「会社の健康診断で高血圧を指摘されてしまった。」
「血圧を下げるために運動を始めたいけど、何から始めるべきか分からない。」
このように、高血圧でお悩みでしょうか?高血圧は自覚症状がないことが多く、放置しておくと脳卒中や心臓病といった重大な病気につながるリスクがあります。一度高血圧と診断されたら、少しでも早く改善を目指していきましょう。
高血圧の改善を目指すには、食生活の見直しと、運動療法が効果的です。とはいえ、普段運動の習慣がない人にとってはハードルが高く感じるものですよね。
今回は高血圧改善のために運動を始めたい方に向けて、おすすめの運動メニューや運動に取り組む際のポイント・注意点をご紹介します。
1. 有酸素運動は血圧の低下に効果あり!
高血圧の改善におすすめなのは「有酸素運動」です。 血管内皮機能を改善することで血圧を下げ、高血圧に効果があるといわれています。
有酸素運動による運動療法により、収縮期血圧で2~5mmHg、拡張期血圧で1~4mmHgの低下が期待されるという報告もあります。運動療法としては、軽強度の有酸素運動(動的および静的筋肉負荷運動)を毎日30分、もしくは週180分以上が推奨されています[1]。
有酸素運動は、筋肉への負担が比較的小さく、長時間継続しやすい特徴があります。普段、運動習慣がない方でも継続しやすいでしょう。
代表的な有酸素運動として、ウォーキングやサイクリング、水泳、エアロビクス、ダンス、ヨガなどが挙げられます。運動強度を自分の体力に合わせて調整しやすく、友人と一緒に取り組んだりもできます。
また、有酸素運動にはメンタルヘルス不調を予防する効果も報告されており、心身の健康を保つのにも役立つでしょう。体重・体脂肪の減少や、ウエストを細くする意味でも有酸素運動は推奨されています。高血圧だけでなく体型が気になり始めた方にもおすすめです。
[1] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
2. 高血圧の方におすすめの運動メニュー
高血圧の改善には、有酸素運動が有効であることが分かりました。
では、実際に有酸素運動に取り組んでみたいと思った方へ向けて、おすすめの運動メニューをご紹介します。「これなら続けられそう!」と思ったものをぜひ始めてみましょう。
2ー1. ウォーキング
ウォーキングは多くの人にとって、日常生活に取り入れやすい有酸素運動といえます。
徒歩を必要とする手段で通勤している人は、そうでない人に比べて高血圧の発症率が17%低いとの報告があります[2]。 通勤手段の一部を徒歩に変えてみたり、朝・夕の時間にウォーキングを取り入れてみたりするだけで十分な効果が期待できますよ。
ウォーキングのポイントは、正しいフォームを意識することです。
- 頭が揺れ動かないようにしてあごを軽く引き、20~30m前方を見る
- 上から引っ張られるようなイメージで背筋を伸ばして胸を張る
- 肩、腕は力を抜いて、足の動きに合わせてリズミカルに振る
- 骨盤が前後に揺れないように意識し、足先は進行方向にまっすぐ自然に踏み出す
- 足裏はかかと→小指のつけ根→親指のつけ根→親指で踏み込む、という順番で体重移動するように意識する
また、ウォーキングは呼吸方法を意識することも大切です。スムーズな呼吸によって、有酸素運動の効果を最大限に引き出すことができます。
まずは、4歩で1呼吸とし、①吸う②吸う③吐く④吐く、の順番で呼吸を繰り返しましょう。
ウォーキングに慣れてきたら、8歩で1呼吸として、①~④吸う、⑤~⑧吐く、の順番で呼吸を繰り返します。吸うよりも吐くことを意識して、肺に自然と酸素が入っていく感覚を覚えていきましょう。
[2] 一般社団法人 日本肥満症予防協会「高血圧リスクはタンパク質を多様な食品から摂ると減少 通勤時のウォーキングで糖尿病リスクも低下」
2ー2. スロージョギング
スロージョギングとは、隣にいる人と会話できる程度のスピードで行うジョギングです。歩くスピードとほとんど同じ速度で走ります。
大腿四頭筋(太ももの前側)、大臀筋(お尻)、大腰筋などの大きい筋肉を動かすため、ウォーキングよりもエネルギー消費量を高められます。ウォーキングとあわせて実施すると良いでしょう。
スロージョギングの正しいフォームは、以下のとおりです。
- 口は開けて、自然に呼吸をする
- 背筋を伸ばして、あごを上げて遠くを見る
