本態性高血圧とは?診断基準や原因、予防・改善のポイントを解説

本態性高血圧とは?診断基準や原因、予防・改善のポイントを解説

2024年01月05日

2024年05月22日

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「本態性高血圧ってどんなものなんだろう?」

「自分は本態性高血圧に当てはまるのかな?」

このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

高血圧は本態性高血圧と二次性高血圧に分けられます。

二次性高血圧は原因となる疾患が別にあるのに対し、本態性高血圧ははっきりとした原因のない高血圧です。

しかし原因が不明だからといって対処できないというわけではありません。

高血圧は放置していると命に関わる重大な病気を引き起こしてしまう恐れがあるため、早期の発見・改善が重要です。

この記事では本態性高血圧とはどのようなものなのか、その原因や予防・改善のポイントをご説明します。

1.本態性高血圧とは

「本態性高血圧って何?」

「高血圧」はよく見聞きする言葉ですが、「本態性高血圧」となるとあまり見慣れないので身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。

高血圧とは、慢性的に血圧が高い状態のことを指します。

血圧とは
心臓から送り出された血液が上腕の動脈の壁を押す力のことです。血圧は全身の血管にありますが、特に上腕動脈にかかる圧力を指していいます。血圧は心臓が収縮し血液を送り出すときに最も高くなり、このときの値を「収縮期血圧」「最高血圧」「上の血圧」と呼びます。また心臓が拡がり、次に送り出す血液をためているときの血圧を「拡張期血圧」「最低血圧」「下の血圧」と呼びます。

本態性高血圧は原因がはっきりと特定できない高血圧です。

生活習慣や遺伝的な因子が関係しているといわれ、生活習慣病の一種に分類されます。

実は高血圧の約90%は本態性高血圧であるといわれています[1]。

国内の高血圧患者は約4,000万人にも上るとされているため[2]、本態性高血圧は非常に身近な病態だといえます。

通常「高血圧」というときには本態性高血圧を指すといっても差し支えないでしょう。

メモ
他に高血圧の原因となる病気があるものを「二次性高血圧」といいます。二次性高血圧の原因には、甲状腺や副腎の病気、睡眠時無呼吸症候群の他、外科手術による改善が期待できる病気があります。

本態性高血圧をはじめ、血圧が高い状態自体には自覚症状はほとんどありません。

しかし高血圧を放置していると生命を脅かす病気を招く恐れがあるので注意が必要です。

高血圧が続くと、血管の壁が本来の弾力性を失い、厚く硬くなってしまいます。

これを「動脈硬化」といいます。

動脈硬化では血管が破裂したり、狭まったり、詰まったりしやすくなってしまうため、全身で動脈硬化が進行することで脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などのさまざまな病気を引き起こしてしまうのです。

このような病気を引き起こしてしまわないために、高血圧は予防したり、早期発見・改善したりすることが重要なのですね。

メモ
脳出血とは脳内の細い動脈が破れ、出血を起こす病気です。出た血が固まり、脳を圧迫することで脳にダメージを与えます。脳梗塞は脳の動脈がふさがり、血液による酸素や栄養の供給ができなくなることにより脳が壊死してしまう病気です。多くの場合後遺症が残ります。心筋梗塞では同様に心臓が酸欠になり、心臓(心筋)が壊死します。心筋梗塞は日本人の死因第2位に当たります[3]。

