「自分と同年代の血圧の平均値はどれくらいなのかな?」
健康診断などで測定した血圧の値を見て、同世代と比べて高いのか、それとも低いのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
また、血圧の正常値や高血圧の基準値はどのくらいなのか、もし高血圧と診断された場合はどのように改善したら良いのかも気になるところですよね。
この記事では血圧の平均値を年代別、男女別に紹介します。
ただし年代や性別にかかわらず、血圧の基準値は一定です。
そのため同年代の平均値を目標にするのではなく、血圧を正常な範囲内に保つことが重要となります。
また、高血圧の基準や血圧を正常に保つためのコツも解説するため、ぜひ参考になさってくださいね。
1.血圧とは
「そもそも血圧って何だろう?」
「血圧ってどういう仕組みで決まっているのかな?」
このような疑問を感じている方もいらっしゃるでしょう。
まずは、血圧についての基礎知識を確認していきましょう。
1-1.血圧の基礎知識
血圧とは心臓から押し出された血流が血管の壁を押す力のことです。
血圧は全身の血管にありますが、通常は動脈、特に上腕の動脈にかかる圧力のことを指します。
血圧には2種類の数値があることは皆さんご存じでしょう。
一般的に「上の血圧」などと呼ばれるのは心臓が血液を押し出すときの値で、血圧が最も高くなるため「最高血圧」と呼ばれています。
また心臓は血液を押し出すとき収縮するため、「収縮期血圧」という名前もあります。
一般的に「下の血圧」と呼ばれるのは心臓から血液を押し出すために血液をためているときの値で、血圧が最低になるため「最低血圧」とも呼ばれます。
このとき心臓は広がっているので、「拡張期血圧」という名前もあります。
1-2.血圧の正常値と高血圧の基準
「血圧の正常値ってどれくらいなんだろう。自分は高血圧じゃないかな……?」
と気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
血圧の基準は病院の診察室などで測った場合(診察室血圧)と自宅で測った場合(家庭血圧)で異なります。
診察室血圧の正常値は最高血圧が120mmHg未満、かつ最低血圧が80mmHg未満です[1] 。
また高血圧の基準は最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上の場合です[1] 。
正常値の基準を超えた正常高値血圧と高値血圧は高血圧ではないものの、高血圧になりやすい要注意な状態です。
【診察室血圧の正常値と高血圧の基準(mmHg)】
分類 | 最高血圧 | 最低血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | 120未満 | かつ | 80未満 |
正常高値血圧 | 120〜129 | かつ | 80未満 |
高値血圧 | 130〜139 | かつ/または | 80〜89 |
Ⅰ度高血圧 | 140〜159 | かつ/または | 90〜99 |
Ⅱ度高血圧 | 160〜179 | かつ/または | 100〜109 |
Ⅲ度高血圧 | 180以上 | かつ/または | 110以上 |
(孤立性)収縮期高血圧 | 140以上 | かつ | 90未満 |
診察室血圧は緊張などのストレスにより 家庭血圧よりも高くなることがあります。
そのため、家庭血圧は診察室で測る値に比べて5~20mmHg低く基準が設定 されています[1] 。
家庭で測定した値と診察室での値に差がある場合は、今後の血圧の見通しがつきやすい家庭での値が優先的に診断に使われます。
【家庭血圧の正常値と高血圧の基準(mmHg)】
分類 | 最高血圧 | 最低血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | 115未満 | かつ | 75未満 |
正常高値血圧 | 115〜124 | かつ | 75未満 |
高値血圧 | 125〜134 | かつ/または | 75〜84 |
Ⅰ度高血圧 | 135〜144 | かつ/または | 85〜89 |
Ⅱ度高血圧 | 145〜159 | かつ/または | 90〜99 |
Ⅲ度高血圧 | 160以上 | かつ/または | 100以上 |
(孤立性)収縮期高血圧 | 135以上 | かつ | 85未満 |
なお、病院などで一度測った血圧の値が高く驚いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、血圧は運動や食事などの日常生活や精神的なストレスなど、さまざまな要因で常に変動します。
そのため、たまたま一度測った値が高血圧に該当したとしても、それだけで高血圧とはいいきれません。
高血圧とは安静にした状態で繰り返し測っても、値が高い状態が続いている場合をいいます。
