「ダイエット中はタンパク質を摂った方が良いっていうけど、どうして?」
「プロテインを飲んだ方が良いのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
タンパク質は体に欠かせない栄養素でカロリー源となる「エネルギー産生栄養素」の一つです。
体の組織をつくる重要な役割を果たすという点においても重要な栄養素だといえます。
この記事ではダイエットにタンパク質を摂るべき理由や健康的に痩せるポイントを解説します。
1.タンパク質とは?
そもそもタンパク質がどのようなものか、皆さんご存じでしょうか。
名前はよく聞くけれど、いわれてみればタンパク質がどんなものか説明できないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
ダイエットとタンパク質の関係について解説する前に、まずはタンパク質がどのようなものなのかご説明しましょう。
タンパク質は、炭水化物(糖質)・脂質と並び、体のエネルギーとなる「エネルギー産生栄養素」の一つです。
【関連情報】 「ダイエットを成功させる食事とは?今すぐ始められるコツ10選を解説」についての記事はこちら
その他に体内で細胞を構成し筋肉や臓器、皮膚、髪の毛などの材料となったり、ホルモンや酵素、抗体などの体を調節する機能の成分として使われたりもしています。
体から水分を除いて、残った分の約50%はタンパク質でできているのです[1]。
タンパク質は生命の維持に欠かせない栄養素なのですね。
タンパク質は20種類ある「アミノ酸」という物質がたくさん結合してできており、種類によって構造や性質、はたらきが大きく異なります[1]。
アミノ酸は体内でつくることができない9種類の必須アミノ酸と体内で合成が可能な11種類の非必須アミノ酸に分けられます[2]。
必須アミノ酸がバランスよく含まれ、体内での利用率が高い卵類や肉類、魚類や大豆などは「良質なタンパク質」と呼ばれています。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「タンパク質」
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸」
2.ダイエット中にタンパク質を摂るべき理由
ダイエット中はカロリー制限を行う方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
「タンパク質にはカロリーがあるのに、どうしてダイエット中にしっかり摂ることを勧められているの?」
と疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ダイエット中にタンパク質を摂るべきなのは、タンパク質が筋肉の材料となるためです。
ヒトはタンパク質、炭水化物(糖質)、脂質からエネルギーを得ていますが、消費したカロリーより摂取したカロリーの方が多かった場合、余った分は体脂肪として体内に蓄えられてしまいます。
食事から摂取するカロリーを制限すると、体内に体脂肪として蓄えられていたエネルギーを消費することになるため、痩せることができるのですね。
しかし、カロリー制限を行う際に蓄えられていた脂肪を使い切ってしまうと、筋肉中のタンパク質を分解しエネルギー源とするため、筋肉量が減りやすくなるといわれています。
筋肉が減るとそれに伴って「基礎代謝」が低下し、消費カロリーも減少してしまいます。
カロリー消費というと運動のイメージが強いかもしれませんが、基礎代謝はヒトの消費カロリーの約60%を占めています [3]。
つまり、痩せやすい体になるには筋肉量を増やすことが重要なのですね。
ダイエット中でカロリー制限を行っているという方も、タンパク質が不足しないよう注意するのがポイントだといえるでしょう。
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」
3.タンパク質の1日の摂取量の目安
「タンパク質が重要なのは分かったけど、どれくらい摂れば良いの?」
このように気になった方もいらっしゃるかもしれませんね。
厚生労働省は、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために各栄養素をどれくらい食事から摂取すべきなのかという基準を示しています[4]。
18歳以上の男女のタンパク質の食事摂取基準は以下のとおりです。
【タンパク質の1日当たりの食事摂取基準(g)】
男性
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 |
---|---|---|
18〜29歳 | 50 | 65 |
30〜49歳 | 50 | 65 |
50〜64歳 | 50 | 65 |
65〜74歳 | 50 | 60 |
75歳以上 | 50 | 60 |
女性
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 |
---|---|---|
18〜29歳 | 40 | 50 |
30〜49歳 | 40 | 50 |
50〜64歳 | 40 | 50 |
65〜74歳 | 40 | 50 |
75歳以上 | 40 | 50 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
「タンパク質を十分に摂るのは意外と大変なんだな……」
と驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」によれば、タンパク質の1日当たりの平均摂取量は20歳以上の男性で78.8g、20歳以上の女性で66.4gとなっています[5]。
どの年代も食事摂取基準における推奨量以上のタンパク質を摂取できているので、不足を過度に心配する必要はないでしょう。
