「血圧は1日の中でいつ測れば良いの?」
「正しい測定方法があると聞いたけど本当?」
このように血圧測定のタイミングについてお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。血圧測定は血管の健康状態を知るための大切な検査です。毎日記録していくことで、健康維持に役立てることができます。
しかし、血圧は常に一定ではありません。正しい測定方法を覚えて、正確な測定値を記録しましょう。
今回の記事では、血圧測定の適切なタイミングや正しい測定方法をご紹介します。
1. 血圧は「朝・晩」の2回測る
「血圧測定は毎日1回だけ、いつでも良いから測れば良いと思っていた。」
このように考える方は意外と多いものです。しかし、血圧はあらゆる要素で変動します。血圧測定によって、脳卒中や心臓病などの病気のリスクを判断するには、適切な測定方法で実施する必要があります。
この項目では、血圧を測る適切なタイミングとその理由について解説します。
【関連情報】 「血圧測定の必要性とは?大切な理由と正しい測り方を紹介!」についての記事はこちら
1ー1. 血圧を測る適切なタイミング
適切な血圧測定のタイミングは毎日の「朝・晩の2回」です[1]。
具体的には、起床後1時間以内に、排尿を済ませてから1~2分間の安静後に測定しましょう。朝食を摂ったり、内服をしたりする前に測定することが大切です。食事や内服は血圧変動の原因となり、本来の血圧数値を知ることができなくなる可能性があります。
晩の血圧測定は就寝前に行いましょう。晩の測定時も1~2分間の安静後に測定すると、より正確な測定値が得られます。
また、朝・晩の血圧測定の際は、それぞれ2回ずつ測定して平均値を取るようにしましょう。2回血圧測定を行うことで、より正確に測定値を知ることができます。
1ー2. 1日2回で病気のリスクを発見しやすくなる
睡眠時の血圧は体がリラックス状態であるため、通常は日中の血圧より10~20%ほど低くなります。しかし、なかには朝に血圧が高くなる早朝高血圧(早朝血圧が135/85mmHg以上)と夜に血圧が高くなる夜間高血圧(夜間血圧が120/70mmHg以上)を示す人もいます[2]。
通常、睡眠時に低下した血圧は起床に向けて上昇し、日中に活動を始めるとさらに上昇します。
ところが早朝高血圧型の人は、朝方に血圧が急上昇することがあります。早朝高血圧が見られる人は心臓や血管に負担がかかっており、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高くなるという報告があります。
また、夜間高血圧の方は睡眠中も血圧が下がることがなく、常に心臓や血管に強い負担がかかった状態です。夜間高血圧が起床後まで持続している場合は、早朝高血圧として判断されます。夜間高血圧は心筋梗塞や脳卒中のリスクがより高いといわれています。
朝・晩に2回ずつ血圧測定をすることは、正確な数値を知るだけでなく、早朝高血圧や夜間高血圧の早期発見にもつながるのです。
2. 血圧を正しく測るときの5原則
血圧には変動性があり、室内環境や精神状態など、測定条件にも多くの影響を受けます。そのため、血圧を測定する際にはいくつかの条件を満たすことが大切です。
ここからは、正しく血圧測定を行うための5原則を説明します。
2ー1. リラックスして計測する
血圧は精神状態によって数値が変化することがあります。特に緊張状態のときは本来の血圧よりも高い数値になることがあり、正確な測定ができません。
そのため、血圧測定前はイスに座り、数分間安静にしましょう。心身ともに落ち着いた状態で血圧測定を行うと、本来の数値を知ることができますよ。
2ー2. 正しい姿勢で計測する
血圧とは、血液が流れるときに血管の壁が受ける圧力のことです。心臓から送り出された血液が高いところに移動するか、低いところに移動するかによって測定場所の血圧は変化します。そのため、血圧測定時は正しい姿勢を取らないと正確な数値を測定できません。
背もたれのあるイスに背中をつけて、両足は床につけましょう。肘は軽く曲げて血圧計のカフ(腕帯)を心臓の高さに合わせます。足を組んでしまうと血流が阻害されて、血圧が変化してしまうことがあるので注意してください。
