「健康診断を受けたら紙に収縮期血圧と書いてあったけど、これはどういう意味?」
「収縮期血圧と拡張期血圧はいったい何が違うの?」
血圧について調べていると、「収縮期血圧」という言葉を見かけることがあるかと思います。あわせて「拡張期血圧」の記載も見かける方もいるのではないでしょうか。
本記事では収縮期血圧が何を意味しているのか、拡張期血圧との違いを踏まえつつ紹介します。
1.収縮期血圧とは
まずは収縮期血圧について、拡張期血圧との違いも含めて詳しく紹介します。
1−1.収縮期血圧で分かること
収縮期血圧とは、心臓が収縮して血液を全身に送り出すときに血管の壁にかかる圧力のことです。心臓が収縮したときの血圧を指しているので、収縮期血圧と呼ばれています。一般的には、「最高血圧」や「上の血圧」と呼ばれることが多くあります。
仮に、血圧が120/80mmHgだった場合、120が収縮期血圧を表しています。なお、収縮期血圧は年齢とともに上昇しやすくなっていきます。
加齢によって血管の弾力性が失われ、血管そのものが固くなるためです。年齢とともに収縮期血圧が上昇することは自然なことといえますが、高血圧を治療せずに放置した場合、脳血管障害や心臓疾患などを誘発します。高血圧を放置しないようにするために、まずは 日頃からご自身の血圧をきちんと測定することが大切です。
1−2.拡張期血圧との違い
血液を全身に送り込んだ後、心臓は拡張して送り込んだ血液を心臓に戻そうとします。そのときに血管の壁にかかっている圧力が拡張期血圧です。最低血圧や下の血圧とも呼ばれています。
つまり収縮期血圧は心臓が収縮したときの血圧、拡張期血圧は心臓が拡張したときの血圧です。
日本の久山町で行われた研究では、収縮期血圧が120mmHg未満、拡張期血圧が80mmHg未満のときに脳心血管病の累積死亡率がもっとも低くなることが分かっています。一方で、拡張期血圧が90mmHg以上になると、80mmHg未満の方と比べて脳心血管病のリスクが高くなることも明らかとなりました[1]。
このことから、拡張期血圧は血管の壁にかかる圧力をただ示しているのではなく、健康リスクを表す指標の役割もしていると判断できます。
2.収縮期血圧と拡張期血圧の差は40-60が理想とされる
収縮期血圧と拡張期血圧の差のことを「脈圧」といいます。例えば、血圧が120/80mmHgの場合、脈圧は40です。脈圧の正常値は40~60が理想とされています。
脈圧が大きくなればなるほど動脈硬化が進んでいることを示し、大きな病気につながりやすいと考えられています。
動脈硬化とは、血管が固くなって弾力性が失われた状態を指します。血管の内側にプラークや血栓が溜まり、血管が詰まりやすくなるため注意しなければなりません。動脈硬化によって心臓に負担がかかり、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことがあります。
また、動脈硬化を進める危険因子として喫煙やコレステロールなどがあげられますが、そのなかに高血圧も含まれています。
なお、拡張期血圧は収縮期血圧とは違って、年齢とともに低くなるケースがあります。年齢によって収縮期血圧が上がり拡張期血圧が下がりやすくなるため、脈圧が正常値を超えやすくなる傾向にあります。
3.収縮期血圧と拡張期血圧はどちらが重要?