ただしダイエットのためにカロリーの低い野菜ばかり食べているなどしている方はタンパク質が不足している可能性もあるので食生活を見直してみてくださいね。
[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[5] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
4.健康的に痩せる食事のポイント
「健康的に痩せるにはどうしたら良いんだろう?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここでは健康的に痩せるために意識しておきたい食事にまつわるポイントをご紹介しておきましょう。
ポイント1 摂取カロリーを適正に抑える
ダイエットの際にカロリー制限が重要となることは皆さんご存じですよね。
ダイエットでは摂取カロリーを消費カロリーより小さくする必要があるため、日々の摂取カロリーを適正に抑えることが重要です。
ご自分の消費カロリーを把握しないまま、なんとなくカロリーを抑えているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
適切なカロリーを摂取していないと、体に必要なエネルギーを補給できなかったり、反対にダイエットがうまく進められなかったりしてしまいます。
まずは1日に摂取するカロリーの目安を決めることから始めましょう。
ここでは、「標準体重」を目指す場合の1日の摂取カロリーを求める方法をお伝えします。
ご自身の身長における標準体重に、生活習慣病の食事指導において用いられる体重1kg当たりの推定必要カロリーを掛け合わせてみましょう。
消費カロリーは運動量によっても異なるため、先にご自身の「身体活動レベル」を確認してください。
【身体活動レベルの基準】
レベル | 定義 |
---|---|
レベルⅠ(低い) | 生活の大部分を座って過ごし、あまり体を動かすことがない場合 |
レベルⅡ(普通) | 座った状態でいることが多いが、職場内での移動や立った状態での作業・接客などを行ったり、通勤や買い物で歩いたり、家事や軽いスポーツをしたりする場合 |
レベルⅢ(高い) | 移動や立っての作業が多い仕事に従事している、または余暇に活発な運動を行う習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
以下が、身体活動レベル別・年代別・男女別の推定必要カロリーです。
【体重1kg当たりの推定必要カロリー】
男性
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 35.5kcal | 41.5kcal | 47.4kcal |
30〜49歳 | 33.7kcal | 39.3kcal | 44.9kcal |
50〜64歳 | 32.7kcal | 38.2kcal | 43.6kcal |
65〜74歳 | 31.3kcal | 36.7kcal | 42.1kcal |
75歳以上 | 30.1kcal | 35.5kcal | - |
女性
身体活動レベル | Ⅰ(低い) | Ⅱ(普通) | Ⅲ(高い) |
---|---|---|---|
18〜29歳 | 33.2kcal | 38.7kcal | 44.2kcal |
30〜49歳 | 32.9kcal | 38.4kcal | 43.9kcal |
50〜64歳 | 31.1kcal | 36.2kcal | 41.4kcal |
65〜74歳 | 30.0kcal | 35.2kcal | 40.4kcal |
75歳以上 | 29.0kcal | 34.2kcal | - |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
例えば155cmの20代女性の場合、標準体重が52.855kg、身体活動レベルが普通なら1日の必要カロリーは2,045kcal(小数点以下四捨五入)となります。
ご自分の状況に該当する必要推定カロリーを確認してみてくださいね。
ポイント2 タンパク質を十分に摂る
カロリー制限によって筋肉が落ちると、基礎代謝量が減ってその分カロリーを消費しにくい体になってしまいます。
筋肉が落ちてしまわないよう、カロリー制限をする際にもタンパク質は十分に摂るよう心掛けましょう。
例えば以下のような食品はタンパク質が豊富に含まれています。
【タンパク質を豊富に含む食品と可食部100g当たりのタンパク質含有量およびカロリー】
食品名 | 加工状態など | タンパク質含有量 | カロリー |
---|---|---|---|
かつお(春獲り) | 生 | 25.8g | 108kcal |
きはだまぐろ | 生 | 24.3g | 102kcal |
ささみ | 生 | 23.9g | 98kcal |
鶏むね肉 | 皮なし、生 | 23.3g | 105kcal |
豚ロース(赤肉) | 生 | 22.7g | 140kcal |
さけ | 生 | 22.3g | 124kcal |
豚ヒレ(赤肉) | 生 | 22.2g | 118kcal |
豚もも肉(赤肉) | 生 | 22.1g | 119kcal |
牛サーロイン(赤肉) | 生 | 22.0g | 127kcal |
鶏もも肉 | 皮なし、生 | 19.0g | 113kcal |
納豆 | - | 16.5g | 184kcal |
鶏卵(全卵) | 生 | 12.2g | 142kcal |
木綿豆腐 | - | 7.0g | 73kcal |
また食事摂取基準とは別に、一般的に運動をしている方や特に筋肉をつけたい方は体重1kg当たり2gのタンパク質を摂ると良いといわれています[7]。
例えば筋トレを本格的に行っている体重60kgの方の場合、1日に120gものタンパク質を摂るべきだということになります。
