「お酒は好きだけど、体には良くないし禁酒した方が良いのかな……」
「自分で禁酒を成功させられる方法があるなら知りたい!」
普段から好んでお酒を飲んでいる方のなかには、健康への懸念を感じることもあるのではないでしょうか。
自分ではお酒を飲む習慣をなかなかやめられないという方もいるかもしれません。
今回は「禁酒」のほか、「断酒」「節酒」といったアルコール制限の方法と、禁酒の効果について解説します。
加えて、無理なく禁酒を成功させる方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
1.「禁酒」「断酒」「節酒」はどれが良いの?
アルコールの制限方法としては、「禁酒」以外にも、「断酒」や「節酒」というものがあります。
それぞれに適した状況があるため、まず自分がどれを実行した方が良いかを把握することから始めてみましょう。
【関連情報】 「アルコールとは?体への影響や健康的なお酒の飲み方、注意点を解説」についての記事はこちら
1-1.禁酒:飲酒による健康問題が発生しているときに実行する
禁酒は、飲酒による健康問題が発生しているときに、一定期間飲酒を止めることです。
例えば、脂肪肝を指摘された場合に2週間の禁酒を実行することで、脂肪肝が改善され体調が良くなるケースがあります。
肝機能の指標とされ、アルコール性肝機能障害や肝硬変などの早期発見に役立つγ-GTP値の低下も期待できます。
そのほか、高血圧や糖尿病、メタボリックシンドローム、睡眠時無呼吸症候群などの疑いがある場合にも、禁酒によって改善することがあります[1]。
このような健康問題がある場合は、医師の指導を受けながら治療の一環として禁酒を進めることになります。
[1] 厚生労働省「アルコールに関連した医学的問題 」
1-2.断酒:アルコール依存症から回復する唯一の方法
断酒は、アルコール依存症から回復するために不可欠な唯一の方法です。今後継続的に自らの意志で飲酒をやめることを意味します[2]。
アルコール依存症は、長期間過度な飲酒が続いた結果、身体的・精神的な依存が生じる病態であり、治療が必要な精神疾患です[3]。
断酒はその治療の中核になるものといえます。
アルコール依存症の状態でお酒を断つと手指の震えをはじめとする離脱症状が現れることがあるため、断酒の過程では専門家の指導やサポートが不可欠です。
1-3.節酒:体調管理のために実施する
節酒は体調管理や飲み過ぎたときに、お酒の量を制限・調整する方法です。
例えば、使用するグラスのサイズを一回り小さくすることで、飲むお酒の量をコントロールすることが可能です。
「飲むのは小さなグラス1杯のみ」と決めておくことで、適切な量を守りやすくなります。
また週に2日程度、お酒を摂取しない休肝日を設定したり軽い運動をする日を決めたりすることも効果的です。
節酒は、アルコール依存症ではない場合に適した方法です。
自身の体調や目標に合わせて節酒の方法を工夫することで、健康的に飲酒を楽しめます。
2.禁酒のさまざまな効果を知ろう
禁酒をすると、どのような効果があるのでしょうか。自分にとって一つでもメリットに感じられることがあるか、見ていきましょう。
- 肝臓の検査結果が正常,または改善する
- 中性脂肪の値が下がる
- 血圧が下がる
- 集中力が上がる
- よく眠れるようになる
- 金銭に余裕が出てくる
公益財団法人 健康・体力づくり事業財団「お酒」をもとに執筆者作成
肝臓や中性脂肪の値の改善、血圧が下がるなどの健康面や、集中力・睡眠の質の向上などの生活に関わることなど、幅広く効果が見受けられます。
禁酒によって金銭面に余裕が出てくるため、禁酒が成功したときのご褒美を用意しておくと、飲酒したい気持ちに打ち勝ちやすくなるはずです。
3.無理なく禁酒を成功させるポイント
禁酒を成功させるにあたっては大きな壁を感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、禁酒は自身の健康や生活に良い影響をもたらす重要なステップです。
ここでは、無理なく禁酒を成功させるためのポイントを紹介します。
3-1.お酒以外の楽しみを見つける
禁酒を成功させるには、お酒以外の楽しみを見つけることをおすすめします。
