「中性脂肪の数値が気になっていて、おすすめのサプリを知りたい……」
「中性脂肪を増やさないコツはあるのかな?」
中性脂肪を減らしたいと思う方のなかには、このように考えている方も多いのではないでしょうか。
中性脂肪は食品中の脂質や体脂肪の大部分を占める物質で、人間にとっては重要なエネルギー源の一つです。しかし、摂り過ぎると脂肪として蓄えられ、生活習慣病を引き起こします。
特に、腸のまわりに脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満になると、高血糖や脂質異常、高血圧を引き起こしやすくなります。
生活習慣病予防の一つとしても、中性脂肪を減らすことは非常に重要です。
この記事では、血液中の中性脂肪を減らすのに役立つサプリメントや血液中の中性脂肪を今以上に増やさないためのコツをご紹介します。
健康診断などで中性脂肪の数値を指摘された方や、肥満の予防に取り組みたい方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
1.中性脂肪を減らす効果が期待できる成分
血液中の中性脂肪を減らす効果が期待できる成分として、「n-3系脂肪酸」と「食物繊維」の二つが挙げられます。血液中の中性脂肪を減らす効果が期待できるサプリメントにも配合されていることが多く、成分によっては機能性関与成分として登録されているものもあります。
サプリメントで摂る以外にも、さまざまな食材から摂取することも可能です。普段の食生活に取り入れてみましょう。
【関連情報】 「中性脂肪値が高くなる原因とは?健康上のリスクや改善のポイント」についての記事はこちら
1-1.n-3系脂肪酸
n-3系脂肪酸は、人間の体内では生成できない必須脂肪酸と呼ばれる成分です。n-3系脂肪酸には中性脂肪を下げる効果が認められています。
n-3系脂肪酸は、大きく分けてα-リノレン酸・EPA・DHAの三つに分けられます。α-リノレン酸は植物油、EPA・DHAは魚介類を主な摂取源とする成分です。
厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準」では、現在の日本人のn-3系脂肪酸摂取量の中央値をもとにして、1日の目安量が決められています。
【n-3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)】
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢 | 目安量 | 目安量 |
18~29歳 | 2.0 | 1.6 |
30~49歳 | 2.0 | 1.6 |
50~64歳 | 2.2 | 1.9 |
65~74歳 | 2.2 | 2.0 |
75歳以上 | 2.1 | 1.8 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
栄養バランスの取れた食事を心掛けても、やむを得ずn-3系脂肪酸が不足する場合にサプリメントを利用しましょう。
1-2.食物繊維
食物繊維は、小腸で消化・吸収されずに大腸まで届く成分です。さまざまな生理機能が期待できます。食物繊維が多く含まれる食材は、海藻類やきのこ類、野菜類などです。
小腸での栄養吸収の速度を緩やかにしてくれるので、食後の血糖値の上昇が緩やかになるといわれています。また、食後の血中中性脂肪の上昇を穏やかにするなどの効果も期待されています。
日本人(18~64歳)における食物繊維の1日当たりの目標量は男性で21g以上、女性で18g以上です。また、生活習慣病の発症や死亡率との関連をふまえ、アメリカ・カナダでは理想的な摂取量を1日24g以上としています[1]。
ただし、現在の日本人の平均摂取量は1日あたり14g前後とされ、目標量と比べるとかなり不足している状態です[2]。積極的に野菜類などを取り入れ、食物繊維を少しでも多く摂れるように心掛けることが大切です。
2.中性脂肪が気になる方におすすめのサプリメント6選
ここでは、中性脂肪が気になる方におすすめのサプリメントを6種類ご紹介します。
自分が継続しやすいものを選ぶために、ぜひ参考にしてみてください。
2-1. n-3系脂肪酸が含まれるもの
n-3系脂肪酸が含まれるものは、以下3点をご紹介します。
メイン成分 | DHA:500mg EPA:20mg |
---|---|