また、血圧計のカフはきっちりと締め過ぎず、指1~2本分の余裕を持たせます。肘から2cmほど上になるように巻きましょう。
2ー3. 計測前は血圧を変動させるものを摂取しない
血圧測定前はタバコ、アルコール、カフェインといった血圧を変動させる可能性があるものの摂取を控えましょう。
朝にコーヒーやお茶を飲んだり、夜にアルコールを摂取したりする習慣がある人は、先に血圧測定を済ませておく必要があります。
2ー4. 計測中は安静にする
血圧は日常のささいな動作でも変動します。測定中に会話をしたり動いてしまったりしないようにしてください。
なるべく静かな部屋で、落ち着いた状態を保ちます。血圧測定中も正しい姿勢で安静にし、会話や動くことは控えるようにしましょう。
2ー5. 適切な温度の部屋で計測する
血圧測定するときは、部屋を快適な温度に保つようにしましょう。寒い部屋にいると血管が収縮し、血圧が上昇してしまいます。
また、血圧は寒暖差が大きい場所に移動した際にも、変化してしまいます。夏の暑い日などに、暑い部屋からクーラーが効き過ぎている寒い部屋に移動した際にも、血圧変動してしまいますので注意が必要です。
3. 血圧は毎日測って管理しよう!
血圧測定は毎日行い、しっかりと記録していくことが大切です。日々の測定値に一喜一憂するのではなく、長い目で見て数値の推移を追っていきましょう。
また、血圧の記録は、医療機関を受診する際にも役立ちます。医師が血圧の推移を把握できるため、自身の健康状況に合わせた適切な治療や指導をしてもらいやすくなるでしょう。
現在、日本の高血圧有病率は40~74歳で男性60%、女性41%、75歳以上になると男性74%、女性77%といわれています[3]。
血圧の数値が今は正常という方も、将来のために血圧管理を始めることをおすすめします。
正常血圧値を目指すために、そして日々の健康管理のためにも、日々の血圧管理を継続していきましょう。
3ー1. 血圧管理のポイント
血圧を記録する際は、血圧測定した日付と時間に加えて、脈拍数も記録しておくと良いです。また、血圧変動の要因となる動作を行った場合も記録しておきましょう。例えば、飲酒や薬の内服などが当てはまります。体調の変化があった場合にもメモしておくことをおすすめします。
普段の血圧が高い人は、食事や運動といった生活習慣に気を付けながら数値目標を設定しておくと良いです。目標の目安は135/85mmHg未満とし、毎日の測定値の平均が目標値を下回るように生活習慣を改善していきましょう。
3ー2. 血圧が高めだと思ったら
毎日の血圧管理をしていて、血圧が高くなってしまっている場合や、目標数値をなかなか下回らない場合は生活習慣の改善が必要です。
食事面では、減塩(1日6g未満)や、野菜・果物などカリウムを多く含む食材の積極的な摂取が効果的とされています[4]。
特に塩分は意識しないと過剰摂取になりがちなので、食品の成分表示をしっかりとチェックする習慣をつけておきましょう。
生活面では、禁酒・禁煙や適度な運動が効果的です。無理は禁物ですが、生活改善は血圧だけでなく、あらゆる病気の予防や健康の維持につながりますので、少しずつ取り組んでいきましょう。
4. 血圧はいつ測るべきかについてのまとめ
今回は血圧測定の適切なタイミングや正しい測定方法をご紹介しました。血圧はあらゆる要因で変動しやすく、正確な数値を把握するためには測定条件をしっかりと守る必要があります。
朝・晩に2回ずつ計測し、計測の姿勢や室内環境を整えましょう。血圧測定は正しい方法で毎日継続することが何よりも大切です。
記録した血圧は、健康管理だけでなく、受診時にも役立ちます。現在正常血圧という方も、将来のために血圧管理に取り込んでみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
内科認定医・がん治療認定医
【経歴】
国立大学医学部医学科卒業後、公立病院にて初期研修の2年を終了後、3年目からはがん治療を専門としながら幅広く内科疾患の診療に従事。治療が必要となる前の生活習慣の改善、また病気についての正しい知識が大事であることを実感し、病気についての執筆活動にもあたっている。