「病院で測る血圧だけは、家で測るよりいつも高い。実は自分は高血圧ではないのでは?」
「血圧の『mmHg』という単位は何を示しているのだろう?」
なんとなく測定して「高い」「低い」と判断している血圧ですが、その詳しい仕組みについてはよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では血圧の仕組みや計算方法、正しい測り方について詳しく解説します。
1.血圧の基本的な仕組みと計算方法
1-1.血圧とは?
血圧とは、血液が流れることによって血管の内側にかかる圧力のことです。
この圧力が高過ぎると、動脈の血管が徐々にしなやかさを失って固くなる「動脈硬化」が進行し、血管が血圧によってダメージを受けやすくなります。さらに狭心症や、心疾患のリスクが高まります[1]。
1-2.血圧の値はどうやって算出する?
血圧の値は、心臓から押し出される血液量(心拍出量)と、血管の収縮の程度やしなやかさ(血管抵抗)によって決まります。
血圧計で測る血圧の値は、計算式で示すと「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」。 「末梢血管」というのは動脈の末端部分で、一般的には腕や足の血管のことをいいます。
「心拍出量」は年齢や体格、運動時や心疾患の有無といった要因で変化しますが、同じ体格かつ健康な20歳以上の方の安静時であれば、男女の違いによる大きな差はありません。 心臓が1回の拍動(「ドクン」という収縮)で血液を送り出す量を「1回拍出量」といい、その量は約70~80mlです。健康な心臓は1分間あたり約60~70回拍動するので、合計すると1分間に約4L~5Lもの血液を送り出していることになります。
「収縮期血圧(最高血圧)」は、血液を送り出すために心臓が収縮し、血管にもっとも強い圧力がかかっているときの値を、「水銀柱ミリメートル(mmHg)」という圧力の単位で表したものです。 「拡張期血圧(最低血圧)」は、血液が戻ってきて心臓が拡張しているときに血管にかかる圧力の値です。
このように、心臓は1回収縮し拡張するごとに最高血圧と最低血圧を繰り返して、血液が体全体へスムーズに送られる仕組みになっています。
2.血圧は「測る環境」も重要
2-1.血圧は運動やストレスで一時的に高まることも
血圧を変動させる主な要因としては、下記などが挙げられます。
- 心拍出量(1分間に心臓から送り出される血液量)
- 末梢血管抵抗(末梢血管の血流の流れにくさ、抵抗)
- 循環血液量(体内を循環する血液の量)
- 血液粘調性(血液のドロドロぐあい)
- 大動脈の弾力
常に血圧が高い、いわゆる高血圧症になる原因は、塩分と密接な関係があります。塩分を摂り過ぎると血液中のナトリウム濃度が高くなり、濃度を薄めるために中枢神経に働いてのどが渇き、水分を欲します。水分を摂ると、そのぶん血液量が増え、心拍出量が増えて高血圧になってしまうのです。
一方、高血圧の状態が続くと、血管は常に緊張した状態となります。血管は次第に厚く硬くなって動脈硬化となり、血管が狭くなることで末梢血管の抵抗が高くなります。
このように、心拍出量と末梢血管抵抗の2点は血圧の変動に大きく影響しているといえます。
ただ、血圧はしばしば一時的に高くなることがあります。心拍出量も末梢血管抵抗も、活動をつかさどる「交感神経」の活性化で増加してしまうからです。
つまり、運動をしたり、緊張してストレスがかかったりすることでも血圧は上がってしまうのです。ただこういった場合、高血圧の状態は長くは続かず、徐々に落ち着きます。
2-2.診察室血圧と家庭血圧
血圧は測定場所によって、「診察室血圧」と「家庭血圧」に分けて考えられています。 これは、先ほど説明した仕組みによって、診察室では緊張してしまい一時的に血圧が高くなる人が少なからずいることによります。
そのため「診察室で測った血圧は高いが、家庭で測った血圧は低い」といった誤差がある場合は「家庭血圧」が、よりいつもの状態に近い血圧と見なされ、優先されます。
こうしたことから、高血圧の正確な診断と治療には、自宅で測定する「家庭血圧」が欠かせません。つい軽視されがちな家庭での血圧測定も、重要なセルフケアの一つといえるのです。
3.家庭血圧の正しい測り方
3-1.起床後・就寝前の毎日同じ時間にリラックスして
家庭血圧の測り方のポイントは次のとおりです。
・起床後1時間以内・就寝前の1日2回測定する
・椅子にかけ、血圧計のカフ(腕や手首に巻く部分)を心臓と同じ高さにする
・測定前に1~2分ほど安静にしてリラックスしてから始める
朝と夜の1日2回血圧を測り記録すると「朝に血圧が高いタイプか、夜に血圧が高いタイプか」が分かるため、家庭血圧を評価すとおる上で大変参考になるとされています。
3-2.血圧計の正しい使い方も重要
血圧計を正しく使うことも家庭血圧を測る上では重要です。まずは取扱説明書に従うことが大切ですが、以下のポイントをおさえて測るようにしましょう。
血圧は、私たちが普段特に意識していないような要因でも大きく変わることがあります。例えば、心臓の高さからの高低差が5cmあるだけで、3.5mmHg以上の血圧差が生じてしまいます[2]。
3-3.医療機器認証以外のスマートウォッチは目安程度に
血管は手の先に向かうほど細くなっていき、また、動脈硬化の原因は細い血管から発生します。つまり、腕と手首では手首の方が、測定値があいまいになる可能性が高いのです。
「血圧計は手首に巻くタイプより上腕に巻くタイプが望ましい」といわれることがあるのは、こうした理由からだと考えられます[3]。
血圧測定機能付きのスマートウォッチも同様で、医療機器認証モデル以外ではさらに誤差の出る可能性もあるため、測定値は目安程度としましょう。
4.血圧の計算についてのまとめ
家庭血圧の測定は、高血圧の正確な診断・治療のための重要なポイントです。 それだけに、測り方を間違えたまま記録を続けていると、それをもとに本来の状態とは違う診断がなされ、マッチしていない治療が続けられてしまう可能性も考えられます。
クリニックや病院で今一度正しい血圧の測定方法を確認する、家庭用でも医療機器認証商品を選ぶなど、家庭血圧も正確に測定できるように心掛けたいですね。
この記事の監修者
医療法人財団順和会 山王メディカルセンター
血管外科医長
【経歴】
東京医科大学病院在籍中は主に心臓手術・血管外科を担当し、さらにその関連施設では人工透析管理に従事した。心臓や血管に疾患のある患者様に元気な日常生活を送っていただけるよう、患者様お一人おひとりに最も適した治療法を考え、行っている。また、足のむくみで心配されている患者様に適切な診断とアドバイスを行っている。
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