「マグネシウムには体にとってどんな効果があるの?」
マグネシウムの効果についてよく知らない方もいらっしゃるかもしれません。
マグネシウムは体内のさまざまな反応に関わる酵素を活性化させるはたらきがあります。
また骨の健康を維持したり高血圧を予防したりする効果が期待されています。
一方でマグネシウムの過剰摂取や不足は体に悪影響を及ぼす恐れがあるため、注意が必要です。
今回の記事ではマグネシウムに期待できる効果、1日に摂取すべき量について解説します。
またマグネシウムを多く含む食品もご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.マグネシウムの効果・作用
マグネシウムはヒトの体に欠かせない「ミネラル」の一種です。
ミネラルについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介
マグネシウムは骨や歯、筋肉などに存在し、酵素を活性化するなどさまざまなはたらきを持っています。
この章ではマグネシウムのはたらき、期待できる効果について詳しく解説します。
1-1.酵素を活性化する
マグネシウムには「酵素」を活性化させる重要な役割があります。
酵素とは消化、吸収、代謝などの体内で起こるさまざまな反応に触媒として必要とされるたんぱく質のことです。
酵素はそれぞれに作用が異なり、特定の反応にしか関わることができないため、体内では多くの酵素が存在しています。
マグネシウムは300種類以上の酵素を活性化し、さまざまな代謝をサポートするはたらきがあることが分かっています[1]。
体が正常に機能するためにはマグネシウムが欠かせないのですね。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「マグネシウム」
1-2.骨の健康を維持する
マグネシウムは骨の健康を維持するのに重要な栄養素でもあります。
体内に存在するマグネシウムのうち約6割は骨や歯に存在し、ミネラルの一種であるカルシウムやリンと共に骨の形成に関わっています[2]。
マグネシウムは骨に弾力性を与え、丈夫でしなやかな骨を作るのに役立ちます。
また骨や歯にカルシウムを供給できるように調節する役割を果たしています。
このためカルシウムの摂取量が増えると、その分マグネシウムの摂取が必要となります。
健康な骨を作るには、カルシウムだけではなくマグネシウムも欠かせないのですね。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「マグネシウム」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「カルシウム」
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「リン」
1-3.その他
マグネシウムは神経や筋肉などにも関わっています。
マグネシウムが不足すると神経過敏や抑うつ感などが生じる恐れがあるといわれています。
マグネシウムやカルシウムなどのミネラルの摂取と抑うつ症状との関連を調べた研究では、マグネシウムの摂取量が多い場合は少ない場合と比べて抑うつ症状が現れにくいことが報告されています[5]。
またマグネシウムは、血液中のカルシウムの量を調節し筋肉の収縮をサポートする作用があります。
カルシウムは筋肉が収縮する際にも欠かせないミネラルで、カルシウムの量が増え過ぎると、筋肉が痙攣(けいれん)したり心臓が正常に動かなくなったりすることがあります。
マグネシウムは体内のミネラルの量を調節することで、体内の機能を維持しているのですね。
[5] 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 臨床研究センター「抑うつ症状とミネラル摂取との関係―断面調査の結果から―」
2.マグネシウムの食事摂取基準
「マグネシウムは1日にどれくらい摂取すれば良いのかな?」
マグネシウムの1日に摂取すべき量を知っておきたいですよね。
厚生労働省が健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために設定する栄養素の摂取量の基準を示す「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、マグネシウムには推定平均必要量と推奨量が設定されています。
マグネシウムの食事摂取基準は以下のとおりです。
【マグネシウムの1日当たりの食事摂取基準】
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 推定平均必要量 | 推奨量 |
18~29歳 | 280mg | 340mg | 230mg | 270mg |
30~49歳 | 310mg | 370mg | 240mg | 290mg |
50~64歳 | 310mg | 370mg | 240mg | 290mg |
65~74歳 | 310mg | 350mg | 230mg | 280mg |