[1] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「 高血圧

[2] 日本高血圧学会「「高血圧の日」について

[3] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「急性心筋梗塞

【関連情報】 「高血圧とは?基準値や健康上のリスク、改善のポイントを徹底解説」についての記事はこちら

2.高血圧の診断基準

血圧を測る男性

「血圧がどれくらいだと高血圧だと診断されるんだろう?」

このように疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。

本態性高血圧も二次性高血圧も高血圧だと診断される基準値は同じです。

高血圧の診断基準は病院で測る「診察室血圧」と自宅で測る「家庭血圧」で異なります。

それぞれの血圧値の分類は以下のとおりです。

【診察室血圧の分類】

分類 収縮期血圧 - 拡張期血圧
正常血圧 120mmHg未満 かつ 80mmHg未満
正常高値血圧 120〜129mmHg かつ 80mmHg未満
高値血圧 130〜139mmHg かつ/または 80〜89mmHg
Ⅰ度高血圧 140〜159mmHg かつ/または 90〜99mmHg
Ⅱ度高血圧 160〜179mmHg かつ/または 100〜109mmHg
Ⅲ度高血圧 180mmHg以上 かつ/または 110mmHg以上
(孤立性)収縮期高血圧 140mmHg以上 かつ 90mmHg未満

特定非営利活動法人 日本高血圧学会、特定非営利活動法人 日本高血圧協会、認定非営利活動法人 ささえあい医療人権センターCOML「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話」をもとに執筆者作成

【家庭血圧の分類】

分類 収縮期血圧 - 拡張期血圧
正常血圧 115mmHg未満 かつ 75mmHg未満
正常高値血圧 115〜124mmHg かつ 75mmHg未満
高値血圧 125〜134mmHg かつ/または 75〜84mmHg
Ⅰ度高血圧 135〜144mmHg かつ/または 85〜89mmHg
Ⅱ度高血圧 145〜159mmHg かつ/または 90〜99mmHg
Ⅲ度高血圧 160mmHg以上 かつ/または 100mmHg以上
(孤立性)収縮期高血圧 135mmHg以上 かつ 85mmHg未満

特定非営利活動法人 日本高血圧学会、特定非営利活動法人 日本高血圧協会、認定非営利活動法人 ささえあい医療人権センターCOML「一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話」をもとに執筆者作成

診察室血圧より、家庭血圧の方が低い値で高血圧に該当することになっていますね。

これは一般的に病院で測定するよりも家庭で測定する方が血圧は低くなる傾向にあるためです。

血圧は緊張していると高くなります。

病院という普段とは違う環境に緊張すると血圧が高くなってしまうため、診察室血圧には家庭血圧よりも高い基準が設けられているのです。

なお、高血圧の診断は複数回の測定結果をもとに下されます。

また診断には家庭血圧の方が優先して用いられるため、血圧が気になる方には自宅での定期的な血圧測定が勧められます。

メモ
家庭などでは高血圧に該当しないのに、診察室血圧は高血圧の基準値を超えてしまうことを「白衣高血圧」といいます。この場合、家庭血圧が正常であれば治療の必要はありませんが、将来的に高血圧になる可能性が高いため注意が必要です。また反対に、健康診断や診察では正常値なのに、家庭血圧は高い「仮面高血圧」と呼ばれるケースもあります。この場合、脳や心臓、血管の病気を発症するリスクは通常の高血圧と同等だといわれており[4]、治療の必要があります。

[4] 特定非営利活動法人 日本高血圧学会、特定非営利活動法人 日本高血圧協会、認定非営利活動法人 ささえあい医療人権センターCOML「 一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話

3.本態性高血圧の原因

「本態性高血圧にはどんな原因があるんだろう?」

原因が分からないといわれる本態性高血圧ですが、生活習慣や遺伝的な因子が関係して起こるといわれており、その要因はいくつかあります。

ここでは本態性高血圧の原因となり得る要素をいくつか、血圧上昇のメカニズムと共に解説しましょう。

本態性高血圧の原因

3-1.塩分の摂り過ぎ

塩

塩分の摂り過ぎは日本人の本態性高血圧の最大の原因であるといわれています。

食塩に含まれる「ナトリウム」は血圧の上昇を招きます。

ナトリウムとは
体に必要なミネラル(必須ミネラル)の一種で、主に食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取されます。成人の体内では多くが細胞外液に含まれており、浸透圧を調節し細胞外液の量を維持しています。摂り過ぎると喉の渇きやむくみ、高血圧、胃がん、食道がんの原因となることが知られています。

