「たんぱく質ってたくさん摂っても大丈夫なの?」
「たんぱく質を摂り過ぎるとどんな影響があるんだろう?」
このように疑問に感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。
たんぱく質は筋肉や内臓を構成するほか体内の重要な機能にも関わる成分で、不足するとさまざまな不調の原因になるとされています。
しかし一方でたんぱく質を摂り過ぎることで腸内環境が乱れたり病気の原因になったりすることもあるといわれているのです。
健康の維持のため十分に摂取しなければならない一方で過剰摂取によっても体に悪影響を及ぼすとなると、どのくらい摂れば良いのかわからないですよね。
そこでこの記事ではたんぱく質を摂り過ぎてしまった際の影響や、たんぱく質の一日当たりの摂取目安量、たんぱく質を摂取する上での注意点を詳しく解説します。
健康的な食生活を目指したいという方はぜひ参考にしてくださいね。
1.たんぱく質とは
「そもそもたんぱく質ってどんな成分なんだろう?」
たんぱく質が体にとって重要ということは分かっていても、具体的にどんな成分なのかは知らないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
たんぱく質は炭水化物や脂質と並ぶ「エネルギー産生栄養素」の一つで、全ての動植物の細胞を作る主な成分とされています。
食品成分でもあり、肉類や魚介類、乳製品、卵などの動物性食品、豆類や穀物などの植物性食品に豊富に含まれています。
またたんぱく質は約20種類[1]のアミノ酸から作られています。
たんぱく質は筋肉や内臓、皮膚や髪の毛などを構成する成分であるとともに、健康維持のため体内のさまざまな機能を調整するホルモンや消化吸収などの化学反応に欠かせない酵素など体内の機能を調整する重要な成分とされているのです。
たんぱく質が不足すると体の抵抗力が低下して風邪などの感染症のほかさまざまな病気にかかるリスクが高まり、筋力が低下する恐れもあります。
そのため不足しないよう摂取する必要があるのですね。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸」
2.たんぱく質の取り過ぎによる影響
「でも、たんぱく質って摂り過ぎても大丈夫なの?」
というのが最も気になるところですよね。
たんぱく質は不足するほか摂り過ぎても体に悪影響を及ぼすことがあります。
ここではたんぱく質を摂り過ぎることによる影響を解説します。
影響1 脂質の過剰摂取につながる恐れがある
たんぱく質を摂り過ぎると脂質の過剰摂取につながる恐れがあります。
特に肉類や魚類、卵などの動物性食品には脂質の一つである「コレステロール」が多く含まれているため注意が必要です。
通常、食事からコレステロールを摂取しても体内で調整されるため健康に悪影響はおよびません。
しかしコレステロールを過剰に摂ると体内でのコレステロールの調整が困難になり、LDLコレステロールの値が高くなってしまうことがあるのです。
LDLコレステロールが増えると血管内でドロドロの物質となって蓄積し、血流が悪くなったり血液の塊ができて血管内で詰まったりする「動脈硬化」を生じるリスクを高め、心臓病など命に関わる疾患の原因になるのです。
たんぱく質を摂取する際は動物性食品ばかり摂ることのないよう気を付けたいですね。
影響2 腸内環境が乱れる
たんぱく質の取り過ぎは、腸内環境を乱れさせることがあるとされています。
これはたんぱく質中心の食事を摂ることで腸管内に悪玉菌が増殖するためです。
腸管内には悪玉菌のほか善玉菌とその中間層の菌が存在し、互いにバランスを取りながら腸管内の環境を維持しています。
健康な状態では悪玉菌は少数ですが、たんぱく質の過剰摂取によって増殖し腸内環境を乱れさせてしまうことがあるのです。
腸内環境が乱れると便通が悪くなるほか肥満や老化の促進、糖尿病など病気の原因になるともいわれています。
腸内環境が乱れると全身の病気につながることもあるのですね。
影響3 尿路結石症の原因になる
たんぱく質を摂り過ぎると尿路結石症の原因になることもあります。
特に肉や魚、卵などの動物性たんぱく質を摂り過ぎると尿の中に「尿酸」が多くなり尿路結石症の原因になりやすいとされています。
尿路結石症になると血尿や腰背部の激しい痛みが生じるほか、尿が出なくなったり残尿感や排尿痛などの不快な症状がみられたりすることもあります。
尿路結石症を生じる排尿に関連したさまざまなつらい症状が生じることがあるのですね。
影響4 腎機能に悪影響を及ぼす可能性がある
たんぱく質を摂り過ぎると腎機能に悪影響を及ぼす可能性があるともいわれています。
腎臓は、たんぱく質を摂取し体内で分解する際に発生した老廃物を尿として排出する役割があります。
しかしたんぱく質を摂り過ぎると体内で老廃物が大量に発生するため腎臓に負担が掛かってしまうのです。
また、ある研究では高齢者など腎臓の力が低下している方がたんぱく質を摂り過ぎると、腎機能が低下する可能性があるとの報告もあります。
