「玉ねぎは体に良いっていうけど本当かな……」
「玉ねぎにはどんな栄養素が含まれているんだろう?」
玉ねぎは身近な野菜の一つですが、含まれている栄養素については詳しく知らないという方も多いかもしれませんね。
玉ねぎには食物繊維やビタミン、ミネラルなどが豊富に含まれています。
また、体にとってうれしい効果が期待できるケルセチンや硫化アリルという成分も含まれます。
この記事では、玉ねぎに含まれる栄養素や成分について説明していきます。
おいしい食べ方のポイントも紹介しますので、参考にしてくださいね。
1.玉ねぎの種類
「玉ねぎと新玉ねぎって種類が違うのかな?」
玉ねぎを購入する際に、このように考えることがあるかもしれませんね。
一般的に出回っている玉ねぎの多くは黄玉ねぎという種類のもので、辛みがあり貯蔵性に優れているという特徴があります。
玉ねぎの収穫量が最も多い北海道産のものは、水分量が少なくやや辛めで貯蔵性があるのに対し、本州産のものは比較的水分量が多く甘みがあり貯蔵性はあまりありません[1]。
生食に向いているものとしては、白玉ねぎや赤玉ねぎ(紫玉ねぎ)があります。
黄玉ねぎに比べると、辛みが少なく甘みがあり水分が多いのが特徴で、サラダなどに適しています。
その他、香味野菜やスパイスとして用いられるシャロット、白たまねぎの葉茎の部分を大きくしたものでねぎの代わりにもなる葉玉ねぎ、煮込み料理で使われる小さな黄玉ねぎのペコロスなどが玉ねぎの主な種類です。
また、新玉ねぎとは暖かい地域で早取りで収穫され、3月から4月ころに出荷される黄玉ねぎや白たまねぎのことをいいます[2]。
通常、玉ねぎは乾燥させてから出荷しますが、新玉ねぎは乾燥させずに出荷します。
そのため水分が多くて柔らかく辛みが少ないのが特徴ですが、両者に栄養成分の違いはありません。
2.玉ねぎに豊富に含まれる栄養素
玉ねぎには体にとって必要な栄養素がたくさん含まれています。
それでは玉ねぎに豊富に含まれている栄養素について解説していきますね。
【玉ねぎに含まれる主な栄養素とその含有量(100g当たり)】
栄養素 | 含有量 |
---|---|
食物繊維 | 1.5g |
ビタミンB1 | 0.04mg |
ビタミンB6 | 0.14mg |
パントテン酸 | 0.17mg |
葉酸 | 15μg |
ビタミンC | 7mg |
カリウム | 150mg |
鉄 | 0.3mg |
銅 | 0.05mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
なお、この章でご紹介するのは成人男女向けの1日当たりの食事摂取基準です。
17歳以下の方は未成年の食事摂取基準を、妊娠中・授乳中の方は必要量が増える栄養素もあるため、妊婦・授乳婦の食事摂取基準で付加量をご確認ください[4]。
2-1.食物繊維
玉ねぎには食物繊維が豊富に含まれており、100g当たりの含有量は1.5gです[5]。
食物繊維は炭水化物の一種です。
「難消化性炭水化物」ともいわれ、小腸で消化・吸収されずに大腸へ達します。
食物繊維の主なはたらきは、便秘の予防や血糖値の上昇抑制、血液中のコレステロール濃度の低下などです。
現代の日本人は食物繊維の摂取量が少ない傾向にあるため、積極的に摂りたい栄養素の一つです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において食物繊維の摂取目標量が定められています。
食物繊維の1日当たりの摂取目標量は男性の場合18~64歳で21g以上、65歳以上で20g以上です[6]。
一方女性は18~64歳で18g以上、65歳以上で17g以上です[6]。
食物繊維についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維は1日にどのくらい摂ればいい?期待できる効果や食材を紹介
[5] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-2.ビタミンB1
玉ねぎにはビタミンB1も豊富に含まれています。
玉ねぎ100g当たりのビタミンB1含有量は0.04mgです[7]。
ビタミンB1は炭水化物からエネルギーをつくり出す際に助けとなる栄養素です。
また、皮膚や粘膜が健康な状態を保つ上でも重要な役割を担っています。
ビタミンB1は糖質を多く含む食品や大量のアルコールを摂った際に、需要が高まり不足しやすくなります。
不足すると、特に糖質をエネルギーとして利用している脳や神経に影響を及ぼすことがあるので注意が必要です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、ビタミンB1については摂取推奨量が定められています。
