「カリウムが不足すると体にどんな影響があるんだろう?」
「カリウムの適切な摂取量はどれくらいだろう?」
カリウムの摂取量や不足した場合の影響が気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
カリウムは人体に欠かせないミネラルの一つで、不足するとむくみや脱力感、精神障害などさまざまな悪影響を及ぼす恐れがあります。
この記事ではカリウム不足によって現れる症状や、カリウム不足に陥る原因などについて解説していきます。
記事後半ではカリウムを含む食品も紹介しているので、意識してカリウムを摂取したい人は参考にしてみてください。
1.カリウムとは?
そもそもカリウムとはどんな栄養素なのかよく分かっていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
カリウムは必須ミネラルの一種で、体内では主に細胞内液の浸透圧を調節するはたらき、つまり細胞内の水分バランスを調整するはたらきをしています。
他にも神経伝達や筋肉の収縮、体内の酸性物質とアルカリ性物質のバランスの維持、ナトリウムの排出などさまざまなはたらきを持っています。
ナトリウムは摂り過ぎると口の渇きやむくみの原因となったり、高血圧や胃がん・食道がんのリスクを高めたりすることで知られています。
ナトリウムを排出するはたらきのあるカリウムは、このようなナトリウムによる健康への悪影響を防いでくれる物質だといえるでしょう。
特に日本人は諸外国と比べて食塩摂取量が多いため、カリウムの積極的な摂取が勧められます。
【関連情報】 「カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介」についての記事はこちら
2.カリウム不足による体への悪影響
「カリウムが不足するとどんな悪影響があるんだろう」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
カリウム不足はむくみの原因の一つといわれています。
食事などから食塩を過剰に摂取するとナトリウム濃度が高まり、ナトリウム濃度を下げるために体は水分をため込みます。
これがむくみの原因です。
カリウムが不足するとナトリウムを体外に排出する作用がうまくはたらかないため、ナトリウムの排出が促されずにむくみを引き起こしてしまうのですね。
また、カリウムは神経や筋肉、細胞が正常に機能するのに欠かせないミネラルであるため、血液中のカリウム濃度が大きく低下すると筋力低下やけいれん、ひきつり、まひ、呼吸困難といった症状を引き起こします。
血液中のカリウム濃度が3.5mEq/L以下の状態を低カリウム血症といいます[2]。
低カリウム血症は不整脈を引き起こすこともあり、特に心疾患の方や心臓の薬を使用している方はわずかなカリウム濃度の低下であっても注意する必要があるでしょう。
低カリウム血症の症状が進行すると、体を動かすと息苦しくなる他、歩いたり走ったりするのが困難になることもあります。
また腎臓に問題が生じることにより、頻尿や過剰な水分摂取などの症状を引き起こす恐れがあります。
3.カリウムが不足する原因
カリウムはさまざまな食品に含まれている栄養素なので、通常の食事を摂っていれば低カリウム血症を引き起こすほどの不足は基本的には起こらないとされています。
しかし、低カリウム血症の症状が現れた場合には、いくつかの原因が考えられます。
代表的な原因とされているのが嘔吐(おうと)や下痢などです。
嘔吐や下痢をすると、体内から多量のカリウムが失われてしまい低カリウム血症が起こる場合があります。
多量の汗をかいた場合もカリウムの排出量が多くなり、症状が生じることがあります。
またクッシング症候群などの副腎疾患や遺伝性疾患が原因で腎臓からカリウムが大量に排出され、カリウム不足を引き起こす場合があるといわれています。
利尿剤や下剤を多量に服用した場合もカリウムが多く排出され症状が現れる場合があります。
また血糖値を下げるために使用するインスリン注射は、細胞内にブドウ糖を取り込ませる過程でカリウムも取り込ませるため、低カリウム血症を引き起こすことがあります。
その他にも血糖値が正常値以上の方では、糖質を多く含む食品を過剰に摂取した場合にインスリンが過剰に分泌され、低カリウム血症を引き起こした例も報告されています。
このようにカリウム不足は嘔吐や下痢、薬剤の使用などによって体内からカリウムが大量に排出されることが主な原因と考えられるでしょう。
4.カリウムの1日当たりの食事摂取基準と平均摂取量
「カリウムは1日にどれくらい摂取すれば良いんだろう?」
このような疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからはカリウムの1日当たりの食事摂取基準と平均摂取量について紹介します。
4-1.カリウムの1日当たりの食事摂取基準
カリウムの1日の食事摂取基準についてみていきましょう。
カリウムの食事摂取基準には摂取の目安量と目標量が設定されています。
カリウムの1日の摂取目安量は成人男性では2,500mg、成人女性で2,000mgです[5]。
妊娠中の方の目安量は妊娠していない女性と同じく2,000mgですが、授乳中の方の目安量は2,200mgに設定されています[5]。
摂取目標量は成人男性が1日3,000mg以上、成人女性が1日2,600mg以上です[5]。
カリウムは腎機能が正常にはたらいているのであれば、サプリメントなどを使用しない限り過剰摂取になるリスクは低いといわれています。
4-2.カリウムの1日当たりの平均摂取量
日本人は1日に平均でどれくらいのカリウムを摂取しているのでしょうか。
カリウムの1日当たりの平均摂取量は以下のとおりです。
【1日当たりのカリウムの平均摂取量】
男性 | 女性 | |
---|---|---|
20代 | 2,080mg | 1,743mg |
30代 | 2,100mg | 1,896mg |
