「大豆にはどのくらいタンパク質が含まれているのかな」
「大豆のタンパク質にはどんな特徴があるのだろう」
大豆のタンパク質については、実際の含有量や特徴など分からないことも多いかもしれませんね。
大豆は良質なタンパク質をはじめ、豊富なカルシウムなど、優れた栄養素を多く含む食品です。
この記事では、大豆に含まれるタンパク質の特徴や大豆のカロリー、タンパク質以外の栄養素、適正摂取量などについて解説します。
大豆の特徴を知って日々の生活に取り入れ、健康的な食生活を送りましょう。
1.大豆と大豆製品のタンパク質含有量とカロリー
「大豆にはどれくらいタンパク質が含まれているんだろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
またダイエット中の方はカロリーも気になるところかもしれませんね。
大豆のタンパク質含有量およびカロリーは以下のとおりです。
【大豆100g当たりのタンパク質含有量とカロリー】
食品名 | 加工状態など | タンパク質含有量 | カロリー |
---|---|---|---|
黄大豆 | いり | 37.5g | 429kcal |
黄大豆(国産) | 乾燥 | 33.8g | 372kcal |
黄大豆(ブラジル産) | 乾燥 | 33.6g | 414kcal |
黄大豆(アメリカ産) | 乾燥 | 33.0g | 402kcal |
黄大豆(中国産) | 乾燥 | 32.8g | 391kcal |
黄大豆 | 蒸し | 16.6g | 186kcal |
黄大豆(国産) | ゆで | 14.8g | 163kcal |
黄大豆 | 水煮缶詰 | 12.9g | 124kcal |
また大豆から作られる加工品はたくさんありますが、それぞれのタンパク質とカロリーは次のとおりです。
【主な大豆加工食品100g当たりのタンパク質含有量とカロリー】
食品名 | 加工状態など | タンパク質含有量 | カロリー |
---|---|---|---|
きな粉(黄大豆、脱皮大豆) | - | 37.5g | 456kcal |
きな粉(黄大豆、全粒大豆) | - | 36.7g | 451kcal |
油揚げ | 生 | 23.4g | 377kcal |
湯葉 | 生 | 21.8g | 218kcal |
ひきわり納豆 | - | 16.6g | 185kcal |
納豆 | - | 16.5g | 184kcal |
がんもどき | - | 15.3g | 223kcal |
焼き豆腐 | - | 7.8g | 82kcal |
木綿豆腐 | - | 7.0g | 73kcal |
おから | 生 | 6.1g | 88kcal |
絹ごし豆腐 | - | 5.3g | 56kcal |
それぞれ1食分の量が違うため数字だけで単純に比較はできませんが、例えば1食分30g入りの納豆であれば、タンパク質量は5.0gでカロリーは57kcal、小分けの絹ごし豆腐130gならタンパク質量は6.9gでカロリーは73kcalという計算になります。
タンパク質の1日の摂取推奨量は18~64歳の男性で65g、女性で50gなので、積極的に大豆製品を取り入れることでタンパク質を補給することができますね[2]。
タンパク質の1日当たりの摂取推奨量や大豆以外のタンパク源について知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
たんぱく質は1日どれくらい必要?効率良く摂取できるおすすめの食品
また大豆製品は肉などの動物性食品に比べると低カロリーなものも多く、ダイエット中の方でも罪悪感なく摂取できるといえるでしょう。
タンパク質を豊富に含みカロリーも低い大豆や大豆製品は健康な食生活の一助になってくれるかもしれませんね。
[1] 農林水産省「大豆のまめ知識」
2.大豆タンパク質の特徴
大豆に含まれるタンパク質は「良質なタンパク質」だといわれています。
タンパク質は20種類の「アミノ酸」と呼ばれる物質が結合してできており、どれか一つでも欠けているとタンパク質を合成することができません[3]。
