「眼精疲労がつらい……」
「疲れ目を改善するにはどうしたら良いんだろう?」
眼精疲労とは、目の痛みやかすみ、充血などの症状が長引き、回復しない状態のことです。
頭痛や肩こり、吐き気などの他の不調の原因にもなり得ます。
パソコンなどの画面を長時間眺めることが多く、眼精疲労に悩まされている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では眼精疲労の症状や原因、対策をご紹介します。
1.眼精疲労とは
「目の疲れがなかなか取れない……」
「これって眼精疲労なのかな?」
眼精疲労は比較的よく見聞きする言葉ですが、具体的にどのような状態を指しているのかご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは眼精疲労の定義と症状、原因をお伝えしましょう。
1-1.眼精疲労の定義と症状
眼精疲労は目を使い続けることによって生じた目の症状が休息や睡眠をとっても十分に回復しない状態のことです。
具体的には目の痛みやかすみ、まぶしさ、充血といった症状が該当します。
またピントが合わせにくい、物が二重に見える、目が潤む、目が乾燥する、まばたきが増えるといった症状もあります。
さらに眼精疲労では目の症状だけでなく、頭痛や肩こり、吐き気、目まい、倦怠(けんたい)感といった全身の症状も現れます。
なぜ眼精疲労によって目以外の場所に症状が現れるのか、その原因ははっきりとは分かっていません。
しかし肩こりや頭痛が現れるのは、眼精疲労の状態だと物を見るのに時間がかかり、姿勢が悪くなりやすいことが原因だと考えられています。
また物が見えにくい状態で集中して物を見ようとして緊張状態が続くことで、頭痛や目まい、吐き気、倦怠感などの症状が現れるのではないかと考えられています。
一時的な目の疲れとは違う、つらい状態であるといえますね。
1-2.眼精疲労の原因
眼精疲労の原因にはさまざまなものがあります。
例えば、パソコンやスマートフォンの長時間の使用による眼精疲労が近年増えています。
心当たりがおありの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また度の合わない眼鏡やコンタクトレンズを使っている場合、初期の老眼にもかかわらず適切な視力矯正を行わずに手元を見続けている場合にも眼精疲労が起こります。
この他に緑内障や白内障、ドライアイといった目のトラブルも眼精疲労の原因となります。
この他に全身の疾患によるもの、心因性のもの、環境によるものもあります。
眼精疲労は主に、目の筋肉の疲れによるものだと考えられています。
ヒトの目は、「毛様体筋」という筋肉を収縮させたり緩めたりすることでピントを合わせています。
遠くを見るときには毛様体筋は緩み、水晶体を周りから支えている「チン小帯」が緊張し、レンズの役割をする水晶体が薄くなります。
一方で近くを見るときには毛様体筋が収縮し、チン小帯が緩み、水晶体が厚くなるのです。
なお、ピントを合わせる力を使っていないときには毛様体筋は緩み、最も遠くにピントが合った状態になっています。
しかし近くにピントを合わせている時間が長くなると、ずっと収縮している毛様体筋に疲れがたまり、目の疲れが生じてしまうのです。
また目の周りに位置している他の筋肉にも負担がかかります。
さまざまな原因によりこうした疲れがたまることで、眼精疲労が起こるのですね。
2.眼精疲労の対策
「眼精疲労を改善するにはどうしたら良いんだろう?」
「生活習慣を改善すれば眼精疲労を予防できるのかな?」
このようにお悩みの方も多くいらっしゃることでしょう。
ここでは、眼精疲労の対策を症状が出ている場合の対処法と、今後症状が出ないようにするための予防法に分けてご紹介します。
2-1.眼精疲労の対処法
前提として、眼精疲労の治療には、原因の特定と排除が必要です。
しかし例えばパソコンを長時間眺めていることが原因だと自覚があっても、仕事だから改めることが難しい、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
まずはご自身でできる範囲で眼精疲労の症状を軽減させる効果が期待できる対処法をお伝えしましょう。
対処法1 マッサージやツボ押しを行う
眼精疲労は目の周りの筋肉に負担がかかることによって起こります。
マッサージやツボ押しを行って筋肉の緊張をほぐすことで、眼精疲労の症状を和らげることができるといわれています。
まずはマッサージの方法からご紹介しましょう。
両手をこめかみの辺りに当て、頭頂部に向かって軽く押し上げます。
また目を閉じたまま、眼球を上下左右に動かすのも効果的だとされています。
続いて、眼精疲労に効果があるとされているツボをご紹介します。
「晴明(せいめい)」は目頭と鼻の付け根の間に位置するツボです。
