高血圧・低血圧の診断基準や高血圧治療ガイドラインを知ろう

高血圧・低血圧の診断基準や高血圧治療ガイドラインを知ろう

2023年04月06日

2023年09月11日

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「高血圧って病気じゃないよね?」

「血圧を下げた方が良いというけれど、下げ過ぎたら低血圧にならないの?」

このように、血圧について何を基準に考えれば良いか迷っている方もいるのではないでしょうか。

この記事では高血圧症・低血圧症の診断基準や「高血圧治療ガイドライン」の概要、診断基準だけでは判断に困る細かい重症度について詳しく解説します。

1.血圧はどのように測り、判断されている?

血圧計で測る血圧の値は、計算式で示すと「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」。 心臓から押し出される血液量(心拍出量)と、動脈の末端部分で、一般的には腕や足の血管である「末梢血管」の収縮の程度やしなやかさ(血管抵抗)によって計算されます。

血圧を測る際は、心臓が収縮して血液が送り出される際の「収縮期血圧(最高血圧)」と、血液が戻ってきて心臓が拡張した際の「拡張期血圧(最低血圧)」の二つの値を出します[1]。

それぞれの値の高低や、二つの値の開き幅によって、血圧がどのような状態にあるか判断するのです。

血圧の計算方法について詳しく知りたいという方は、以下の記事をご覧ください。

血圧はどう計算されている?自宅で正しく血圧を測るコツは?

[1]全国健康保険協会「【高血圧】自覚症状がないまま動脈硬化を進行させます」

2.高血圧とは?その判断基準は?

女性

2-1.「高血圧」と「高血圧症」の違い

「高血圧」とは、一般的には「最高血圧が140mmHg以上か最低血圧が90mmHg以上、またはその両方」である症状を指します[2]。 血圧は上下しやすいので、環境などによって一時的に高血圧の状態になることもよくあります。いつも正常血圧で、一時的に高血圧になっているようなケースについては、基本的には医療機関での治療の必要はないとされています。

「高血圧症」は、血圧が長期間にわたって高血圧の基準値を超え続け、動脈硬化が進んで、心不全、脳出血・脳梗塞、心筋梗塞・狭心症といった高血圧の合併症をきたしうる状態である、という場合の診断名です。リスクのある状態なので、生活改善や医療機関での治療といった、血圧を下げるための対策が必要です。

まとめると、診断基準による高血圧は「血圧が高くなる症状(慢性的に続くとは限らない)」、高血圧症は「高血圧が慢性的に続く病気」といえます。

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

2-2.「高血圧治療ガイドライン」も参考に

「高血圧治療ガイドライン」は、日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会(日本高血圧学会)による高血圧治療の指針です。2023年現在の最新版は2019年度版で、次回は2025年に改訂版が出る予定となっています。

主に医療従事者向けの、専門知識を要するガイドラインではありますが、一般の方に分かりやすいように内容を解説したパンフレットもあり、電子版が無償で配布されています。

ガイドラインでは、診断基準を下回る血圧が「正常血圧・正常高値血圧・高値血圧」に分けられています。分かりやすく置き換えると、「普通・血圧高め・高血圧予備軍」といったところでしょうか。

診断基準を超える「高血圧」も、「I度・II度・III度」とさらに細かく分けられています。ただし、決してこの度数だけで状態を判断する訳ではなく、医師はこれらの基準と、年齢や合併している病気、喫煙習慣などの要素を勘案して、改善の方向性や治療方針を考えているのです。

またガイドラインには、治療によってどのくらい血圧を下げるかという「降圧目標」も示されています。 例えば一般的な治療では、75歳未満は診察室血圧で最高血圧130mmHg/最低血圧80mmHg未満と、診断基準よりも低い血圧値を目指します。ちなみに75歳以上は診断基準以下を目標とします[3]。

メモ
体調によって目標より血圧を下げた方が良い場合や、逆に下がり過ぎないよう慎重に治療を行う方が良い場合もあります。降圧目標はあくまで参考とし、医師の指示に従いましょう。