ナトリウムを過剰摂取すると、体は血液の浸透圧を一定に保つために血液中の水分を増加させます。

このため体内を巡る血液の量が増え、血管の壁にかかる力が高くなる、つまり血圧が上昇してしまうと考えられているのです。

ナトリウムによる血圧上昇は、初めのうちは一時的なものですが、繰り返していると血管の壁を少しずつ傷つけ、硬くしてしまいます。

血管の壁がしなやかさを失うと血液が流れにくくなり、心臓がそれに逆らおうと血液を送る力を強めるため、さらに血圧が上昇します。

つまり塩分の過剰摂取が続くと、慢性的に血圧が高くなってしまうのですね。

特に日本人の食生活は塩分が多くなりがちだといわれています。

実際、WHOのガイドラインは成人について、ナトリウムの摂取量を食塩相当量で1日当たり5g未満に抑えることを強く推奨していますが[5]、20歳以上の日本人の摂取するナトリウム(食塩相当量)は男性で10.9g、女性で9.3gと2倍前後の量を摂取していることが分かっています[6]。

メモ
食塩相当量とは、食品に含まれるナトリウムの量を食塩(塩化ナトリウム)の量に換算したものです。食塩相当量(g)はナトリウム(g)×2.54という式で求められます[5]。ただし食品中のナトリウムには塩化ナトリウム以外の形で含まれているものも存在します。

食事によって摂取される塩分の約7割は調味料に由来するといわれており[7]、単に食塩として摂取する分だけでなく、他の調味料に含まれている塩分にも注意する必要があります。

みそやしょうゆなどには塩分が多く含まれているので要注意です。

またみそ汁や漬け物、麺類の汁なども塩分の摂り過ぎの原因になっていると考えられるでしょう。

[5] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

[6] 厚生労働省「 令和元年 国民健康・栄養調査

[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「調味料の上手な使い方

3-2.肥満

ドーナツをもったメタボ気味な男性

特に若年・中年の男性においては、肥満が原因の高血圧が増えているといわれています。

肥満の方は体重が正常な方に比べ約2〜3倍も高血圧になりやすいといわれているのです[8]。

肥満の場合、「インスリン」が多く分泌される傾向にあります。

インスリンとは
膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンの一種です。食後、食べ物に含まれる糖質はブドウ糖に分解され、血中に溶け込んで血糖値を上昇させます。インスリンはそれに反応して分泌され、ブドウ糖を細胞にエネルギー源として消費させることで血糖値を下げます。またエネルギーとして使い切れなかったブドウ糖を中性脂肪などとして体内に蓄えるはたらきを促進します。

インスリンにはナトリウムの再吸収を促す作用があり、血液中のナトリウム濃度の上昇を招きます

このため血液量が増え、血圧が上昇します。

またインスリンには交感神経を刺激し、これにより末梢血管を収縮させるはたらきのある「カテコールアミン」という物質の放出を促します。

交感神経は意思とは関わりなく体の機能を調節する「自律神経」のうち、緊張しているときや興奮しているとき、イライラしているとき、危機感を覚えているときなどに優位になる神経の総称です。