アミノ酸はヒトの体内で合成できず食べ物から摂取する必要のある9種類の「必須アミノ酸」と、11種類の「非必須アミノ酸」に分けられます[3]。
食品のタンパク質の中にこの必須アミノ酸がヒトの体にとって望ましい量に対しどれくらいの割合で含まれているかを示す「アミノ酸スコア」という数値があります。
アミノ酸スコアは100を最高値とし、スコアが高いほど「良質なタンパク質」であるといわれています[4]。
一般的に動物性のタンパク質には植物性タンパク質に比べアミノ酸スコアの高いものが多いといわれており、 牛、豚、鶏といった肉類はおおむねアミノ酸スコア100です[5][6]。
また魚介類のなかにもアミノ酸スコア100のものが多くあります[5][6]。
一方植物性食品のなかにはアミノ酸スコアが低いものもありますが、大豆のアミノ酸スコアは100で、必須アミノ酸が理想的な割合で含まれているといえるでしょう[5][6]。
また、大豆タンパク質は消化の過程において時間を要するため空腹を感じにくく、食べ過ぎや小腹がすいてついついおやつに手が伸びることを気にしている方にもおすすめです。
3.大豆に豊富に含まれるそのほかの栄養素
大豆にはタンパク質以外にもさまざまな栄養素が含まれています。
ここでは大豆に含まれる代表的な栄養素についてご紹介します。
3-1.脂質
アメリカ産乾燥大豆100g中21.7g、およそ20%が脂質です[7]。
「脂質」イコール「太る」と思われる方も多いかもしれませんが、脂質は炭水化物、タンパク質とともにエネルギー産生栄養素の一つです。
脂質は効率の良いエネルギー源となる他、体温を調節したり、脳や細胞膜、ホルモンの材料となったりと大変重要なはたらきをします。
さらに大豆の脂質には必須脂肪酸である「リノール酸」や「リノレン酸」が多く含まれます。
必須脂肪酸は体のはたらきを健全に保つ上で必要とされる脂肪ですが、人間の体内で作ることができないため、食べ物から摂る必要があります。
必須脂肪酸には動脈硬化、血栓の予防のほか、血圧や悪玉コレステロールといわれるLDLコレステロールの値を下げるはたらきがあるといわれます。
大豆は日本人にとって身近であり、大豆を材料に作られる食品も豊富です。
毎日大豆や大豆製品から体に不可欠な脂質を取り入れて、健康を維持していきたいですね。
3-2.ビタミン
大豆はビタミンB群に該当するビタミンB1、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビオチンを多く含んでいます。
ビタミンはどれも体に必要な栄養素ですが、ビタミンB群は食べ物などから体内でエネルギーをつくり出すはたらきに関わっており、不足すると疲労を感じやすくなるといわれています。
ビタミンB群の栄養素は互いに助け合ってはたらくといわれており、バランス良く摂ることが必要です。
ここからは大豆に含まれているビタミンのはたらきや特徴についてご説明します。
ビタミンB1はアメリカ産乾燥大豆100gにつき0.88mg含まれており[8]、糖質からエネルギーを得るために必要なビタミンの一種です。
不足すると糖質を主なエネルギーとする神経や脳に影響がおよぶため、神経の機能を正常に保つはたらきがあるといわれています。
また皮膚や粘膜の健康をサポートしてくれる栄養素でもあります。
糖質の多い食事やお酒を多く摂る傾向にある方はその分必要量が増すので、意識して摂っておきたい栄養素だといえるでしょう。
アメリカ産乾燥大豆100gにつき2.1mg含まれているナイアシンはエネルギー産生や脂質・アミノ酸の代謝に関わるビタミンです[8]。
皮膚や粘膜の健康をサポートするはたらきもあるといわれており、口角炎や口内炎、舌炎、皮膚炎などの治療薬として用いられる場合もあります。
一般的な食生活を送っていれば不足の心配はあまりありませんが、健やかな体を保つのに重要な栄養素の一つであることが分かりますね。
ビタミンB6はアメリカ産乾燥大豆100gにつき0.46mg含まれています[7]。
