「自律神経失調症とはどんな病気だろう?」
「最近調子が悪いのは自律神経失調症なのかな?」
自律神経失調症という言葉を見聞きしたことはあっても、どんな病気なのか詳しく知らないという方は多いのではないでしょうか。
自律神経は全身に張り巡らされており、体の機能を最適に保っています。
自律神経失調症とは自律神経のバランスが乱れることで起こるさまざまな不調の総称です。
体調不良の原因が自律神経失調症なのではないかと気になっている方もいるかもしれません。
この記事では自律神経失調症の原因や症状、分類、治療法について解説します。
自律神経失調症の症状を改善するためのポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.自律神経失調症とは
「自律神経失調症ってどんな病気なのかな?」
自律神経失調症とは自律神経の乱れによってさまざまな不調が引き起こされている状態のことです。
自律神経とは意思とは関係なくはたらき、呼吸や心拍、体温、血圧、消化など生命維持に欠かせない機能を調整する神経のことです。
交感神経と副交感神経に分けられ、それぞれが相反するはたらきをしています。
交感神経は運動しているとき、興奮しているとき、緊張しているとき、ストレスを感じているときなどにはたらきます。
一方、副交感神経は眠ったり休んだりしているとき、食事をしているとき、リラックスしているときなどにはたらきます。
自律神経は交感神経と副交感神経がバランス良くはたらくことで体を最適な状態に保っています。
しかし何らかの原因でこれらの神経のバランスが乱れると、心身にさまざまな不調が現れます。
これが自律神経失調症です。
ただし自律神経失調症という病名は正式なものではなく、明確な診断基準は存在しません。
検査をしても身体的な異常が見られなかった場合、自律神経失調症と診断されることがあります。
【関連情報】 「自律神経とは何?乱れる原因、症状とバランスを整えるポイントを解説」についての記事はこちら
1-1.自律神経失調症の原因
「自律神経失調症の原因って何だろう?」
自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで起こります。
自律神経のバランスが乱れる原因として、ストレスや不規則な生活習慣などが考えられます。
仕事や人間関係の悩みなどの精神的なストレス、騒音や暑さ、寒さといった身体的なストレスを過剰に受けると自律神経の乱れを引き起こします。
また睡眠不足や昼夜逆転など、不規則な生活を続けることも自律神経に悪影響を及ぼします。
さらに性周期によるホルモンの乱れや本人の生まれつきの性格も自律神経の乱れに影響します。
不快な症状によって物事がスムーズに進まないことが新たなストレスになり、症状を悪化させることもあります。
1-2.自律神経失調症の症状
「自律神経失調症になるとどんな症状が現れるのかな?」
自律神経は全身にくまなく張り巡らされて内臓や器官のはたらきに関わるため、バランスが乱れることによってさまざまな症状が現れます。
自律神経失調症の症状には動悸(どうき)や目まい、発汗、火照り、頭痛、腹痛、下痢、便秘、吐き気、食欲不振、倦怠(けんたい)感などがあります。
体に不調が出ると、イライラや不安感、気分の落ち込み、情緒不安定など精神的な症状が現れることもあります。
自律神経失調症の症状は人によってさまざまで、同時に複数の症状が現れることもあれば、時間経過とともに症状が変わっていくこともあります。
また症状が一時的ではなく慢性的に現れることも自律神経失調症の特徴です。
2.自律神経失調症の分類
自律神経失調症は症状の種類や程度によって、さまざまなタイプに分類されます。
この章では自律神経失調症の種類とそれぞれの特徴について解説します。
2-1.心身症型自律神経失調症
心身症型自律神経失調症は自律神経失調症のなかでも最も多く見られるタイプです。
日常生活のストレスや疲労をため込むことが原因で発症するといわれています。