75歳以上 | 270mg | 320mg | 220mg | 260mg |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
なお妊娠中の方の食事摂取基準は年代別に設定された推定平均必要量には30mg、推奨量には40mgが加えられます[6]。
マグネシウムは食品から摂取した場合、過剰摂取になるリスクが低いため、過剰摂取による健康被害の回避を目的とした「耐容上限量」は設定されていません。
しかしサプリメントなどから摂取し過ぎると過剰摂取による健康被害が起こる可能性があるため、通常の食品以外から摂取する場合には成人に対し1日当たり350mgの耐容上限量が設けられています[6]。
マグネシウムを摂取する際の参考にして、過不足なく摂取するように心掛けましょう。
マグネシウムの食事摂取基準については以下の記事で詳しく解説しています。
マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説
[6] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3.マグネシウムの過不足による体への影響
「マグネシウムが過剰となったり不足したりすると体にどんな影響があるのかな?」
このように気になる方もいらっしゃるかもしれません。
この章ではマグネシウムの摂取量が多過ぎた場合と少な過ぎた場合に現れる体への影響を解説します。
3-1.マグネシウムの過剰摂取が体に及ぼす影響
マグネシウムは通常の食品からの過剰摂取で健康被害を招くことはありません。
これは食事で摂り過ぎたマグネシウムは尿として排泄されるからです。
しかし腎機能が低下していたり、サプリメントや薬によって過剰摂取したりすると体に悪影響を及ぼすといわれています。
腎臓の機能が低下していると、余分なマグネシウムが排泄されず血中のマグネシウムの濃度が高くなる「高マグネシウム血症」を引き起こす可能性があります。
高マグネシウム血症では筋力低下、低血圧、呼吸障害などが起こり、重症化すると心臓が止まる恐れがあります。
ただし高マグネシウム血症を発症することはほとんどないといわれています。
またサプリメントや薬でマグネシウムを過剰摂取すると、下痢を起こすことがあります。
通常の食事では過剰摂取になる心配はありませんが、サプリメントでマグネシウムを摂取する際には注意してくださいね。
3-2.マグネシウムの摂取不足が体に及ぼす影響
マグネシウムが不足すると骨や筋肉、血管などに影響を及ぼす恐れがあります。
健康な方は通常の食生活を送っていれば、マグネシウムの不足による不調が起こることはないといわれています。
しかしマグネシウムを排出する薬を長期に服用していたり、アルコール中毒を発症していたりすることで腎臓からマグネシウムが多く排泄されマグネシウムの欠乏に陥る可能性があります。
マグネシウムが欠乏すると、「低マグネシウム血症」を引き起こします。
低マグネシウム血症では吐き気や嘔吐(おうと)、眠気、筋肉の痙攣、食欲不振といった症状が現れます。
またマグネシウムが不足した状態が続くと、「骨粗しょう症」や心疾患、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高くなることが示唆されています。
日頃から不足しないようにマグネシウムを十分に摂取したいですね。
4.マグネシウムを多く含む食品
「マグネシウムを摂取するには何を食べれば良いのかな?」
このようにマグネシウムを豊富に含む食品について知りたい方もいらっしゃるでしょう。
マグネシウムは穀類や豆類、種実類、野菜類、藻類、魚介類などに多く含まれています。
この章ではマグネシウムを多く含む食品をご紹介しましょう。
[7] 東京都保健医療局「栄養成分表示ハンドブック 食品表示基準に基づく栄養成分表示の方法等」
4-1.穀類
マグネシウムは穀類に多く含まれています。
マグネシウムが豊富な穀類は以下のとおりです。
【マグネシウムを多く含む穀類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
キヌア | - | 180mg |
発芽玄米 | - | 120mg |
玄米 | - | 110mg |
オートミール | - | 100mg |
干しそば | 乾燥 | 100mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
穀類のなかでも玄米はマグネシウムの含有量が多いため、普段食べている白米から玄米に置き換えるとより多くマグネシウムを摂取できるでしょう。
4-2.豆類
マグネシウムは豆類にも多く含まれています。
マグネシウムが豊富な豆類は以下のとおりです。
【マグネシウムを多く含む豆類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
きな粉 | - | 260mg |
黄大豆 | 乾燥 | 220mg |
おから | 乾燥 | 150mg |
油揚げ | 生 | 150mg |
凍り豆腐 | 乾燥 | 140mg |
あずき | - | 130mg |
絹生揚げ | - | 120mg |
