「いちごにはどんな栄養素があるのかな?」
いちごは人気の果物ですが、栄養素についてはあまり知らないという方も多いかもしれません。
いちごには食物繊維をはじめ、ビタミン類などの栄養素が豊富に含まれています。
また、いちごには特徴的な成分として、むし歯予防効果があるというキシリトールや抗酸化作用のあるアントシアニンが含まれています。
この記事では、いちごに含まれる栄養素やそのはたらきについて解説します。
おいしいいちごの選び方や保存方法についてもご紹介するのでぜひ参考にしてくださいね。
1.いちごの基礎知識
いちごに含まれる栄養素をご紹介する前に、まずはいちごの基礎知識をご紹介しましょう。
果物として広く親しまれているいちごですが、実は学問的な観点からは野菜に分類されています。
ただし果物と同じように食べられているため、「果実的野菜」とも呼ばれています。
1960年代までは春から初夏が旬でしたが、栽培技術が進んだことから現在では11〜5月頃までおいしいいちごを食べることができます[1]。
いちごの果実は赤い部分ではなく、実は種に見えるつぶつぶの部分です。
赤い部分は「花托」(または「花床」)といって、花を付けている茎の先端が変化したものです。
花托は花びらやめしべ、おしべを支えています。
ダイエット中の方や健康に対する意識の高い方はいちごのカロリーも気になるかもしれませんね。
いちごのカロリーは100g当たり31kcalです[2]。
いちごと主な果物の100g当たりのカロリーと比較した表がこちらです。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
いちご | ||
りんご | ||
うんしゅうみかん | ||
ぶどう | ||
バナナ |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
いちごはりんごやぶどう、バナナなどに比べるとカロリーは低いためダイエット中の方も気軽に食べることができますね。
[1] 独立行政法人農畜産業振興機構「今月の野菜 いちご」
[2] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2.いちごに豊富に含まれる栄養素
「いちごにはどんな栄養素が含まれているのかな?」
誰もが知るいちごですが、どんな栄養素が含まれているかはご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
いちごには食物繊維やビタミン類、ミネラルが豊富に含まれています。
いちご100g当たりに豊富に含まれる栄養素は以下のとおりです。
栄養素 | 含有量 |
---|---|
食物繊維 | |
ビタミンE | |
ナイアシン当量 | |
ビタミンB6 | |
葉酸 | |
パントテン酸 | |
ビタミンC | |
カリウム | |
マグネシウム | |
鉄 | |
銅 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
それではいちごに豊富に含まれる栄養素とそのはたらきを見ていきましょう。
また、成人男女の1日当たりの摂取量の目安もご紹介しますのでぜひ参考にしてくださいね。
[3] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック」
[4] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-1.食物繊維
いちごには食物繊維が豊富に含まれており、100g当たりの含有量は1.4gです[5]。
消化・吸収されずに大腸に達し、便の材料となったりヒトにとって有用な腸内細菌「善玉菌」を増やしたりするはたらきがあるため整腸作用があるといわれています。
また食物繊維には、脂質・糖・ナトリウムを吸着して体外に排出するはたらきもあります。
日本人の食物繊維摂取量の平均は目標量を下回っており、食物繊維を積極的に摂ることが勧められています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、食物繊維の摂取目標量は男性の場合18~64歳で21g以上、65歳以上で20g以上です[6]。
また、女性の場合18~64歳で18g以上、65歳以上で17g以上とされています[6]。
食物繊維についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維は1日にどのくらい摂ればいい?期待できる効果や食材を紹介
[5] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.ビタミンE
いちごにはビタミンEも豊富に含まれています。
100g当たりの含有量は0.4mgです[7]。
ビタミンEは油に溶けやすく水に溶けにくい「脂溶性のビタミン」で、「抗酸化作用」を持つことが知られています。
ビタミンEは、この抗酸化作用によって体内の脂質が酸化するのを防止するはたらきもあります。
ビタミンEの1日当たりの摂取目安量は、男性の場合18~49歳で6.0mg、50~74歳で7.0mg、75歳以上で6.5mgです[8]。
また、女性の場合18~29歳で5.0mg、30~49歳で5.5mg、50~64歳で6.0mg、65歳以上で6.5mgです[8]。
ビタミンEについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンEが多く含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説
[7] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[8] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-3.ナイアシン
ナイアシンもいちごに多く含まれる栄養素です。
100g当たりの含有量は0.5mgです[9]。
ナイアシンは水に溶けやすく油に溶けにくい「水溶性のビタミン」で、ビタミンB群の一種です。
ナイアシンには皮膚や粘膜の健康を保つはたらきがあります。
エネルギーを生み出す過程や脂肪の構成要素である脂肪酸の合成、「ステロイドホルモン」の合成に関わっています。
ナイアシンが欠乏すると、ペラグラという重篤な疾患により皮膚炎・下痢・精神神経障害などの症状を引き起こすことがありますが、先進国での発症は稀だといわれています。
ナイアシンの1日当たりの摂取推奨量は、18~49歳の男性で15mgNE、同じく50~74歳で14mgNE、75歳以上は13mgNEです[10]。
