溶けている状態を「歯周炎」といいます。歯肉炎と歯周炎の両方を合わせて歯周病と呼びます。

次項ではさらに、歯周病の症状と原因について確認しましょう。

【関連情報】 「口腔ケアとは?期待できる効果や実施する際のポイントを詳しく解説!」についての記事はこちら

1-1.歯周病の症状

歯周病は歯肉炎から始まり歯周炎に進行するため、段階によって症状が異なります。

歯周炎では、歯と歯茎の境目に細菌がたまり炎症が起こります。

これにより歯茎が赤くなる、腫れるといった症状が現れることがありますが、ほとんどの場合痛みはありません。

歯肉炎を適切に対処しないと、歯周炎へ移行します。

歯周炎では歯茎の腫れや炎症が悪化し、歯磨きのときに出血しやすくなります。

この他にも、歯を支えている骨が徐々に溶け始める、歯茎が下がる、歯と歯の間に物が詰まりやすくなるといったこともあります。

さらに進行すると口臭がきつくなったり、膿が出たりします。

歯のぐらつきによって食事が摂りづらくなるなどの問題も現れ、歯を抜かなければならなくなる場合もあります。

1-2.歯周病の原因

歯周病は、歯垢の中の細菌によって起こります

口の中には何百種類もの細菌がおり、歯磨きが適切に行われなかったり砂糖を多く摂取したりすると、細菌が歯垢をつくりだし歯の表面に付着します。

歯垢は黄白色をした粘着物で、粘着力が強くうがいをした程度では落とすことができません。

歯垢には何十億もの細菌が存在し、なかでも歯周病を引き起こす細菌が多く存在しているといわれています。

歯垢は取り除かれないと硬くなり、歯石といわれる物質に変化します。

歯石はブラッシングだけでは取り除けない程、強固に歯の表面に付着します

そして歯石の周辺に入り込んだ細菌が、歯周病を進行させるのです。

2.歯周病と全身の健康の関係

自分の口元を指さしている女性

「歯周病って全身の健康にも影響するの?」

歯周病は口の中だけの問題とお考えの方も少なくないでしょう。

実は歯周病は口内だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼすといわれています。

炎症によって生じた毒性の物質が歯茎の血管から全身に運ばれ、さまざまな病気を引き起こしたり悪化させたりするのです。

歯周病は糖尿病や早産・低体重児出産、肥満、動脈硬化などに関わっているとされています。

動脈硬化とは
血管がしなやかさを失い、硬くなった状態のことです。動脈硬化が進行すると心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高まります。

また高齢者に見られる誤嚥(ごえん)性肺炎の原因となる細菌の多くは歯周病菌であるといわれています。

誤嚥性肺炎とは
老化などによって飲み込む機能が衰え、食べ物や口内の細菌、逆流した胃液などの異物が誤って気管に入り込むことで発症する肺炎のことです。

その他、関節炎や腎炎を引き起こす場合もあるといわれています。

関節炎や腎炎の原因となる細菌の多くは口内に存在する歯周病菌などであり、その細菌や歯周病によってつくりだされた炎症物質が血液に入り込むことで、関節炎や腎炎を発症することがあるのです。

骨粗しょう症の発症リスクが高い高齢女性は歯周病のリスクも高いといわれています。

女性ホルモンの「エストロゲン」には骨の健康を維持するはたらきがあるため、閉経によって分泌が減少すると全身の骨がもろくなり、骨粗しょう症のリスクが上昇するのです。

この際、歯を支えている歯槽骨という骨ももろくなってしまいます。

このため閉経後の女性は歯周病にかかりやすく、悪化しやすいといわれています。

詳しいメカニズムは分かっていないものの、歯周病とメタボリックシンドロームの関連性も注目されています。

メモ
メタボリックシンドロームとは、ウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)が基準値以上で、血圧・血糖・脂質の三つのうち二つ以上が基準値から外れた状態のことをいいます[1]。

歯周病の部位から放出される毒素は、血糖値を下げるはたらきのあるインスリンの効きを悪くし、血糖値を上昇させます。

メモ
インスリンとは膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンの一種で、血糖値を下げるはたらきをします。糖尿病はインスリンが不足したり作用が低下したりすることで高血糖の状態が慢性的に続く状態をいいます。

また重症の歯周病の場合は、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスクに関与すると考えられています。