このツボの存在や名前は知らなくても、目が疲れたとき、ここを押している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「攅竹(さんちく)」は眉頭の少し下のくぼみ、「魚腰(ぎょよう)」は眉の真ん中辺りにあります。
「承泣(しょうきゅう)」は黒目の真下、眼球が位置する頭蓋骨の穴の縁にあるツボです。
ツボを刺激する際は眼球に力を加えないよう注意してください。
初めは軽く押してみて、痛みを感じない程度に徐々に力を加えるようにしましょう。
指先で小さな円を描くようにもむのも効果があるといわれていますよ。
対処法2 目を温めたり冷やしたりする
目を温めたり冷やしたりすることも眼精疲労には効果的だとされています。
状態に応じて温めた方が良い場合と冷やした方が良い場合があるのでしっかり見極めましょう。
一般的に目の疲れを感じているときやドライアイのときにはホットタオルやホットアイマスクなどで目やその周りを温めた方が良いといわれています。
温めると血管が広がり、血行が良くなるため、眼精疲労による筋肉のこわばりがほぐれ、症状の緩和が期待できます。
また目を温めることで肩や頭の緊張の緩和にもつながるといわれていますよ。
ドライアイの原因の一つは油分を分泌して涙の蒸発を防ぐはたらきをする「マイボーム腺」の詰まりだといわれていますが、温めることでこの詰まりも改善できます。
ただし目が充血しているとき、目に熱っぽさや痛みを感じるときには目を冷やす方が良いといわれています。
冷やすことで血管が収縮し炎症が抑えられるため、症状が軽減すると考えられます。
目を冷やす際には、冷蔵庫で冷やしたぬれタオルや、保冷剤をタオルで包んだものを使い、冷やし過ぎないよう注意しましょう。
症状に応じた対処を行ってくださいね。
対処法3 コンタクトレンズの使用を控える
眼精疲労の症状が出ている場合、コンタクトレンズの使用を控えるようにしましょう。
コンタクトレンズを着けていると目の表面が乾燥しやすくなり、ドライアイの原因になってしまいます。
眼精疲労とドライアイは密接に関係しており、ドライアイがひどくなればそれに伴って疲労感が強くなり、疲労感が強まればドライアイもさらにひどくなるといわれています。
また遠くがよく見えるコンタクトレンズや眼鏡をしたまま手元を見続けていると目のピントを合わせる筋肉に負担がかかり、眼精疲労を悪化させてしまう恐れがあります。
普段コンタクトレンズをしていて目が疲れていると感じている方は、眼鏡に切り替えると良いでしょう。
対処法4 目薬を使う
眼精疲労に悩まされている方は目薬の使用も検討してみましょう。
目の疲れに効く目薬はドラッグストアでも入手できます。
刺激が少なく、目に良いとされるビタミンが配合されているものを選ぶのがおすすめです。
またドライアイも眼精疲労を悪化させる原因となるため、目薬で涙の代わりとなる水分を補うことも効果的だと考えられます。
対処法5 部屋を加湿する
冷房や暖房が効いていて、湿度が低い環境で作業を続けているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
空調が効いている室内は乾燥しやすく、ドライアイの原因になります。
部屋を加湿し、目の乾燥を防ぐことで眼精疲労の悪化を防げると考えられますよ。
デスクに置ける小型の加湿器などを導入してみましょう。
またエアコンの風に直接当たらないようにすることもポイントです。
2-2.眼精疲労の予防法
「眼精疲労を防ぐためにできることはないのかな?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここでは、今後眼精疲労に悩まされないためにしておきたい対策を四つご紹介します。
予防法1 作業環境を見直す
パソコンの画面を長時間見続けていることにより眼精疲労が生じている場合、作業環境を見直すことで眼精疲労を予防したり、改善したりできると考えられます。
パソコンを使う際、目とモニターの間は40〜50cm程度空けるようにしましょう[1]。
またモニターの上の辺が目より数cm高い位置に来ることが理想的です[1]。
椅子に深く座り、膝の角度は90度以上になるようにしましょう[1]。
照明も重要です。
室内は100〜500ルクスの明るさが理想的だといわれています[1]。
部屋が暗過ぎたり、明る過ぎたりする場合は照明を調節しましょう。
また窓の外から光が差し込む場合、画面に映り込んだ光が目の負担になる恐れがあります。
窓にはブラインドやカーテンを付けるようにしましょう。
[1] 公益社団法人 日本眼科医会「パソコンと目」
[2] 大阪市立科学館「照度と明るさの目安」
予防法2 定期的に目を休める
眼精疲労は長引く目の疲れです。
目の負担が大きくなり過ぎないよう、定期的に目を休めるよう心掛けましょう。
例えばパソコンで1時間連続して作業をしたら、15分ほど休憩をとることが勧められます[3]。