機能性表示食品の届出文言 | 本品にはDHAとEPAが含まれます。DHAには、中高年の方の加齢に伴い低下する、認知機能の一部である記憶力、判断力をサポートすることが報告されています。(記憶力:数字に関する情報を記憶し、思い出す力。判断力:数字や文字の情報を認識し、次の行動にうつす力。) DHAとEPAには血中の中性脂肪を低下させる機能があることが報告されています。 |
メイン成分 | DHA:546mg EPA:46mg |
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機能性表示食品の届出文言 | 本品には、DHA・EPAが含まれます。DHA・EPAには中性脂肪を下げる機能があることが報告されています。 |
メイン成分 | DHA(ドコサヘキサエン酸):690mg EPA(エイコサペンタエン酸):170mg |
---|---|
機能性表示食品の届出文言 | 本品にはDHA・EPAが含まれます。DHA・EPAには血中の中性脂肪の値を低下させる機能があることが報告されています。 |
2-2.食物繊維が含まれるもの
食物繊維が含まれるものは、以下3点をご紹介します。
メイン成分 | イヌリン:8.1g |
---|---|
機能性表示食品の届出文言 | 本品にはイヌリンが含まれています。イヌリンは食後の血糖値の上昇をゆるやかにすることが報告されています。また、イヌリンは血中中性脂肪を下げることが報告されています。さらに、イヌリンは善玉菌として知られているビフィズス菌を増やし、腸内フローラを整えることでお通じを改善し、おなかの調子を整えることが報告されています。 |
メイン成分 | イソマルトデキストリン(食物繊維):2130mg GABA:12.3mg |
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機能性表示食品の届出文言 | 本品にはイソマルトデキストリン(食物繊維)が含まれます。イソマルトデキストリン(食物繊維)は、血糖値が上がりやすい方の食後の血糖値や、食後の血中中性脂肪が高めの方の食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする機能が報告されています。食後の血糖値や血中中性脂肪が気になる方に適しています。本品にはGABAが含まれます。GABAは、血圧が高めの方の血圧を低下させる機能があることが報告されています。血圧が高めの方に適しています。 |
メイン成分 | DHA(ドコサヘキサエン酸):690mg EPA(エイコサペンタエン酸):170mg |
---|---|
機能性表示食品の届出文言 | 本品にはイヌリンが含まれています。イヌリンは善玉菌の一種であるビフィズス菌を増やし、腸内フローラを整えることでお通じを改善しおなかの調子を整えること、血中中性脂肪を下げること、食後の血糖値の上昇をゆるやかにすることが報告されています。 |
3.中性脂肪を減らす効果が期待できるサプリメントを選ぶコツ
中性脂肪を減らす効果が期待できるサプリメントをご紹介しましたが、どれを選んで良いか迷っている方も多いのではないでしょうか。
サプリメントの効果を実感するには、自分の食生活に合った続けやすいものを選ぶことが大切です。ここからは、サプリメントを選ぶコツについてご紹介します。
3-1.酸化の対策がされているかチェックする
EPA・DHAが配合されたサプリメントを選ぶときは、酸化防止のための対策がされているかどうかをチェックします。
EPA・DHAなどの魚油は非常に酸化されやすい性質をもちます。そのため、EPA・DHAを主成分とするサプリメントを選ぶときは、抗酸化作用が期待できる成分が配合されているかを確認することが大切です。抗酸化作用がある成分は、アスタキサンチンが代表的です。
3-2.食事全体のバランスをチェックする
サプリメントはあくまで食生活で摂り切れない栄養素を補うための製品です。普段の食生活のバランスがよければ、栄養が不足することはないといえます。
そのため、今の食生活全体のバランスをチェックして、どうしても食事だけでは摂取できない成分を含むサプリメントを選びましょう。
今の食生活で十分栄養が摂れているかを判断するには、厚生労働省と農林水産省が公表している食事バランスガイドを参考にするのがおすすめです。
さまざまな食品群をどのくらい食べたら良いかが分かるように設計されています。
