「水中ウォーキングと普通のウォーキングは何が違うの?」
「水中ウォーキングをやるときにはどんなことに気を付けたら良いんだろう?」
水中ウォ-キングにはウェアの用意や施設の利用が必要であるため、興味はあるけれどなかなか始められないという方も多いのではないでしょうか。
水中ウォーキングには水の特性によって関節への負担を軽減できる、多くのエネルギー(カロリー)を消費できるといった、陸上の運動にはないさまざまなメリットがあります。
ただし、正しい方法で行わないと十分に効果が出ないだけでなく体調を崩してしまうリスクもあります。
例えば、水中ウォーキングの動作は単純ですが、水の抵抗により陸上でのウォーキングよりも運動量が多くなるため、適度な休憩を挟み無理のない範囲で行うことが大切です。
そこでこの記事では水中ウォーキングの効果や行う際のポイント、注意点を解説します。
水中ウォーキングに取り組みたいと考えている方はぜひ参考になさってくださいね。
1.水中ウォ-キングとは?
水中ウォーキングは水の中を歩く有酸素運動の一種で、一般的にはスイミングプールなどで行われるものです。
水中ウォーキングは陸上で行う歩行とは異なり、浮力・水圧・抵抗・水温といった「水の特性」を利用したウォーキングです。
このような水の特性を利用した運動のことを「アクアエクササイズ」といい、陸上では得られない効果を期待できます。
アクアエクササイズには水中ウォーキングの他、水中筋力トレーニングや水泳やプールの中でエアロビクスダンスを行う「アクアビクス」などがあります。
なお水泳やアクアビクスも有酸素運動の一種です。
次の章では水の特性による水中ウォーキングのメリットについて詳しく紹介します。
2.水中ウォ-キングのメリット
「水中ウォーキングにはどんなメリットがあるのかな?」
このような疑問をお持ちの方をいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは水中ウォーキングのメリットを五つの項目に分けて紹介しています。
2-1.関節への負担が少ない
水中ウォーキングのメリットとしてまず挙げられるのは関節への負担が少ないということです。
水中ウォーキングは、水の浮力の作用により腰や膝などの関節への負担を軽減しながらトレ-ニングをすることができます。
股・膝・足の関節にかかる負担は水面が胸の高さの場合には約70%、へその高さの場合には約50%軽減されるといわれています[1]。
腰への負荷が気になる高齢の方や運動習慣がない方でも無理なく行うことができるでしょう。
2-2.血液循環が促進される
水中ウォーキングでは、適度な水圧により血液循環が良くなるといわれています。
これにより肩こりなどの改善が期待できます。
水中では水深が深くなるほど水圧が高くなるため、プールの中で立っていれば自然と足に最も圧力がかかります。
このため水圧によって足の血管などが圧迫され血行が良くなり、陸上では下半身にたまりがちな老廃物も回収されやすくなります。
2-3.消費カロリーが多い
水中ウォーキングは陸上でのウォーキングに比べて負荷が高く、より多くのエネルギー(カロリー)を消費できる運動です。
水中では水温によって体熱が奪われるため、体温を保つため体はより多くのカロリー(エネルギー)を消費します。
また水の抵抗を受けるためより大きな力で筋肉を動かす必要があることも消費カロリーが大きくなる要因だといえるでしょう。
水中ウォーキングの運動量は陸上で同じ時間ウォーキングした場合の約1.3倍になるといわれています[3]。
では実際に、陸上での歩行と水中ウォーキングのメッツと消費カロリーを見ていきましょう。
運動や普段の身体活動による消費カロリー(kcal)は、メッツ×時間(h)×体重(kg)という式で求められます[4]。
陸上での歩行のメッツは以下のとおりです。
【陸上での歩行のメッツ】
運動強度 | メッツ |
---|---|
ゆっくり(時速3.2km) | 2.8 |
ほどほどの速さ(時速4.5~5.1km) | 3.5 |
速い(時速6.4km) | 5.0 |
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」をもとに執筆者作成
水中ウォーキングでのメッツは以下のとおりです。
【水中ウォーキングのメッツ】
運動強度 | メッツ |
---|---|
ゆっくり | 2.5 |
ほどほどの速さ | 4.5 |
速い | 6.8 |
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」をもとに執筆者作成
陸上での歩行と水中ウォーキングをほどほどの速さで30分間行った場合の消費カロリーを、それぞれのメッツをもとに計算すると以下のとおりです。
【陸上での歩行と水中ウォーキングの消費カロリー】
体重 | 陸上での歩行(ほどほどの速さ) | 水中ウォーキング(ほどほどの速さ) |
---|---|---|
40kg | 74kcal | 95kcal |
50kg | 92kcal | 118kcal |
60kg | 110kcal | 142kcal |
70kg | 129kcal | 165kcal |