最高血圧と最低血圧の値が異なる分類に該当する場合には、高い方の分類で判断します。
つまり、最高血圧や最低血圧のどちらか一方が正常血圧に該当していたとしても、もう一方の血圧の値が高い分類に該当する場合は正常血圧とはいえません。
血圧は最高血圧と最低血圧それぞれ単独で見るのではなく、両方の値がどの分類に該当するかを確認する必要があるといえます。
また高齢の方では、動脈が硬くなることにより最高血圧が上昇し、最低血圧が低くなる「(孤立性)収縮期高血圧」に該当することが増えるので注意が必要です 。
1-3.高血圧のリスク
「血圧が正常値から外れているとどんな問題があるの?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。
高血圧には自覚症状がほとんどありませんが、動脈硬化を進行させ、重篤な病気を招いてしまう危険性があります。
血圧が高い状態が続くと血管がいつも張り詰めた状態に置かれるため、血管壁は次第に厚く硬くなります。
このような動脈硬化の状態を放置していると、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などの原因となってしまいます。
これらの病気では大きな後遺症が残る、命を失うといった危険があります。
高血圧は自覚症状がなくとも、重大な病気につながっているので注意しましょう。
高血圧の治療中でない労働者約8万人を追跡調査した研究の結果、正常高値血圧の段階から脳・心血管疾患の発症リスクが高まることが分かりました[2]。
血圧が高めの方は、早めの対処が大事なのですね。
低血圧の場合、高血圧と違って心臓や血管の病気を招くことはないので、体調に問題がないのであればすぐに対処する必要はありません。
しかしさまざまな症状を引き起こすため、生活に支障がある場合は適切な検査や治療が勧められます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
血圧が低いとどんな症状が出る?低血圧の原因と自分でできる対処法
2.年代別・男女別の血圧の平均値
「年齢や性別によって血圧は変わるのかな?」
「昔の血圧に比べて高くなってきたけど大丈夫なのかな……?」
健康診断の結果を見て、このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
血圧の平均値は、年代や性別によって異なります。
まずは、血圧を下げる薬を飲んでいない方の血圧の平均値をご紹介します。
【年代別・男女別の血圧の平均値(血圧を下げる薬の使用者除外)単位:mmHg】
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年代 | 最高血圧 | 最低血圧 | 最高血圧 | 最低血圧 |
20〜29歳 | 115.9 | 68.1 | 105.7 | 63.8 |
30〜39歳 | 117.2 | 73.8 | 108.0 | 66.4 |
40〜49歳 | 125.4 | 80.6 | 113.7 | 70.9 |
50〜59歳 | 129.7 | 81.0 | 121.8 | 74.5 |
60〜69歳 | 134.1 | 78.3 | 130.6 | 76.7 |
70歳以上 | 133.9 | 74.5 | 133.1 | 73.9 |
次に、血圧を下げる薬を使用している方を含む血圧の平均値をご紹介します。
【年代別・男女別の血圧の平均値(血圧を下げる薬の使用者含む)単位:mmHg】
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年代 | 最高血圧 | 最低血圧 | 最高血圧 | 最低血圧 |
20〜29歳 | 115.3 | 67.7 | 105.7 | 63.8 |
30〜39歳 | 117.3 | 73.7 | 107.9 | 66.3 |
40〜49歳 | 125.8 | 81.3 | 114.3 | 71.2 |
50〜59歳 | 131.7 | 82.0 | 123.7 | 75.4 |
60〜69歳 | 135.8 | 78.5 | 131.0 | 76.7 |
70歳以上 | 135.8 | 73.1 | 136.1 | 73.0 |
血圧を下げる薬を服用している方も含めた血圧の平均値と診察室血圧の基準と見比べると、男性の平均血圧は40代から正常高値血圧に該当し、50代では高値血圧になることが分かります。
また女性の平均血圧は60代で高値血圧に達します。
高値血圧は高血圧には該当しませんが、正常血圧の人に比べて脳や心臓、血管の病気になる可能性が高いといわれています。
高血圧には自覚症状がほとんどない場合が多く、 気づかないうちに血圧が高くなっている場合もあります。