不足している食品群があれば、すぐにサプリメントを利用するのではなく、まずは食事全体のバランスを整えましょう。
忙しくて食事時間が満足に摂れない方や、バランス良く食べても習慣的な摂取量が不足してしまう方はサプリメントを検討してみてください。
3-3.成分名・含有量をチェックする
サプリメントの栄養成分表示を確認し、成分名や含有量をチェックすることも重要です。
成分名については、できるだけ具体的に書かれているサプリメントを選びます。 これは、具体的な物質名が不明な場合だと、有効性や安全性が確かめられないためです。よくある「○○抽出物」「××エキス」「△△菌」「◎◎粉末」「○×酵素」などの記載は、原材料が明確に書かれているかを確認することをおすすめします。
また、成分の含有量が表示されていないサプリメントも、有効性や安全性が確かめられません。「高配合」「たっぷり」など抽象的な表現だけで書かれているサプリでは、本当に必要な量が入っているのか、あるいは必要摂取量以上に配合されているのかが分かりませんよね。
実際に、成分名表示はあっても含有量表示がなかった成分を分析したところ、その成分が入っていなかったという事例もあります。主成分のほか、成分名表示がある栄養素の配合量まで明確に示しているサプリメントを選ぶことが重要です。
3-4.問い合わせ先をチェックする
サプリメントの使用中に質問や不都合があったときに、問い合わせ先が表記されていればすぐに相談できます。パッケージや公式サイトなどに質問・相談ができる問い合わせ先が明記されているかも確認しましょう。製造者、販売者、輸入者の表示は食品衛生法で決められている項目です。
お客さま相談室を設けているメーカーもあるため、購入前にチェックしてみてください。
4.中性脂肪を減らすためにサプリメントを使用する際の注意点
中性脂肪の数値を下げるためにサプリメントを使うときには、いくつかの注意点があります。
より効果的にサプリメントを使うためにも、参考にしてみてください。
4-1.アレルギーに注意する
サプリメントを使うときは、アレルギーが出ないかどうかも注意します。サプリメントのなかには天然由来成分にこだわっていることを前面に出しているものもありますが、天然・自然由来の成分でもアレルギー反応が起こることがあります。特に、子ども、妊産婦、高齢者、アレルギー体質の方などは要注意です。
病院で処方される薬剤と違い、サプリメントは自己判断で購入するものです。アレルギー反応が出るかどうかも含め、飲んだ後の様子も自分で判断しなければいけません。天然・自然由来の成分には特に注意し、体に不調を感じたら、すぐにかかりつけ医に相談してくださいね。
4-2.過剰摂取に気を付ける
サプリメントで見落としがちなのが、過剰摂取のリスクです。サプリメントは医薬品ではなく健康食品ですが、過剰摂取すれば有害な作用が生じることもあります。例えば、ビタミンEを過剰に摂取すると、出血性脳卒中の発症率が高くなると報告されています。
何種類ものサプリメントを飲んだり、目安量以上を摂取したりすると、体に有害に影響が及ぶ可能性があります。サプリメントは多く飲んだからといって疾病が治ったり、より健康が増進したりするものではありません。
4-3.体調に異変があったら使用を中止して保健所に報告する
サプリメントも、体に合わないことがあります。摂取する日の体調や体質によって、具合が悪くなるケースも少なくありません。万一のときに備えて「何を」「どの期間」「どれほどの量」摂取したかメモをしておくのがおすすめです。
サプリメントを飲んだ後に体調に異常を感じたら、すぐに使用を中断して医療機関を受診し、保健所に報告してください。適切な対応が遅れると健康被害が拡大してしまう可能性があるため、必要な処置を受けるよう心掛けることが重要です。
4-4.良い実感が得られないと感じたら思い切ってやめてみる
サプリメントを飲み続けても、思ったより良い実感が得られないときは、思い切ってやめてみるのも一つの手です。それほど効果が感じられないのに、出費だけがかさんでいくのは避けたいですよね。
なかなか辞めどきが分からないという方は、サプリメントによって得られる効果(ベネフィット)と、飲むことで起こる可能性がある損害(リスク)の両方を考えてみるのがおすすめです。コスパや必要性を含めて本当に続けるべきかをよく考え、無理なく続けられるものだけを選びましょう。
5.中性脂肪が増加しやすい方の生活習慣もチェック!