メモ
自律神経は相反するはたらきをする交感神経と副交感神経に分けられ、リラックスしているときには副交感神経が優位になります。

交感神経が優位にはたらいているときには血管が収縮し血圧が上昇します。

血管が収縮していると血液が流れにくくなり、心臓が血液を送り出す力が強くなって血圧が上がるのです。

また肥大した脂肪細胞が分泌する「アンギオテンシノーゲン」という物質にも血管を収縮させる性質があり、血圧上昇を招くと考えられています。

また肥満の方は食事を多く摂る傾向にあるため、それに伴って塩分を摂り過ぎることも肥満の方に高血圧が多い理由の一つでしょう。

[8] 一般社団法人 日本肥満症予防協会「 3. 肥満と高血圧

3-3.酒の飲み過ぎ

ビールジョッキで乾杯しているところ

お酒の飲み過ぎも本態性高血圧の要因になると考えられています。

実は少量のアルコールは一時的に血圧を低下させると考えられています。

これはアルコールが分解されることでできるアセトアルデヒドには血管を拡張する作用があるためです。

しかし飲酒直後は血圧が低下しても、長期にわたって飲酒を続けると血圧の上昇を招く恐れがあります。

このメカニズムはいまだはっきりとは分かっていませんが、いくつかの原因が考えられています。

第一に、血管の壁が傷つけられることで弾力性を失い、血液が流れにくくなることが挙げられます。

またアルコールには「コルチゾール」の分泌を増やす作用があるといわれています。

コルチゾールは血圧を上げたり、血中の糖や脂肪を増やしたりするはたらきのあるホルモンです。

この他に飲酒によって動脈の壁にカルシウムが増え動脈の壁が硬くなってしまうことや、交感神経が活発になることが原因として考えられています。

またアルコールにより体重が増加し、肥満につながることも、飲酒が高血圧を招く一因になります。

メモ
アルコールは1g当たり7.1kcalです[9]。またお酒には微量の糖質やたんぱく質が含まれるものもあり、これらもエネルギー(カロリー)となります。

[9] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 アルコールのエネルギー(カロリー)

3-4.運動不足

ソファでゴロゴロする人

運動不足も本態性高血圧の要因になると考えられています。

適度に運動を行っていると、体内の塩分(ナトリウム)を排せつするはたらきが強まります。

しかし運動不足では体に余計な塩分をため込みやすくなってしまうと考えられているのです。

また肥満は摂取カロリー(エネルギー摂取量)が消費カロリー(エネルギー消費量)を上回ることで起こるため、運動不足によって消費カロリーが減ってしまい、体重が増えることも間接的に血圧上昇を招くといえるでしょう。

3-5.ストレス

頭をおさえる女性

ストレスも血圧上昇の原因になると考えられています。

「気持ちの問題なのに血圧に影響が出るの?」

と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれませんが、ストレスは精神的な問題だけではありません。

ストレスとは本来、外部からの刺激に対し体内で生じる反応のことで、原因となる外的刺激(ストレッサー)と心身の反応(ストレス反応)を合わせてストレスと呼ぶ場合もあります。

ストレッサーには職場や家庭における不安、緊張、恐怖、怒りなどの心理的・社会的なものの他、暑さや寒さなどの環境的なもの、病気や睡眠不足などの生理的なものがあります。

ストレッサーによる刺激を受けると体内では防御反応が起こり、ストレスを制御し切れなかった場合、体調に変化が現れます。

血圧の上昇もその一つであるといえるでしょう。

ストレスを感じると、「ストレスホルモン」とも呼ばれるコルチゾールが分泌され、交感神経が優位になり血圧が上昇します。

一時的なストレスであれば気持ちの落ち着きと共に血圧も低下しますが、慢性的にストレスを感じていると血圧が高い状態が続き、いずれ高血圧を発症してしまう恐れがあるので要注意です。

3-6.遺伝的要因

遺伝子のイメージ画像

本態性高血圧は遺伝しやすいことが分かっています。

両親など、血縁者に高血圧患者がいる場合、現在は正常な血圧でも将来的には高血圧を発症するリスクが高くなるといわれています。

ただし本態性高血圧の発症には先述のとおり、遺伝だけでなく生活習慣が大きく関わっていると考えられます。

血縁者に高血圧の方がいらっしゃる場合は特に、生活習慣に気を配り、高血圧の予防に努めましょう。

4.本態性高血圧を予防・改善するポイント

「本態性高血圧を予防するにはどうしたら良いの?」

「血圧が高めだと言われたんだけど、改善のためには何をすべきなんだろう?」

このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本態性高血圧の発症には生活習慣が絡んでいるため、生活習慣を改善することにより予防・改善することができると考えられます。