また、女性の摂取推奨量は18~29歳で11mgNE、30~49歳で12mgNE、50~74歳で11mgNE、75歳以上で10mgNEです[10]。
[9] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[10] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-4.ビタミンB6
ビタミンB6もいちごに豊富に含まれるビタミンB群の一種です。
100g当たりの含有量は0.04mgです[11]。
ビタミンB6はたんぱく質、脂質、炭水化物の代謝に補酵素として関わります。
また、ビタミンB6は神経伝達物質の生成やホルモンの調整にも関与しています。
ビタミンB6の欠乏は皮膚炎や食欲不振、動脈硬化の原因となることがあります。
ビタミンB6 の1日当たりの摂取推奨量は、18歳以上の男性で1.4mg、女性で1.1mgです[12]。
ビタミンB6についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
[11] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[12] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-5.葉酸
いちごには葉酸も多く含まれています。
100g当たりの含有量は90μgです[13]。
葉酸は細胞が増殖する際に必要なDNAの合成に深く関わる栄養素です。
またたんぱく質の構成要素である「アミノ酸」の代謝やたんぱく質の合成にも関わっています。
不足すると貧血を引き起こし、動悸(どうき)や息切れ、疲労感などの症状が現れる場合があります。
また、胎児の細胞増殖が盛んな妊娠初期に葉酸が欠乏すると、胎児の神経管閉鎖障害の発症率が高くなります。
厚生労働省は妊娠の1カ月以上前から妊娠3カ月までの間に1日400μgの葉酸を栄養補助食品から摂ることで、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減できる可能性があるとしています[14]。
葉酸の1日当たりの摂取推奨量は、18歳以上の男女共に240μgです[15]。
葉酸についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
[13] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[14] 厚生労働省e-ヘルスネット「葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果」
[15] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-6.パントテン酸
いちごにはパントテン酸が豊富に含まれています。
100g当たりの含有量は0.33mgです[16]。
パントテン酸は水溶性ビタミンの一種で、脂肪酸や糖の代謝に関わっています。
パントテン酸という名称はギリシャ語の「あらゆるところにある酸」という意味の言葉に由来しています。
さまざまな食品に含まれているため、通常の食事をしている方は不足することはほぼありません。
男性の1日当たりの摂取目安量は18~49歳で5mg、50歳以上で6mgです[17]。
また18歳以上の女性の摂取目安量は5mgです[17]。
[16] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[17] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-7.ビタミンC
ビタミンCもいちごに豊富に含まれる栄養素です。
100g当たりの含有量は62mgです[18]。
ビタミンCの主なはたらきは、皮膚や腱、軟骨などの材料となるたんぱく質「コラーゲン」をつくることです。
また抗酸化物質として重要な役割を持つ他、消化管で鉄の吸収を促す役割も担っています。
ビタミンCの不足は倦怠(けんたい)感、疲労感、気力低下といった症状の原因となることがあります。
ビタミンCの1日当たりの摂取推奨量は、男女共に18歳以上で100mgです[19]。
ビタミンCについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンCの美容・健康効果は?目標摂取量と豊富に含まれている食品
[18] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[19] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-8.カリウム
いちごにはカリウムも多く含まれています。
100g当たりの含有量は170mgです[20]。
カリウムはミネラルの一種で、ヒトの体内ではほとんどが細胞内に存在し細胞内液の浸透圧を一定に保つはたらきをしています。
また、カリウムにはナトリウムを排出するはたらきがあり、摂り過ぎた塩分を調節する重要な役割も担っています。
カリウムが不足すると、脱力感・食欲不振・筋無力症・精神障害・不整脈などの症状が現れることがあるため注意が必要です。
一方、腎機能が低下している場合にはカリウムの摂取量に注意が必要です。
腎不全などが原因で腎機能が低下している状態ではカリウムがうまく排出されずに、高カリウム血症になり心停止を引き起こす可能性もあります。
カリウムの1日当たりの摂取目標量は、18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です[21]。
カリウムについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
[20] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[21] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-9.マグネシウム
いちごにはマグネシウムも豊富に含まれています。
100g当たりの含有量は13mgです[22]。
マグネシウムはミネラルの一種で、体内では主に骨や歯に含まれ、残りは筋肉や脳、神経に存在しています。
300種類以上の酵素のはたらきを助ける他、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温や血圧の調整などにも関わっています[23]。
マグネシウムが不足すると、骨粗しょう症、神経疾患、精神疾患、不整脈、心疾患、筋肉収縮異常などが起こることがありますが、通常の食事をしている場合、不足の心配はほぼないといわれています。