サプリメントは、それだけ飲んでおけば健康になるわけではありません。大切なのは、せっかくサプリメントを利用しているのだから、「油の摂取も控えてみよう」「減塩を始めてみよう」など、生活習慣の改善の一歩とすることです。
サプリメントを買い始めたということは、健康や普段の生活への関心が高まってきた証拠ですよね。これを機に、生活習慣の見直しから始めてみませんか。
まずは、自分の生活が中性脂肪を増加しやすいものになっていないかチェックしてみてください。ここからは、中性脂肪が増加しやすい方の特徴をご紹介します。
5-1.過食している
中性脂肪が高くなる要因として、摂取エネルギーの摂り過ぎが挙げられます。消費エネルギーよりも摂取エネルギーが多くなると、肝臓が余分なエネルギーを脂肪に変えてしまうのです。
甘いものや油もの、お酒をよく摂取する人は要注意です。砂糖の入ったソフトドリンクを飲む習慣がある人も、摂取カロリーを必要以上に摂っている可能性が高いです。
5-2.運動不足
運動で消費されるエネルギーが不足していると、1日の摂取エネルギーが消費されず、中性脂肪として蓄えられる可能性が高まります。
また、運動不足で全身の筋肉量が減ると基礎代謝が落ちるため、1日の消費エネルギーも減ってしまいます。
5-3.糖質の摂り過ぎ
糖質は人間にとって必要不可欠な栄養素ですが、摂り過ぎには注意です。中性脂肪は肝臓の余分な糖質からつくられるため、ジャムやはちみつ、菓子類などの甘いものをよく食べる習慣のある人は中性脂肪が増えやすくなります。
炭水化物の食事摂取量は、男性・女性ともに総エネルギー量の50~65%が目安です[3]。令和元年における20歳以上の総摂取エネルギー量は平均1,915kcalですので、炭水化物では約958~1245kcalが目安量となります[4]。普段の食生活でこの基準を超える炭水化物を摂取している場合は、糖質を摂り過ぎている可能性が高いといえるでしょう。
5-4.脂質(飽和脂肪酸)の摂り過ぎ
脂質は、大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。そのうち、飽和脂肪酸の摂り過ぎは中性脂肪が増える原因です。飽和脂肪酸が多く含まれる食材としては、肉の脂身やバター、ラード、生クリームなどが挙げられます。そのほか、揚げ物や、インスタントラーメンなどの加工食品にも含まれます。
また、飽和脂肪酸は血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やす作用もあるため、肉類や油脂食品を摂り過ぎる生活を続けると生活習慣病のリスクが高まります。
脂質の食事摂取基準は、男性・女性ともに総エネルギー量の20~30%が目安とされています[5]。
日頃から肉中心の食生活になっている方や、揚げ物の多い食事になっている方、間食が多い方は要注意です。
5-5.多量の飲酒をしている
多量の飲酒は中性脂肪の増加につながります。そのほか、高血圧や糖尿病、心疾患や脳血管疾患の原因になることが分かっています。
飲酒量が多いまま放置すると、アルコール性肝硬変など重大な疾患に発展する可能性もあります。酒類は適量なら「百薬の長」ともいわれますが、飲み過ぎはさまざまな疾患のリスクを上げることになるため、注意が必要です。
晩酌の習慣がないとしても、外食する機会があれば大量に飲んでしまうという方もいるかもしれません。また、おつまみに揚げ物を選んでいる方も要注意です。唐揚げやフライドポテトなどは脂質や塩分が多い上に高カロリーなので、肥満や高血圧の原因となってしまいます。
6.中性脂肪が増加しやすい生活を続けることのリスク
これまで解説してきたような生活スタイルを続けていると、中性脂肪がみるみる増えてしまいます。そのまま放置すれば肥満になり、生活習慣病を引き起こすリスクが高まります。
特に、中性脂肪の増加が原因で起こり得る以下の生活習慣病には注意しましょう。
6-1.動脈硬化症
動脈硬化は、動脈血管の壁が硬くなり、弾力性が失われる疾患です。動脈は心臓から全身に血液を運ぶための重要な血管で、酸素や栄養素などを運搬する役目も担っています。通常はしなやかで弾力性がありますが、動脈硬化によって厚く硬くなるとプラークや血栓が生じやすくなり、危険です。
動脈硬化には、比較的太い動脈に粥腫(じゅくしゅ)ができるアテローム動脈硬化、細い動脈が硬化する細動脈効果、動脈の中膜にカルシウムが溜まって硬くなる中膜硬化があります。
アテローム動脈硬化は、血管の内側にドロドロの粥状物質(プラーク)と呼ばれるコブのようなものができてしまい、血管を狭くして狭心症の原因になります。さらに、プラークが破綻して血栓ができると、血管の詰まりを引き起こして心臓に負担がかかります。結果として心筋梗塞や脳梗塞が起こることもあり、命に関わる重大な疾患に発展することもあるのです。