ここでは、本態性高血圧を予防・改善するためのポイントをお伝えしましょう。

本態性高血圧を予防・改善するためのポイント

注意!
医療機関で高血圧の診断を受けた方、現在高血圧の治療中の方は必要に応じて受診し、主治医の指導のもと生活習慣の改善に取り組んでください。

ポイント1 塩分を控える

日本人の本態性高血圧の最大の原因は塩分の摂り過ぎだといわれており、高血圧の予防・改善には食塩摂取量を制限することが欠かせません

高血圧の予防・改善のためには1日の食塩摂取量を6g未満にすることが望ましいといわれています[10]。

少しでも塩分摂取量を減らし、この値に近づけることを目標としましょう。

メモ
厚生労働省が定めるナトリウムの摂取目標量(食塩相当量)は実現可能性を考慮し、WHOの定める1日当たり5g未満というガイドラインと平均摂取量の間を取って設定されており、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満です[10]。

塩分の摂取量を抑えるには全体的に薄味を心掛けることだけでなく、料理に調味料をかけるのではなくつけるようにする、漬物やみそ汁を食べる量や回数を減らす、麺類の汁を飲むのをやめるといった小さな工夫も有効です。

特にラーメンの汁は1杯で6g近い食塩を含んでいるといわれており、麺類の汁を全て残すことで2〜3gの減塩が期待できます[11]。

また食塩を減らすと料理が味気なくなってしまうのでは、と不安に思う方は香辛料や香味野菜、酸味のある果実を活用しましょう。

こしょうや七味、しょうが、柑橘(かんきつ)類を使うことで塩気を減らしても物足りなさを感じずに済むと考えられます。

加工食品や外食の料理は塩分が多いため、できるだけ避けるよう心掛けましょう。

できるところから減塩に努めてくださいね。

2022年に発表された研究で、微弱な電気刺激により舌で感じられる塩味が増強されることが分かってきました[12]。

この技術を応用して、減塩食をおいしく食べるのに役立つ商品も開発されています。

このような技術も味方にして、ストレスなく減塩習慣を身につけていくのも良いでしょう。

減塩食のポイントについては以下の記事でも詳しくご説明しています。

減塩食を続けるポイントとは?健康への効果や食塩の摂取目標量も紹介

[10] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

[11] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧

[12] 鍜治 慶亘, 安蔵 健司, 佐藤 愛, 宮下 芳明「減塩生活者を対象とした電気味覚による塩味増強効果の調査」(情報処理学会 インタラクション2022(2022))

ポイント2 カリウムを十分に摂取する

カリウムを十分に摂取することも高血圧の予防・改善には有効だと考えられます。

カリウムとは
必須ミネラルの一種で、体内では主に細胞内液の浸透圧を調節するはたらきを果たしています。また神経の興奮や筋肉の収縮といった機能や、体内のpHバランスを維持する機能にも関わっています。

カリウムには高血圧の原因となるナトリウムの排せつを促し、血圧を下げる効果が期待されています。

このため、塩分摂取量の多い日本人はカリウムを積極的に摂取することが勧められています。

WHOが高血圧などのリスクを低減するために成人に対し推奨しているカリウム摂取量は1日当たり3,510mgです[13]。

しかし日本人のカリウム摂取量はかなり少なく、厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」では20歳以上の男性の平均摂取量は2,439mg、同じく女性の平均摂取量は2,273mgです[14]。

このため厚生労働省は実現可能性を考慮し、成人男性に1日当たり3,000mg、成人女性に2,600mgという目標量を設定しています[13]。

できるだけカリウムの摂取量を増やすよう心掛けましょう。

注意!
腎臓の機能が低下しているとカリウムを正常に排せつすることができなくなるため、血中のカリウム濃度が高くなる「高カリウム血症」になる恐れがあります。高カリウム血症では不整脈が起こり、最悪の場合には心停止に至ります。腎臓に持病のある方はカリウムの摂取量について主治医に相談してください。

