糖尿病の症状は?気付きにくい症状から恐ろしい合併症まで解説

2024年08月23日

2024年11月11日

「糖尿病になるとどんな症状が出るんだろう?」

と疑問に感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。

糖尿病の症状として代表的なものには、喉の渇き、それに伴う多飲、多尿があります。

その他に体重減少や疲労感などの症状も挙げられます。

しかし糖尿病ではかなり進行しなければ症状が現れないことがあり、糖尿病になっていることに気が付いていない方も多いといわれています。

また糖尿病を治療せずにいると血管が傷つき、将来的により重い病気につながったり、命に関わる症状が現れたりする危険があります。

この記事では糖尿病の症状や、糖尿病が招く危険性のある合併症についても解説します。

1.糖尿病とは

ソファに座ってTシャツをまくってお腹を出している男性

「糖尿病ってどんな病気なんだろう?」

糖尿病という病気を見聞きすることはあっても、具体的にどのような病気なのか分からないという方も多くいらっしゃるかもしれませんね。

まずは糖尿病の基礎知識について解説します。

糖尿病は血糖値が高い状態が慢性的に続く病気のことです。

血糖値とは
血液中に含まれるブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。ブドウ糖は体のエネルギー源となる炭水化物(糖質)の一種で、特別な場合を除き脳がエネルギー源にできる唯一の物質です。

血糖値は、健康な方であっても食後には上昇します。

食物の糖質が体内で分解されるとそのうちのブドウ糖が血中に取り込まれ、血糖値を上げるのです。

しかし糖尿病では血糖値を下げるはたらきをする「インスリン」の分泌量が低下したり、効きが悪くなったりすることで血糖値が正常に下がらなくなります。

インスリンとは
血糖値の上昇に反応して膵臓(すいぞう)から出るホルモンです。血糖をエネルギーとして細胞に使わせたり、使い切れなかった血糖を脂肪などに変えて蓄えるはたらきを促したりすることで血糖値を低下させます。