マグネシウムの1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~29歳で340mg、30~64歳で370mg、65~74歳で350mg、75歳以上で320mgです[24]。
女性は18~29歳で270mg、30~64歳で290mg、65~74歳で280mg、75歳以上で260mgです[24]。
マグネシウムについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説
[22] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[23] 厚生労働省e-ヘルスネット「マグネシウム」
[24] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-10.鉄
鉄もいちごに豊富に含まれている栄養素の一つです。
100g当たりの含有量は0.3mgです[25]。
鉄はミネラルの一種で、体内では主に赤血球や筋肉に存在し、残りは肝臓や骨髄、筋肉などに蓄えられています。
鉄は酸素の運搬や酵素の構成要素としても重要な役割を担っています。
このため鉄が不足すると貧血を招き運動機能や免疫機能が低下する場合があります。
特に月経のある女性や妊産婦、乳児の場合は不足しないように十分な摂取が必要です。
鉄の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[26]。
女性は月経がある場合18~49歳で10.5mg、50~64歳で11.0mg、月経がない場合18~64歳で6.5mg、65歳以上で6.0mgです[26]。
鉄についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
[25] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[26] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-11.銅
いちごには銅も豊富に含まれています。
100g当たりの含有量は0.05mgです[27]。
銅はヒトの体内では主に筋肉や骨、肝臓に存在するミネラルで、エネルギーの生成や鉄の代謝、神経伝達物質の産生、活性酸素の除去などに関わっています。
通常の食生活で銅が欠乏することはほとんどありません。
しかし不足した場合には鉄を投与しても改善しない貧血や成長障害、白血球の減少、骨粗しょう症、免疫機能の低下、コレステロールや糖の代謝異常などが見られることがあります。
銅の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~74歳で0.9mg、75歳以上で0.8mgです[28]。
女性の場合18歳以上で0.7mgです[28]。
[27] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[28] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3.いちごに含まれる成分
いちごにはキシリトールとポリフェノールという成分も含まれています。
それではそれぞれの成分のはたらきについてみていきましょう。
3-1.キシリトール
いちごにはキシリトールという成分が含まれています。
キシリトールにはむし歯を予防する効果が期待されています。
キシリトールはカロリーは低いものの、砂糖に似た甘みを持つ天然の甘味料です。
むし歯は口内の細菌であるミュータンス菌が糖を分解してつくる酸によって起こります。
しかしキシリトールはミュータンス菌に分解されず、唾液の分泌や歯の再石灰化を促すはたらきがあります。
なお、キシリトールは熱を吸収する際の反応が大きいため、この反応による清涼感も特徴です。
3-2.アントシアニン
いちごにはポリフェノールの一種であるアントシアニンという成分も含まれています。
いちごの鮮やかな赤色はこのアントシアニンによるものです。
アントシアニンは眼精疲労を予防したり目のはたらきを高めたりする効果があるといわれています。
また強い抗酸化作用があるため、アンチエイジング効果や生活習慣病予防の効果も期待できます。
[29] 公益財団法人長寿科学振興財団「ポリフェノールの種類と効果と摂取方法」
4.いちごの選び方と保存方法
「おいしいいちごの見分け方を知りたい」
「おいしさを損なわずに保存するにはどうしたら良いんだろう?」
せっかくいちごを食べるなら、おいしく食べたいものですよね。
いちごは痛みやすいため、新鮮なものを選んで保存方法を工夫すると良いでしょう。
ここからはいちごの選び方と保存方法について解説します。
4-1.いちごの選び方
おいしいいちごは全体的に色鮮やかでハリがあります。
また形がしっかりとしており、傷がないものを選ぶと良いでしょう。
ヘタの緑色が濃く、みずみずしいものは摘んでからあまり時間がたっていないものなので、新鮮かどうかを見分ける基準にしてみてくださいね。
4-2.いちごの保存方法
いちごはやわらかく痛みやすいため、購入から数日中に食べ切りましょう。
いちごに豊富に含まれるビタミンCが水に溶け出すのを防ぐために、いちごを保存する際は洗わずに冷蔵庫で保存してください。
食べる前もヘタをつけたまま洗うことで、ビタミンCが減少しにくくなります。
長期保存したい場合は、洗った後にヘタと水気を取ってから冷凍しましょう。
バットなどに1粒ずつ離して並べ冷凍した後、ポリ袋に入れるようにすると風味が損なわれにくくなります。
5.いちごの栄養についてのまとめ
いちごは野菜に分類されますが、果物と同じように食べられていることから「果実的野菜」と呼ばれています。
いちごのカロリーは100g当たり31kcalです[30]。
いちごには食物繊維、ビタミンE、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、パントテン酸、ビタミンC、カリウム、マグネシウム、鉄、銅が豊富に含まれています。
またいちごにはキシリトールやアントシアニンといったヒトの体に有用な成分も含まれています。
いちごを選ぶ際は全体的に色鮮やかでハリがあり、傷のないものを選ぶと良いでしょう。
いちごは傷つきやすいため数日中に食べ切ることが望ましいといえますが、保存する場合は洗わずに冷蔵庫へ入れるか、洗って水気を取った後に冷凍しましょう。
[30] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」