「この症状は更年期障害なのかな?」
自分の症状が更年期障害に当てはまるのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。
更年期障害とは更年期に現れる症状が重く、日常生活に支障を来す状態のことです。
更年期障害の主な要因は女性ホルモンの低下といわれていますが、他にもさまざまな要因が影響し合って発症するとされています。
また、更年期障害の症状は身体的、精神的なもののいずれも多岐にわたり、症状が出る年齢や持続期間にも個人差があります。
ひとくくりに更年期障害といっても個人差が大きく、どのように対処したら良いか分からずお困りの方もいらっしゃるかもしれませんね。
この記事では更年期障害の要因や症状、治療法について詳しく解説します。
また完全に予防することは難しいとされていますが、更年期障害の悪化を防ぐためのポイントについても解説します。
更年期障害をうまく乗り切るために役立ててくださいね。
1.更年期障害とは
「更年期障害の症状や原因って何だろう?」
更年期障害の症状や程度は個人差が大きく、自分の症状が更年期障害によるものなのか分からないという方もいらっしゃいますよね。
ここでは更年期障害の定義をはじめ、症状や要因について具体的に解説します。
なお男性にも更年期や更年期障害はありますが、この記事では女性の更年期障害に絞って解説します。
1-1.更年期障害の定義
更年期障害とは、更年期に現れるさまざまな症状のうち、他の病気を伴わない「更年期症状」が日常生活に支障を来すほど重い状態のことです。
閉経の時期には個人差があり、早い方は40代前半、遅い方は50代後半に閉経を迎えますが、日本人の平均的な閉経年齢は50歳前後です[1]。
1-2.更年期障害の症状
更年期障害の症状は身体的なものや精神的なものなどさまざまです。
具体的な身体症状としては火照りやのぼせ、発汗などの「ホットフラッシュ」が代表として挙げられます。
その他にも目まいや動悸(どうき)、頭痛、肩こり、腰や背中の痛み、関節の痛み、冷え、しびれ、疲れやすさなどが挙げられます。
精神症状としては気分の落ち込みや意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠などが挙げられます。
症状の程度も個人差が大きく、症状が何もない方からあってもほとんど気にならない方、寝込んだり何もできなくなったりするほど重たい方までさまざまです。
更年期障害は個人差が大きいことも特徴で、さらに日によっても症状や程度は変化します。
ただし更年期に現れる全ての症状が更年期障害と決めつけずに、これらの症状が他の病気によるものではないことを確認することが必要です。
1-3.更年期障害の要因
更年期障害は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少することによって起こります。
更年期障害の発症にはエストロゲンの減少だけでなく加齢などの身体的要因や、性格や育った環境などの心理的要因、人間関係などの社会的要因などさまざまな因子が影響し合い発症するとされています。
2.更年期障害をうまく乗り切るポイント
更年期障害を予防することは難しいものの、早めに対処することで悪化を防ぐことはできるとされています。
また更年期には「骨粗しょう症」や、動脈硬化による「高血圧」や「糖尿病」などの生活習慣病が起こりやすくなります。
そのため更年期障害を悪化させないことに加え、骨粗しょう症や高血圧などの生活習慣病にならないように気を付けることも大切です。
ここでは更年期障害の悪化や骨粗しょう症、生活習慣病を予防するためのポイントについて解説します。
ポイント1 バランスの良い食事を摂る
更年期障害の悪化を防ぐためにはバランスの良い食事を摂ることが大切です。
エストロゲンには骨の健康を維持するはたらきがあるため、エストロゲンの分泌が減少すると骨粗しょう症のリスクが上昇します。
一般的に高齢女性の骨粗しょう症のリスクが高いといわれているのは、骨芽細胞を活発にするエストロゲンの分泌が減少するためです。
骨粗しょう症にならないためには骨を形成するカルシウムを積極的に摂ることが重要です。
カルシウムについては以下の記事で解説しています。
カルシウムを多く含む食品と効果的な摂り方は?骨の健康を守ろう!