インスリンは血糖値を下げるはたらきをする唯一のホルモンであるため、分泌量が減ったり効きが悪くなったりすると血糖値が高いままになってしまうのです。

糖尿病の病型は主に1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、その他に分けられます。

糖尿病患者のほとんどは2型糖尿病だといわれています。

2型糖尿病は生活習慣や遺伝的な要因によりインスリンの分泌量が低下したり効きが悪くなったりするタイプの糖尿病です。

生活習慣の影響を受けて発症することが多いため、肥満の方や中高年の方に多く見られます。

一方、1型糖尿病は膵臓でインスリンをつくるβ細胞が何らかの原因により破壊されてしまうことで、インスリンをつくれなくなってしまうタイプの糖尿病です。

生活習慣とは関連なく発症するため若い方でも発症するケースがあり、痩せ型の方に多く見られます。

2型糖尿病は気が付かないうちに進行するのに対し、1型糖尿病では症状が突然現れることがあるといわれています。

妊娠糖尿病は妊娠中に初めて糖尿病であると分かったり、まだ糖尿病には至っていないものの血糖値の上昇が認められたりするタイプの糖尿病です。

妊娠中は胎児に常に栄養を与える必要があるため、空腹時の血糖は妊娠していないときに比べて低くなります。

しかし一方で、胎盤から出るホルモンの影響でインスリンの効きは悪くなり、食後の血糖値は上昇しやすくなります。

このため妊娠中は、血糖値が高くなりやすいのです。

その他、糖尿病以外の病気や内服している薬の作用により血糖値が上昇し糖尿病を発症することがあります。

2.糖尿病の症状

血糖値の結果票と錠剤

「糖尿病にはどんな症状があるんだろう?」

糖尿病の多くを占める2型糖尿病は特に、自覚できる症状が現れにくいといわれています。

このため知らず知らずのうちに病気が進行してしまう恐れもあるのです。

ここでは、糖尿病の症状をご紹介します。

糖尿病らしき症状が現れている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

2-1.喉の渇き・多飲・多尿

糖尿病の症状として喉の渇きやそれに伴う多飲、多尿が挙げられます。

こうした症状が現れるメカニズムを解説するために、まず尿がつくられる過程をご説明しましょう。

尿は腎臓によって血液をろ過することでつくられます。

腎臓ではまず、細い毛細血管が丸まった「糸球体」によって血液がこされ、「原尿」と呼ばれる液体になります。

原尿は健康な方では1日におよそ150Lつくられ、ブドウ糖やたんぱく質、ミネラルなどの栄養素を含んでいます[1]。

原尿の99%は「尿細管」で体内に再吸収され、この残りが尿になります[1]。

ブドウ糖も尿細管で再吸収されるため、健康な人の尿にはほとんどブドウ糖は含まれません。

しかし再吸収のはたらきには限界があり、血液中の血糖値の濃度が高くなると再吸収しきれずに糖が含まれたままの尿がつくられてしまいます

糖には水を引き付ける性質があるため、尿に含まれる糖が増えると、それに伴って尿自体の量も増加します。

これが糖尿病によって多尿が起こるメカニズムです。

また尿として排出される水分が増えると、体内の水分が減って脱水を起こします。

このため、喉が渇きこれを補うために水分を多く摂ってしまう多飲の症状が現れるのです。

[1] 一般社団法人 日本腎臓学会「1.腎臓の構造と働き

2-2.疲労感

糖尿病の症状として疲労感が生じることがあります。

これは糖尿病でインスリンの分泌量が減少したり、効きが悪くなったりすることで、血中のブドウ糖をエネルギーとしてうまく使うことができなくなるためです。

ヒトの体はブドウ糖をはじめとする炭水化物(糖質)と脂質、たんぱく質からエネルギーを摂取し、生命維持や身体活動に消費しています。

なかでも糖質から摂取するエネルギーは大きな割合を占めています。

健康な方であれば、糖質を摂取すれば血糖値の上昇に反応してインスリンの分泌が起こり、その作用によって細胞がエネルギー源として血糖を取り込みます。

しかし糖尿病でインスリンの分泌量が減ったり、効きが悪くなったりすると、糖質からうまくエネルギーを得ることができなくなってしまいます

このため、エネルギー不足による疲労感が生じてしまうのです。

2-3.体重減少

糖尿病の症状として体重が減少することがあります

体重はエネルギー摂取量とエネルギー消費量のバランスで増減し、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を下回ると減ります。

ただしこれは食事で取り入れた栄養素から体内で適切にエネルギーをつくれている場合です。

健康であれば、食事で摂取した糖が血中に取り込まれるとインスリンが分泌されます。

インスリンは細胞に血糖をエネルギー源として使わせ、使い切れなかった血糖を「グリコーゲン」と呼ばれる物質や脂質に変え、体内に蓄えるはたらきを促進します。

グリコーゲンは肝臓に蓄えられ、寝ているときや食事をしない時間が続くときには再度ブドウ糖に分解され、エネルギーとして消費されます。

しかし糖尿病でインスリンの分泌量が低下するとブドウ糖をエネルギーとしてうまく使えず、体内の脂肪や筋肉を構成しているたんぱく質がエネルギー源として分解されてしまいます