- 小さな歩幅で足先から着地する
- 歩くくらいのペース
- 腕は力を抜いて走るリズムに合わせて軽く振る
キツさをほとんど感じない運動ですが、継続することで、しっかりと高血圧の改善を目指せます。
2ー3. ステップ運動
ステップ運動とは、階段の昇り降りする動作を繰り返す運動です。ウォーキングよりも強度は高く、高血圧の改善に加えて筋力や持久力向上の効果も期待できます。
ステップ運動はちょっとした段差でも行うことができますし、専用のステップ台も販売されています。
ステップ運動のポイントは、台や段差から足がはみ出さないように、できるだけ中央で昇降することです。①②で片足ずつ台に上がり、③④で片足ずつ台から降り、4カウントを1セットとします。左右の足はどちらからでも構いません。
自然に階段を昇り降りするイメージで、足だけでなく腕も振るように意識しましょう。前傾姿勢になると膝に負担がかかってしまいますので、背筋を伸ばした姿勢を維持することも大切です。
3. 高血圧の方が運動に取り組むときのポイント・注意点
高血圧の改善を目指すために有酸素運動を始めるなら、正しい方法で継続することが重要です。
最後に、有酸素運動を習慣化する際のポイントと注意点をご紹介します。
3ー1. 「ややきつい」程度にとどめておく
有酸素運動の運動強度は、最大酸素摂取量の40~60%が推奨されています[3]。 「ややきつい」程度の運動をイメージすると分かりやすいかもしれません。
有効な運動強度について結論はまだ出ていませんが、最大酸素摂取量75%を超えるような高強度の運動は高血圧改善には推奨されていません。
高血圧の方は運動時の血圧上昇が顕著で、運動後も内因性昇圧系(交感神経系など)が活性化するためです。安全面や継続可能性の面を考慮しても、高強度の運動は控えるようにしておきましょう。
[3] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」
3ー2. レジスタンス運動・ストレッチ運動もプラスする
有酸素運動の継続に慣れてきたら、レジスタンス運動やストレッチ運動も取り入れると、より高血圧を改善する効果が期待できます。
レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗をかける動作を繰り返す運動です。ダンベルやマシンを使ったトレーニング、スクワットや腕立て伏せなどが該当します。自分の体重を利用する方法と、器具を利用して負荷をかける方法があります。
ストレッチ運動とは、筋肉や関節の柔軟性を高めるための運動です。柔軟運動やストレッチ、ヨガなどが該当します。
有酸素運動とあわせて、無理のない範囲で取り入れてみましょう。
3ー3. 病気のリスクが高い場合は事前に受診する
高血圧改善のための運動療法は、Ⅱ度以下の血圧値で、脳心血管病のない場合のみ有効とされています。
脳心血管病を合併している場合は、メディカルチェックにより適切な運動の負荷量を設定してもらうことが必要です。状況に応じて、運動制限や禁止などの対策も講じます。
Ⅲ度以上の高血圧の方は、降圧治療を実施した後に運動療法を開始します。医師と相談しながら、運動療法の開始のための準備をしていきましょう。
4. 高血圧の方におすすめの運動についてのまとめ
今回は、高血圧改善のためのおすすめ運動メニューや運動に取り組む際のポイント・注意点をご紹介しました。
有酸素運動の継続は高血圧の改善が期待でき、あらゆる健康効果が得られます。ウォーキング、スロージョギングなどは、普段運動する習慣がない方でも続けやすいです。毎日30分、または週180分以上を目標に始めてみてはいかがでしょうか。
血圧値がⅢ度以上の方は降圧治療が優先されますので、高血圧が心配な方は早めの受診をおすすめします。
この記事の監修者
おだかクリニック
副院長
【経歴】
総合病院・大学病院での勤務を経て、2018年よりおだかクリニックの副院長として診療・経営にあたる。専門の循環器疾患(虚血性心疾患、心不全、不整脈など)はもちろんのこと、高血圧や高脂血症、糖尿病等の生活習慣病や内科疾患全般の診療に従事。現在は、医療コンサルト・アドバイザー業務や、ライティング業務などにもあたっている。
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