40代 | 2,269mg | 2,033mg |
50代 | 2,290mg | 2,153mg |
60代 | 2,569mg | 2,529mg |
70代 | 2,764mg | 2,648mg |
80代以上 | 2,536mg | 2,250mg |
厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成
男性は60代以上、女性は40代以上が目安量以上のカリウムを摂取できています。
しかし目標量を満たしているのは70代の女性だけです。
5.カリウム不足を防ぐために摂取すべき食べ物
「どんな食べ物にカリウムが含まれているのか知りたい……」
カリウム不足を防ぐには普段からカリウムを含む食品を積極的に摂取すると良いでしょう。
カリウムは植物性食品にも動物性食品にも豊富に含まれていますが、そのなかでも含有量の多い食品を紹介します。
5-1.植物性食品
カリウムを含む植物性食品には海藻類、果実類、野菜類、豆類、いも・でんぷん類があります。
カリウムを含む植物性食品は以下のとおりです。
【カリウムを含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
乾燥わかめ | 素干し | 6,000mg |
あおさ | 素干し | 3,200mg |
黄大豆 | 乾燥 | 1,900mg |
ひきわり納豆 | - | 700mg |
ほうれん草 | 生 | 690mg |
さといも | 生 | 640mg |
ながいも | 生 | 590mg |
黄大豆 | ゆで | 530mg |
にら | 生 | 510mg |
さつまいも(皮なし) | 生 | 480mg |
西洋かぼちゃ | 生 | 450mg |
バナナ | 生 | 360mg |
メロン(緑肉種) | 生 | 350mg |
キウイフルーツ(緑肉種) | 生 | 300mg |
絹ごし豆腐 | - | 150mg |
木綿豆腐 | - | 110mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
カリウムはさまざまな植物性食品に含まれていることが分かりますね。
また日本人にとってなじみ深い大豆製品にも豊富に含まれているため、普段の食事からカリウムを摂取しやすいでしょう。
5-2.動物性食品
カリウムを含む動物性食品には肉類や魚介類があります。
カリウムを含む動物性食品は以下のとおりです。
【カリウムを含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
まだい | 生 | 440mg |
びんながまぐろ | 生 | 440mg |
かつお(春獲り) | 生 | 430mg |
車えび | 生 | 430mg |
豚ヒレ肉(赤肉) | 生 | 430mg |
ささみ | 生 | 410mg |
くろまぐろ(赤身) | 生 | 380mg |
豚ロース肉(赤肉) | 生 | 360mg |
牛もも肉(赤肉) | 生 | 350mg |
牛ヒレ肉(赤肉) | 生 | 340mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
カリウムは魚介類や肉類にも豊富に含まれているので、ぜひ普段の食事に取り入れてみてくださいね。
6.カリウムの過剰摂取による体への悪影響
「カリウムを摂り過ぎるとどんな影響が出るのか気になる……」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
血液中のカリウム濃度が非常に高くなり、5mEq/L以上になると「高カリウム血症」と診断されます[6]。
軽度の高カリウム血症はときに筋力低下が見られる程度でほとんど無症状ですが、高カリウム血症が重症化すると吐き気や脱力感、不整脈といった症状が現れる場合があります。
血液中のカリウム濃度の上昇は、カリウムのサプリメントからの過剰摂取やカリウムの排出を妨げる薬剤の使用、腎不全などの問題が同時に重なることで起こります。
腎機能が正常にはたらいている方は、食事からのカリウムの過剰摂取をあまり気にする必要がありません。
しかし腎機能が低下している方はカリウムの排出量が減少しているため、カリウムが体内に蓄積しやすく血液中のカリウム値が高くなります。
医師・栄養士などに相談して1日にどれくらいカリウムを摂取して良いのかなど指導を受けるようにしましょう。
7.カリウム不足についてのまとめ
カリウムは主に細胞内の浸透圧を調節するはたらきを持つ必須ミネラルです。
他にもカリウムには神経伝達や筋肉の収縮、体内の酸性物質とアルカリ性物質のバランスの維持、ナトリウムの排出などさまざまな役割があります。
そんなカリウムは海藻類、果実類、野菜類、豆類、いも・でんぷん類などの植物性食品や、肉類や魚介類などの動物性食品に豊富に含まれているため、通常の食事を摂っていれば不足することはまずありません。
しかし、嘔吐や下痢、利尿剤や下剤(または薬剤)の服用などによって体内からカリウムが大量に排出されたり、インスリン注射によって細胞にカリウムが取り込まれたりするとカリウム不足を引き起こすことがあります。
カリウムが不足した状態を低カリウム血症といいます。
低カリウム血症では筋力低下やけいれん、ひきつり、まひ、呼吸困難、不整脈といった症状を引き起こす恐れがあります。
一方でカリウムのサプリメントの過剰摂取やカリウムの排出を妨げる薬剤の使用、腎不全などが重なることで血中のカリウム値が上昇すると「高カリウム血症」を発症する可能性があります。
高カリウム血症は軽度のものであればほとんど無症状ですが、悪化すると吐き気や脱力感、不整脈が現れる場合があるため、注意が必要です。
通常の食事を摂っていればカリウム不足による症状を引き起こすことはあまりありませんが、日本人のカリウム摂取量とWHOが推奨する摂取量とでは大きく差が開いています。
さまざまな食品からカリウムを摂取し、1日の目標量の達成を目指しましょう。