「カルシウム不足だとイライラするって本当かな?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。
カルシウム不足がイライラにつながるといわれることもありますが、本当なのでしょうか。
この記事ではカルシウム不足だとイライラするという話の真偽や体内でのカルシウムのはたらきについて解説します。
また1日に必要とされるカルシウムの量やカルシウムが含まれる食品についてもご紹介します。
ぜひ日々の生活の参考にしてくださいね。
1.カルシウム不足だとイライラするって本当?
「カルシウム不足がイライラの原因になるって本当?」
イライラしたときに『カルシウムが足りていないのでは?』と感じたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし「カルシウムが不足するとイライラする」という話は誤りです。
カルシウム不足がイライラにつながるという誤解は、カルシウムが脳の興奮を抑えるはたらきを持つことからきたものだと思われます。
体内のカルシウムは、そのほとんどが骨や歯に存在しています。
そして残りのごく一部が血液や筋肉、神経内に存在し、体の機能の維持・調節に使われています。
もし血液中のカルシウムが不足しても、骨に蓄えられているカルシウムが溶け出して不足分を調節するため、カルシウム不足が直接的にイライラの原因となることはありません。
イライラに悩まされていて対処法が知りたいという方は以下の記事をご覧くださいね。
イライラが止まらないのはなぜ?原因と簡単にできる解消法9選!
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2.カルシウムの体内でのはたらき
「カルシウムにはどんなはたらきがあるんだろう?」
カルシウムの本来のはたらきはいったいどのようなものか気になる方もいらっしゃるかもしれませんね。
カルシウムは人体に最も多く存在しているミネラルであり、骨や歯の構成に加え、血液凝固、筋肉の収縮、神経伝達に深く関わっています。
この章ではカルシウムのはたらきについて詳しく解説します。
2-1.骨や歯を構成する
カルシウムは骨や歯の主要な構成成分です。
骨の強さは、骨でカルシウムの入れ替えが行われることで保たれています。
新しい骨はカルシウムが取り込まれることによって作られ、古い骨は壊されてカルシウムは溶け出していきます。
慢性的にカルシウム不足が続くと、カルシウムが骨から溶け出す量が多くなるため骨が弱くなり骨粗しょう症になる可能性が高まります。
また子どもは大人に比べて骨の成長が活発であるため、成長期に骨を丈夫にしておくことは将来の骨粗しょう症予防につながります。
骨の健康のためにカルシウムの摂取を積極的に行いましょう。
2-2.血液凝固を促し出血を防ぐ
カルシウムには血液凝固を促して出血を防ぐ作用があります。
多量の出血は生死に関わるため、ヒトの体には血を止めるはたらきが備わっています。
止血のはたらきには大きく分けて「血小板」が主に作用するものと、「血液凝固因子」が主に作用するものがあります。
カルシウムは血液凝固因子の一つです。
カルシウムの他には「プロトロンビン」や「フィブリノーゲン」と呼ばれるたんぱく質も血液凝固因子に含まれており、止血に役立ちます。
2-3.筋肉の収縮に関わる
カルシウムは筋肉の収縮にも深い関わりがあります。
私たちが走ったり、重いものを持ったりと体の力を発揮するとき、筋肉は収縮します。
この収縮は「アクチン」と「ミオシン」と呼ばれる物質が重なり合うことによって起こります。
カルシウムはアクチンとミオシンが重なり、筋肉を収縮するために必要とされます。
カルシウムは力を発揮する源でもあるのですね。
2-4.神経伝達に関わる
カルシウムは神経伝達にも関わっています。
カルシウムは細胞内の伝達係として重要な役割を担っています。
カルシウムイオンが細胞内に流入すると神経伝達物質の放出が促され、脳や神経に情報が送られます。
その他にも、数多くの細胞機能の調節を行っています。
カルシウムは体や脳が正常に機能するのを助けてくれるのですね。
3.カルシウムの平均摂取量と推奨量
「カルシウムをどのくらい摂れば良いのかな?」
カルシウムをどのくらい摂れば十分だといえるのか気になっている方も多いことでしょう。
この章では日本人の平均的なカルシウムの摂取量と1日に必要とされる量についてご紹介します。
3-1.カルシウムの推奨量
厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で各栄養素の摂取量の基準を公開しています。
カルシウムの推奨量は以下のように定められています。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢 | ||
0~5カ月 | ||
6~11カ月 | ||
1~2歳 | ||
