「健診で高血圧といわれたけれど、気になる症状もないし、なにもしなくて良いかな」
「まだ若いし、毎日血圧を測ったりしなくても大丈夫」
このように高血圧について、なんとなく自己判断してしまっている方は多いのではないでしょうか。
実は、高血圧は自覚症状がないまま進行していきます。
また、年齢に関わらずさまざまな原因、例えば妊娠などの身近な変化をきっかけに、高血圧を発症することもあるのです。
この記事では高血圧の定義やさまざまな原因、自分でできる対策について詳しく解説します。
1.「高血圧」とは?
1-1.高血圧の定義
血圧とは、血液が流れることによって血管の内側にかかる圧力のことです。
つまり高血圧とは、この圧力が高いということになります。
血圧測定の際は、心臓が収縮して血液が送り出される際の「収縮期血圧(最高血圧)」と、血液が戻ってきて心臓が拡張した際の「拡張期血圧(最低血圧)」を測ります[1]。
一般的には「最高血圧が140mmHg以上か最低血圧が90mmHg以上、またはその両方」の場合を高血圧と判断されます[2]。
血圧は上下しやすいので、環境などによって一時的に高くなることがよくあります。
たまたま測定時に高血圧だったのであればさほど問題はありませんが、慢性的に高血圧が続く場合は「高血圧症」として改善、つまり血圧を下げるための対策が必要です。
1-2.高血圧の自覚症状
高血圧の自覚症状には頭痛、めまいなどが挙げられます。
ただし、軽度の高血圧症にはこういった自覚症状はなく、かなり血圧が高い状態に至らなければ症状は現れません。
つまり、高血圧に関しては「自覚症状がないから大丈夫」ではないということです。
年に一度、健康診断で血圧を測るから良いだろうと放置していたら、知らぬ間に高血圧症になってしまった……という事態を避けるためにも、自分の健康に関心を持ちましょう。
今は特に高血圧ではないという方でも、できれば毎日血圧を測る習慣をつけたいところです。
【関連情報】 「高血圧とは?基準値や健康上のリスク、改善のポイントを徹底解説」についての記事はこちら
2.妊娠や手術なども血圧に影響する
2-1.妊娠中の血圧リスクは?
妊娠中は一般的に血圧が徐々に降下し、出産へ向けて上昇する特徴的な動きが見られます。
しかし、もともと高血圧の女性が妊娠した場合、または妊娠20週までに高血圧を発症した場合の「高血圧合併妊娠」、妊娠20週以降に高血圧を発症する「妊娠高血圧症」などの「妊娠高血圧症候群」は、妊婦の約20人に1人の割合で起こります[3]。
特に、早発型と呼ばれる妊娠34週未満で発症した場合、重症化しやすいため注意が必要です。
2-2.妊娠中の血圧リスクを避けるには
妊娠高血圧症候群のリスクが高まる要因としては以下などが挙げられ、生活習慣の改善だけでは避けられないものも多々あります[4]。
妊娠高血圧症候群のリスクが高まる要因
- もともと糖尿病、高血圧、腎臓の病気などの持病がある
- 肥満がある
- 40歳以上の高齢である
- 高血圧の家族がいる
- 双子などの多胎妊娠
- 初産婦
- 以前の妊娠で妊娠高血圧症候群になったことがある
そのなかでも、自分でできるリスク対策として取り組んでおきたいのは、妊娠前から家庭で毎日血圧を測る習慣をつけておくことです。
もともと高血圧であれば妊娠前に気づけますし、妊娠後に血圧を測り始め、妊娠で下がった血圧を平時の血圧だと思い込むような勘違いも防げます。
2-3.手術後にも高血圧のリスクが
手術を受けた場合にも、術後の痛みで血圧が高くなることがあります。
どういった手術を受けたかにもよりますが、術後の痛み止めでうまく痛みをコントロールできないと、体はストレスを感じて血圧が高くなり、術後の創部(手術でできた傷の部位)からの出血や、血管をつなぎ合わせた部位からの出血が起こり得ます。
他にももともとあった基礎疾患が原因で、脳卒中、心筋梗塞、眼底出血などを起こすこともあります。
もともと計画されていた手術で、手術前から通院・入院していたようなケースでは、医師が平時の体調を把握した上で「痛みによる興奮状態などで血圧が上がる」といった影響も予測し、対策を取ることができます。
しかし緊急手術で初めての病院へ……となるとそうはいきません。
この場合もやはり日頃から毎日血圧を測っておくなど、自分の健康状態をできるだけ把握していることが重要です。
3.高血圧のリスクとは?
