「必須アミノ酸はどんな食品に含まれているの?」
このように疑問に感じている方もいらっしゃることでしょう。
必須アミノ酸とはアミノ酸のうちヒトの体内でつくることができないため食事から摂取する必要があるもののことで、全部で9種類あります。
体内で合成できる「非必須アミノ酸」とともにたんぱく質を構成する成分です。
また必須アミノ酸がどんな食品に含まれるかということや効果なども気になるところですよね。
そこでこの記事では必須アミノ酸がどのようなものであるかということから、含まれる食品、期待できる効果、摂取する上でのポイントまで詳しく解説します。
健康的な食生活を目指したいという方はぜひ参考にしてくださいね。
1.必須アミノ酸とは
必須アミノ酸とは、たんぱく質を構成するアミノ酸のうち、ヒトや動物が体内で作ることができず、食事からの摂取が必要なもののことです。
ヒトの場合、必須アミノ酸にはバリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレニオン、ヒスチジンの9種類が該当します[1]。
自然界には多くのアミノ酸が存在しますが、たんぱく質はこれらの必須アミノ酸と11種の「非必須アミノ酸」によって構成されています[1]。
これら20種類のアミノ酸のうち、一つでも欠けるとたんぱく質を作ることができないためいずれもヒトの体にとっては非常に重要な成分だといえます。
一般的には通常の食生活を送っていれば不足することはないとされていますが、無理なダイエットや偏った食生活で不足することのないよう注意が必要です。
2.必須アミノ酸を摂取することで期待できる効果
「必須アミノ酸ってどんな効果があるの?」
というのも気になるところですよね。
ここでは必須アミノ酸を摂取することで期待できる効果を三つ紹介しましょう。
効果1 筋肉量の維持・向上
必須アミノ酸のなかには筋肉量の維持・向上に効果が期待できるものがあります。
合わせて「BCAA」と呼ばれることもあるバリン、ロイシン、イソロイシンの3種類は筋肉に多く含まれるため、筋肉にとって重要なアミノ酸であるとして注目を集めています。
BCAAは運動時のエネルギー源として利用されることで筋肉の分解を抑えることに役立っています。
激しい運動によってエネルギー不足となった体は筋肉を分解してアミノ酸からエネルギー源をつくり出そうとします。
しかし運動の前や途中にBCAAを摂取するとエネルギー補給ができ、筋肉の分解を防ぐことができるのです。
日頃トレーニングなどを行っている場合には、意識してBCAAを摂取したいところですね。
効果2 運動時の疲労軽減
アミノ酸には運動時の疲労を軽減させる効果も期待できます。
運動をすると筋肉痛を生じたり動きが鈍くなったりした経験をされたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
このような筋肉疲労の原因にはさまざまな影響が考えられますが、体内のエネルギー源が不足することも原因の一つであるといわれています。
運動中のエネルギー源となるBCAAが不足すると、筋肉が分解されることでエネルギー源をつくり出し、筋肉の損傷や筋肉疲労につながるといわれているのです。
そのため運動時のBCAAの摂取は筋肉の疲労の軽減にも役立ちます。
BCAAは継続して運動を行う方には特におすすめの必須アミノ酸といえるでしょう。
効果3 リラックス・安眠
必須アミノ酸の「トリプトファン」にはリラックスや安眠への効果が期待できます。
これはトリプトファンが「セロトニン」や「メラトニン」というホルモンの材料となるためです。
セロトニンは脳内ではたらき精神の安定やストレスの緩和などに効果が期待できる物質で、「幸せホルモン」と呼ばれることもあります。
本来セロトニンは体内で自然に分泌されますが、日照時間の少ない時期などは分泌量が低下してしまうことがあるとされています。
セロトニンの分泌量が不足すると、イライラやストレス、うつ症状や不眠など、精神面にさまざまな悪影響が生じてしまいます。
名古屋大学の研究の結果、セロトニンは生殖中枢も活性化していることが分かりました[2]。