このため、食べても体重が減ってしまうようになるのです。

2-4.尿の泡立ち

糖尿病の症状として、尿が泡立つことがあります。

これは高血糖による尿糖とたんぱく尿が主な原因となって起こります。

糖尿病があると尿にブドウ糖が混じって尿の粘度を高め、尿の泡立ちを引き起こします。

加えて糖尿病が進行すると腎臓の糸球体が損傷し、たんぱく質が尿に漏れ出すことがあります。

たんぱくには水の表面張力を減らし、薄く伸びた泡の壁が伸びたままにさせ泡が潰れにくくなる「界面活性作用」があります。

このため、たんぱく質が尿に漏れ出すと泡立ちを招きます。

糖尿病により血液がドロドロになるとその血液が糸球体の血管を傷つけてしまいます。

このためたんぱく質が尿に混じってしまうのです。

2-5.感染症にかかりやすい

糖尿病になると感染症にかかりやすく、悪化しやすいといわれています。

例えば風邪や肺炎、膀胱(ぼうこう)炎、腎盂炎(じんうえん)、皮膚炎、歯肉炎などの感染症にかかりやすくなります。

ヒトの体には、体内に侵入しようとする細菌やウイルスなどの異物から体を守るための「免疫」という機能が備わっています。

免疫は自分の体の組織と体外から侵入してきた異物「抗原」を見分け、さまざまな免疫細胞が抗原に攻撃することで病気にかかることを防ぐ仕組みです。

しかし糖尿病で血糖値が高くなると、抗原を見つけたり抗原を攻撃したりする「免疫反応」というはたらきが低下します

また、免疫細胞の一種である「好中球」のはたらきも低下してしまうといわれています。

好中球とは
白血球の成分の一つで、体内にウイルスや細菌が侵入すると取り囲んで食い殺すはたらき(貪食作用)を担っています。

さらに糖尿病の状態では感染症が急激に悪化することも多く、回復するにも時間がかかる傾向にあります。

また感染症にかかると血糖値がいつもよりも上昇するため、糖尿病自体が悪化することもあります。

2-6.傷が治りにくい

糖尿病の症状として傷が治りにくくなることがあります。

高血糖の状態が続くと、血管が傷つき血行が悪くなる場合があります。

血液は栄養素や酸素を全身に届けるはたらきをしているため、血行が悪化すると栄養素や酸素の巡りが悪くなり、傷の治りが悪くなる可能性があるのです。

また糖尿病では、後述する合併症の神経障害の影響で手足の感覚が鈍る場合があります。

感覚が鈍っていると傷やけがなどのダメージに気付きにくくなります。

このため、傷の発見が遅れ適切な処置を行えずに傷の悪化を招いてしまうことがあるのです。

加えて、高血糖による免疫機能の低下により病原体から感染を起こした場合も、傷口の回復が遅れてしまいます

これらの理由により、糖尿病がある場合は傷が治りにくくなる危険があるのです。

2-7.性機能の問題

男性においては、糖尿病による勃起障害(ED)が見られる場合があります

勃起障害とは性交時に挿入できるほど勃起できない状態、あるいは挿入できても最後まで勃起が維持できない状態のことです。

加齢に伴う勃起能力の低下は自然なことであるものの、生活の質が損なわれていると感じている場合は治療が必要です。

糖尿病により血糖コントロールが不良な状態が続くと、細い血管がダメージを受け陰茎への血流が減少し勃起能力が低下します。

また高血糖は勃起に関わる神経にも影響を及ぼすため、勃起に関する指令が送られづらくなります。

これらの理由により、正常な勃起ができなくなってしまうのです。

血糖コントロールを良好に保つことは、男性の性機能を維持するためにも重要といえますね。

3.糖尿病の慢性合併症とその症状

聴診器と採血管と健康診断の結果票

「糖尿病になってしまったら、どんなことに気をつけたら良いんだろう?」

糖尿病で血糖が高い状態を長期にわたって放置していると、血管が傷つけられてしまいます。

これにより糖尿病ではさまざまな合併症が引き起こされます。

慢性合併症は時間をかけてじわじわと進行し、気づかないうちに命に関わる事態に陥っている危険もあるため要注意です。

糖尿病の慢性合併症は大きく「細小血管症」と「大血管症」に分けられます。

細小血管症は糖尿病に特有の合併症で、「網膜症」「腎症」「神経障害」があります

これらは糖尿病の三大合併症と呼ばれています。

また大血管症は大きな血管で起こる動脈硬化によって生じる病気です。

動脈硬化とは
心臓から全身の組織に送られる血液が通る血管である「動脈」の壁が厚く硬くなった状態のことです。血管が狭まったりふさがったり裂けたりしやすくなるため、さまざまな病気が引き起こされます。