蒸し大豆 | - | 110mg |
糸引き納豆 | - | 100mg |
がんもどき | - | 98mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
納豆や油揚げは普段の食事に取り入れやすく、手軽にマグネシウムを補給できる食品といえますね。
4-3.種実類
マグネシウムはアーモンドなどの種実類にも多く含まれています。
マグネシウムが豊富な種実類は以下のとおりです。
【マグネシウムを多く含む種実類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
ごま | 乾燥 | 370mg |
アーモンド | いり、無塩 | 310mg |
カシューナッツ | フライ、味付け | 240mg |
らっかせい | いり | 200mg |
ピーナッツバター | - | 180mg |
くるみ | いり | 150mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
アーモンドをはじめとする種実類はマグネシウムだけではなく、エネルギーや脂質も多く含んでいます。
そのため、摂り過ぎないように注意が必要でしょう。
4-4.野菜類
次にマグネシウムを含む野菜類をご紹介しましょう。
【マグネシウムを含む野菜類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
切り干し大根 | 乾燥 | 160mg |
かんぴょう | 乾燥 | 110mg |
しそ | 生 | 70mg |
ほうれんそう | 生 | 69mg |
ごぼう | 生 | 54mg |
オクラ | 生 | 51mg |
モロヘイヤ | 生 | 46mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
切り干し大根やかんぴょうは水分が少ない分、100g当たりのマグネシウム含有量が多いといえます。
これらは一度に食べる量は少ないですが、普段の食事に取り入れることで少しずつ摂取量を増やすことができますね。
4-5.藻類
マグネシウムは海藻類にも多く含まれています。
マグネシウムを多く含む海藻類は以下のとおりです。
【マグネシウムを多く含む藻類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
あおさ | 素干し | 3,200mg |
あおのり | 素干し | 1,400mg |
乾燥わかめ | 素干し | 1,000mg |
刻み昆布 | - | 720mg |
ほしひじき | 乾燥 | 640mg |
りしりこんぶ | 素干し | 540mg |
削り昆布 | - | 520mg |
カットわかめ | 乾燥 | 460mg |
焼きのり | - | 300mg |
味付けのり | - | 290mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
マグネシウムを多く含む藻類は乾燥した状態であるため、マグネシウムが非常に多く含まれているといえます。
ただし藻類はナトリウムも多く含んでいるため、摂り過ぎには注意が必要です。
4-6.魚介類
最後にマグネシウムが豊富な魚介類をご紹介します。
【マグネシウムを多く含む魚介類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
干しえび | - | 520mg |
さくらえび | 素干し | 310mg |
かたくちいわし | 煮干し | 230mg |
するめ | - | 170mg |
しらす干し | 半乾燥 | 130mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
魚介類も藻類と同様に一度に食べる量が少ないとされます。
いつもの食事にしらす干しや干しえびをプラスすることでマグネシウムを上手に取り入れることができるでしょう。
また魚介類もナトリウムを多く含んでいるため、摂り過ぎに注意が必要です。
5.マグネシウムの効果についてのまとめ
マグネシウムは多くの酵素のはたらきに関わり代謝をサポートするミネラルの一種です。
骨の健康を維持する効果が期待できます。
また、抑うつ感を押さえるはたらきがあるという報告もされています。
この他、血中のカルシウムの量を調節し筋肉の収縮をサポートする作用もあります。
マグネシウムは健康な方が通常の食生活を送っている限り、過不足の状態になることはありません。
しかし腎機能の低下やサプリメントによる過剰摂取は高マグネシウム血症を招くことがあります。
一方で、薬の服用やアルコール中毒により腎臓からマグネシウムが多く排泄されると低マグネシウム血症につながる可能性があります。
健康状態を維持したり生活習慣病を予防したりするためにも、1日の摂取推奨量を意識してマグネシウムを摂取することが重要です。
マグネシウムは穀類、豆類、種実類、野菜類、藻類、魚介類などに多く含まれているため、さまざまな食品を組み合わせバランス良くマグネシウムを摂取しましょう。