カルシウムは牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品、骨ごと食べられる小魚、豆腐、納豆などの大豆製品、野菜や海藻などに含まれています。
特に牛乳などの乳製品は、効率良くカルシウムを摂ることができます。
また、カルシウムの吸収に必要なビタミンDも十分に摂る必要があります。
2023年に発表された調査結果では、日本における調査対象者の98%が日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミンD不足(<30 ng/mL)に該当すると報告されました[2]。
ビタミンDはいわしやさんま、さけなどの魚や、しいたけやきくらげなどのきのこ類に含まれています。
その他、エストロゲンには悪玉コレステロールを減らし動脈硬化を予防するはたらきがあるとされています。
エストロゲンの減少により更年期は動脈硬化や糖尿病などのリスクが高くなります。
動脈硬化や高血圧、糖尿病などを予防するには摂取カロリーに気を付けて肥満を予防・改善することが有効です。
肥満については以下の記事で解説しています。
肥満とは?判定基準や原因・健康への悪影響・体脂肪の減らし方を解説
また大豆類に多く含まれている大豆イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンに似たはたらきを持つといわれています。
大豆イソフラボンについては以下の記事で解説しています。
大豆イソフラボンとは?はたらきや過剰摂取の影響、摂取目安量を解説
そのため骨粗しょう症の予防や更年期障害に有効とされています。
大豆イソフラボンは煮豆や納豆、豆腐、おからなどの大豆製品に含まれています。
ただし長期間にわたり閉経後の女性が大豆イソフラボン錠剤を多量に摂取することで「子宮内膜症」発症の可能性を高めることが分かっており、過剰な摂取は避ける必要があります。
一つの食品に偏った食事内容ではなくバランスや摂取カロリーなどに気を付けて、更年期障害を乗り切りましょう。
ポイント2 適度な運動を行う
更年期障害の悪化を防ぐためには有酸素運動などの適度な運動を行うことが大切です。
女性ホルモンの分泌量は、脳の「視床下部」や「脳下垂体」というところでコントロールされています。
視床下部は血流や血圧、心拍、発汗、体温などを調整する自律神経や、感情をコントロールするはたらきを担っています。
閉経が近づき女性ホルモンの分泌が減少すると、脳はホルモンをさらに分泌するように視床下部から指令を出します。
しかし機能が低下した卵巣はホルモン分泌に応じることができないため、エストロゲンは不足したままの状態です。
すると脳は混乱状態に陥ってしまい自律神経をつかさどっている視床下部に影響を与え、自律神経のバランスを崩してしまうのです。
有酸素運動は自律神経を整え呼吸を深くし血液循環を良くするため、更年期障害の悪化予防に役立ちます。
体を動かすことで良質な睡眠がとれリフレッシュすることもできます。
また、ウォーキングやジョギングなどの骨に刺激を与える運動は、骨粗しょう症の予防にもなります。
他に有酸素運動は脂質や血糖をエネルギー源としているため、血液中のLDLコレステロールや体脂肪の減少効果も期待でき、肥満や血中脂質の異常、高血糖、高血圧の改善などにも有効とされています。
有酸素運動については以下の記事で解説しています。
有酸素運動の8つの効果とは?おすすめの運動や効果を高めるコツ
ポイント3 ストレスをためない
更年期障害の悪化を防ぐためには、ストレスをためずにうまく解消することがポイントです。
ストレスは血液循環や呼吸器などの機能に影響を与え、動悸(どうき)や息切れ、食欲不振、疲労などを引き起こし、更年期障害を悪化させる要因となります。
更年期に多いストレスには、仕事で管理職やリーダーなどの責任ある役割を任されていることや、子どもの受験や就職、結婚や女性としての自信喪失などが挙げられます。
子育てが一段落し夫と向き合う時間が増えることや、自分の生き方や老後について悩み、ストレスに感じることもあります。
今後のことを考えたり、夫と向き合う良い機会として前向きに捉えたりして、ストレスをためないようにしましょう。
またやりがいのある趣味や仕事に取り組むこともストレスの解消になります。