また、細動脈硬化は加齢や高血圧が原因で発症し、進行すると脳出血を起こす危険性があります。脳出血は脳卒中のうち、脳梗塞よりも後遺症が残りやすく死亡率が高い病気です。
中性脂肪そのものが動脈硬化の直接的な原因ではありませんが、中性脂肪が増え過ぎるとLDLコレステロールが増え、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減りやすくなるといわれています。そのため、中性脂肪が多い方ではリスクの高い病気なのです。
動脈硬化は高血圧や喫煙、運動不足などが重なると発症しやすくなるといわれます。普段の生活のなかで思い当たることがある方は、食生活や運動習慣の見直しをおすすめします。
6-2.脂質異常症
脂質異常症は血液中の脂質の数値が高くなる疾患です。中性脂肪のほか、LDLコレステロール・HDLコレステロールの血中濃度の異常がみられた場合に診断されます。
脂質異常症は動脈硬化を進行させて、脳血管疾患や心疾患のリスクを高めます。自覚症状がないままに重大な病気を発症する恐れがあるのが、脂質異常症のこわいところです。
とくに、食生活と運動不足などの生活習慣が原因になります。動物性脂肪やコレステロールの多い食事、糖質・脂質の多い高カロリーな食事をしている方は要注意です。
6-3.糖尿病
糖尿病は、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が異常値を示す疾患です。初期症状がほとんどありませんが、血糖値が高いまま放置すると動脈硬化や脳卒中、虚血性心疾患などの原因になることもあります。
また、糖尿病の3大合併症として網膜症・腎症・神経障害があります。失明や壊疽、透析につながるケースもあり、糖尿病と診断されたら早急に治療をすすめる必要があります。
糖尿病は、高い血糖値が続いている状態で診断されます。具体的には、血液検査で血糖値とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の数値を確かめ、2回以上糖尿病の疑い(糖尿病型)が認められた場合、1回糖尿病型が確認され慢性高血糖症状がみられる場合、過去に糖尿病と診断された場合です。
糖尿病型は、次のうちどちらかを満たした場合に診断されます。
【糖尿病の診断基準】
空腹時血糖 | 126mg/dL以上 |
HbA1c | 6.5%以上 |
一般社団法人 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」をもとに執筆者作成
特に、砂糖の入った甘い飲み物を摂り過ぎている人は糖尿病のリスクが高いです。肥満は糖尿病の要因となりますが、日本人では痩せていても糖尿病になりやすい人がいるとされています。肥満や過体重でなくても注意しなければなりません。
6-4.高血圧症
高血圧症は、日本人の生活習慣病に大きく影響を与える疾患です。
高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧があります。このうち二次性高血圧は、甲状腺などの疾患が別にあって、それが原因で血圧も上がる状態を指します。
一方の本態性高血圧は、特に原因疾患がないのに血圧が上がる状態のことです。日本人のほとんどが本態性高血圧であるとされ、肥満や飲酒、喫煙、ストレスなどさまざまな要因が重なって発症するとされています。
高血圧は、自覚症状がないままにあらゆる生活習慣病のリスクを高めます。特に、動脈硬化の要因となり、脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞を引き起こします。中性脂肪が増えやすい生活をしている方にとっては注意が必要な疾患です。
7.中性脂肪を増やさないために重要なこと
中性脂肪の増加にはさまざまなリスクがあり、サプリメントの使用と合わせて生活習慣を見直すことも重要です。
ここでは、中性脂肪を増やさない生活のポイントについて解説します。
7-1.標準体重を維持できるエネルギー量を意識する
まずは、標準体重を維持できるように心掛けましょう。標準体重は、身長(m)×身長(m)×22で算出できます。
標準体重を維持するために大切なのは、適切な摂取エネルギー量を把握しておくことです。摂取エネルギーが消費エネルギーを上回る状態が続くと肥満になります。肥満は脂質異常症だけでなく、高血圧や糖尿病といった生活習慣病のリスクを高めるので、1日の活動量を確保しつつ、食事量を適量にコントロールすることが必要です。
1日の消費エネルギーは、基礎代謝量・活動エネルギー・食事による産熱で構成されます。このうち基礎代謝とは、早朝空腹時、快適な室内における安静時の代謝量を指します。基礎代謝は参照体重や基礎代謝基準値によって目安が決められています。
成人の1日に必要な推定エネルギー量は以下のとおりです。
