食後の血圧変化について、「食後低血圧」の原因とできること

2023年05月04日

2024年07月03日

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食事をする女性

「食後になるとめまいがすることがある」
「食後は横にならないと気持ち悪くなる」

このような症状に悩まされていませんか?食後にめまいや気持ち悪さを感じる場合、もしかしたら「食後低血圧」になっているかもしれません。食事を摂る度にめまいがしたり気持ち悪くなったりするのはつらいですよね。

食後低血圧は自分で簡単に対策ができます。今回は食後低血圧の対策方法や食後の血圧変化について詳しく見ていきましょう。

1.通常の食後の血圧変化について

食事をする女性

食後は、食べたものを消化するために血液が消化管に集中します。このとき、脈拍や心拍出量が増加させて血圧を維持します。そのため、通常であれば、食後に血圧が急激に変化することはありません。

【関連情報】 「血圧が低いとどんな症状が出る?低血圧の原因と自分でできる対処法」についての記事はこちら

2.インスリン抵抗性がある場合に「食後高血圧」になると考えられている

まれに、食後に血圧が上がる「食後高血圧」になる方もいます。食後の血圧異常を観察した研究では、食後の血圧上昇の要因としてインスリン抵抗性が認められました。

インスリン抵抗性とは、カロリーの過剰摂取や運動不足、肥満などが原因で食後高血糖が継続する状態です。インスリン抵抗性があると、血液中のインスリン値が上昇して高インスリン血症を生じ、糖尿病に進展します。また、脳や心臓に動脈硬化を起こしやすくなることが分かっています。そのため、食後高血圧が見られる方は動脈硬化のリスクが高いと考えられるのです。

動脈硬化は、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患の原因となります。このような命に関わる疾患につながる恐れがあるため、軽視はできません。

また、糖尿病を患っている方の約40%が高血圧を合併していると言われています[1]。

実際に、糖尿病と高血圧の関係について調べた研究では、食後高血糖の方にα-グルコシダーゼ阻害薬を服用してもらうことで、高血圧の発症が抑えられることが分かりました。α-グルコシダーゼ阻害薬は、糖の吸収を阻害して食後の血糖値上昇を抑える薬です。

このことから、血糖値と高血圧は大きく関係していることが考えられます。血圧が血糖値と関係するなんて、驚きですね。

高血圧と糖尿病の怖いところは、自覚症状がないうちに合併症を引き起こす点です。毎年検診を受けて、血圧や血糖値の数値を把握することが大切です。

[1] 座間味義人,高取真吾,岩谷有希子,山脇康佑,宮下智子,藪前奈々,高山房子,見尾光庸,川崎博己「食後高血糖が血管反応性に及ぼす影響」薬学雑誌 128(3)419-424(2008)

3.食後のめまいやふらつきは「食後低血圧」かも

頭痛の女性

高血圧に自覚症状はありませんが、低血圧の場合はさまざまな不調が現れることがあります。
食後に次のような症状が出る場合は、「食後低血圧」の可能性があるかもしれません。

  • だるさ
  • 胃もたれ
  • 吐き気
  • 眠気
  • 立ちくらみ
  • 失神

このような症状が見られる場合は、食前と食後に血圧を測定して血圧の変動をチェックしてみましょう。

食後低血圧は、糖尿病の方や高齢者、自律神経の働きが乱れている方に起こりやすいといわれています。

通常であれば食事によって血液が消化管に集中しても、交感神経が働くので血圧が大きく変動することはありません。

しかし、自律神経の働きが乱れていると、脈拍や心拍出数を調整する機能が正常に働かなくなってしまうのです。その結果、食後低血圧を引き起こすと考えられています。

食後低血圧は若年者よりも高齢者に見られやすいことが特徴です。高齢者の3人に1人は食後低血圧だといわれています[2]。

また、普段寝たきりで生活している方が体を起こして食事をしたときも食後低血圧になりやすいので注意しましょう。

[2] 一般社団法人 愛知県薬剤師会「4.低血圧」

4.食後低血圧かも?と思ったら

頭痛の女性

食後にめまいや吐き気、立ちくらみなどがある場合は、食後低血圧の可能性があります。自覚症状のある方は、食後はあまり動き回らずに横になって休みましょう。

また、血圧が下がりにくいように対策をするのも効果的です。食後低血圧は日常生活で予防できます。ここでは五つの予防法を見ていきましょう。

4-1.一度の食事量を減らして回数を増やす

食後低血圧が気になる場合は、1回で食べる食事の量を減らしてみてください。食後は食べたものを消化・吸収するために血液が消化器官に集まり、脳への血流が減少します。食事量を減らして食事の回数を増やすことで、食後低血圧の予防になります。