体内で約100種類の酵素の補酵素としてはたらいており、特にタンパク質を構成するアミノ酸の代謝に関わっているため、タンパク質を多く摂取するとその分必要量が多くなります。
大豆はタンパク質とビタミンB6を同時に摂れる食品であるため、体内でタンパク質が効率良く使われるといえるかもしれませんね。
ビタミンB6にはビタミンB1やナイアシンと同じく、皮膚や粘膜の健康をサポートしてくれるはたらきもありますよ。
葉酸はアメリカ産乾燥大豆100gに220μg含まれています[8]。
葉酸は体内で血をつくるはたらきに関わっている他、動脈硬化を引き起こす「血清ホモシステイン」という物質の増加を抑える作用も持っています。
葉酸が不足すると血をつくるはたらきに異常を来したり、細胞分裂が抑制されたりしてしまいます。
また葉酸の十分な摂取は胎児の「神経管閉鎖障害」のリスクを低減する効果があるとされており、妊娠の可能性がある方や妊娠初期の方は通常の推奨量より多くの葉酸を摂取することが勧められています。
アメリカ産乾燥大豆100gに34.0μg含まれるビオチンは食べ物から摂取する他に腸内細菌によっても合成されますが、それだけでは体に必要な量をまかなうことができないため食べ物からの摂取が必須です[8]。
糖質や脂質、アミノ酸の代謝やエネルギーを生み出すはたらきに関わる他、皮膚や粘膜の健康維持を助けてくれるはたらきもしています。
このように大豆は体にとって重要な水溶性ビタミンを多く含んでいるのですね。
3-3.ミネラル
大豆は必須ミネラルを多く含む食品でもあります。
16種類ある必須ミネラルのうち、大豆は鉄、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛を豊富に含んでいます。
アメリカ産の乾燥大豆100gに含まれる鉄の量は8.6mgです[9]。
鉄が不足すると貧血になることはよく知られていますよね。
鉄の多くは赤血球中のヘモグロビンに存在し、細胞に酸素を供給しています。
鉄不足による貧血は赤血球の数を減少させ、体内での酸素の供給を不十分にします。
そのため頭痛や目まい、動悸(どうき)、息切れなどの症状を引き起こしてしまうのです。
乳児や月経のある方、妊娠中・産後の方は鉄不足になりやすい傾向にあるため、特に意識して摂っておきたい栄養素だといえるでしょう。
アメリカ産乾燥大豆100gに1,800mg含まれるカリウムには食塩の主要な成分であるナトリウムを排出する役割があります[9]。
塩分過多によって起こる高血圧の改善効果があるとされており、特に血圧の高い方には積極的な摂取が推奨されています。
またカルシウムは体のなかに最も多く存在するミネラルで、アメリカ産乾燥大豆100gには230mg含まれています[9]。
カルシウムは骨や歯の形成において重要なはたらきをしている他、心臓の機能や筋肉の収縮、血液の凝固といった機能にも関わっています。
長期にわたって不足すると骨粗しょう症など骨の強度が弱まる病気になってしまったり、高血圧や動脈硬化、免疫異常、肥満、糖尿病などの病気を引き起こしたりしてしまいます。
しかし日本人の食生活では不足しがちな傾向にあるため、十分に摂取できるよう意識しておくことが重要です。
マグネシウムはアメリカ産乾燥大豆100gにつき230mg含まれています[9]。
300種類以上の酵素に対して補酵素としてはたらいており、体内で起こるさまざまな化学反応に欠かせないミネラルです。
またカルシウムとともに骨の健康を維持するはたらきもしています。
ヒトに限らず全ての細胞や骨に広く分布しているため通常の食生活で不足することはまれですが、神経伝達やホルモン分泌、筋肉の収縮、骨の弾性維持など体のさまざまな機能に関わるので不足しないよう摂取しておきましょう。
アメリカ産乾燥大豆は100g当たり4.5mgの亜鉛も含んでいます[9]。
亜鉛は多くの酵素に含まれ、遺伝子の発現やタンパク質の合成など、細胞の成長と分化において中心的な役割を果たしています。