【成人男性の推定エネルギー必要量(kcal/日)】
身体活動レベル | I | II | Ⅲ |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 2,300 | 2,650 | 3,050 |
30〜49歳 | 2,300 | 2,700 | 3,050 |
50〜64歳 | 2,200 | 2,600 | 2,950 |
65〜74歳 | 2,050 | 2,400 | 2,750 |
75歳以上 | 1,800 | 2,100 | - |
【成人女性の推定エネルギー必要量(kcal/日)】
身体活動レベル | I | II | Ⅲ |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 1,700 | 2,000 | 2,300 |
30〜49歳 | 1,750 | 2,050 | 2,350 |
50〜64歳 | 1,650 | 1,950 | 2,250 |
65〜74歳 | 1,550 | 1,850 | 2,100 |
75歳以上 | 1,400 | 1,650 | - |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
毎日の摂取量が、必要なエネルギー量を上回らないようにすることが大切です。1日3食、規則正しく適量の食事を心掛けてくださいね。
7-2.アルコールは適量に抑える
飲酒するときは適量飲むように意識することも大切です。適量のお酒は、血液の流れを良くしたり、HDLコレステロールを増やしたり、動脈硬化の予防に役立つといわれていたりします。
アルコールの適量は、純アルコール量に換算して1日20g程度です[6]。
酒類で換算した目安のアルコール量は、以下のとおりです。
【主な酒類の換算の目安】
種類 | ビール (500ml) |
ウイスキー ブランデー (60ml) |
日本酒 (180ml) |
焼酎(35度) (1合180ml) |
ワイン (1杯120ml) |
---|---|---|---|---|---|
アルコール度数 | 5% | 43% | 15% | 35% | 12% |
純アルコール量 | 20g | 20g | 22g | 50g | 12g |
厚生労働省「アルコール」をもとに執筆者作成
1回に飲酒する量を一定の範囲に抑えると同時に、週に1~2回程度の休肝日を設けることも大切です。
お酒を飲むときは自分のペースを守って、空腹状態で飲んだり一気飲みしたりすることは避けましょう。強めのお酒は薄めて飲むようにしてください。
また、おつまみと一緒にたしなむのも良いですね。肝臓がアルコールを分解するのを助けるたんぱく質を含む冷奴、枝豆などがおすすめですよ。
[6]厚生労働省「アルコール」
7-3.糖質の多い食材は控える
糖質を多く含む食材も食べ過ぎないように意識します。甘いお菓子を食べる習慣は改めましょう。
特に注意が必要なのは果物の食べ過ぎです。果物はビタミンやミネラルが豊富に含まれており、健康を維持したい方にとっては魅力的な食材といえます。しかし、果物には果糖(かとう)という糖質が多く含まれています。
果糖は消化吸収が早く、素早くエネルギーに変換できる一方、肝臓における脂肪合成も活発に進みます。そのため、果物を摂り過ぎると中性脂肪が増えやすくなるのです。
毎日の食生活に果物を取り入れるなら、適量を守って食べましょう。りんごや梨なら小1個程度が1日の適量です。また、バナナなら1日1本程度、いちごやぶどうなど小粒の果物は4~5粒程度に抑えておけば問題ありません。
飲み物に含まれる糖質も要注意です。ジュースや炭酸飲料などは糖質が多く含まれており、サイダーでは100ml中に砂糖類が約10g(40kcal相当)、500mlのペットボトルに換算すると200kcalほどになります[7]。飲み物に入っている糖質は、食べ物に入っている糖質よりも吸収が早く、予想以上に大量に摂れてしまうので注意が必要です。
ペットボトル飲料やジュース類を多量に飲むことで、急激な血糖値上昇を引き起こすペットボトル症候群も問題になっています。重度の場合は意識朦朧や昏睡などの症状がみられることもあるようです。
日頃、炭酸飲料、ジュース・果実飲料、ミルクや砂糖入りのコーヒー飲料などをよく飲む方は、水やお茶といった砂糖を含まない飲み物に置き換えたり、飲む機会そのものを減らしたりすることが大切です。
[7] 厚生労働省「嗜好飲料(アルコール飲料を除く)」
7-4.油脂類は控えめにする
脂質の摂り過ぎも中性脂肪を増やす原因になるため、油脂類の摂り方にも注意します。特に揚げ物は油が多くなりやすい料理ですので、なるべく控えてくださいね。バターなどの乳製品、レバー、魚卵、マヨネーズなどの動物性食品にも、コレステロールが多く含まれていますので、摂り過ぎないよう意識することが大切です。
