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モリブデンとは?体内でのはたらきや摂取の目安量、豊富に含む食品

2023年8月8日

ボディコンディション

「モリブデンってなんだろう……」

「モリブデンにはどんなはたらきがあるのかな?」

モリブデンについて聞き覚えがなく、このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

モリブデンは人体に必要なミネラルの一つであり、そのなかでもごく少量しかない微量ミネラルに該当します。

一方でモリブデンは過剰摂取すると関節痛や胃腸障害を引き起こし、摂取不足になると頻脈や多呼吸といった症状を引き起こします

この記事ではモリブデンとはどんな栄養素なのか、どんな食品に含まれているのかについて解説していきます。

1.モリブデンとは

モリブデンは体に欠かせない「必須ミネラル」の一つで、ごく少量のみ含まれる微量ミネラルに分類されます。

必須ミネラルとは
人間の体内に存在する、栄養素として不可欠なミネラルのことです。ミネラルとは生体を構成する酸素、炭素、水素、窒素の四つの主要な元素以外の元素の総称で、「無機質」とも呼ばれます。現在必須ミネラルとされているミネラルは16種類です[1]。

またモリブデンは「輝水鉛鉱(きすいえんこう)」という鉱石から発見された金属でもあります。

硫黄と結合しやすいという特徴があり、高層ビルや自動車用薄板、通信機器、電子部品など広く利用されています。

体内にあるモリブデンの多くは肝臓や腎臓に存在しており、ある種の酵素が作用するために必要な成分です。

酵素とは
体内で起こるさまざまな化学反応を促すのに欠かせないたんぱく質のことです。体内には約5,000種類近くの酵素があり、それぞれの酵素が特定の反応のみを促します[2]。例えば、たんぱく質を分解する酵素は、でんぷんや脂質を分解することはできません。

モリブデンは他の重金属に比べて毒性が比較的低いため、過剰による問題が生じることはほとんどないといわれています。

[1] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」

[2] 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「酵素の働きと健康効果」

2.モリブデンの摂取目安量と平均摂取量

「モリブデンは1日にどれくらい摂取すれば良いのかな?」

という疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。

厚生労働省が公表した「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、モリブデンの1日当たりの摂取推奨量は18歳~74歳の男性は30μg、女性は25μg、75歳以上は男女ともに25μgと定められています[3]。

メモ
授乳中の方には 年齢に応じた数値に3μgを付加した量が推奨されています[3]。

この摂取推奨量をどうすれば満たすことができるのかが気になるポイントですよね。

しかし、多くの場合心配する必要はありません。

日本人は平均して1日225μgものモリブデンを摂取しています[3]。

モリブデンは特に穀類や豆類に多く含まれているので、大豆製品や穀類を多く摂取する日本人は摂取量が多くなると考えられるのです。

さらに大豆製品をたくさん使用した食事を摂取した場合には1日300μgを超えることもあるといわれています[3]。

一般的な食生活を送っていればモリブデンが不足することは少ないといえるでしょう。

[3] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

3.モリブデンの摂取量による影響

「モリブデンの摂取量が過剰だったり、不足していたりすると体にどんな影響が出るのかな?」

日本人はさまざまな大豆製品を食べることが多いため、モリブデンの過剰摂取が心配という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここからはモリブデンの過剰摂取と摂取不足によって現れる体への影響を解説していきます。

3-1.モリブデンの過剰摂取による影響

モリブデンは摂り過ぎるとすぐに尿として排せつされるため、基本的には過剰摂取が健康に影響を及ぼすことは少ないといわれています。

しかし急性中毒や慢性中毒を引き起こすケースもあり、それぞれ異なる症状が見られます。

急性中毒では下痢などの胃腸障害に加えて、最悪の場合は昏睡(こんすい)状態・心不全によって死に至る恐れもあります

心不全とは
心臓の異常によって、ポンプ機能が低下し必要な量の血液を送り出せなくなった状態のことです。体に必要な酸素や栄養が送り出せなくなるため、息切れを起こしたり疲れやすくなったりします。他にも足のむくみなどが初期症状として現れます。

一方慢性中毒の場合には関節の痛みや高尿酸血症といった痛風に似た症状が起こる可能性があります。

高尿酸血症とは
尿酸が過剰に産生されたり、排せつする力が低下したりすることで、尿酸の血中濃度が異常に高まった状態のことです。「尿酸」はプリン体が肝臓で分解される際に生成される老廃物です。高尿酸血症が慢性化すると痛風や尿路結石を引き起こし、動脈硬化を促すリスクもあるとされています。