心と体の両方に症状が現れるのが特徴です。
2-2.神経症型自律神経失調症
神経症型自律神経失調症は心理的なストレスが原因で発症する自律神経失調症です。
神経質で自分の体調の変化に敏感な方に多く見られるといわれています。
精神状態が体に影響しやすく、日によって症状があったりなかったりします。
2-3.抗うつ型自律神経失調症
抗うつ型自律神経失調症は慢性的なストレスによるうつ症状によって発症する自律神経失調症です。
心身症型自律神経失調症が進行すると抗うつ型自律神経失調症になると考えられています。
自律神経失調症の症状に加え、落ち込んだりやる気が出なかったりといった症状が現れます。
抗うつ型自律神経失調症は真面目で責任感が強い人に多く見られるといわれています。
2-4.本態性型自律神経失調症
本態性型自律神経失調症は生まれつき自律神経が乱れやすい体質の人に起こる自律神経失調症です。
ストレスなどの原因があって発症するわけではないため、検査をしても異常は見られません。
本態性型自律神経失調症は低血圧や虚弱体質、体力に自信がない人などに多い傾向があります。
3.自律神経失調症の治療法
「自律神経失調症の治療にはどんなものがあるのかな?」
自律神経失調症の治療法には、種類や症状に合わせてさまざまな治療法が用いられます。
この章では自律神経失調症の治療法について解説します。
3-1.薬物療法
自律神経失調症の治療として薬物療法が選択されることがあります。
薬物療法では症状に合わせて抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などが処方されます。
これにより自律神経失調症のつらい症状を和らげ、さらなる悪化を防ぎます。
自律神経失調症は交感神経が過剰にはたらいている状態が多いため、薬の服用により交感神経のはたらきを抑制することがポイントとなります。
3-2.心理療法
自律神経失調症の緩和のために心理療法も有効です。
心理療法ではカウンセリングなどによりストレスの原因を探り、自分自身で問題に気付けるようにします。
ストレスを軽減し自律神経のバランスを整える効果が期待できます。
3-3.生活習慣の改善
自律神経失調症の緩和には生活習慣の改善も大切です。
不規則な生活を続けていると交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、リラックスできるような場面でも交感神経が優位となり緊張状態のままになってしまいます。
睡眠不足や過労が見られる場合は十分な休息や睡眠を確保するなど生活習慣の見直しが必要です。
また自律神経失調症の改善のために規則正しい食生活や適度な運動も欠かせません。
3-4.代替療法
自律神経失調症の改善にはアロマセラピーやヨガ、マッサージなどの代替療法も有効です。
代替療法でリラックスすることで自律神経が整い、症状の軽減につながるといわれています。
4.自律神経失調症を改善するためのポイント
「自律神経失調症は自分で改善できるのかな?」
自律神経失調症を改善するには生活習慣を修正することとストレスと上手に付き合うことが重要です。
この章では、自宅でできる自律神経失調症改善のポイントを解説します。
ポイント1 睡眠を十分にとる
自律神経失調症を改善するために睡眠を十分にとりましょう。
睡眠不足が続くと自律神経のバランスが乱れやすくなります。
最適な睡眠時間は個人差があるものの、少なくとも6時間以上を確保すると良いとされています[1]。
良質な睡眠は副交感神経を優位にさせ、体の回復を助けます。
睡眠のリズムを乱すブルーライトを発するスマートフォンやパソコンを就寝前に見ないようにする、リラックスできる環境をつくるなど工夫して、良質な睡眠をとりましょう。
ぐっすり眠るためのポイントを知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
睡眠は時間だけでなく質も重要!ぐっすり眠るための7つの秘訣とは?