3~5歳 | ||
6~7歳 | ||
8~9歳 | ||
10~11歳 | ||
12~14歳 | ||
15~17歳 | ||
18~29歳 | ||
30~49歳 | ||
50~64歳 | ||
65~74歳 | ||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
必要な量だけ見てもピンと来ない方もいらっしゃることでしょう。
続いて私たちがどのくらいのカルシウムを摂取しているのか、平均摂取量を見ていきましょう。
3-2.カルシウムの平均摂取量
おおよその目安として平均摂取量を確認しましょう。
厚生労働省が行った「令和元年国民健康・栄養調査」によると、日本人の平均的なカルシウム摂取量は以下のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1~6歳 | ||
7~14歳 | ||
15~19歳 | ||
20~29歳 | ||
30~39歳 | ||
40~49歳 | ||
50~59歳 | ||
60~69歳 | ||
70~79歳 | ||
80歳以上 |
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成
男性、女性共に全ての年代で平均摂取量が推奨量を下回っています。
多くの方がカルシウム不足の食生活を送っているのですね。
では、カルシウムはどんな食品から効率良く摂取できるのでしょうか。
次の章ではカルシウムの摂取源となる食品を確認しましょう。
4.カルシウムの摂取源となる食品
「カルシウムはどんな食品に含まれているのかな?」
カルシウムは乳製品や魚介類をはじめ、野菜や大豆製品、海藻類などの幅広い食材から摂取することができます。
この章では、カルシウムが含まれている食品を動物性食品と植物性食品に分けてご紹介します。
4-1.動物性食品
カルシウムは乳製品や魚介類などの動物性食品に含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
干しえび | ||
かたくちいわし | ||
さくらえび | ||
パルメザンチーズ | ||
脱脂粉乳(スキムミルク) | ||
まあじ(小型・骨付き) | ||
しらす干し | ||
ヨーグルト(無脂肪無糖) | ||
普通牛乳 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
なかでも牛乳はカルシウムの吸収率が高い食品です。
牛乳の栄養についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事もご覧くださいね。
牛乳に豊富な栄養素とそのはたらきとは?摂取の際のポイントも解説
4-2.植物性食品
カルシウムは野菜類や大豆製品、海藻類にも含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
えんどう | ||
刻み昆布 | ||
カットわかめ | ||
凍り豆腐 | ||
切り干し大根 | ||
油揚げ | ||
焼きのり | ||
がんもどき | ||
モロヘイヤ | ||
だいこん(葉) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
5.カルシウムを効率良く摂取する方法
カルシウムはビタミンDと一緒に摂ると吸収しやすくなります。
ビタミンDは、いわしやさんま、さけなどの魚類、きくらげやしいたけなどのきのこ類、卵などに多く含まれています。
カルシウムの吸収を促進する物質にはビタミンD以外にはマグネシウム、乳糖、CPP(カゼインホスホペプチド)、ビタミンK、クエン酸などがあります。
また、カルシウムの吸収を阻害したり排出を促したりする物質には食物繊維、フィチン酸、シュウ酸などがあります。
ご自身の好みに合わせてカルシウムを含む食品を食卓に取り入れてくださいね。
6.カルシウムとイライラの関係についてのまとめ
「カルシウム不足だとイライラする」というのは俗説で誤りです。
カルシウムには脳の興奮を抑えるはたらきがあるため、不足がイライラの原因になると誤解されることがあります。
しかし血液中のカルシウムが不足すると骨からカルシウムが溶け出し、一定の濃度になるよう調整されます。
そのためカルシウムが足りないからといって直接イライラにつながるわけではありません。
カルシウムは人体に最も多く存在しているミネラルであり、骨や歯の構成に加え、血液凝固、筋肉の収縮、神経伝達に深く関わっています。
イライラとカルシウム不足に直接的な関係はありませんが、日本人の食生活はカルシウムが不足しがちであるため十分な摂取が勧められます。
カルシウムは乳製品や魚介類をはじめ、野菜や大豆製品、海藻類などの幅広い食材から摂取できます。
ぜひこの記事を参考にカルシウムを十分に摂取してくださいね。