また、肉類には飽和脂肪酸という脂質が多く含まれています。飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪やコレステロールを増加させる作用があるとされ、脂質異常症の原因になります。肉を使った料理を作るときは、下茹でや湯通しをしたり、調理前に脂身や皮を取り除いたりして、脂質を減らす工夫をしてみてください。
7-5.良質の油を使用する
油脂類は摂り過ぎには注意したいものの、体に良い脂質もあります。そのため、油を使うとき質も意識することが重要です。
具体的には、オリーブ油や菜種油といったオレイン酸や、青魚に多く含まれるDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸です。特に、不飽和脂肪酸は中性脂肪やコレステロールを低下させ、動脈硬化をはじめとする生活習慣病予防に効果的とされています。
1日1食は主菜に魚料理を選びましょう。調理や後始末が面倒に感じるなら、切り身や缶詰などでもOKです。食事を楽しむことも大切にして、自分のペースで取り入れてみてくださいね。
7-6.食物繊維を積極的に摂る
中性脂肪を増やさないためには、糖質や脂質の吸収を抑えるはたらきがある食物繊維を積極的に摂取しましょう。歯ごたえがある食材も多く、満足感を感じやすいので過食の防止にもなるのがメリットです。
また、日本では、野菜の摂取量は1日350gが推奨されています[8]。自分の食生活を振り返り、350gに達していない場合は意識して摂取するよう心掛けましょう。
普段から野菜を摂る習慣がない方や、より多く摂取したい方は、以下のような工夫が役立ちます。
・サラダやおひたし、煮物などの小鉢を1日3食用意する
1食で350gの野菜を摂るのは難しいです。3食に分けて野菜不足を補いましょう。ほうれん草のおひたしや切り干し大根など、野菜を使ったおかずを作り置きしておくと、1品増やしたいときにも役立ちます。
・煮る、炒める、焼くなどの加熱調理や、せん切りやすりおろしでかさを減らす
野菜は歯ごたえがあり、かさが多いため満腹感が感じられます。一方、かさが多いと食べにくいことがあるかもしれません。1日の摂取目標を達成できるよう調理方法を工夫してみてはいかがでしょうか。
プチトマトやブロッコリーなど、簡単に調理できる野菜を選ぶ
調理に手間のかかる副菜は、用意するのが面倒になってしまうかもしれません。洗うだけ・茹でるだけで食べられるような野菜を選ぶと、手軽に摂取しやすくなります。
[8] 厚生労働省「健康日本21(第二次)」
7-7.有酸素運動を習慣化する
有酸素運動は脂肪を燃料とするため、中性脂肪やLDLコレステロールを減らすことが期待できます。エネルギー源が体脂肪に切り替わるのは20分頃からと言われており、脂肪の減少を目的とする場合は長時間続けられる運動メニューを選びましょう。
生活習慣病を予防するには、1日で合計30分以上の運動を毎日継続することが望ましいとされています[9]。おすすめの運動メニューは、ウォーキング、スロージョギング、サイクリングなどです。
とはいえ、運動習慣が全くなかった方にとって、急に30分以上の時間を取るのが難しいかもしれません。そのため、運動不足の自覚がある方は、まず普段の生活に+10分の運動を意識してみてください。
普段の生活に取り入れられる工夫は以下のとおりです。
- 自転車で通勤する
- 目的地の手前で降りてひと駅分歩く
- エレベーターやエスカレーターを使わず階段でのぼる
- 買い物に歩いて行く
- 窓ふきや風呂掃除などの家事をこまめに行う
1日+10分ができるようになったら、ウォーキングに挑戦してみましょう。自分のペースで始めて、慣れてきたらほかのエクササイズにも挑戦してみてください。
有酸素運動は継続が大切です。自分が楽しく長く続けられる方法を探してみましょう。
[9]厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症を改善するための運動」
8.中性脂肪に関わるサプリについてのまとめ
中性脂肪を減らす効果が期待できるサプリメントは、多くの種類があります。サプリメントを選ぶときは、配合されている栄養素の量や成分名が明記されているもの、メーカーの問い合わせ先が示されているものを選ぶと安心です。
また中性脂肪の数値は、糖質や脂質の摂り過ぎや運動不足、過度の飲酒などさまざまな要因が重なって増加していきます。中性脂肪の数値が高いまま放置しておくと、糖尿病など生活習慣病の原因になったり、心疾患や脳血管疾患など命に関わる重大な疾患に発展したりすることもあります。
健康を維持するには、サプリメントの摂取目安量を守って使いつつ、日々の生活習慣を見直すことも視野に入れていきましょう。