「モリブデンってなんだろう……」
「モリブデンにはどんなはたらきがあるのかな?」
モリブデンについて聞き覚えがなく、このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
モリブデンは人体に必要なミネラルの一つであり、そのなかでもごく少量しかない微量ミネラルに該当します。
一方でモリブデンは過剰摂取すると関節痛や胃腸障害を引き起こし、摂取不足になると頻脈や多呼吸といった症状を引き起こします。
この記事ではモリブデンとはどんな栄養素なのか、どんな食品に含まれているのかについて解説していきます。
1.モリブデンとは
モリブデンは体に欠かせない「必須ミネラル」の一つで、ごく少量のみ含まれる微量ミネラルに分類されます。
【関連情報】 「ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介」についての記事はこちら
またモリブデンは「輝水鉛鉱(きすいえんこう)」という鉱石から発見された金属でもあります。
硫黄と結合しやすいという特徴があり、高層ビルや自動車用薄板、通信機器、電子部品など広く利用されています。
体内にあるモリブデンの多くは肝臓や腎臓に存在しており、ある種の酵素が作用するために必要な成分です。
モリブデンは他の重金属に比べて毒性が比較的低いため、過剰による問題が生じることはほとんどないといわれています。
2.モリブデンの摂取目安量と平均摂取量
「モリブデンは1日にどれくらい摂取すれば良いのかな?」
という疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。
厚生労働省が公表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、モリブデンの1日当たりの摂取推奨量は18歳~74歳の男性は30μg、女性は25μg、75歳以上は男女ともに25μgと定められています[3]。
この摂取推奨量をどうすれば満たすことができるのかが気になるポイントですよね。
しかし、多くの場合心配する必要はありません。
日本人は平均して1日225μgものモリブデンを摂取しています[3]。
モリブデンは特に穀類や豆類に多く含まれているので、大豆製品や穀類を多く摂取する日本人は摂取量が多くなると考えられるのです。
さらに大豆製品をたくさん使用した食事を摂取した場合には1日300μgを超えることもあるといわれています[3]。
一般的な食生活を送っていればモリブデンが不足することは少ないといえるでしょう。
3.モリブデンの摂取量による影響
「モリブデンの摂取量が過剰だったり、不足していたりすると体にどんな影響が出るのかな?」
日本人はさまざまな大豆製品を食べることが多いため、モリブデンの過剰摂取が心配という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからはモリブデンの過剰摂取と摂取不足によって現れる体への影響を解説していきます。
3-1.モリブデンの過剰摂取による影響
モリブデンは摂り過ぎるとすぐに尿として排せつされるため、基本的には過剰摂取が健康に影響を及ぼすことは少ないといわれています。
しかし急性中毒や慢性中毒を引き起こすケースもあり、それぞれ異なる症状が見られます。
急性中毒では下痢などの胃腸障害に加えて、最悪の場合は昏睡(こんすい)状態・心不全によって死に至る恐れもあります。
一方慢性中毒の場合には関節の痛みや高尿酸血症といった痛風に似た症状が起こる可能性があります。
モリブデンの1日当たりの耐容上限量は18歳以上の男性は600μg、女性は500μgと設定されています[4]。
過剰摂取による健康への影響はほとんど考えられないものの、モリブデンを食事から摂取する際は耐容上限量を守るようにしましょう。
3-2.モリブデンの摂取不足による影響
モリブデンは通常の食生活を送っていれば十分に摂取できるため、不足することはないといわれています。
しかし、モリブデンを含まない静脈栄養を施行し長期間食事ができない場合には、摂取不足により頻脈や多呼吸といった症状が起こる恐れがあります。
また、同様の状態でモリブデンが不足すると夜盲症を引き起こす可能性もあります。
4.モリブデンを含む食品
モリブデンがどんな食品に含まれているか知りたいという人は多いのではないでしょうか。
ここからはモリブデンを摂取できる食品のうち特に含有量の多い、穀類、豆類、種実類の食品を紹介します。
どのような食品に含まれているのかを確認し、日々の食生活に取り入れてみてくださいね。
4-1.穀類
モリブデンを含む穀類は以下のとおりです。
【モリブデンを多く含む穀類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
オートミール | - | 110μg |
精白米 | 炊飯前 | 69μg |
玄米 | - | 65μg |
マカロニ・スパゲッティ | 乾麺 | 53μg |
玄米(ご飯) | - | 34μg |
うるち米(ご飯) | - | 30μg |
フランスパン | - | 20μg |
食パン | - | 15μg |
コーンフレーク | - | 15μg |
マカロニ・スパゲッティ | ゆで | 13μg |
そば | ゆで | 11μg |
パンやご飯、そばなど日頃から食べる機会の多い食品が多く見られますね。
ご飯1杯分(150g)で1日の推奨量のモリブデンを摂取できますよ。
4-2.豆類
モリブデンは豆類にも含まれています。
【モリブデンを多く含む豆類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
きな粉(黄大豆) | - | 380μg |
納豆 | - | 290μg |
湯葉 | 生 | 100μg |
油揚げ | 生 | 97μg |
生揚げ | 生 | 87μg |
絹ごし豆腐 | - | 69μg |
がんもどき | - | 60μg |
豆類は穀類と比べてもモリブデンの含有量が多いのが分かりますね。
4-3.種実類
種実類のモリブデン含有量も紹介します。
【モリブデンを多く含む種実類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
らっかせい | いり | 96μg |
ピーナッツバター | - | 92μg |
バターピーナッツ | - | 68μg |
アーモンド | フライ、味付け | 32μg |
カシューナッツ | フライ、味付け | 30μg |
ナッツ類は間食に取り入れやすいので、手軽にモリブデンを摂取できそうですね。
5.モリブデンの摂取推奨量や含有食品について まとめ
モリブデンは輝水鉛鉱から発見された金属であり、人体に欠かせないミネラルの一つです。
ある種の酵素がはたらくのに欠かせません。
モリブデンの1日の摂取推奨量は18歳~74歳の男性は30μg、女性の場合は25μg、75歳以上の男女は25μgです[6]。
これに対して日本人の1日の平均摂取量は225μgであり、大豆製品を多く摂取した場合には1日300μgに及ぶこともあります[6]。
摂取推奨量を大幅に超過していることから、過剰摂取の影響が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、通常の食生活では健康に悪い影響が出ることはほとんどないといわれています。
モリブデンは穀類、豆類、種実類に豊富に含まれています。
1日の摂取推奨量や耐容上限量を目安に摂取してみてくださいね。