カリウムは野菜類やいも類、豆類、海藻類、果実類などに多く含まれている傾向にあります。

1日当たり小鉢で5、6杯を目安に積極的に摂取しましょう[15]。

またカリウムは水溶性であり、煮たりゆでたりすると溶け出してしまうため、食材は生で食べたり、電子レンジで調理したりするのがおすすめです。

カリウムを豊富に含む食べ物については以下の記事でご紹介しています。

カリウムを豊富に含む食べ物は?効果と摂取基準も解説

[13] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

[14] 厚生労働省「 令和元年 国民健康・栄養調査

[15] 厚生労働省 e-ヘルスネット「栄養・食生活と高血圧

ポイント3 食物繊維を十分に摂取する

本態性高血圧の予防・改善のためには食物繊維を摂取することも勧められます

食物繊維は食べ物に含まれるヒトの消化酵素では消化できない物質で、炭水化物の一種です。

メモ
炭水化物はヒトの体のエネルギー源になる栄養素(エネルギー産生栄養素)の一種です。エネルギー源となる糖質と、消化されないためほとんどエネルギーにならない食物繊維に分けられます。

食物繊維はおなかの調子を整える作用があることで知られていますが、それ以外に脂質や糖質、ナトリウムを吸着して体外に排出するはたらきもあります。

このためこれらの摂り過ぎが原因の肥満や脂質異常症、糖尿病、高血圧などを予防・改善する効果が期待されているのです。

このように体に有用な食物繊維ですが、日本人は食物繊維が不足しがちな食生活を送っているといわれています。

成人の理想的な食物繊維摂取量は1日当たり24g以上であるといわれているにもかかわらず[16]、20歳以上の男性の平均摂取量は男性で19.9g、女性で18.0gです[17]。

このため厚生労働省は実現可能性を考慮し、18〜64歳の男性に21g以上、65歳以上の男性に20g以上という目標量を設定しています[16]。

また女性の目標量は18〜64歳で18g以上、65歳以上で17g以上です[16]。

少しでも食物繊維の摂取量を増やすよう心掛けましょう。

食物繊維は肉や魚などの動物性食品にはほとんど含まれておらず、植物性食品に多く含まれている傾向にあります。

特に切り干し大根、ごぼう、たけのこ、ブロッコリー、かぼちゃ、さつまいも、しいたけ、納豆、おから、ひじき、白滝などは1食の摂取量に2〜3gの食物繊維を含んでいます[18]。

これらを積極的に取り入れましょう。

また主食を玄米ご飯や麦ご飯、胚芽米ご飯、全粒粉パン、ライ麦パン、そばなどにすることでも食物繊維摂取量を増やすことができますよ。

食物繊維を豊富に含む食べ物は以下の記事でご紹介しています。

食物繊維を手軽に摂れる食べ物は?効果や食事摂取基準も徹底解説

[16] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

[17] 厚生労働省「 令和元年 国民健康・栄養調査

[18] 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康

ポイント4 摂取カロリーを適正に抑える

摂取カロリー(エネルギー摂取量)を適正に抑えることも本態性高血圧の予防・改善には有効だと考えられます。

私たちヒトは食べ物などからエネルギー(カロリー)を摂取し、生命を維持したり体を動かしたりすることに消費しています。

ヒトの体のエネルギー源となる栄養素には炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質があり、これらはまとめて「エネルギー産生栄養素」と呼ばれています。

炭水化物(糖質)とたんぱく質は1g当たり約4kcal、脂質は1g当たり約9kcalです[19]。

脂質はカロリーが高いため肥満の原因になるといわれているのですね。

メモ
カロリーは本来、このエネルギーの量を表す単位です。1cal(カロリー)は非常に小さいため通常はその1,000倍である1kcal(キロカロリー)が最小単位として用いられています[20]。

本態性高血圧の原因になると考えられている肥満は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ることによって起こります

このため摂取カロリーを適正に抑え、適正体重を維持することで高血圧の予防・改善に役立つと考えられるのですね。

1日に摂取すべきカロリー(推定エネルギー必要量)はどれだけ体を動かしているかによって異なり、算出には3段階の「身体活動レベル」が用いられます。

ご自身の推定必要カロリーを把握するために、まずは身体活動レベルを確認してみましょう。

【身体活動レベル】

身体活動レベル 日常生活の内容
低い(Ⅰ) 生活の大部分を座って過ごし、体を動かす機会があまりない。
普通(Ⅱ) 座って過ごす時間が多いが、徒歩での移動や立った状態での作業や接客などを行ったり、通勤や買い物で歩いたりする。また、家事や軽いスポーツのいずれかを行う。
高い(Ⅲ) 移動や立った状態で過ごす時間が長い。または余暇に活発に体を動かす習慣がある。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