口内の健康を保つことは、全身の健康維持にとっても重要といえますね。

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準

3.歯周病進行の要因

窓辺で歯磨きをする若い女性

「何が歯周病を悪化させるんだろう?」

歯周病を進行させる要因があるなら知っておきたいものですよね。

歯周病を進行させる要因には生活習慣や病気など、さまざまなものがあります。

3-1.生活習慣

アナログの目覚まし時計

歯周病を進行させるものには、喫煙や食事、歯ぎしり、食いしばり、噛み締め、口呼吸といった生活習慣やストレスなどが挙げられます。

たばこに含まれる化学物質は歯茎からの出血を抑えたり、歯茎を硬くしたりします

そのため、出血や歯茎の変化などの歯周病の症状に気づきにくくなり、歯周病を進行させる要因となるのです。

また、喫煙をしていると血流が悪くなるので、歯周病の治りが悪くなります。

食事も歯周病を進行させる要因です。

特に粘着性が高い食べ物を摂取すると歯垢が形成されやすくなります。

また糖分が多い食べ物も歯垢を形成する細菌の活動を活発にし、歯周病を進行させてしまいます。

歯ぎしりや食いしばりによって過度な圧が加わると、歯肉や歯周組織に大きな負担がかかります。

その結果、歯がぐらぐらしたり抜けたりする要因になるのです。

特に睡眠中に無意識に歯ぎしりをしている場合は、歯ぎしりをしている時間が長くなり歯周病を悪化させるため注意が必要です。

口呼吸によっても口の中が乾燥しやすくなり、歯垢がたまりやすくなります。

唾液には口の中をきれいに洗い流したり殺菌したりする作用がありますが、そのはたらきが低下すると口の中の細菌の活動性が高まり、歯周病を悪化させます。

ストレスは免疫機能の低下や、唾液の分泌量を減らして口内の衛生状態を悪くする他、歯ぎしりを招くこともあるため、歯周病を悪化させる要因となります。

3-2.病気

頬をおさえる不安そうな女性

糖尿病や骨粗しょう症、ホルモン異常などの病気も歯周病を進行させる要因となります。

歯周病は以前から糖尿病の合併症の一つとされていましたが、歯周病になると糖尿病が悪化することも明らかになってきました。

さらに歯周病を治療することで糖尿病も改善することが分かってきており、歯周病と糖尿病は悪影響を及ぼし合う関係といえます。

3-3.口内環境

歯ブラシと歯磨き粉

口内環境が歯周病を進行させる要因になります。

具体的には、合っていない歯の被せ物・詰め物や義歯、部分的に歯がないといったことが要因として挙げられます。

金属やプラスチック製の被せ物や詰め物と歯の間に段差や隙間があると歯垢がたまりやすくなり、歯周病を悪化させる要因となるのです。

3-4.その他

歯の模型で説明をする歯科衛生士

その他の要因としては、薬を長期的に服用している場合や、免疫抑制剤により免疫機能が低下している場合は、歯周病になりやすかったり進行が速かったりするといわれています。

歯周病が疑われる症状がある際は、歯科医師に相談しましょう。

4.歯周病を予防するためのポイント

「歯周病を予防するには、どんなことに気を付けたら良いのかな?」

歯周病を予防して、口内だけではなく全身の健康維持にも努めたいですよね。

この章では今日から取り組める予防のポイントについて解説します。

ぜひ参考にしてくださいね。

歯周病を予防するためのポイント

ポイント1 口内を清潔に保つ

歯周病を予防するためには毎日正しく歯を磨き、デンタルフロスや歯間ブラシなども使って口内を清潔に保つことが重要です。

毎日何気なく歯磨きをしていると、正しい方法で磨けていない場合が多いため気を付けましょう。

磨き残しがあると歯垢が残り、歯周病菌を増やす原因となります。

歯磨きをする際は、歯と歯茎の間にブラシが届くようにして、細かくブラシを動かして汚れを落とすと良いでしょう。

自分の歯に合わせてブラシの先や脇なども使いながら丁寧に歯磨きをしましょう。

しかし歯磨きだけでは歯と歯の間は磨ききれません

デンタルフロスや歯間ブラシなども使って、歯と歯の間の汚れを除去することが極めて重要です。

ポイント2 定期的に歯科でメンテナンスを受ける

歯周病を予防するためには、定期的に歯科で歯のメンテナンスを受けることも重要です。

痛みなどの自覚症状がなくとも、定期的に歯科でメンテナンスを受けることで、歯周病やむし歯を早期に発見することができます。

また問題が見つからなかった場合でも、ご自身に合ったブラッシング指導やクリーニングなどを受けることによって、歯のトラブルを未然に防ぐことにもつながります。

ポイント3 アルコールやたばこを控える

歯周病を予防するためには、アルコールやたばこを控えることが重要です。

アルコール自体は歯周病に悪影響はありませんが、飲んだ後に口内のケアが疎かになることが問題となります。

酔った後に歯を磨かずに寝てしまったり、歯磨きを疎かにしてしまったりすると歯周病が進行する恐れがあります。

また喫煙をしていると口臭や歯にヤニが付くだけではなく、歯周病にかかりやすく悪化しやすい上に、治療をしても治りにくいといわれています。

禁煙することで、歯周病になる方の割合が減少することも明らかとなっています。

ポイント4 栄養バランスの取れた食事を摂る

歯周病を予防するためには、バランスの取れた食事を摂ることが重要です。

主食や主菜、副菜のそろったバランスの良い食事を心掛けると良いでしょう。

抗酸化作用があるといわれるビタミンCやビタミンEを積極的に摂ることもおすすめです。

抗酸化作用とは
「活性酸素」のはたらきを抑える作用のことです。活性酸素は呼吸によって取り込まれた酸素が通常より活性化されたもので、免疫機能や細胞伝達物質としてはたらきますが、増え過ぎると細胞を傷つけ、老化や免疫機能の低下、生活習慣病などの原因となります。