動脈硬化は加齢も含めさまざまな要因によって進行しますが、高血糖はその要因の一つです。

動脈硬化によって起こる大血管症には脳梗塞や狭心症、心筋梗塞、末梢(まっしょう)動脈疾患の他、足病変があります

ここでは糖尿病の慢性合併症とその症状について解説します。

合併症は適切に血糖値をコントロールできれば予防できることが分かっているので、どのようなものがあるのか把握しておきましょう

ここでは慢性合併症とその症状について解説します。

3-1.神経障害

糖尿病の慢性合併症に神経障害(糖尿病神経障害)があります。

神経障害は高血糖により神経に不要な物質がたまったり、栄養を供給する血管の血流が低下したりすることで神経のはたらきに異常を来した状態です。

ヒトの体の神経は脳や脊髄から全身に枝分かれして広がっています。

脳と脊髄は神経全体の中心となるため、「中枢神経」と呼ばれます。

一方体の末端まで伸びている神経を「末梢神経」といいます。

末梢神経は体性神経と自律神経に大別されます。

体性神経は痛みなど外部からの刺激を感じる「感覚神経」、筋肉を動かす「運動神経」に分けられ、自律神経は心拍や内臓の機能、体温などを調節しています

高血糖による障害が現れるのは主に末梢神経です。

末梢の神経ほど栄養や血液が届きにくいため、神経障害はまず、足先や手などに現れます。

足先がしびれたような不快感や、足が冷えている、または反対に熱くなっているような感じを覚えます

また足の裏に紙が張り付いている、虫が這(は)っているといった錯覚を生じます

他に、手足の感覚の鈍化、神経痛などの症状も現れます。

なお、手足の感覚が鈍るとけがをしていることに気づきにくくなるため、けがに適切な対処をできず、傷口の化膿(かのう)などを招いてしまう恐れもあるため注意が必要です。

なかには足のけがが感染を起こしていても気付けず、足の切断が必要になるケースもあります

こうした感覚の異常は、感覚神経に障害が起こることによるものです。

なお感覚神経は心臓にも存在します。

心臓の感覚が鈍ると、本来痛みの生じる心筋梗塞などの重大な病気に気付けず、命を落とす危険もあります

また自律神経に障害が起こると、消化器官を正常にはたらかせることができなくなるため、消化不良や吐き気、便秘、下痢などの症状が現れます。

自律神経は血圧や心拍の調節にも関わるため、急な血圧の低下や、頻脈、脈が遅くなる徐脈が起こる場合もあります

この他、自律神経は汗の分泌にも関わるため、汗をかけないという症状も生じます。

また運動神経に異常を来すと、筋力が低下したり、足が変形したりします。

さらに脳神経に障害が及ぶと顔面の動きや感覚、眼球の動きに異常を来します。

口がうまく動かせず飲み物が漏れる、目を閉じられなくなって目が乾くといった症状が見られます。

このように神経障害の症状は非常に多岐にわたるのです。

なお、神経障害は糖尿病の合併症のなかでも早期に現れるといわれています。

手足のしびれや感覚の鈍化などを感じたら早めに医療機関に相談しましょう

3-2.網膜症

糖尿病の代表的な合併症に網膜症(糖尿病網膜症)があります。

網膜症は目の中の「網膜」と呼ばれる組織の血管が出血を引き起こし、視力の低下をもたらす病気です。

網膜とは
目の中に存在するものを見るための神経でできた膜です。レンズの役割をする角膜や水晶体から入ってきた光を電気信号に変え、視神経を通じて脳に伝える役割をしています。