身体活動レベルが分かったら、下の表からご自身の推定エネルギー必要量を確認してみましょう。

【成人の推定エネルギー必要量(kcal)】

性別 男性 女性
身体活動レベル 低い(Ⅰ) 普通(Ⅱ) 高い(Ⅲ) 低い(Ⅰ) 普通(Ⅱ) 高い(Ⅲ)
18〜29歳 2,300 2,650 3,050 1,700 2,000 2,300
30〜49歳 2,300 2,700 3,050 1,750 2,050 2,350
50〜64歳 2,200 2,600 2,950 1,650 1,950 2,250
65〜74歳 2,050 2,400 2,750 1,550 1,850 2,100
75歳以上 1,800 2,100 - 1,400 1,650 -

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

この推定エネルギー必要量を参考に、1日の摂取カロリーを調節するよう心掛けましょう。

前掲の推定エネルギー必要量は標準的な体格の方を対象に設定されたものです。

ご自身の体格に応じた推定エネルギー必要量が知りたいという方は以下の記事をご覧ください。

1日に必要なカロリーって?計算方法と健康を保つポイントを解説!

[19] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

[20] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)

ポイント5 アルコールを控える

お酒の飲み過ぎは本態性高血圧の要因の一つだとされているため、アルコールを控えることも予防や改善に役立つと考えられるでしょう。

厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」を純アルコールで1日平均約20gとしています[21]。

純アルコールとは
お酒に含まれるアルコールの量のことです。お酒の量(mL)×度数(%)/100×0.8という式で算出できます[22]。

なお、代表的なお酒の純アルコール20g相当の量は以下のとおりです。

純アルコール20g相当のお酒の種類と量

公益社団法人 アルコール健康医学協会 「お酒と健康 飲酒の基礎知識」をもとに執筆者作成

この量を目安に、飲み過ぎは避けるようにしましょう。

またお酒の分解能力には個人差があり、一般的に女性は男性よりも少ない量にとどめることが望ましいとされています。

加えて65歳以上の方も酒量を抑えることが推奨されています[21]。

性別を問わず、体質や状況に合わせて酒量を調節するようにしましょう。

[21] 厚生労働省「 健康日本21(アルコール)

[22] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 飲酒量の単位

ポイント6 有酸素運動を行う

有酸素運動を行うことも本態性高血圧の予防・改善には有効です。

有酸素運動とは
筋肉にかかる負荷が比較的小さい運動のことです。筋肉を動かすエネルギー源として、脂肪や血糖と共に酸素を消費することからこのように呼ばれます。ウォーキングやジョギング、サイクリング、エアロビクスダンス、ステップエクササイズなどが該当します。

運動不足は本態性高血圧の要因となってしまいます。

また本態性高血圧の要因の一つである肥満は消費カロリー(エネルギー消費量)が摂取カロリー(エネルギー摂取量)を下回ることで起こるものであり、運動を行って消費カロリーを増やすことで予防・解消されると考えられます。

このため運動を行うことは高血圧の予防・改善に重要だと考えられるのですね。

特に習慣的な有酸素運動には高血圧を改善する運動療法としての効果が認められています

運動療法としては、「ややきつい」と感じられる程度の有酸素運動を1日30分以上定期的に、できれば毎日行うことが推奨されています[23]。

また運動を長く続けるのが難しい、まとまった時間を確保できないといった場合には、1回当たりの運動時間が10分以上であれば、複数回に分け、合計して1日40分以上行う形でも構いません[23]。