ビタミンB1の1日当たりの摂取推奨量は、男性では18~49歳は1.4mg、50~74歳は1.3mg、75歳以上は1.2mgです[8]。
女性は18~74歳で1.1mg、75歳以上で0.9mgです[8]。
ビタミンB1についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB1が豊富に含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説
2-3.ビタミンB6
玉ねぎにはビタミンB6も豊富に含まれています。
玉ねぎ100g当たりのビタミンB6含有量は0.14mgです[9]。
ビタミンB6は、たんぱく質、脂質、炭水化物や神経伝達物質の代謝が行われる際に補酵素としてはたらきます。
また、ホルモンの調節にも関与しています。
食事から十分に摂取できない場合やビタミンB6の阻害剤の服用により、ビタミンB6の不足を招くことがあります。
不足すると、湿疹、口角炎、貧血、免疫機能の低下などの症状が見られます。
ビタミンB6の1日当たりの摂取推奨量は、男性は18歳以上で1.4mg、女性は1.1mgです[10]。
ビタミンB6についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
[9] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-4.パントテン酸
玉ねぎにはパントテン酸も豊富に含まれています。
玉ねぎ100g当たりのパントテン酸含有量は0.17mgです[11]。
パントテン酸は水溶性ビタミンの一種で、脂肪を構成する「脂肪酸」や糖の代謝に関与しています。
パントテン酸が不足すると、手足のしびれ、頭痛、疲労、食欲不振などの症状が現れることがありますが、多くの食品に含まれているため不足の心配はほぼないとされています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、パントテン酸は摂取目安量が定められています。
パントテン酸の1日当たりの摂取目安量は、男性は18~49歳で5mg、50歳以上は6mgです[12]。
女性は18歳以上で5mgです[12]。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所が「『健康食品』の安全性・有効性情報」というサイトでパントテン酸の情報を公開しているので、参考にしてみてくださいね。
[11] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-5.葉酸
玉ねぎに豊富に含まれる栄養素の一つには葉酸もあります。
玉ねぎ100g当たりの葉酸含有量は15μgです[13]。
葉酸はビタミンB群の一種で、赤血球の形成や細胞増殖に必要とされるDNAの合成に関わっています。
性別や世代を問わず重要な栄養素ですが、特に妊娠初期に不足すると胎児の神経管の成長が正常に行われず、神経管閉鎖障害と呼ばれる先天性異常の原因となることが分かっています。
厚生労働省からは妊娠の1カ月以上前から妊娠3カ月までは1日400μgの葉酸を栄養補助食品から摂取することで、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減できる可能性があるという報告もされています[14]。
葉酸の1日当たりの摂取推奨量は、男女共に18歳以上で240μgです[15]。
葉酸についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
[13] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-6.ビタミンC
玉ねぎにはビタミンCも豊富に含まれています。
玉ねぎ100g当たりのビタミンC含有量は7mgです[16]。
ビタミンCは、皮膚や軟骨などの材料であるコラーゲンをつくるために欠かせない要素です。
また、体内で過剰に発生すると害になる活性酸素の作用を抑える抗酸化物質としても重要な役割を担っています。
さらに、消化管では鉄の吸収を高める助けとなります。
ビタミンCはヒトの体内ではつくることができないため、食べ物から摂取しなければなりません。
不足すると血管が弱くなり出血しやすくなる他、疲労感や倦怠(けんたい)感などの症状が見られるようになります。
欠乏状態になると、歯肉や皮下の出血、貧血、心臓障害が起こることもあります。
ビタミンCの1日当たりの摂取推奨量は、男女共に18歳以上で100mgです[17]。
ビタミンCについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンCの美容・健康効果は?目標摂取量と豊富に含まれている食品
[16] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-7.カリウム
玉ねぎにはカリウムも豊富に含まれています。
玉ねぎ100g当たりのカリウム含有量は150mgです[18]。
カリウムはミネラルの一つで、大部分が細胞内に存在し細胞内の浸透圧を一定に保つはたらきをしています。
またナトリウムを体外へ排出するはたらきもあり、摂り過ぎた塩分を調節するために役立ちます。
カリウムが不足すると、脱力感や食欲不振、精神障害、不整脈などの原因となることがあります。
カリウムの1日当たりの摂取目標量は、18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です[19]。
カリウムについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
[18] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-8.鉄
玉ねぎに多く含まれる栄養素の一つには鉄もあります。
玉ねぎ100g当たりの鉄含有量は0.3mgです[20]。
鉄はミネラルの一つで、ヒトの体内では70%が赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンに存在し、残りは貯蔵鉄として肝臓や骨髄、筋肉などに含まれます[21]。
鉄不足によりヘモグロビンが減り「鉄欠乏性貧血」を発症すると、集中力の低下や頭痛、食欲不振などの症状が見られることがあります。
また、ミオグロビンの不足では筋力低下や疲労感などの症状が現れることがあります。
鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄があり、ヘム鉄は肉や魚、非ヘム鉄は野菜などに含まれています。
日本人の食事は非ヘム鉄を多く含む傾向にありますが、非ヘム鉄はヘム鉄に比べて体に吸収されにくいとされています。
ただし、非ヘム鉄はヘム鉄と一緒に摂ると吸収されやすくなります。
また、動物性たんぱく質やビタミンCも非ヘム鉄の吸収を助けてくれます。
鉄の1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[22]。
女性は月経がある場合18~49歳で10.5mg、50~64歳で11.0mg、月経がない場合18~64歳で6.5mg、65歳以上で6.0mgです[22]。
鉄についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
[20] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[21] 厚生労働省e-ヘルスネット「鉄」
2-9.銅
玉ねぎには銅も豊富に含まれています。
玉ねぎ100g当たりの銅含有量は0.05mgです[23]。
銅はミネラルの一つで、骨や筋肉、血液に含まれています。
たんぱく質と結合して酸素の運搬などに関わる他、鉄と共に血を作る作用を行う役割も担っています。
銅の1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~74歳で0.9mg、75歳以上で0.8mgです[24]。
女性は18歳以上で0.7mgです[24]。
[23] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
3.玉ねぎに含まれる成分
玉ねぎを切って目が染みるという経験は多くの方がされているのではないでしょうか。
実はその原因となるのが、血液をサラサラにする効果があるといわれる「硫化アリル」という成分です。
この章では、玉ねぎに含まれる健康に役立つといわれる成分について紹介します。
3-1.硫化アリル
硫化アリルは玉ねぎのにおいや辛みの成分で、ねぎやニンニク、ニラなどにも含まれています。
硫化アリルにはビタミンB1の吸収を高めるはたらきがあり、単独では吸収されにくいビタミンB1の体内への取り込みや活性化を助けます。
また血液をサラサラにする効果により、脳梗塞や心筋梗塞の原因となる血液の塊ができるのを予防するといわれています。
他にもコレステロール値を下げる作用や抗菌効果、抗酸化作用などが期待されています。
玉ねぎから硫化アリルを効率良く摂るためにはいくつかポイントがあります。