不足すると味覚障害や皮膚炎、食欲不振、免疫機能の低下、貧血などを引き起こしますが、やや不足しがちな栄養素の一つであるため意識的に摂取しておきましょう。
体のなかのミネラルは微量ですが、わずかな増減でも健康に大きな影響をもたらします。
不規則になりがちな食生活において、ミネラルをバランス良く摂ることができる大豆は頼もしい存在ですね。
3-4.食物繊維
大豆には食物繊維が豊富な食品でもあります。
アメリカ産乾燥大豆100g中には15.9gの食物繊維が含まれています[10]。
調理の際にはゆでて使うこともあると思いますが、ゆで大豆100g中の食物繊維は8.5gです[10]。
一般的に食物繊維が多いことで知られるごぼうはゆでた状態で100g当たり6.1g、さつまいもは蒸した状態で100g当たり3.8gの食物繊維を含んでおり、大豆の方が含有量が多いことが分かります[10]。
食物繊維におなかの調子を整えるはたらきがあることはよく知られていますよね。
食物繊維は便の材料となる他、善玉菌を増やすはたらきもあり、便秘を防ぐ上では欠かせない食品成分です。
それだけでなく、食物繊維には脂質や糖質、塩分(ナトリウム)を吸着して体外に排出するはたらきがあり、これらの摂り過ぎによって引き起こされる肥満や脂質異常症、糖尿病、高血圧などを予防・改善する効果があるともいわれています。
しかし日本人の平均食物繊維摂取量は、1日当たり24gという理想の摂取量にはほど遠く、摂取量の中央値との間を摂って設定された目標量も達成できていないのが現状です[11]。
少しでも食物繊維摂取量を増やせるよう、大豆や大豆加工食品を日々の食卓に取り入れてみましょう。
4.大豆を摂取する上での注意点
大豆を摂る際には「大豆イソフラボン」に注意が必要です。
大豆イソフラボンとは、大豆に含まれ大豆製品のほとんどに入っている化学物質のことです。
大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンに似た構造を持っています。
骨粗しょう症や乳がん、前立腺がんの予防などの効果が期待される一方で、乳がん発症や再発のリスクを高める可能性もあるとされています。
そのため大豆イソフラボンには1日当たり70~75mgの摂取目安量の上限値が設定されています[12]。
ただし大豆イソフラボンの効果や人体への影響についてはまだ研究途上にあり、完全には明らかになっておらず、これまで食品から摂取した大豆イソフラボンによる健康被害は確認されていません。
むしろ大豆に含まれる豊富な栄養素を考えると、大豆イソフラボンの摂取を避けて大豆や大豆製品を食べないことで現れる体の不調が心配されます。
大豆イソフラボンによる体への影響が気になる場合は、成分が強化・濃縮されたサプリメントなどの摂取を控えるようにすると良いでしょう。
5.大豆のタンパク質について まとめ
大豆は、タンパク質を多く含む食品です。
大豆を原料とした製品は身近に豊富にあり、積極的に大豆製品を取り入れることで手軽にタンパク質を補給することができます。
また、大豆製品は肉などの動物性食品に比べると低カロリーなものも多く、ダイエット中でも安心して食べられるのがうれしいポイントですね。
そのほか、大豆の脂質は必須脂肪酸を多く含み、エネルギーを産生する際に重要な役割を担うビタミンB群も豊富です。
さらに、不足しがちなカルシウム、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルや、おなかの調子を整える食物繊維が豊富な食品でもあります。
非常に栄養価の高い大豆ですが、大豆や大豆製品のほとんどに含まれる大豆イソフラボンの人体への影響は完全には明らかになっていないため、大豆だけを食べるといった極端な摂取の仕方には注意が必要です。
ただしこれまで大豆食品のイソフラボンによる健康被害は報告されていないため、気になる場合はイソフラボンを濃縮・強化したサプリメントなどの摂取を控えるようにすると良いでしょう。
この記事で挙げた大豆のメリットも参考にしながら、ぜひ日々の生活に大豆を取り入れて健康や美容のために役立ててくださいね。