さらに、ラットとヒトにおいて「適度な運動」が高血圧を改善するメカニズムが報告されました[24]。

軽いジョギング程度の運動中、足の着地時に頭部(脳)に伝わる適度な物理的衝撃により、血圧を上げるタンパク質(アンジオテンシン受容体)の発現量が低下して血圧低下が生じることが、高血圧ラットを用いた実験で報告されました。

この頭部への物理的衝撃を高血圧の方に適用すると、ヒトでも高血圧が改善することが世界で初めて報告されました[24]。

ウォーキングやステップエクササイズなどの有酸素運動に積極的に取り組みましょう。

ただし、急に運動を始めると体にかかる負担も大きくなってしまいます。

普段体を動かす習慣のない方は日常生活を通じて体を動かす時間を増やすことから始めると良いでしょう。

また既に高血圧の診断を受けている方は、心臓などに問題がないか医療機関で確認してから運動を始めるようにしてくださいね。

[23] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 高血圧症を改善するための運動

[24]Shuhei Murase et al.「Interstitial-fluid shear stresses induced by vertically oscillating head motion lower blood pressure in hypertensive rats and humans」(Nature Biomedical Engineering volume 7, pages1350–1373 (2023))

ポイント7 禁煙する

高血圧を予防・改善したいという喫煙者の方は禁煙に努めましょう。

たばこを吸うと、血圧が上がることが分かっています。

たばこの煙には現在解明されているだけで200種類以上の有害物質が含まれており[25]、なかでもニコチンと一酸化炭素は心臓や血管の病気の発症に大きな影響を及ぼすといわれています。

ニコチンは交感神経を刺激し、血管を収縮させることで血圧の上昇を招きます

また一酸化炭素は体内を酸素不足の状態にし、これにより血管の収縮、血圧の上昇を招きます

さらに血液の粘度を高くし固まりやすくする作用により、動脈硬化を進行させるともいわれています。

このように、たばこには一時的な血圧の上昇を招く有害物質が含まれているのですね。

喫煙者では高血圧が原因となる心筋梗塞などの心臓の病気のリスクが高まることも分かっています。

喫煙が慢性的に血圧の高い状態を招くかどうかについては、いまだ研究が進められているところですが、一時的な血圧上昇も繰り返していると血管の壁を厚く硬くし、動脈硬化を進行させてしまう恐れがあります

また動脈硬化が進んで血液が流れにくくなると、さらなる血圧の上昇を招くと考えられています。

この他にも喫煙は体にさまざまな悪影響を及ぼすので、早いうちの禁煙を目指しましょう。

禁煙の効果や禁煙する際のおすすめの方法は以下の記事でご紹介しています。

禁煙の効果とは?健康への影響や禁煙するための方法を詳しく解説

[25] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「 喫煙が与える循環器疾患の影響

5.本態性高血圧についてのまとめ

本態性高血圧は高血圧のうち、原因となる病気がないもののことです。

別の病気によって起こる高血圧は二次性高血圧と呼ばれます。

日本の高血圧患者は約4,000万人に上り[26]、本態性高血圧は高血圧の約90%を占めているといわれるため[27]、本態性高血圧は非常に身近な病態であるといえるでしょう。

日本人の本態性高血圧の最大の原因は塩分(ナトリウム)の摂り過ぎだと考えられています。

また肥満や酒の飲み過ぎ、運動不足、ストレスなども要因になり得ます。

両親や血縁者に本態性高血圧の患者がいる場合も、リスクが高まるといわれているので要注意です。

本態性高血圧を予防・改善するためには、まずは塩分を控えることが重要です。

加えてナトリウムの排せつを促すカリウムや食物繊維が豊富な野菜や果物などをしっかり摂取しましょう。

摂取カロリーを適正に抑えること、アルコールを控えることも有効だと考えられます。

また有酸素運動には高血圧改善の効果が認められているため、定期的に行うことを心掛けましょう。

たばこに含まれる有害物質による影響を避けるため、禁煙もポイントの一つです。

この記事を参考に、本態性高血圧の予防や改善に努めてくださいね。

[26] 日本高血圧学会「「高血圧の日」について

[27] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「高血圧

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