モリブデンの1日当たりの耐容上限量は18歳以上の男性は600μg、女性は500μgと設定されています[4]。

耐容上限量とは
過剰摂取による健康障害を回避するために設定された値のことです。十分な科学的根拠が得られない場合には設定されません。

過剰摂取による健康への影響はほとんど考えられないものの、モリブデンを食事から摂取する際は耐容上限量を守るようにしましょう

[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

3-2.モリブデンの摂取不足による影響

モリブデンは通常の食生活を送っていれば十分に摂取できるため、不足することはないといわれています。

しかし、モリブデンを含まない静脈栄養を施行し長期間食事ができない場合には、摂取不足により頻脈や多呼吸といった症状が起こる恐れがあります。

頻脈とは
成人の安静時の脈拍数が1分間に50回~100回なのに対して、脈拍が1分間に101回以上になっている状態のことです[5]。
多呼吸とは
1分間の呼吸数、深さが共に増加している状態のこと。症状が悪化すると呼吸困難や息苦しさを感じます。

また、同様の状態でモリブデンが不足すると夜盲症を引き起こす可能性もあります。

夜盲症とは
視覚機能に障害が現れる病気のことです。明るい場所から暗い場所に移動すると一時的に物が見えにくくなるものの、次第に網膜の感度が暗さに順応し見えるようになります。これを暗順応と呼び、この順応がうまくいかない状態を夜盲症と呼びます。夜盲症には先天的な原因によるものと、後天的な原因によるものがあります。

[5] 公益社団法人 千葉県医師会「『徐脈』と『頻脈』と『不整脈』」

4.モリブデンを含む食品

モリブデンがどんな食品に含まれているか知りたいという人は多いのではないでしょうか。

ここからはモリブデンを摂取できる食品のうち特に含有量の多い、穀類、豆類、種実類の食品を紹介します。

どのような食品に含まれているのかを確認し、日々の食生活に取り入れてみてくださいね。

4-1.穀類

茶碗によそった玄米ご飯

モリブデンを含む穀類は以下のとおりです。

【モリブデンを多く含む穀類と可食部100g当たりの含有量】

食品名加工状態など含有量(μg)
玄米(ご飯)炊飯34
うるち米(ご飯)炊飯30
フランスパン-20
角型食パン焼き17
山形食パン-16
マカロニ・スパゲッティゆで13
そばゆで11

文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成

パンやご飯、そばなど日頃から食べる機会の多い食品が多く見られますね。

ご飯1杯分(150g)で1日の推奨量のモリブデンを摂取できますよ。

4-2.豆類

油揚げ

モリブデンは豆類にも含まれています。

【モリブデンを多く含む豆類と可食部100g当たりの含有量】

食品名加工状態など含有量(μg)
糸引き納豆-290
いり大豆-290
おから乾燥170
油揚げ97
絹ごし豆腐-69
がんもどき-60
こし練りあん-34

文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成

豆類は穀類と比べてもモリブデンの含有量が多いのが分かりますね。

4-3.種実類

カシューナッツとアーモンド

種実類のモリブデン含有量も紹介します。

【モリブデンを多く含む種実類と可食部100g当たりの含有量】

食品名加工状態など含有量(μg)
いりらっかせい-96
ピーナッツバター-92
らっかせい88
バターピーナッツ-68
フライアーモンド-32
フライカシューナッツ-30
フライへーゼルナッツ-6
いりマカダミアナッツ-5

文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとに執筆者作成

ナッツ類は間食に取り入れやすいので、手軽にモリブデンを摂取できそうですね。

5.モリブデンの摂取推奨量や含有食品について まとめ

モリブデンは輝水鉛鉱から発見された金属であり、人体に欠かせないミネラルの一つです。

ある種の酵素がはたらくのに欠かせません。

モリブデンの1日の摂取推奨量は18歳~74歳の男性は30μg、女性の場合は25μg、75歳以上の男女は25μgです[6]。

これに対して日本人の1日の平均摂取量は225μgであり、大豆製品を多く摂取した場合には1日300μgに及ぶこともあります[6]。

摂取推奨量を大幅に超過していることから、過剰摂取の影響が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、通常の食生活では健康に悪い影響が出ることはほとんどないといわれています。

モリブデンは穀類、豆類、種実類に豊富に含まれています

1日の摂取推奨量や耐容上限量を目安に摂取してみてくださいね。

[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

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