飲酒はストレス解消の手段となることがありますが、実は逆効果となる可能性もあるのです。
実際に、アルコールをどれだけ飲んでも、ストレスの原因を忘れずに覚えていたという経験をしたことがある方もいるかもしれません。
そこで禁酒中には、お酒以外のストレス発散方法を見つけることが重要です。
定期的な運動や趣味に没頭したり、登山、読書、料理などの新しい趣味を見つけたりするのも良いでしょう。
3-2.お酒を飲まないことを周囲に伝える
付き合いでどうしても飲酒の機会が多くなってしまう方は、お酒の席に誘われたとき、お酒を飲まないようにしていると事前に伝えておくことが大切です。
曖昧にせずはっきり伝えておくことで、無理な誘いを避けることができるでしょう。
断りにくい場合には、以下のようにやや遠回しに伝えるのもおすすめです。
- 自転車もしくは車で来ているから飲めない
- 病気の治療中でドクターストップがかかっている
- 体質的にお酒を受け付けない
もし飲酒しないことが難しい場合には、飲み会自体に参加しないのも手段の一つです。
3-3.飲酒のきっかけを作らない
飲酒のきっかけがなければ、飲酒したい気持ちが起こりにくくなって禁酒しやすくなります。
自宅にお酒があると誘惑に駆られてしまう可能性があるため、禁酒を決めたときにはお酒を片付けましょう。
また、お酒を飲む場所に近づかないことも得策です。
居酒屋に行くとつい手が伸びてしまう方は、禁酒していることを周囲に伝えて、自分にお酒を進めないでほしいことや、できるだけ自分の近くで飲まないでほしいことを伝えてみましょう。
また付き合いの場合でも、お酒を飲まない友人と一緒にお酒がない場で外食することを習慣にすると、禁酒を続けやすいかもしれません。
誘惑をうまく回避し、新しい生活スタイルを構築することが重要です。
3-4.飲酒に対する考え方を変える
「飲酒は1日の楽しみ」「お酒はリフレッシュやストレス発散になる」などの考え方を改めましょう。
例えば、飲酒を止めることによって出費を節約できるメリットがあります。禁酒によって生まれる経済的な余裕は、新たな楽しみの資金として活用できるはずです。
また、過去の飲酒による失敗や、家族や周囲の方に与えた影響を振り返りましょう。
飲酒がもたらす悪影響を再認識することで、モチベーションを高めることができます。
このように飲酒に対する考え方を根本から変えることで飲みたい気持ちが起こりにくくなり、禁酒の長期的な成功に期待できるでしょう。
4.「アルコール依存症かも?」と思ったら専門医療機関に相談しよう
「アルコール依存症かも?」と感じたら、専門医療機関に相談しましょう。
アルコールへの依存度は、世界保健機関(WHO)がスポンサーになり作成されたスクリーニングテストでセルフチェックすることが可能です。
以下の厚生労働省のページにも掲載されているので、気になる方はチェックしてみてください。
アルコール依存症からの回復にはお酒を断つ必要がありますが、自分の意思のみでの克服が難しく、専門家の支援を受けることが必要な場合があります。
まずは専門の医師や心理カウンセラーに相談することで、個別に適切な診断や治療を受けましょう。
一人で治療を受けるのが難しい場合には、断酒会などの自助グループへの参加も検討してみてください。
ほかの人々との共有や助け合いは、禁酒を続けるための力となるはずです[4]。
5.禁酒の効果と方法についてのまとめ
今回は、「禁酒」「断酒」「節酒」の違いや、禁酒の効果、成功のポイント、そしてアルコール依存症と感じたときの対処について紹介しました。
禁酒は、肝臓や全身の健康改善、経済的余裕などのさまざまなメリットが挙げられます。
アルコール依存症に苦しむ場合は、専門医療機関や自助グループを利用しましょう。
自身の健康や生活の質を向上させるために、禁酒を検討する価値は十分にあります。
その過程で新しい楽しみを発見し、健康的な日常を築いてください。
この記事の監修者
内科認定医・がん治療認定医
【経歴】
国立大学医学部医学科卒業後、公立病院にて初期研修の2年を終了後、3年目からはがん治療を専門としながら幅広く内科疾患の診療に従事。治療が必要となる前の生活習慣の改善、また病気についての正しい知識が大事であることを実感し、病気についての執筆活動にもあたっている。