80kg | 147kcal | 189kcal |
90kg | 165kcal | 213kcal |
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」をもとに執筆者作成
体重によって変動はありますが、ほどほどの速さで歩いたときの消費カロリーは陸上でのウォーキングを水中ウォーキングが上回っています。
2-4.負荷を調整できる
水中では簡単に身体の向きや動きをコントロ-ルできるため、体にかかる負荷やスピ-ドを調整しやすいことも水中ウォーキングのメリットの一つです。
水中ウォーキングの運動強度は2.5〜6.8メッツとされており、歩く速さによって強度が変わります[6]。
初めのうちはゆっくり歩き、慣れてきたらスピードを上げることで高強度のトレーニングとしても行えます。
2-5.ストレスが軽減される
水中ウォーキングにはストレスを軽減させる効果も期待できます。
水中では浮力の作用によって無重力に比較的近い状態になります。
これによって関節や表面の筋肉だけでなく「深層筋(インナーマッスル)」も緩まり、全身の力が抜けるためリラクゼーション効果が得られます。
加えて、胸まで水に入ると水圧を受けて呼吸が深くなり、自然と腹式呼吸が促されます。
腹式呼吸には副交感神経系のはたらきを活発にし、体を休めて気持ちを落ち着かせる効果があります。
また深呼吸にはストレスを緩和させる効果も期待できます。
水の中にいることは、ストレスの軽減にも役立つのですね。
3.水中ウォーキングを行う際のポイント
「水中ウォーキングで注意すべきことはあるのかな?」
「効果的に水中ウォーキングをするためのポイントを知りたい」
このように感じている方も多くいらっしゃるかもしれませんね。
ここからは水中ウォーキングを行う上でのポイントについて紹介します。
ポイント1 準備運動を行う
水中ウォーキングを始める前にはまず準備運動(ウォーミングアップ)としてストレッチを行いましょう。
【ストレッチの原則】
- 呼吸を止めずに行う
- 伸ばしている筋肉の箇所を意識する
- 痛くなく気持ちの良い程度に伸ばす
- 目的に合わせて部位を選ぶ
ストレッチは一定の方向に関節を動かしながら筋肉を縮めたり伸ばしたりする「動的ストレッチ」と、ゆっくりと一定の方向に筋肉を伸ばしてしばらく静止する「静的ストレッチ」に分けられますが、準備運動としては動的ストレッチがおすすめです。
ストレッチによる準備運動には体の柔軟性を高め、けがを予防する効果が期待できます。
ストレッチを行うと柔軟性が高まるのは、筋の伸張反射の感受性が低下することと、筋や靭帯が元に戻ろうとする性質が変化することが要因です。
また、ストレッチには2~3メッツの運動強度があり、これによって体温が上がるためウォーミングアップ効果につながります[7]。
ポイント2 歩き方の種類を増やす
水中ウォーキングは歩き方のバリエーションを増やすことで、運動の負荷を調節できます。
【水中ウォーキングの歩き方】
- 前歩き
- すり足で横歩き
- 大股歩き
- 早歩き
初めて水中ウォーキングを行う方は前歩きからスタートし、足をかかとからプールの底につけることを意識すればバランスを崩さずに歩き始めることができます。
すり足で横歩きでは、横を向いて脚を踏み出すときに腕を開き、脚を閉じるときには水の抵抗を感じつつ腕をクロスさせると大胸筋が鍛えられます。
大股歩きでは、脚を大きく動かすことでスクワットと同じような要領でウォーキングを行うことができます。
慣れてきたら早く体を動かし、早歩きを試してみましょう。
ある程度きついと感じる程度の速さで歩くと、ゆっくり歩くよりも2.7倍のカロリー消費量を得ることができます[8] [9]。
どの歩き方も前傾姿勢にならないよう注意し、呼吸は一定のリズムで「吸って」「吐いて」を繰り返し行いましょう。
ポイント3 腹筋と骨盤を意識する
関節痛や腰痛があり、水中ウォーキングを検討している方もいらっしゃるかもしれませんね。
歩行中はしっかり腹筋を使い、骨盤を意識しながら水圧で腰が反らないようにすることが大切です。
姿勢が崩れた状態で運動を行うと、筋肉痛・疲労を引き起こす原因になってしまいます。
特に腰痛がある場合は、誤った姿勢で水中ウォーキングを続けると症状が悪化する恐れがあるため注意しましょう。
正しい姿勢で水中ウォーキングをするには以下の点に注意しましょう。
【水中ウォーキングの正しい姿勢】
- 前方に視線を保つ
- 肩の力を抜いて背筋を伸ばす
- 少しおなかに力入れ腹圧を高める
- 横から見たときに、踵・膝・腰・肩・頭が一直線になるように立つ
腰痛や筋肉痛を防ぐためにも、運動時には腰が反らないよう背筋を伸ばし、腹筋に力を入れて正しい姿勢を心掛けましょう。
ポイント4 ペースや負荷を調整する
水中ウォーキングでは無理をせずに楽しいと感じるペースや負荷で行うことが、より効果を高めることにつながります。
しかし水中では疲労を感じにくいため、知らず知らずのうち無理をして、後から予想外に大きな疲労を感じることになりがちです。
最初は短い時間からスタートし、水中での運動に慣れましょう。
疲労感が大きいと翌日以降継続することが難しくなってしまいます。