糖尿病網膜症は病状の進行具合によって「単純性網膜症」「前増殖網膜症」「増殖網膜症」に分けられます

初期は、網膜の毛細血管に瘤(こぶ)ができて詰まったり血管の一部が破れて出血したりします。

単純性網膜症は自覚症状がほとんどありませんが、この段階で血糖値を適切にコントロールすれば改善する可能性もあります

このため早期に発見することが重要です。

次の段階の前増殖網膜症では血管が詰まって血液が流れなくなってしまうため、代わりに「新生血管」と呼ばれる血管がつくられるようになります。

新生血管はもろく出血しやすいため、より出血が大きくなります。

この段階で多くの人は目のかすみなどを感じますが、場合によっては自覚症状がないこともあります。

さらに病状が進行すると、新生血管が多くできたり、出血が硝子体(しょうしたい)の中にまで及んだりする状態を増殖網膜症といいます

硝子体はレンズの役割をする水晶体と網膜の間に位置する透明な組織です。

出血によって硝子体が濁ると視力の低下を引き起こします。

また硝子体が網膜を引っ張ることで、「網膜剥離」が起こる恐れもあります。

網膜剝離は眼球の壁から網膜が剝がれ、視力低下を引き起こした状態です。

新生血管の周りには増殖膜と呼ばれる組織ができるため、それが網膜を引っ張って網膜剝離を起こしてしまうのです。

しかしなかには増殖網膜症まで進行しても自覚症状が現れないケースもあり、このような場合には知らず知らずのうちに症状が進行して失明に至ることもあります。

糖尿病による網膜症は、成人の失明の主要な原因です。

網膜症の悪化を防ぐには専門医の受診を定期的に行い、日頃の血糖コントロールを行うことが重要です。

3-3.腎症

糖尿病の慢性合併症に腎症(糖尿病腎症)があります。

腎症は腎臓の機能が低下した状態のことです。

腎臓は血液をろ過し、体に必要なものを再吸収して不要なものを体外に尿として排出する臓器です。

体の水分量やミネラルのバランスを保つはたらきの他、血圧を調整するはたらきもしています。

また血液を弱アルカリ性に保つ、血液をつくるためのホルモンを分泌する、骨をつくるためのビタミンDを活性化するといった役割も果たしています。

このように腎臓はさまざまな重要なはたらきをしていますが、初期の腎症には自覚症状がないといわれています

しかし腎機能が低下するにつれ徐々に症状が現れ、深刻さを増していくのです。

初期の腎症では、体内の余分な水分や老廃物を尿として排出する機能が低下することにより、体がむくんだり、気分が悪くなったりといった症状が現れます

また血圧を調整する機能が低下するために高血圧も見られます。

高血圧とは
血圧(心臓から送り出された血液が動脈の内側の壁を押す圧力)が慢性的に高い状態のことです。血管が常に張り詰めた状態に置かれるため、動脈硬化の原因となります。

進行すると貧血が現れる場合もあります。

さらに腎症が進行し腎機能が10%以下程度になると、「人工透析」が必要となります[2]。

人工透析とは腎臓の代わりとなる機械に血液を通し、老廃物を取り除いたり、ミネラルのバランスを整えたりする治療です。

一般的な「血液透析」と呼ばれる透析法では、一度血液を体外に出し、ダイアライザ(透析機)という機械に通して再び体内に戻します。

血液透析は標準的には1回当たり3~5時間かかり、週3回必要です[3]。

人工透析が必要な状態では、老廃物や水分を排出することができなくなるため、透析をしなければ死を招いてしまいます

このように腎機能の低下は非常に深刻ですが、自覚症状が現れにくいため注意が必要です。

血糖値の高い方は症状の有無にかかわらず定期的に尿検査や血液検査を行うことが勧められます

[2] 一般社団法人 日本腎臓学会「腎不全 治療選択とその実態

[3] 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター「腎症

3-4.大血管症

高血糖は動脈硬化を進め、太い血管を詰まりやすくさせます

これによって起こる病気を大血管症といいます。

大血管症には、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患、足病変などがあります

狭心症は動脈硬化によって心臓に血液を送る「冠動脈」が狭まり、血流が悪くなった状態です。

血液は酸素を供給する役割をしているため、血液が不足すると心筋(心臓の筋肉)は酸素不足に陥ります。

このため胸の痛みなどが現れます。

狭心症が進行し、血管が詰まってしまった状態を心筋梗塞といいます。

心筋梗塞では心筋が酸素不足の状態に陥った心筋の細胞が壊死(えし)を起こすため、対処が遅れると死に至ります。

壊死を起こした細胞は元の状態には戻りません。

なお、糖尿病による神経障害が起こっている場合、心筋梗塞の痛みに気付けず、対処が間に合わないこともあるため注意が必要です。

また脳の動脈が詰まった状態を脳梗塞といいます。

脳梗塞では脳が壊死し、手足のまひや言語障害などの後遺症が残る他、死に至る場合もあります。

高血糖を放置していると、命に関わる病気を発症する恐れがあるのですね。

また、末梢神経動脈疾患は手足の動脈硬化が進行した状態です。

足の血流が悪化するため、足先のしびれや冷えを引き起こし、歩きにくくなっていきます。

さらに足の血管が狭まると安静にしていても痛みを感じるようになります。

最終的には足の組織が死んでしまう「壊疽(えそ)」が起こり、足の切断が必要になるケースもあります

足病変は糖尿病患者に起こる足のトラブルの総称です。

末梢神経動脈疾患の血流低下に加え、感覚障害による感覚の鈍化、免疫機能の低下などにより、感染しやすく、痛みに気付きにくいことから、足にトラブルが起こりやすくなります。