このことから、うつ病に付随するヒトの不妊治療などへの応用も期待されています。
一方、メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、夜眠っているときに分泌され体温を下げて眠りにつきやすくする作用を持ち、不足すると寝つきが悪くなったり途中で起きてしまったりすることがあるといわれています。
トリプトファンを摂取すると体内でビタミンやミネラルとともにセロトニンをつくり出し、セロトニンはメラトニンへと変化します。
そのためトリプトファンを摂取するとリラックスや安眠への効果が期待できるのですね。
3.必須アミノ酸を含む食品
「必須アミノ酸はどんな食品に含まれているの?」
このように疑問に感じている方もいらっしゃることでしょう。
必須アミノ酸は多くの場合たんぱく質を構成しているため、基本的にたんぱく質含有量の多い食品に含まれている傾向にあります。
それぞれの必須アミノ酸と、特に多く含む食品は以下のとおりです。
【必須アミノ酸の種類とそれを多く含む食品】
- ヒスチジン……鶏むね肉、まぐろ、かつお節、チーズ
- フェニルアラニン……豚ヒレ肉、卵、かつお節、チーズ、するめ
- トリプトファン……鶏むね肉、卵、チーズ、かずのこ
- リジン……豚もも肉、卵、チーズ、煮干し
- メチオニン……鶏むね肉、牛もも肉、チーズ、かつお節
- スレオニン……鶏むね肉、豚ヒレ肉、かずのこ、チーズ
- イソロイシン……鶏むね肉、卵、チーズ、牛乳
- ロイシン……卵、チーズ、牛乳、かつお節
- バリン……鶏むね肉、チーズ、牛乳、煮干し
アミノ酸は1種類でも欠けるとたんぱく質を構成することができないため、必須アミノ酸はそれぞれの含有量だけでなくバランスも重要だといえるでしょう。
そこでポイントとなるのが「アミノ酸スコア」です。
アミノ酸スコアの高い良質なたんぱく質は体内で効率良く利用されるといえます。
身近な食品のたんぱく質含有量とアミノ酸スコアを確認してみましょう。
【身近な食品のアミノ酸スコアと100g当たりのたんぱく質含有量】
食品名 | 加工状態など | たんぱく質含有量 | アミノ酸スコア |
---|---|---|---|
天然くろまぐろ | 赤身、生 | 26.4g | 100 |
しろさけ | 生 | 22.3g | 100 |
まさば | 生 | 20.6g | 100 |
牛リブロース(輸入) | 脂身付き、生 | 20.1g | 100 |
バナメイえび(養殖) | 生 | 19.6g | 100 |
鶏もも肉 | 皮付き、生 | 16.6g | 100 |
ひきわり納豆 | - | 16.5g | 100 |
こういか | 生 | 14.9g | 100 |
豚ばら肉 | 脂身付き、生 | 14.4g | 100 |
ほたて | 生 | 13.5g | 100 |
鶏卵(全卵) | 生 | 12.2g | 100 |
食パン | - | 8.9g | 51 |
絹ごし豆腐 | - | 5.3g | 100 |
普通牛乳 | - | 3.3g | 100 |
うるち米 | 精白米、炊飯 | 2.5g | 91 |
じゃがいも | 皮なし、生 | 1.8g | 100 |
キャベツ | 生 | 1.3g | 93 |
たまねぎ | 生 | 1.0g | 64 |
にんじん | 皮なし、生 | 0.8g | 100 |
トマト | 生 | 0.7g | 83 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」およびWHO「Protein and amino acid requirements in human nutrition : report of a joint FAO/WHO/UNU expert consultation 」をもとに執筆者作成
肉類や魚介類はアミノ酸スコアが高くたんぱく質含有量も多い傾向にあることが分かりますね。
これらの食品を取り入れることで、必須アミノ酸を豊富かつバランス良く摂取することができるでしょう。