ちなみに、食後は5リットルある全身の血液のうち、1.5リットルほどが胃や腸に集まるといわれています [3]。これだけの血液が集まるので、全身の血液量が減ってしまうのです。

また、高血圧の高齢者は食後低血圧を併発しやすいことが分かっています。高血圧の場合は、減塩や量など、食生活の見直しも同時に行いましょう。

[3] 一般社団法人 兵庫県薬剤師会「高齢者の低血圧」

4-2.水分を多く摂る

心房細動患者や高齢者において、食前の飲水により1時間以上にわたって血圧が上がったという試験結果があります。飲水で血圧が上がる具体的な仕組みは不明です。しかし、胃血管反射で交感神経機能が活発になることや潜在的脱水が改善されることなどが要因と推測されています。

4-3.塩分を適度に摂取する(高血圧でない場合のみ)

水分とあわせて、適度な塩分を摂取するのもおすすめです。塩分を摂取すると、ナトリウムの働きにより血液中に水分が集まるため、血圧を上げることが可能です。

ただし、日常的に塩分を摂り過ぎると、高血圧になることもあるので注意してください。普段は血圧が高く、食後だけ下がりやすいという方も塩分は控えましょう。

1日に摂取する塩分量は、1日6g未満が推奨されています [4]。普段から低血圧で立ちくらみなどの症状がみられる場合は、多めの塩分摂取が良いとされることもありますが、基本的に減塩による健康障害は起こりません。塩分を摂取する際は、6g未満になるよう調整することをおすすめします。

[4] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧の予防のためにも食塩制限を」

4-4.食後にカフェインを摂る

カフェインには、交感神経を刺激する働きがあります。食後低血圧の方は、食後に交感神経がうまく働かず血圧が下がってしまう方が少なくありません。

そのため、食後にカフェインを摂取することで血圧を安定させる効果が期待できます。コーヒー、お茶などはカフェインを多く含んでいるのでおすすめです。

ただし、カフェインには覚醒作用もあります。寝る前に飲むと眠れなくなることもあるので、夕方以降はあまり摂らないようにしましょう。

4-5.動作はゆっくりと行う

食後低血圧の症状は、立ち上がったときや体を動かしたときに急激に血圧が下がる起立性低血圧の方によくみられます。

食後すぐに立って動くのはできるだけ控え、横になるかゆっくりと動作を行うようにしてください。睡眠時は頭部をやや高くしておくことをおすすめします。

横になった状態から起き上がるときは、急に体を起こさず足首を回して血の巡りを良くすることで、めまいや失神などの症状が起こりにくくなるといわれています。

5.食後の血圧変化についてのまとめ

食後低血圧は、食後に胃や腸に血液が集まることで血圧が下がってしまうことです。糖尿病の方や高齢者、自律神経の働きが乱れている方でなりやすいといわれています。食後は全身にある5リットルの血液のうち、1.5リットルが消化管に集まるため全身の血液が不足しやすいのです。

食後低血圧が疑われる場合は水分を多めに摂り、塩分を適度に摂取しましょう。食後にカフェインを摂ったり体をゆっくり動かしたりするのも効果的です。自宅でできる対処法を行っても改善されない場合は、医療機関を受診して治療を受けましょう。

この記事の監修者

小鷹 悠二
小鷹 悠二
おだかクリニック
副院長

【経歴】
総合病院・大学病院での勤務を経て、2018年よりおだかクリニックの副院長として診療・経営にあたる。専門の循環器疾患(虚血性心疾患、心不全、不整脈など)はもちろんのこと、高血圧や高脂血症、糖尿病等の生活習慣病や内科疾患全般の診療に従事。現在は、医療コンサルト・アドバイザー業務や、ライティング業務などにもあたっている。

【おだかクリニックのHP情報】
»医療法人日和会 おだかクリニック

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