硫化アリルは加熱により成分が変わるため、効果を期待するなら生で食べるのがおすすめです。
ただし、生の場合は刺激が強いため食べる量には注意してくださいね。
また硫化アリルは水に溶けやすいため、玉ねぎを切ったら水にはさらさずしばらく空気に触れさせてから食べましょう。
しばらく置いている間に玉ねぎの中の酵素が活性化し、効率良く硫化アリルを摂ることができます。
玉ねぎを切る際の目や鼻への刺激を抑えるためには、調理前に十分に冷やしたり切れ味の良い包丁を使ったりすると効果的といわれますので、気になる方は試してみてくださいね。
3-2.ケルセチン
玉ねぎに含まれる成分で、硫化アリルと共に健康への効果が期待されるのがケルセチンです。
ケルセチンは、植物に存在する色素や苦みの成分であるポリフェノールのうち、フラボノイド色素といわれるものの一つです。
ケルセチンには血管をしなやかに保つはたらきがあるといわれており、動脈硬化の予防やコレステロール、血圧の上昇抑制に効果的であると報告されています。
他にも抗酸化作用や抗炎症作用、肥満を防ぐ効果などが期待されています。
ケルセチンには油に溶けやすく水に溶けにくい性質があるため、炒め物など油を使って調理すると効率良く摂ることができます。
またケルセチンには、体内に吸収されにくいというデメリットがあります。
その弱点を改善し、効果的に吸収できるようにつくられたのが「ケルセチン配糖体」です。
ケルセチン配糖体はケルセチンと糖を結合することで水に溶けやすく吸収しやすいようにしたもので、飲み物に入れて手軽に摂ることが可能です。
ケルセチンを毎日手軽に摂りたい方はこちらを試してみるのも良いかもしれませんね。
4.玉ねぎをおいしく食べるポイント
せっかく玉ねぎを食べるならおいしく食べたいですよね。
この章では玉ねぎをおいしく食べるためのポイントについて説明します。
ポイント1 乾燥が十分でずっしりしたものを選ぶ
玉ねぎを選ぶ際には、皮が十分に乾燥してパリッとしたもの、色は濃くつやがあるものを選びましょう。
持ってみてずっしりと重さを感じるというのも大事なポイントです。
裏返して根の部分が小さいものは、食べられる部分が多いのでおすすめです。
上の部分が太いもの、柔らかいものは傷みやすいので避けた方が良いでしょう。
ポイント2 風通しが良く涼しい場所で保管する
玉ねぎを保存する際、丸ごとのものは通気性の良いかごなどに入れて風通しが良く涼しい所へ置きます。
使いかけのものは、水分を拭き取った後ラップでしっかり包み、密封できる袋や容器に入れて早めに食べ切りましょう。
また、玉ねぎは冷凍保存も可能です。
生の場合は、みじん切りしたものを小分けにしてラップをし、密閉できる袋か容器に入れて冷凍します。
じっくり炒めた「あめ色玉ねぎ」を冷凍しておくのも、すぐに使えて便利ですよ。
新玉ねぎの場合は日持ちがしないので、買ってきたらビニール袋に入れて冷蔵庫内で保管し、2~3日で食べ切るようにしましょう[25]。
ポイント3 メニューに合わせて下準備をする
下準備も玉ねぎをおいしく食べるためには大事なポイントです。
生の玉ねぎのシャキシャキ感を活かしたい場合、切った玉ねぎをボールに入れて流水でさらしてからざるにあげて水気を切ります。
そうすると、辛みが抜け爽やかな食感を楽しむことができます。
生の玉ねぎをしんなりさせたい場合には、まず切った玉ねぎを少量の塩でもんでしんなりさせ、ペーパータオルに包みます。
流水でもみ洗いし、ペーパータオルの上から絞って水気を切ります。
また、弱火でじっくり炒めてあめ色玉ねぎにすると、甘みが引き出されおいしくなります。
冷凍しておくといろいろな料理に使えるのでおすすめです。
5.玉ねぎの栄養についてのまとめ
一般的に出回っている玉ねぎの多くは、辛みがあり貯蔵性に優れている黄玉ねぎという種類のものです。
一方、新玉ねぎとは3月から4月ころに出荷される黄玉ねぎや白たまねぎのことで、水分が多くて柔らかく辛みが少ないのが特徴ですが、玉ねぎと栄養成分の違いはありません[26]。
玉ねぎには食物繊維の他、ビタミンB1、ビタミンB6、パントテン酸、葉酸、ビタミンCなどのビタミン類や、カリウム、鉄、銅などのミネラル類が豊富に含まれています。
その他、健康へのさまざまな効果が期待できる硫化アリルやケルセチンなどの成分を含んでいるのも玉ねぎの特徴です。
玉ねぎをおいしくたべるためには、十分に乾燥していて重量感のあるものを選び、風通しの良い場所で保管する、調理の際にはメニューに合わせて下準備をするなどの点に気を付けると良いでしょう。
日々の健康のためにも、身近な野菜である玉ねぎを積極的に取り入れてみてはいかがでしょうか。