ただし肉類や魚類には脂質を多く含むものもあることには注意が必要です。
4.必須アミノ酸を摂取する上でのポイント
必須アミノ酸を摂取する上では、効率的に摂取する方法や注意点なども押さえておきたいところですよね。
ここでは必須アミノ酸を摂取する上でのポイントを三つ紹介しましょう。
ポイント1 脂質の量に注意する
必須アミノ酸をたんぱく質として摂取する上では脂質の量に注意する必要があります。
これは必須アミノ酸を多く含む肉類や魚類がアミノ酸と同時に脂質も多く含んでいるためです。
肉類に含まれる脂質は「飽和脂肪酸」と呼ばれ、血液中のコレステロールを増やす作用があるとされています。
血液中のLDLコレステロールが増えすぎてしまうと「脂質異常症」の原因になることが懸念されます。
一方、魚に含まれる「不飽和脂肪酸」は血液中のコレステロールを減らす作用があります。
積極的に取り入れたい脂質である一方、過剰に摂取すると血液が固まりにくくなって出血しやすくなるなどの恐れがあるといわれています。
動物性食品ばかりではなく植物性食品を取り入れながらバランスよく摂取するようにしましょう。
ポイント2 サプリメントを活用する
必須アミノ酸を摂取する上ではサプリメントを活用することもポイントです。
食事からはたんぱく質として摂取するため、アミノ酸として吸収されるまでには時間がかかってしまいます。
しかしサプリメントとしてアミノ酸を摂取した場合には、少ない時間で吸収されるため各臓器や組織に素早く届けられます。
そのため運動時など効率よくアミノ酸を摂取したい場合や特定のアミノ酸を摂取したい場合などには効率的な方法といえるでしょう。
ただし、特定のアミノ酸ばかりを摂取すると体内でアミノ酸のバランスが崩れる恐れもあるとされています。
特に妊娠中や病気で治療中という方は主治医に相談してから摂取するようにしてください。
ポイント3 運動時に摂取する
必須アミノ酸であるBCAAは運動時に摂取することもポイントです。
運動の前や運動中にBCAAを摂取することで、体内でエネルギーとして利用され筋肉の分解を防ぎながら持久力を維持して運動することが可能です。
さらに運動の後に摂取すれば運動によって傷ついた筋肉組織が素早く回復し、筋肉疲労を軽減するほか筋力を高める効果も期待できるのです。
運動を行う際には素早く吸収できるよう、前項で紹介したサプリメントやスポーツ飲料を活用すると良いでしょう。
5.必須アミノ酸による体への悪影響はない?
一般的にアミノ酸は体内に多く存在する成分で、たくさん摂取しても体に悪影響を及ぼす可能性は低いとされ、摂取上限量なども指定されていません。
しかし一部の研究では、メチオニンやヒスチジンなど特定の必須アミノ酸を過剰に摂取することで吐き気や頭痛のほか、さまざまな症状を引き起こすことがあると報告されています。
通常の食生活ではこのような悪影響はないとされていますが、悪影響を引き起こす可能性がゼロではないことを踏まえ、特定のアミノ酸を過剰に摂取することなどは控えた方が良いでしょう。
サプリメントとして特定のアミノ酸を摂取する場合には、1日当たりの摂取目安量を守ることが重要です。
6.必須アミノ酸の効果と摂取のポイントについて まとめ
必須アミノ酸は非必須アミノ酸とともにたんぱく質を構成する成分です。
食品では動物性食品などの良質なたんぱく質を含むものに多く含まれています。
必須アミノ酸を摂取することで運動時の筋肉の疲労を軽減するほか筋力の維持・増量、リラックス効果が期待できるものもあります。
動物性食品には脂質を多く含むものもあるため、適宜植物性食品を取り入れながらバランス良く摂取することが大切です。
また運動を行う場合など、効率的に摂取したい場合にはサプリメントとして取り入れるのも良いでしょう。
一般的に必須アミノ酸をたくさん摂取しても悪影響を及ぼす可能性は低いとされています。
しかし、なかには一部のアミノ酸を過剰に摂取したことで吐き気や頭痛などを引き起こした事例も報告されているため注意が必要です。
サプリメントを摂取する場合には規定の摂取目安量を守るほか、妊娠中や病気の治療中の方などは主治医に確認してから摂取しましょう。