[1] 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
ポイント2 規則正しい生活を送る
自律神経失調症を改善するためには規則正しい生活を送ることが大切です。
不規則な生活や夜ふかしが続くと交感神経と副交感神経のバランスが崩れやすくなります。
起床時間や睡眠時間をなるべく決まった時間にして、規則正しい生活を送りましょう。
朝起きて太陽の光を浴びると体内時計がリセットされ、睡眠のリズムが整いますよ。
ポイント3 適度な運動を行う
自律神経失調症の改善のために適度な運動を行うことも有効です。
運動不足により血流が悪くなると自律神経のバランスが乱れます。
適度な運動をすると交感神経がはたらき血管が収縮しますが、運動後には血管が拡張して血液の流れが良くなります。
血管の収縮と拡張によって自律神経のはたらきにメリハリがつき、バランスが整いやすくなります。
特にウォーキングやジョギングのような有酸素運動がおすすめです。
また寝る前は激しい運動は控え、深呼吸をしながらゆっくりストレッチしましょう。
副交感神経が優位になってリラックスでき、睡眠の質の向上も期待できますよ。
有酸素運動の効果やおすすめの運動について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
有酸素運動の8つの効果とは?おすすめの運動や効果を高めるコツ
ポイント4 栄養バランスの取れた食事を摂る
自律神経失調症を改善するために、栄養バランスの取れた食事を摂りましょう。
栄養バランスが偏った食生活が続くと自律神経が乱れる原因になります。
炭水化物やたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をしっかり摂取することが大切です。
また腸内環境を整えることで自律神経のバランスが整いやすくなります。
納豆やヨーグルトなどの発酵食品や、食物繊維を多く含むごぼうやきのこ類、海藻類を積極的に摂取しましょう。
栄養バランスの取れた食事について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
栄養バランスの取れた食事とは?主食・主菜・副菜のポイントを紹介
ポイント5 入浴する
自律神経失調症を改善するため入浴がおすすめです。
自律神経失調症では交感神経がはたらき過ぎる傾向があります。
入浴すると血管が拡張して血行が良くなり、副交感神経が優位になります。
自律神経を整えるためにゆっくり湯船につかってくださいね。
ポイント6 趣味を楽しむ
自律神経失調症の改善には趣味を楽しむことも大切です。
ストレスがたまると自律神経のバランスが乱れてしまいます。
趣味を楽しむことでリラックスでき、副交感神経が優位になって自律神経が整いやすくなります。
スポーツや友人とのおしゃべり、音楽鑑賞、ペットとの触れ合いなど、自分に合った趣味を生活に取り入れてくださいね。
ストレス発散に効果的な方法を知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
ストレス発散に効果的な方法は?手軽にスッキリできるおすすめ解消法
5.不調が続いたら医療機関を受診しよう
自律神経失調症による不調が続く場合は医療機関を受診しましょう。
自律神経の乱れによる症状だと思っていても、他の病気が隠れている可能性があります。
自律神経失調症の症状にはさまざまなものがあるため、何科を受診すれば良いか悩む方もいらっしゃるかもしれません。
まずは最もつらい症状に合わせ受診する科を選びましょう。
体を検査して異常が見つからない場合は心療内科の受診も検討してくださいね。
6.自律神経失調症についてのまとめ
自律神経失調症とは自律神経の乱れによって引き起こされるさまざまな不調の総称です。
自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが乱れることで起こります。
仕事や人間関係の悩みなどの精神的なストレス、騒音や暑さ、寒さといった身体的なストレスを過剰に受けると自律神経の乱れを引き起こします。
自律神経失調症の症状には動悸や目まい、発汗、火照りなどの身体的なものから、イライラや不安感、気分の落ち込み、情緒不安定などの精神的ものまでさまざまなものがあります。
自律神経失調症で最も多いのは、ストレスをため込むことが原因となり起こる心身症型自律神経失調症です。
その他にも神経型や抗うつ型、本能性型などさまざまなタイプの自律神経失調症があります。
自律神経失調症の治療として、症状に合わせて薬物療法や心理療法などが行われます。
症状を改善するためには生活習慣の改善が重要です。
睡眠を十分にとり、規則正しい生活や適度な運動を心掛けましょう。
ゆっくり入浴することや趣味を楽しむことも自律神経を整えるために大切です。
自律神経失調症の症状がつらい場合は、無理せず病院を受診してくださいね。
この記事を参考に自律神経失調症について理解を深め、生活習慣の改善とストレスの解消を意識した生活を送ってくださいね。