3.更年期障害がつらい場合は受診する
更年期障害の症状が重く、つらいと感じたり日常生活に支障を来したりする場合は、我慢せずに受診しましょう。
更年期障害の症状には頭痛や肩こりなど、元々体質的に起こりやすいものもあります。
しかし更年期障害ではなく他の病気が原因となっている可能性もあり、受診して他の病気ではないことを確認することが必要です。
全ての症状を更年期障害と思い込むことがないように注意しましょう。
またほとんどの更年期障害の症状は治療により改善が期待できます。
しかし無理をしていると生活の質や仕事の効率が低下してしまうことになりかねません。
無理をせずに早めに受診して、更年期障害をうまく乗り切りましょう。
4.更年期障害の治療法
「更年期障害にはどんな治療法があるんだろう?」
このように疑問に思う方もいらっしゃいますよね。
更年期障害の治療はホルモンを補うことで症状を軽減する方法と、症状そのものに対してアプローチをする方法に分けられます。
ここではその治療法について解説するので参考にしてくださいね。
4-1.ホルモン補充療法(HRT)
更年期障害の治療には「ホルモン補充療法(HRT)」が用いられる場合があります。
これはエストロゲンを補う治療方法で、飲み薬や貼り薬、塗り薬などのタイプがあり、また薬を投与する継続日数や間隔などもさまざまです。
なお子宮を摘出した方と子宮がある方とでは、ホルモン補充療法に用いる薬剤や投与方法が異なります。
子宮がある方には黄体ホルモンを併用する「エストロゲン・黄体ホルモン併用療法」が行われます。
子宮がある方にエストロゲンを単独で投与すると「子宮内膜増殖症」のリスクを増加させることが分かっています。
このため子宮内膜の増殖を抑えるはたらきがある「黄体ホルモン」を併用することで、そのリスクを抑える必要があるのです。
子宮を摘出した方にはエストロゲンを単独で投与するエストロゲン単独療法が行われます。
4-2.症状を緩和する対症療法
更年期障害の症状を緩和するために、漢方薬や向精神薬が使われる場合があります。
漢方薬には、心と体のバランスの乱れを回復させる効果が期待されています。
更年期障害の症状に対しては「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」や「加味逍遥散(かみしょうようさん)」、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」といった漢方薬を中心に、さまざまな処方が用いられます。
当帰芍薬散は体力の低下や冷え性、貧血傾向がある方に、加味逍遥散は体力がなく疲れやすい、不安や不眠を感じやすい方に処方される傾向にあります。
また桂枝茯苓丸は、ある程度体力がありのぼせや下腹部の痛みなどを感じる方に適した漢方薬とされています。
気分や意欲の低下、情緒不安定、不眠などの精神症状が強い場合は、抗うつ薬や抗不安薬、催眠鎮静薬などの向精神薬が処方されることもあります。
さまざまな治療法のなかから自分に合った治療法を見つけるために、主治医とよく話し合いましょう。
5.更年期障害についてのまとめ
更年期障害とは更年期症状が重く日常生活に支障を来す状態のことで、エストロゲンの減少にさまざまな要因が関わって生じます。
症状は身体的なものから精神的なものまでさまざまで、症状が続く期間やその内容、程度などにも個人差があります。
更年期障害を完全に予防することは難しいものの、バランスの良い食事や適度な運動を行うことで悪化を防ぐことはできるとされています。
更年期障害の時期は骨粗しょう症になりやすいため、カルシウムやビタミンDを十分に摂取することが重要です。
他には肥満や生活習慣病にならないように摂取カロリーに気を付け、大豆イソフラボンを適度に摂取すると良いでしょう。
また、ウォーキングや水泳などの有酸素運動を行ったりストレスをためないようにしたりすることも更年期障害の改善に役立ちます。
ただし更年期障害の症状が重く日常生活に支障を来す場合は、我慢せずに受診をしましょう。
治療にはホルモン補充療法や症状を緩和するために漢方薬や向精神薬を使用する方法があります。
ほとんどの更年期障害の症状は治療により改善が期待できるとされています。
無理をせずに早めに受診して、更年期障害をうまく乗り切りましょう。