壊疽も足病変の一種です。

このように動脈硬化と関連してさまざまな病気を発症する恐れがあるのですね。

動脈硬化も初期には自覚症状が現れないので注意が必要です。

4.糖尿病の急性合併症とその症状

救急車専用入口の電光看板

「糖尿病には急に発症する合併症もあるのかな?」

糖尿病にはじわじわと進行する慢性合併症だけではなく、急激に異常な高血糖を起こす急性合併症も存在します。

急性合併症には糖尿病ケトアシドーシスと高浸透圧高血糖症候群があります。

これらは感染症や脱水、甘いジュースの飲み過ぎ、治療の中断などがきっかけで起こります。

急性合併症はすぐに治療をしなければ命に関わるため、予防に努め、万一起こった場合にはすぐに対処することが必要です。

4-1.糖尿病ケトアシドーシス

糖尿病ケトアシドーシスは糖尿病の急性合併症の一つです。

糖尿病ケトアシドーシスはインスリンの不足により体が血糖をエネルギー源として利用できず、体脂肪をエネルギー源として分解してしまう状態です。

エネルギー源として脂肪が分解されると「ケトン体」という物質が血中に増え、血液が酸性に傾く「アシドーシス」という状態になります。

このため重篤な脱水状態に陥り、急な喉の渇き、多飲、多尿が見られ、全身の倦怠(けんたい)感が現れます

また腹痛や吐き気などが起こるケースもあります。

加えてインスリンの不足により血糖値が急激に上昇し、ひどい場合には意識を失う昏睡状態に陥るため、早期の発見・対処が必要です。

糖尿病ケトアシドーシスは、2型糖尿病では甘い飲み物の飲み過ぎによって起こるケースがあります。

甘い飲み物を大量に飲むと多量の糖に膵臓(すいぞう)が対応できず、インスリンを十分に分泌できなくなって糖尿病ケトアシドーシスを起こすのです。

また1型糖尿病ではインスリン投与を適切に行えなかった場合や、他の病気で体調が悪い場合に糖尿病ケトアシドーシスを引き起こすことがあります。

発症すると入院治療が必要になるので注意しておきましょう。

4-2.高浸透圧高血糖症候群

糖尿病の急性合併症に高浸透圧高血糖症候群があります。

糖尿病ケトアシドーシスと同様、著しい高血糖と極度の脱水により意識障害を引き起こします

高浸透圧高血糖症候群では、糖尿病ケトアシドーシスほどインスリンの不足は起こらないため、ケトン体の上昇がわずかであることが一般的です。

しかし血糖値の上昇度合いはさらに深刻であるため極度の脱水や意識障害が起こります。

高浸透圧高血糖症候群は2型糖尿病の患者や高齢者に起こりやすいといわれています。

高齢者では肺炎や尿路感染症などの感染症や、嘔吐(おうと)・下痢による脱水、脳梗塞、心筋梗塞などの他の病気がきっかけとなって起こることがあります。

またステロイド薬や利尿薬の服用、高血糖を引き起こすホルモン異常によって起こる場合もあります。

高浸透圧高血糖症候群の治療では、激しい脱水を改善するための点滴や、インスリンの投与が行われます。

5.糖尿病が疑われたら早急に受診しよう

聴診器と健康診断の結果票

糖尿病が疑われる場合、早急に受診しましょう

2型糖尿病の方はある日突然高血糖になるということはまれで、多くの場合知らず知らずのうちに血糖値が上昇しています。

自覚なしに進行してしまう糖尿病を早期発見するには、健康診断が有効です。

定期的に健康診断を受け、糖尿病やメタボリックシンドロームの予兆に気付くことで、食事や運動などの生活習慣を改善し、発症を防ぐことができます

また血糖コントロールを適切に行うことで、合併症の予防にもつながります。

健康診断はしっかりと受け、糖尿病らしき症状が見られる場合にはすぐに病院に行きましょう。

糖尿病の予防については以下の記事で詳しく解説しています。

590_糖尿病 予防

6.糖尿病で見られる症状についてのまとめ

糖尿病の症状には喉の渇きやそれに伴う多飲、多尿が挙げられます。

また体重減少や疲労感、尿の泡立ち、勃起不全などの症状が現れることもあります。

その他、感染症にかかりやすかったり、傷が治りにくかったりします

糖尿病の合併症には慢性合併症と急性合併症があり、慢性合併症は大きく「細小血管症」と「大血管症」に分けられます。

細小血管症に分類される「網膜症」「腎症」「神経障害」は糖尿病の三大合併症と呼ばれています。

また大血管症には動脈硬化の進行によって起こる脳梗塞や狭心症、心筋梗塞、末梢動脈疾患の他、足病変などがあります。

急性合併症には糖尿病ケトアシドーシスと、高浸透圧高血糖症候群があり、発症した場合には早急な治療が必要です。

糖尿病は早く見つけて血糖コントロールをすることで合併症の予防につながります

2型糖尿病の方はある日突然高血糖になるということはまれで、多くの場合、知らず知らずのうちに血糖値が上昇しています。

糖尿病の症状を知り、糖尿病が疑われたら早急に受診すること、定期的に健康診断を受診し糖尿病の発見を見逃さないことが重要です。

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