しかしたんぱく質の過剰摂取と腎機能に関連した研究にはいまだに多くの課題が残されており、今後も調査が必要であるとされています。
一方厚生労働省では、健康な人の場合ではたんぱく質をある程度の期間過剰に摂取しても腎機能への影響はほとんどないとしています。
どちらの見解からもたんぱく質は摂取目安量を守り、摂り過ぎないよう注意したほうが良いでしょう。
3.たんぱく質の1日当たりの摂取目安量
「じゃあ、たんぱく質ってどのくらい摂ったらいいの?」
と気になった方もいらっしゃることでしょう。
たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量を以下に紹介しましょう。
【たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量】
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18歳〜29歳 | 65g | 50g |
30歳〜49歳 | 65g | 50g |
50歳〜64歳 | 65g | 50g |
65歳〜74歳 | 60g | 50g |
75歳以上 | 60g | 50g |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年度版」をもとに執筆者作成
また妊婦や授乳婦の方は胎児の発育や授乳によるたんぱく質の喪失を補うためより多くのたんぱく質を摂取するよう推奨されています。
【妊婦・授乳婦のたんぱく質の1日当たりの摂取推奨量】
妊婦 中期 | 55g |
妊婦 後期 | 75g |
授乳期 | 70g |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年度版」をもとに執筆者作成
状況によって必要なたんぱく質の量は変わると考えられるのですね。
食事摂取基準は標準的な体格・ライフスタイルの方を対象としていますが、一般的に運動をしている方や筋肉をつけたい方は体重1kg当たり2gのたんぱく質を摂るのが良い [2]ともいわれています。
たんぱく質が不足すると筋肉がエネルギー源として分解されてしまう可能性があります。
体を動かしたり筋トレしたりしている方はたんぱく質を多めに摂るよう心掛けるのが良いでしょう。
とはいえ、数字だけ見てもどんな食品をどのくらい食べれば摂取推奨量を満たせるのかわからないですよね。
次に紹介するたんぱく質が含まれる食品を参考に1日のたんぱく質量を計算してみましょう。
[2] 一般社団法人 日本プロテイン協会「誰でもわかるプロテインの基礎知識」
4.たんぱく質を含む食品
「たんぱく質って、何にどれくらい含まれているんだろう?」
というのも気になるところですよね。
たんぱく質はさまざまな食品に含まれていますが、摂取の際にはその量だけでなく質も考えることが重要だと考えられます。
実は食品に含まれるたんぱく質の体内での利用率はものによって異なります。
これは、たんぱく質を構成する「アミノ酸」の組成によって生じる違いです。
たんぱく質の利用率は必須アミノ酸がどのようなバランスで含まれているかによって異なり、 これを表す指標として「アミノ酸スコア」というものがあります。
アミノ酸スコアは食品中のたんぱく質に必須アミノ酸がヒトの体にとって望ましい量に対しどれくらい含まれているかを表すもので、100を上限としています[5]。
アミノ酸スコアが高ければ、体内での利用率が高い「良質なたんぱく質」だといえるのです。
良質なたんぱく質食品は肉や魚、卵など動物性食品に多いといわれていますが、植物性食品のなかでも大豆や豆類は多くのたんぱく質を含み、アミノ酸スコアも高い傾向にあります。
ここではたんぱく質を多く含む食品とそのアミノ酸スコアをご紹介しましょう。
4-1.たんぱく質を含む動物性食品
動物性食品はたんぱく質含有量が多く、アミノ酸スコアも高い傾向にあります。
動物性食品のたんぱく質含有量とそのアミノ酸スコアを確認してみましょう。
【動物性食品の可食部100g当たりのたんぱく質含有量とアミノ酸スコア】
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 | アミノ酸スコア |
---|---|---|---|
くろまぐろ(赤身) | 生 | 26.4g | 100 |
鶏ささみ | 生 | 23.9g | 100 |
鶏むね肉 | 皮なし、生 | 23.3g | 100 |
豚ロース(赤肉) | 生 | 22.7g | 100 |
プロセスチーズ | - | 22.7g | 100 |
まさば | 生 | 20.6g | 100 |
牛リブロース(輸入) | 脂身付き、生 | 20.1g | 100 |
えび(バナメイえび) | 生 | 19.6g | 100 |
卵(全卵) | 生 | 12.2g | 100 |