高血圧に気づかずに放置してしまうことがないように普段から血圧の値を把握しておくことが大切ですね。
3.血圧の正しい測り方
「血圧を測ったけれど、毎回全然違う値が出る……。どれが正しい値なんだろう?」
このように疑問に感じる方は多くいらっしゃるでしょう。
血圧は運動や入浴などの日常生活や、緊張などの精神状態によって大きく変動します。
一般的に血圧は朝目が覚めたときから上昇を始め、日中は高い状態が続き、夜間や睡眠中には低くなります。
また、寒さなども影響するため冬の間の血圧は夏場よりも高くなります。
正確な値を把握するためには測定時の条件を一定にし、継続して測定することが大切です。
おすすめの血圧計>
ポイント1 測定前は1~2分間安静にする
歩いたり活動したりした後はすぐに測定せずに、1~2分間安静にしてから測定しましょう[3]。
血圧は運動などによって一時的に上昇することがあります。
そのため、安静にして自然に下がるのを待ってから測る必要があります。
腕に巻く「カフ」と呼ばれる部分と心臓が同じ高さになるような位置で椅子などに腰掛け、体の力を抜いてリラックスします。
過ごしやすいと感じる温度で、静かな環境下で測定しましょう。
[3] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会、特定非営利活動法人 日本高血圧協会、認定特定非営利活動法人 ささえあい医療人権センターCOML「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話 」
ポイント2 毎回同じ腕で測定する
原則として利き手側とは反対の腕で測定することが推奨されています。
ただ、人によっては左右の腕で血圧に差があります。
その場合は高い値が出た腕で測定するようにしましょう。
また、測定時はシャツなどで腕を締め付け過ぎないように注意しましょう。
ポイント3 朝晩毎回同じ時間に測定する
朝は起床してから1時間以内に、食事や薬を飲む前に測定しましょう[4]。
夜は就寝前に測定します 。
また、朝晩以外にも仕事中や強いストレスを感じているとき、体調が悪いときも血圧が上昇していないか確認することが望ましいといわれています。
なお、測定前に喫煙したりアルコールやカフェインを摂ったりすることは避けましょう 。
[4] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会、特定非営利活動法人 日本高血圧協会、認定特定非営利活動法人 ささえあい医療人権センターCOML「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話 」
ポイント4 記録を付ける
測定したら必ず記録を付けます。
できるだけ長期間にわたり継続して測定し、毎日の測定値は全て記録を付けておきましょう。
4.血圧を正常値に保つためのコツ
「血圧を上げないためには、どんなことに気を付けたら良いんだろう?」
血圧を正常値に保つためには、どのような点に気を付けたら良いのか気になりますよね。
ここでは、生活習慣のなかで取り組めるコツについて解説します。
コツ1 食生活を改善する
血圧を上げる要因はさまざまにありますが、日本人の高血圧は食塩の摂り過ぎが最大の要因といわれています。
食塩の摂り過ぎが高血圧を招くのは、「ナトリウム」というミネラルのためです。
ナトリウムを摂取し過ぎると、血液の浸透圧を一定に保つために血液中の水分量が増えるので血液が増加し、血圧が上昇してしまうと考えられています。
このため、血圧を正常値に保つためには食塩の摂取量を制限することが重要です。
高血圧を予防するためには1日の塩分摂取量を6g未満とすることが望ましいといわれています[5]。
塩分が気になるあなたにおすすめの減塩グッズ>
ラーメンなどの麺類の汁を全部飲むと、それだけで6g近い塩分を摂ってしまいます[6]。
日本人の食事は塩分が多い傾向にありますが、以下のように工夫することでナトリウムの摂取量を抑えることができます。
さらに、血圧を正常値内に保つコツとして、「カリウム」をしっかり摂ることも勧められています。
カリウムにはナトリウムを体外に排泄するはたらきがあり、血圧を下げる効果が期待できます。
アボカドやバナナなどのカリウムが豊富に含まれている野菜や果物、納豆などの大豆製品を積極的に摂るようにしましょう。
また、カルシウムにも血圧を安定させる効果があるといわれています。
カルシウムは牛乳や乳製品から効率良く吸収できるため、意識的に摂るようにしましょう。
その他、脂質や糖、ナトリウムを体外に排出する効果のある「食物繊維」にも、高血圧や肥満などのそれらが原因となる生活習慣病の予防・改善効果が期待されています。