収縮期血圧と拡張期血圧の違いについて紹介してきましたが、どちらが健康に直結しているのか疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。実際は、収縮期血圧と拡張期血圧は、どちらも重要な数値で、片方だけ気にしていれば良いということは決してありません。
ただし、日本動脈硬化縦断研究(JALS)では、中年層や高齢層の脳卒中のリスクに関しては収縮期血圧がもっとも大きく関係していることが分かっています。脳卒中の罹患リスクの予測能は、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧の順に低下していくのです[2]。
3−1.どちらの数値も基準値を超えると高血圧となる
高血圧の基準は血圧を測る場所によって異なります。診察室で血圧を測る場合は、140/90mmHg以上になると高血圧です。一方で、家庭で血圧を測る場合は、135/85mmHg以上だと高血圧となります。
収縮期血圧と拡張期血圧のいずれも、血管や心臓の機能を反映している数値となりますので、どちらか片方だけが超えた場合でも、高血圧と判断されます。
なお、血圧は季節や時間、環境の変化によって大きく変動します。そのため、同じ条件で継続して測ることが大切です。
高血圧は、脳心血管病のリスクを上げることが分かっています。高血圧と診断される値は、140/90mmHg以上です。高血圧症の診断基準を超えると脳心血管病のリスクが高まるのはもちろんですが、実は正常域の血圧でも、脈圧が高い場合、脳心疾患病のリスクは上昇することが分かっています。
そのため、高血圧と診断されなくても食事療法や運動療法などの対策が必要な場合もあります。
3−2.収縮期血圧は脳卒中発症リスクと関連性が高い
前述のように、収縮期血圧、拡張期血圧、脈圧のうち、脳卒中の発症リスクともっとも関係しているのは収縮期血圧です。
高血圧は全身の疾患であり、無治療で放置することは、全身のあらゆる臓器の血管にダメージを与え続けることになります。
特に知られているものとして、収縮期血圧が10mmHg上昇するごとに将来的に末期腎不全になるリスクが30%前後上昇することがあります。
腎不全になると、体から適切に排泄を行えず人体にさまざまな影響が起こるほか、脳卒中や心筋梗塞といった生活習慣病のリスクを非常に高めることになります。
収縮期血圧は、心臓が収縮したときに全身に血液を送り出すときの圧力を示したもので、収縮期血圧が高いと、その分心臓には大きな負担がかかります。そのため、収縮期血圧は心不全 の発症と関連があることが分かっています[3]。
3−3.収縮期血圧4mmHg低下で死亡者数が年間約1.5万人減少する
厚生労働省が進めている「健康日本21」では、収縮期血圧の平均値を低下させることが目標として掲げられています。
40~89歳の収縮期血圧を平均で4mmHg低下させることで、脳血管疾患による死亡率が男性で8.9%、女性で5.8%低下し、虚血性心疾患の死亡率は男性で5.4%、女性で7.2%低下すると推測されています[4]。
高血圧を完全に予防できれば年間の死亡者数を10万人減らせるとも推計されています[5]。
4.毎年の健診で収縮期血圧と拡張期血圧を把握しましょう
高血圧かどうかを判断するためには、収縮期血圧と拡張期血圧の両方を見ることが大切です。生活習慣病に大きく影響しているため、毎年の健診で定期的に血圧のチェックを行いましょう。
血圧の数値によっては、塩分の摂り過ぎに気をつけたり運動を行ったりなどの生活習慣の見直しが必要です。高血圧の詳しい予防方法については、下記の記事で詳しく紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
5.収縮期血圧についてのまとめ
収縮期血圧とは、心臓が収縮するときに血管の壁にかかる圧力のことです。一方で拡張期血圧は、心臓が弛緩するときに血管の壁にかかる圧力を指しています。
収縮期血圧が上がると脳卒中や末期腎不全などのリスクが高まることが研究によって明らかです。診察室血圧が140/90mmHg以上になると高血圧となるので、定期的に血圧をチェックして基準値を超えないように心掛けてください。また超えている場合には早急に生活習慣の改善や治療の介入を検討しましょう。
この記事の監修者
内科認定医・がん治療認定医
【経歴】
国立大学医学部医学科卒業後、公立病院にて初期研修の2年を終了後、3年目からはがん治療を専門としながら幅広く内科疾患の診療に従事。治療が必要となる前の生活習慣の改善、また病気についての正しい知識が大事であることを実感し、病気についての執筆活動にもあたっている。