[3] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」

3.「二次性高血圧」と「本態性高血圧」

高血圧症には、発症原因による分類があり、次の二つに分かれます[4]。

  1. 二次性高血圧
    ホルモン分泌異常、腎臓疾患、薬剤の副作用など、原因が特定できる高血圧
  2. 本態性高血圧
    原因は特定できないが、生活習慣やストレス、遺伝的体質などが組み合わさって起こると考えられている高血圧

日本の高血圧患者は約4,300万人いるとされますが、その約90%は「本態性高血圧」だといわれています[5]。

原因の一つとされる「生活習慣」には肥満、飲酒、運動不足などが挙げられますが、日本では特に食塩の過剰摂取が影響していると考えられています[6]。

もともとみそ、醤油などの調味料を用いる和食文化があった日本において、食の欧米化、外食・加工食品の普及なども相まって、さらに塩分が増えがちになったことが要因でしょう。

[4] 一般社団法人 日本内分泌学会「二次性高血圧症(腎血管性高血圧を含む)」

[5] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」

[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

4.低血圧とは?その判断基準は?

4-1.単純な「高血圧の逆」ではない「低血圧」の診断

低血圧には高血圧のように決められた診断基準がなく、あくまで一般的な目安として、収縮期血圧(最高血圧)100mmHg未満が「低血圧」とされています。

また、慢性的に血圧が低いだけで「低血圧症」と診断されることもありませんし、血圧を上げるための治療が行われることもありません。

めまいや立ちくらみ、頭痛、倦怠感などといった低血圧に由来する症状が現れて初めて「低血圧症」と診断され、症状を収めるための治療が行われるのです。

4-2.低血圧にも種類がある

低血圧症にも発症原因による分類があり、大きく次の三つに分かれます。

  1. 本態性低血圧
    原因がはっきりしない、体質による低血圧。傾向としてやせ型で虚弱体質であることが多い。
  2. 起立性低血圧
    立った姿勢のときに、自律神経の調節がうまくいかないことで起こる低血圧。重力に逆らって血流を促す力が弱まり、上半身、特に脳の血流が減るため立ちくらみなどを起こす。
  3. 症候性低血圧
    心臓の病気、肺の病気(肺塞栓など)、ホルモンの病気(甲状腺機能低下症、アジソン病など)、がんによる低栄養状態、寝たきり状態など他の病気の症状の一つとして起こる低血圧。

「本態性低血圧」は睡眠をしっかりととる、早寝・早起きを心掛ける、三食しっかり食事を摂るなど、生活習慣の見直しで改善することも多いので、「体質のせい」と諦めず、前向きに改善に取り組みましょう。

5.高血圧のガイドラインのまとめ

高血圧と高血圧症を区別せずに考えていた方や、「高血圧は『症』がつかないからまだ大丈夫、高血圧症と診断されて初めて治療が必要だろう」と認識していた方も多いのではないでしょうか。

実際のところ、「様子見で大丈夫な高血圧」は、環境などの影響で一時的に上がってしまった場合だけともいえます。診断があってもなくても、慢性的な高血圧や高めの血圧は改善が必要です。

まずは他の病気がないかを確かめたり、改善のアドバイスを受けたりするために医師に相談してみるのも良いでしょう。また、塩分を控えるなど生活習慣を見直してみることは、決して無駄にはなりません。ぜひ取り組んでみてください。

この記事の監修者

菊池祐二郎
菊池 祐二郎
医療法人財団順和会 山王メディカルセンター
血管外科医長

【経歴】
東京医科大学病院在籍中は主に心臓手術・血管外科を担当し、さらにその関連施設では人工透析管理に従事した。心臓や血管に疾患のある患者様に元気な日常生活を送っていただけるよう、患者様お一人おひとりに最も適した治療法を考え、行っている。また、足のむくみで心配されている患者様に適切な診断とアドバイスを行っている。

【山王メディカルセンターのHP情報】
»医療法人財団順和会 山王メディカルセンター

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