普通牛乳 | - | 3.3g | 100 |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition : report of a joint FAO/WHO/UNU expert consultation 」をもとに執筆者作成
動物性食品には良質なたんぱく質が豊富に含まれていることが分かりますね。
ただし肉や魚には脂質を多く含むものもある点には注意が必要です。
4-2.たんぱく質を含む植物性食品
植物性食品からもたんぱく質を摂取することができます。
植物性食品のたんぱく質含有量とそのアミノ酸スコアを確認してみましょう。
【植物性食品の可食部100g当たりのたんぱく質含有量とアミノ酸スコア】
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 | アミノ酸スコア |
---|---|---|---|
黄大豆(米国産) | 乾燥 | 33.0g | 100 |
らっかせい | いり | 25.0g | 87 |
油揚げ | 生 | 23.4g | 100 |
納豆 | - | 16.5g | 100 |
えだまめ | 生 | 11.7g | 100 |
そらまめ | 生 | 10.9g | 100 |
木綿豆腐 | - | 7.0g | 100 |
グリンピース | 生 | 6.9g | 100 |
ブロッコリー | 生 | 5.4g | 100 |
絹ごし豆腐 | - | 5.3g | 100 |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition : report of a joint FAO/WHO/UNU expert consultation 」をもとに執筆者作成
一般的に植物性食品の方がアミノ酸スコアは低い傾向にあるといわれますが、たんぱく質源として利用できるもののアミノ酸スコアは概ね100です。
特に大豆やらっかせい、油揚げなどは肉や魚と同等のたんぱく質を含んでいますが、1食当たりの摂取量を考えると動物性食品の方が効率良くたんぱく質を摂取できると考えられるでしょう。
肉や魚からもしっかりたんぱく質を摂るよう心掛けた方が良いと考えられますね。
5.たんぱく質を摂取する上での注意点
「たんぱく質は摂取目安量を守っていれば大丈夫なの?」
このように感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここではたんぱく質を摂取する上での注意点を三つ解説しましょう。
注意点1 摂取不足にも注意する
たんぱく質は過剰摂取だけでなく不足にも注意する必要があります。
冒頭でも解説したとおり、たんぱく質は体を作る要素となるほか、ホルモンや酵素など体内の機能を調整する成分としてもはたらいています。
そのため不足すると筋力や免疫力の低下などさまざまな不調の原因になるのです。
特に食事摂取量が少なくなりがちな高齢者は注意が必要です。
たんぱく質は不足することでもさまざまな影響が生じるのですね。
肉類が食べにくいという方はひき肉を活用するほか、食材を細かくしたり食べやすいようとろみを付けたりして調理すると良いでしょう。
注意点2 脂質の量に気を付ける
たんぱく質を摂取する上では脂質の量にも気を付けましょう。
たんぱく質だけでなく脂質も多く含む食品は、乳製品や肉類、魚類、卵などの動物性食品です。
しかし動物性食品は良質なたんぱく質でもあるため極端に減らすことは好ましくありません。
そのため植物性たんぱく質を取り入れながらバランス良くたんぱく質を摂取するようにしましょう。
植物性食品の中でも良質なたんぱく質とされる大豆製品やHDLコレステロールを増やす作用のある青魚などを取り入れると良いでしょう。
また筋トレ中などでたんぱく質を効率良く摂取したいという方はいわゆる「プロテイン」と呼ばれるたんぱく質サプリメントを利用するのも良いかもしれませんね。
注意点3 食事のバランスが偏らないようにする
食事のバランスが偏らないようにすることも重要です。
たんぱく質ばかりを意識してたくさん摂ったり減らしたりすると、他の栄養が不足してしまうことがあります。
また食事の回数を減らすなどすると一度の食事の量が増えてしまったり代謝が低くなってしまったりすることもあるのです。
このような食事の乱れは肥満や貧血のほかさまざまな病気の原因になります。
健康を維持するために栄養のバランスが取れた食事を一日三食摂るようにしましょう。
6.たんぱく質の摂り過ぎについてのまとめ
たんぱく質は体を構成する成分であるほか体内の重要な機能を調整するために欠かせない成分です。
たんぱく質の摂取量が不足すると筋力や免疫力の低下などさまざまな不調の原因になります。
しかしたんぱく質は摂り過ぎることでも腸内環境の悪化や尿路結石症の原因になるなど健康に悪影響を及ぼすことがあるのです。
そのため過剰摂取を避け、適正量を摂取することが大切です。
またたんぱく質を摂取する上では脂質の量に気を付け、食事のバランスが偏らないようにも注意しましょう。