休憩をとれない場合はパソコンを使わない別の仕事を挟んだり、時々遠くをぼんやり見たりして、目を休めるようにしましょう。
[3] 公益社団法人 日本眼科医会「パソコンと目」
予防法3 適切な視力矯正器具を使用する
眼鏡やコンタクトレンズの度が合っていないと、眼精疲労の原因になります。
また遠くがよく見える眼鏡やコンタクトレンズで近距離を見続けることで、目の筋肉に負担がかかり、眼精疲労が起こりやすくなっている場合もあります。
老眼の場合はピントを合わせる力が低下していることによって眼精疲労が悪化します。
ご自身の目に合った眼鏡やコンタクトレンズを使用するようにしましょう。
また眼鏡とコンタクトレンズを使い分けたり、状況に応じてかける眼鏡を変えたりすることも良いでしょう。
手元を見る時間が長い場合は、手元が見やすい近距離用の眼鏡をかけることが効果的だとされていますよ。
長いこと同じ眼鏡やコンタクトレンズを使っているという方は、一度眼科を受診し、度が合っているか確認してみてくださいね。
予防法4 目の健康に関わる栄養素を十分に摂る
普段の食事であまり栄養バランスに気を使えていないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ヒトの体は食べ物から摂取する栄養素によってつくられています。
目の健康にもいくつかの栄養素が関わっているので、眼精疲労予防のためにこれらの栄養素を十分に摂取することを心掛けましょう。
目の健康に関わるビタミンには主に以下のようなものがあります。
【目の健康に関わるビタミン】
- ビタミンA
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ビタミンB6
- ビタミンB12
- ビタミンC
脂溶性ビタミンの一種であるビタミンAは、目の正常な機能の維持に関わります。
また水溶性ビタミンでビタミンB群の一種であるビタミンB1は目の神経が正常にはたらく上で重要な栄養素だといわれています。
同じくビタミンB群のビタミンB2は不足すると目の充血を招くとされています。
ビタミンB6とB12も不足すると視神経の異常を引き起こす栄養素です。
また水溶性ビタミンであるビタミンCは目のレンズの役割をしている水晶体に多く含まれています。
増え過ぎると細胞を傷つけてしまう活性酸素に対抗するはたらきも有しており、水晶体の健康を保つのに役立つと考えられます。
これらの栄養素を十分に摂取しておきましょう。
各ビタミンについては以下の記事でご紹介しています。
ビタミンAについて
ビタミンAを多く含む食べ物は?効果や摂取基準についても詳しく解説
ビタミンB群について
ビタミンB群を豊富に含む食べ物は?それぞれの食事基準や作用も解説
ビタミンCについて
ビタミンCはどんな食べ物に含まれるの?健康維持に必要な摂取量を解説
3.症状が長引く場合は眼科へ
眼精疲労の症状が長く続いていたり、日常生活に支障を来すほど重かったりする場合には速やかに眼科を受診しましょう。
眼精疲労の根本的な解決には、原因を特定し、それを取り除くことが不可欠です。
眼鏡やコンタクトレンズが合わない場合は作り直す必要があります。
また目の病気が隠れており、それが眼精疲労の原因となっていることも考えられます。
早めの受診が症状の早期改善につながるでしょう。
眼精疲労には特効薬はありませんが、点眼薬や内服薬で症状の改善が見られる場合もありますよ。
4.眼精疲労の対策についてのまとめ
眼精疲労は目を使い続けることによって生じた症状が休息をとっても十分に回復しない状態のことです。
原因はパソコンやスマートフォンの長時間利用の他、ドライアイや度の合わない眼鏡・コンタクトレンズ、目の病気などさまざまなものが考えられますが、目のピントを合わせる筋肉が酷使され、疲れがたまることによって起こるといわれています。
このため眼精疲労の改善や予防には、目を酷使しないこと、筋肉の緊張を和らげること、ドライアイを緩和・予防することが重要だといえるでしょう。
眼精疲労の症状に悩まされている場合は、マッサージやツボ押しを試してみましょう。
また症状に応じて目を温めたり冷やしたりすることで筋肉の緊張を和らげたり、炎症を抑えたりすることができると考えられます。
コンタクトレンズの使用を控え、目薬を使用して部屋を加湿するとドライアイの改善にも有効だと考えられますよ。
加えて眼精疲労の予防のためには、その原因となる環境を変えることも重要です。
パソコンの作業環境を見直し、定期的に目を休めることを心掛けましょう。
眼鏡やコンタクトレンズが視力やライフスタイルに合っているかも確認してくださいね。
状況によって視力矯正器具を使い分けることも検討しましょう。
また目の健康に関わる栄養素を十分に摂取することも重要です。
この記事を参考に、目をいたわり、眼精疲労を改善・予防していきましょう。