食物繊維は植物性食品に多く含まれているので、野菜類や果実類、きのこ類、海藻類、豆類などを積極的に摂取するよう心掛けましょう。
カリウム、カルシウム、食物繊維については以下の記事でそれぞれ解説しています。
カリウムを豊富に含む食べ物は?効果と摂取基準も解説 カルシウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を解説 食物繊維を摂れる食べ物は?効果や摂取基準も解説
摂取源となる食品や1日に摂取すべき量についてもご紹介しているのでぜひご覧ください。
コツ2 有酸素運動を行う
定期的な有酸素運動には血圧を下げる効果が認められています。
ややきついと感じられる程度の有酸素運動を30分以上、定期的に、できれば毎日行うのが理想的です[7]。
一度に30分間の時間を確保できない場合は、10分以上の運動を合計して1日で40分以上行うようにしましょう[7]。
急に運動を行うのは体に大きな負担となる可能性があるので、まずは掃除や洗車を行う、子どもと遊ぶ、自転車や徒歩で買い物に行くといったことから始めるのもおすすめですよ。
コツ3 適正体重を維持する
日本人の高血圧は肥満を伴わない場合が多いといわれていますが、若年から中年の男性を中心に、肥満を原因とした高血圧が増えています。
内臓脂肪型肥満は女性より男性に多い傾向にあり、メタボリックシンドロームの診断基準の一つとなっています。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
そのため、減量によって血圧を下げられる場合があるのです 。
ご自身が肥満の状態にあるかを確認するには、国際的に用いられている体格指数「BMI」を確認すると良いでしょう。
まずは、ご自身のBMIを確認しましょう。
肥満を解消するには摂取カロリーを減らすことと、運動などを通じて活動量を増やして消費カロリーを増やすことが重要です 。
体内の脂質を燃料とする有酸素運動はダイエットにもおすすめですよ。
特定の食品を抜いたり極端に食事量を減らしたりする減量方法は避け、バランスの良い食事を摂りながら無理のない減量を行いましょう 。
バランスも考えたい!おすすめの減塩宅配弁当>
ダイエットについては以下の記事でご紹介しています。
コツ4 その他生活習慣を見直す
その他にも、血圧を正常に保つためのコツとして、禁煙や飲酒量の見直しなどが挙げられます。
喫煙は血管を収縮させて血圧を上昇させるだけではなく、血液の流れを悪くして動脈硬化を進行させます 。
特に血圧が気になる方は禁煙するようにしましょう。
また、大量の飲酒も血圧を上昇させます。
1日の適切な飲酒量は純アルコールとして20gです[9]。
代表的なお酒の純アルコール20g相当の量は以下のとおりです。
また、毎日お酒を飲むのは避け、週1日以上の休肝日を設けるよう心掛けましょう[10]。
5.高血圧に該当した場合は医療機関を受診する
高血圧に該当した場合は治療が必要な場合があるため、医療機関を受診しましょう。
受診の際は、今まで測定していた血圧の値の記録を持参すると良いでしょう。
そうすることで、医師が家庭での血圧の推移を把握することができ、治療内容などを決める際に役立ちます。
血圧の推移をご自身で把握することで、健康を維持する意欲の向上にもつながりそうですね。
6.血圧の平均値についてのまとめ
血圧の平均値は性別や年代によって異なります。
例えば血圧を下げる薬を服用していない方を対象としたデータによると、20代男性の平均値は最高血圧115.9mmHg、最低血圧68.1mmHgであるのに対し、70代になると最高血圧133.9mmHg、最低血圧74.5mmHgと大きく上昇します[11]。
また女性の平均値は20代では最高血圧105.7mmHg、最低血圧63.8mmHgですが、70歳以上では最高血圧133.1mmHg、最低血圧73.9mmHgと、こちらも上昇しています[11]。
正常血圧は最高血圧120mmHg未満かつ最低血圧80mmHg未満とされており[12]、男性では40代から、女性では60代から平均血圧は正常血圧を上回ってしまっているのです[11]。
血圧が高い状態を放置していると動脈硬化が進行し、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞を招いてしまう恐れがあるため、血圧は正常域に保つことが重要だといえます。
血圧を正常に保つには食生活を改善すること、有酸素運動を行うこと、適正体重を維持することなどがポイントです。
血圧の平均値ではなく正常域を意識し、日頃の生活習慣を改善してみましょう。
[11] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
[12] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」