これは鶏のささみ約500g分に当たります。
ささみは100g当たり98kcalと低カロリーなのでたくさん食べても比較的カロリーオーバーにはなりにくいと考えられますが、食品から多くのタンパク質を摂取しようとすると、脂質やカロリーの摂り過ぎにつながってしまう場合もあります。
また、タンパク質を摂取するために、鶏のささみを1日に500g食べるような食べ方もあまり現実的ではありませんよね。
カロリーオーバーを避け手軽にタンパク質の摂取量を補うためには、プロテインを適宜取り入れるのもおすすめです。
[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[7] 一般社団法人 日本プロテイン協会「誰でもわかるプロテインの基礎知識」
ポイント3 糖質を制限し過ぎない
糖質を制限すると痩せられると聞いたことがある方も多くいらっしゃるでしょう。
しかし極端な糖質制限は避けた方が良いと考えられます。
糖質とは炭水化物のうち体内に取り入れられエネルギー源となるもののことをいいます。
糖質を摂り過ぎるとエネルギーとして消費しきれず、体内に中性脂肪として蓄積されるため肥満の原因になってしまいます。
糖質制限は糖質を含む食べ物や飲み物の摂取を控えるダイエット法です。
糖質を制限する他は、好きなものを食べても良い、と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
糖質制限はもともと、肥満の原因は炭水化物にあると考えたアメリカ人の医師ロバート・アトキンスが糖尿病や肥満の方に向けて提案した「炭水化物の摂取量を1日当たり50g以下に抑える」という考え方をもとにしています[8]。
しかし、糖質制限には短期的な効果はあるものの、長期的な効果についてはエビデンスが確立されていないというのが現状のようです。
BMI30以上の肥満者を対象に、1日当たり50〜60gを目指してカロリー制限なしの炭水化物の摂取制限を指導したところ、カロリー制限を指導した群と脂質制限を指導した群に比べて6カ月目に大きな体重減少が見られたという研究報告があります[8]。
しかし別の研究によると、6カ月目までは明らかな体重減少のあった低炭水化物群も、1年後には他の群との体重差がなくなるばかりか血中LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が増えたとの報告もあるのです[8]。
また、炭水化物制限による短期的な減量の効果についても、炭水化物を制限することによって結果として摂取カロリーが減っていることが報告されています[8]。
そのため、炭水化物さえ制限すればカロリーを摂り過ぎても痩せられるという解釈は短絡的だといえるでしょう。
日本糖尿病学会は、体重を適正にするためには運動療法とともに積極的な食事療法が必要で、カロリー制限が最優先であるとしています。
現時点では、糖質制限を長期的に行うことの安全性などに対するエビデンスが不足しているという点において、糖質制限はすすめられないとしています。
長期に糖質制限を行うことは効果へのエビデンスが不十分である上、食事を戻せばリバウンドの可能性もあることから、自己判断では行わないようにしてください。
[8] 日本糖尿病学会「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」
ポイント4 食物繊維を十分に摂る
健康的に痩せるためには、カロリーを抑えながらもしっかり食べることが重要であるといえます。
ダイエットのためにはカロリーを制限することも重要ですが、極端な食事制限は栄養不足を招き健康を損なう恐れもあるため、決して健康的であるとはいえません。
そこでカロリーオーバーせずにしっかり食べることに役立ってくれるのが、食物繊維を多く含む食材です。
炭水化物のうち、食物繊維にはほとんどカロリーがないため、ダイエット中の食事の味方となってくれるでしょう。
食物繊維は、便秘の予防など整腸作用を持つ成分として知られていますが、よく噛んで食べることが必要であることから、早食い防止や満腹感を得やすいといったメリットがあります。
また、脂質を吸着して体の外に排出したり食後血糖値の上昇を抑制したりするはたらきもあります。
健康的に痩せるための食事を考える際には、食物繊維を十分摂ることが必須であるといっても過言ではないのかもしれませんね。
食物繊維を多く含む食品には、以下のようなものがあります。
【食物繊維を多く含む食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量(総量) |
---|---|---|
モロヘイヤ | 生 | 5.9g |
ごぼう | 生 | 5.7g |
ブロッコリー | 生 | 5.1g |
えだまめ | 生 | 5.0g |
オクラ | 生 | 5.0g |
しいたけ | 生 | 4.6g |
えのきたけ | 生 | 3.9g |
まいたけ | 生 | 3.5g |
ぶなしめじ | 生 | 3.5g |
キャベツ | 生 | 1.8g |
もやし | 生 | 1.3g |
レタス | 生 | 1.1g |
5.ダイエット中のタンパク質摂取についてのまとめ
タンパク質は、エネルギー産生栄養素の一つとしてカロリー源となるほか、筋肉や皮膚などの材料となったりホルモンや酵素などの成分として使われたりしている栄養素です。
痩せるためにはカロリー制限により脂肪を落としていくことになりますが、消費カロリーを保つためには筋肉量を落とさないようにしなければいけません。
そのために必要なのがタンパク質です。
ダイエットといえばカロリー制限というイメージから、サラダしか食べないなど偏った食事になってしまっている方は、タンパク質が不足している可能性があります。
この記事を参考に、ダイエット中の食事を見直したり運動を取り入れてみたりするなどして、健康的なダイエットを目指しましょう。