ビタミンCやビタミンEは野菜や果物に多く含まれています。

また、歯や骨の材料になるカルシウムやマグネシウムを積極的に摂ることも重要です。

カルシウムやマグネシウムは乳製品や大豆製品などに含まれています。

一方、糖分の多い飲み物や菓子類は摂り過ぎないように注意が必要です。

ポイント5 規則正しい生活を送る

歯周病を予防するためには規則正しい生活を送ることが重要です。

規則正しい生活を続けて免疫機能を低下させないことが、歯や歯茎の健康につながります。

歯周病と免疫機能には深い関わりがあるといわれています。

疲れているときに歯茎が腫れたり、出血したりといった経験がある方もいらっしゃるでしょう。

これは免疫機能が低下し、口中の歯周病菌の影響力が強まっているためです。

歯や歯茎の健康のためにも、規則正しい生活を送りましょう。

ポイント6 十分な睡眠をとる

歯周病を予防するためには十分な睡眠をとることが重要です。

寝ている間は、副交感神経が優位になり心も体もリラックスした状態になるため、免疫細胞が活発にはたらきます。

メモ
副交感神経とは休息や睡眠をとっているときなど、リラックスしているときに優位にはたらく神経のことです。一方、交感神経とは主に日中に活動しているときや、緊張やストレスを感じたときに優位になる神経です。

十分に睡眠をとることで免疫細胞のはたらきが強化されるのですね。

また睡眠が不足すると血糖値のコントロールが悪くなるといわれています。

その結果、歯周病と関係性の深い糖尿病のリスクが高まり、歯周病が悪化してしまうのです。

ポイント7 疲れやストレスをためない

歯周病を予防するポイントは、疲れやストレスをためないことです。

疲れやストレスがたまっていると免疫機能が低下して細菌に感染しやすくなり、歯周病を悪化させる要因となります。

またストレスは唾液の分泌量を減らして口内の衛生状態を悪くする他、歯ぎしりを招くこともあるため、歯周病の原因となり得ます

その他にもストレスや疲労で気持ちに余裕がなくなると、食事の内容が偏ったり歯磨きが疎かになったりして、歯周病が進行することがあります。

ストレス解消については以下の記事で詳しく解説しています。

ストレスとは?つらくなる仕組みと気持ちが楽になる日々の習慣を紹介

5.歯周病が疑われる場合、歯科を受診しよう

歯の模型と治療器具

歯周病は予防、早期発見、治療、メンテナンスが重要な病気です。

以前は不治の病といわれていましたが、現在では歯周病の進行を阻止し、健康な状態に戻すことが可能です。

歯周病が疑われる場合はできるだけ早く歯科を受診しましょう。

6.歯周病についてのまとめ

歯周病は細菌の感染によって口内に炎症が起こり、歯茎や歯を支える骨などが溶けてしまう病気です。

歯周病の初期では歯茎が赤くなる、腫れるといった症状が現れることがありますが、ほとんどの場合痛みはありません。

また口臭がきつくなったり、朝起きたときに口の中がネバネバしたり、歯磨きのときに出血しやすくなったりします。

進行すると歯がぐらついたり、歯を失ったりする場合もあります。

歯周病は、歯磨きが適切に行われなかったり砂糖を多く摂取したりすると、細菌が歯垢をつくりだし歯の表面に付着することで、引き起こされます。

歯周病は口内だけの病気と思われがちですが、糖尿病や早産・低体重児出産、肥満、動脈硬化、心筋梗塞の発症など全身の病気に関与することが明らかとなっています。

口内の健康維持は全身の健康維持にもつながるのですね。

歯周病を進行させる要因には、喫煙や食事、歯ぎしり、食いしばり、噛み締め、口呼吸といった生活習慣や、ストレスなどが挙げられます。

その他、糖尿病や骨粗しょう症、ホルモン異常などの病気や口内環境なども進行の要因となります。

歯周病を予防するポイントは、口内を清潔に保つ、定期的に歯科でメンテナンスを受ける、アルコールやたばこを控えることです。

また、栄養バランスの取れた食事を摂ることや、規則正しい生活を送ること、十分な睡眠をとり疲労やストレスをためないことも重要です。

歯周病は予防、早期発見、治療、メンテナンスが重要で、健康を取り戻すことができる病気です。

歯周病が疑われる場合はできるだけ早く歯科を受診してくださいね。

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