3-1.日本人に多いのは「本態性高血圧」
高血圧症には、発症原因による分類があり、次の二つに分かれます[5]。
高血圧症の発症原因による分類
- 二次性高血圧
ホルモン分泌異常、腎臓疾患、薬剤の副作用など、原因が特定できる高血圧 - 本態性高血圧
原因が特定できない高血圧
日本の高血圧患者は約4,300万人いるとされますが、その約90%は、原因が特定できない「本態性高血圧」だといわれています[6]。
特定できないといってもまったく原因がわからないわけではなく、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスや、遺伝的体質などが組み合わさって起こると考えられています[7]。
3-2.高血圧を放置すると……?
先に説明したとおり、高血圧は軽度のうちであれば生活に差し支える自覚症状などもありません。
しかし、だからといって放置しておくと、動脈の血管が徐々にしなやかさを失って固くなり、詰まりやすくなる「動脈硬化」を進行させてしまいます。
動脈硬化が進行すると、血管は、血液が循環する際の圧力によってダメージを受けやすくなります。
これにより、心臓周辺の血液が流れにくくなる狭心症や、心臓が酸素不足になり壊死する心筋梗塞などの心疾患のリスクが高まります[8]。
また脳が血液不足になり壊死する脳梗塞や、脳の血管が裂けて脳内に出血する脳出血などの脳血管疾患のリスクも高まるのです。
3-3.高血圧の改善方法は?
高血圧の改善方法には、塩分・コレステロールを控える、野菜・果物を積極的に摂るなどの「食生活の見直し」、「禁煙」、「適切な飲酒量」、「適度な運動」、「ストレス管理」などがあります[9]。
特に日本人は、塩分を多く含む和食や、外食、加工食品の普及などによる「塩分の過剰摂取」が高血圧の大きな要因になっているといわれています[10]。
こういった改善法のなかには、適度な運動やストレス管理など、新型コロナウイルスの影響、いわゆる「コロナ禍」による外出自粛などで疎かになりがちだった項目もあります。
引き続き感染対策にも気を配りながら、可能な範囲で毎日運動を続ける、ストレスをうまく発散するなどの改善策を取っていきましょう。
4.高血圧のリスクのまとめ
高血圧を放置すると、自覚症状のないまま、徐々に心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などの大きな病気のリスクが高まってしまいます。
まずは血圧を含めた体調に特に問題がなくても「毎日血圧を測る」習慣をつけ、平時の自分の血圧はどれくらいなのかを把握しておくことからはじめてみましょう。
すでに高血圧症の状態にある方や、血圧が高めの方は、血圧計測に加えて塩分を控えることをはじめとした食生活の見直し、禁煙、お酒の量のコントロール、適度な運動やストレス管理を意識し、血圧を抑えましょう。
この記事の監修者
医療法人財団順和会 山王メディカルセンター
血管外科医長
【経歴】
東京医科大学病院在籍中は主に心臓手術・血管外科を担当し、さらにその関連施設では人工透析管理に従事した。心臓や血管に疾患のある患者様に元気な日常生活を送っていただけるよう、患者様お一人おひとりに最も適した治療法を考え、行っている。また、足のむくみで心配されている患者様に適切な診断とアドバイスを行っている。
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