徐々に運動時間を延ばしていき、「最終的には◯分以上歩けるようことにする」など目標に向かって少しずつステップアップしていけば水中ウォーキングを継続できると考えられます。
また慣れてきたら歩くスピードを速める、手足を大きく動かす、水の抵抗を増やす動きを心掛ける、といったことで運動の負荷を強めていくことができます。
ペースや負荷の調節が容易であるという水の中の運動のメリットを最大限活かしましょう。
ポイント5 運動後は十分に体をほぐす
水中ウォーキングが終わったら整理運動(クーリングダウン)で呼吸を整え、筋肉をほぐします。
運動後の整理運動には「静的ストレッチ」が効果的です。
ストレッチを行う際には、呼吸を止めずに伸ばす筋肉と部位を意識しながら、気持ちの良い程度に伸ばすことが大切です。
時間は目的の部位ごとに20秒以上を目安に行うと良いでしょう[10]。
4.水中ウォーキングを行う際の注意点
「安全に水中ウォーキングを行うにはどうすれば良いのかな」
そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからは水中ウォーキングを行う際の注意点について三つ紹介します。
水中ウォーキングは負荷が少なく活動量を多くできる運動ですが、その分疲労に気が付きにくい運動でもあるため体調への配慮が必要になってきます。
水中は水の抵抗により動作は緩やかで、つまずく心配がないことはメリットですが、水の中だからこその注意点があります。
特に運動に不慣れな方や高齢の方は安全に楽しんで水中ウォーキングが行えるよう、ぜひお読みくださいね。
注意点1 体調に配慮し無理に行わない
始める前には健康状態のチェックを行いましょう。
発熱や頭痛、目まいなどの症状がある場合には運動は行わないようにしてください。
運動前に以下のリストに「はい」がある場合には、その日の運動を中止しましょう。
【運動前の体調チェックリスト】
足腰の痛みが強い | はい | いいえ |
---|---|---|
熱がある | はい | いいえ |
体がだるい | はい | いいえ |
吐き気がある、気分が悪い | はい | いいえ |
頭痛やめまいがする | はい | いいえ |
耳鳴りがする | はい | いいえ |
過労気味で体調が悪い | はい | いいえ |
睡眠不足で体調が悪い | はい | いいえ |
食欲がない | はい | いいえ |
二日酔いで体調が悪い | はい | いいえ |
下痢や便秘をしていて腹痛がある | はい | いいえ |
少し動いただけで動悸や息切れがする | はい | いいえ |
咳やたんが出て、風邪気味である | はい | いいえ |
胸が痛い | はい | いいえ |
厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」をもとに執筆者作成
また、途中で休憩を挟みながら行い、体調に変化を感じたら中止しましょう。
休憩のときに疲労を感じない程度のペースに調整し、休憩に入る際には階段などを使ってゆっくりとプールから出る工夫をしてください。
注意点2 水分補給はこまめに行う
水の中では気が付きにくいですが、運動量に伴い体は汗をかいています。
運動前後や途中の休憩ではこまめに水分補給を行ってください。
水分の摂取不足はさまざまな健康障害の要因であり、熱中症・脳梗塞・心筋梗塞も脱水によって引き起こされることがあります。
また水分が不足すると手足をつりやすくなります。
水中はバランスが取りにくく、手足をつると事故につながりかねないため注意してください。
注意点3 食後すぐ行わない
食後は1時間以上時間を空けてから水中ウォーキングを行いましょう[11]。
食べ物を食べた後は消化の胃や腸に血液が集まり、脳への血流が減ってしまいます。
また空腹時は、血液中の糖分が不足するため体を動かすためのエネルギー源を確保できません。
水中ウォーキングに限らず、運動は強い空腹感や満腹感を感じているときを避け、食事を済ませて少し時間を置いてから開始しましょう。
5.水中ウォーキングについてのまとめ
水中ウォーキングはその名のとおり水中、一般的にはスイミングプールで行うウォーキングです。
水の特性により関節への負担を軽減できるため運動習慣のない方や関節痛のある方でも始めやすい運動だといえます。
また水中ウォーキングでは水の抵抗に逆らって歩いたり、水温によって奪われる体温を保ったりする必要があるため、高いダイエット効果を得られます。
強度の調節が容易である点も魅力だといえるでしょう。
またリラクゼーション効果もあり、ストレス軽減につながることともメリットです。
水中ウォーキングを行う際には準備運動と整理運動をしっかり行うことが重要です。
歩く際には腹筋と骨盤を意識し、いろいろな歩き方を試してみましょう。
また水中ウォーキングには消費カロリーの割に疲労を感じにくいという性質があります。
自覚のないうちに無理をすると後から大きな疲れに襲われ継続が難しくなってしまう恐れがあるので、自分の体力に合わせてペースや負荷を調整するよう心掛けましょう。
今回の記事を参考にして、楽しみながら水中トレーニングを習慣にしてみてくださいね。