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女性の血圧トラブルは低血圧だけじゃない?女性ならではの「高血圧リスク」を知ろう

2023年9月11日

ボディコンディション

血圧計

「寝起きが悪いし冷え性だから、女性によくある低血圧だと思う」

「血圧が上がってきたのは更年期が近いからかな」

このように、血圧について「女性だから仕方ない……」と考えている方は少なくないのではないでしょうか。

その考えには、確かに当たっている部分もありますし、外れている部分もあります。女性ならではの傾向も確かにありますが、必ずしもそうとは言い切れない、さまざまなケースがあるのです。

この記事では女性によく見られる血圧トラブルやその原因、改善方法について詳しく解説します。

1.「女性の高血圧リスク」と年代の関係

1-1.「若い女性は低血圧」とは限らない


血圧の値は、心臓が収縮して血液が送り出される際の「収縮期血圧(最高血圧)」と、血液が戻ってきて心臓が拡張した際の「拡張期血圧(最低血圧)」によって示されます[1]。

一般的には「最高血圧が140mmHg以上か最低血圧が90mmHg以上、またはその両方」であれば高血圧とされます[2]。

女性は、40歳以下では低血圧(最高血圧100mmHg未満)の人が多い傾向があることから「若い女性は低血圧である」という通説もあります。

しかし、20~30代であっても、生活習慣や内臓などの病気、妊娠などをきっかけに高血圧を発症する女性もいます。

決して「若い女性は低血圧」とは限らず、実際は人によって異なるのです。

年に一度の健診以外にも日頃から血圧を測る機会を作り、平時の自分の血圧はどのくらいなのかを把握しておくのがおすすめです。

[1] 全国健康保険協会「【高血圧】自覚症状がないまま動脈硬化を進行させます」

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

1-2.40歳を超えたら高血圧に要注意


若い女性は人それぞれとお伝えしましたが、40代からは男女問わず高血圧への注意が必要になります。

そもそも高血圧症には、発症原因による分類があり、次の二つに分かれます[3]。

高血圧症の発症原因による分類

  1. 二次性高血圧
    ホルモン分泌異常、腎臓疾患、薬剤の副作用など、原因が特定できる高血圧
  2. 本態性高血圧
    原因が特定できない高血圧

日本の高血圧患者は約4,300万人いるとされますが、その約90%は、原因が特定できない「本態性高血圧」だといわれています。そして本態性高血圧のリスクは、40代を迎えるとそれまでよりも高まってきます[4]。

本態性高血圧は病気などの明らかな原因がなく、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスや、遺伝的体質などが組み合わさって起こるといわれています[5]。

これらの要因はいわゆる「生活習慣」。つまり40代は、現在に至るまでに積み重ねてきた習慣が、血圧の値に表れ始める年代なのです。

重ねて40代以上の女性は、後述する「女性ホルモン減少による高血圧症」のリスクもあります。

[3] 一般社団法人 日本内分泌学会「二次性高血圧症(腎血管性高血圧を含む)」

[4] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」

[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

2.女性の主な高血圧トラブルは?

妊婦

2-1.約20人に1人の妊婦が「妊娠高血圧症候群」に

妊娠時に高血圧を発症した場合、「妊娠高血圧症候群」といいます。 「妊娠高血圧症候群」は以下のように分類されます[6]。

妊娠高血圧症候群の分類

  • 高血圧合併妊娠
    もともと高血圧の女性が妊娠した場合、または妊娠20週までに高血圧を発症した場合
  • 妊娠高血圧症
    妊娠20週以降に高血圧のみ発症した場合
  • 妊娠高血圧腎症
    高血圧に加えて蛋白尿、もしくは腎機能障害、神経障害、血液凝固障害や赤ちゃんの発育不良が起こった場合

これらの症状は妊婦の約20人に1人の割合で起こります。

特に、早発型と呼ばれる妊娠34週未満で発症した場合、重症化しやすいため注意が必要です。

重症になると妊婦は血圧上昇、蛋白尿に加えてけいれん発作(子癇)、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害、肝機能障害に溶血と血小板減少を伴うHELLP症候群などを引き起こすことがあります。

また赤ちゃんの発育の悪化(胎児発育不全)、胎盤が子宮の壁からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなる(常位胎盤早期剥離)、赤ちゃんの状態が悪くなる(胎児機能不全)、場合によっては赤ちゃんが亡くなってしまう(胎児死亡)など、母子ともに大変危険な状態になることがあります。

以下の方は妊娠高血圧症候群になるリスクが高まりますので、事前に確認しておきましょう。

妊娠高血圧症候群になるリスクが高まる方

  • もともと糖尿病、高血圧、腎臓の病気などの持病がある
  • 肥満がある
  • 40歳以上の高齢である
  • 高血圧の家族がいる
  • 双子などの多胎妊娠
  • 初産婦
  • 以前の妊娠で妊娠高血圧症候群になったことがある

[6] 公益社団法人 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」

2-2.女性ホルモン減少による「40代以上の高血圧症」

女性特有の高血圧トラブルのもう一つは、40代以上の女性に見られる「女性ホルモン減少による高血圧症」です。

女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、血管をしなやかに保つ働きがあり、分泌量が減少すると血圧が上がりやすくなります。

この女性ホルモンが減少すると、血圧や代謝などの体の機能を調整する自律神経も乱れやすくなり、血圧が不安定になると考えられています。

更年期を迎えた後の高血圧では、女性ホルモンが急激に減少することによる変動の可能性が高まります。 めまいや動悸、ストレスなどといった他の更年期症状と悪影響を及ぼし合うことも考えられるので、早めに受診するようにしましょう。

ちなみに、同じ40代以上でも更年期を迎える前の高血圧であれば、先に説明した「本態性高血圧」の可能性が高いと考えられます。減塩などの生活習慣改善で、血圧を安定させていくのがおすすめです。

3.女性の血圧についてのまとめ

「若い女性は低血圧である」という通説は根強く、低血圧とはっきり判明しているわけでなくても、血圧を測る習慣のない若い女性は多いようです。

また同じように「年齢のせい」、「更年期だから」などと、誰にでもあることとして高血圧を放置してしまう40代以上の女性も少なくありません。

女性の血圧リスクは年齢だけでは判断できません。仮に誰にでもあることだとしても、放置しても良いというものではないのです。

若い女性は自分の平時の血圧を把握するところから始めてみましょう。また、40代からは高血圧や更年期症状と向き合い、「仕方ない」と放置するのではなく改善を目指す一歩を踏み出してみましょう。

この記事の監修者

菊池祐二郎
菊池 祐二郎
医療法人財団順和会 山王メディカルセンター
血管外科医長

【経歴】
東京医科大学病院在籍中は主に心臓手術・血管外科を担当し、さらにその関連施設では人工透析管理に従事した。心臓や血管に疾患のある患者様に元気な日常生活を送っていただけるよう、患者様お一人おひとりに最も適した治療法を考え、行っている。また、足のむくみで心配されている患者様に適切な診断とアドバイスを行っている。

【山王メディカルセンターのHP情報】
»医療法人財団順和会 山王メディカルセンター

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