多量ミネラルとは?各ミネラルの作用や食事摂取基準、摂取源を紹介

2024年09月04日

2024年11月11日

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「多量ミネラルにはどのミネラルが該当するんだろう?」

ミネラルという言葉は比較的よく見聞きするものですが、その分類である多量ミネラルはあまり身近なものではありませんよね。

多量ミネラルとはヒトの体に欠かせない必須ミネラルのうち、1日の摂取量がおおむね100mg以上のもののことです。

ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、硫黄がこれに当たります。

また厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンの5種類を多量ミネラルとしています。

多量ミネラルのなかには十分に摂取されていないものもあれば、過剰に摂取されているものもあります。

しかし健康のためにはいずれのミネラルも過不足なく摂取することが重要です。

この記事では多量ミネラルの定義やそれぞれのはたらき、1日に摂取すべき量、主な摂取源などをご紹介します。

日々の食生活の参考にしてくださいね。

1.多量ミネラルとは

小皿とスプーンに盛った塩

多量ミネラルとは、必須ミネラルのうち1日の摂取量が比較的多いものを指します。

必須ミネラルとは
ミネラルのうち、ヒトの体に栄養素として必要なことが分かっている16種類のミネラルのことです[1]。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、硫黄、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルトが該当します。なお、ミネラルとは生物の体を主に構成する酸素・炭素・水素・窒素の4種類以外の元素の総称です。

一般的には必須ミネラルのうち、1日の摂取量がおおむね100mg以上のものを多量ミネラル(主要ミネラル)、それ未満のものを微量ミネラルといいます[1]。

この基準にのっとって分類すると、多量ミネラルに該当するのはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、硫黄の7種類です。

また微量ミネラルには鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルトの9種類が該当します。

ただし栄養素の1日の摂取量の基準(食事摂取基準)を定める厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」においては塩素、硫黄、コバルトの基準が定められていないため、これらを抜いたものがそれぞれ多量ミネラルと微量ミネラルとして紹介されています。

メモ
必須ミネラルの種類は今後の研究で増える可能性があります。

[1] 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「「健康食品」の安全性・有効性情報「ミネラルについて」

【関連情報】 「ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介」についての記事はこちら

2.多量ミネラルの作用

「多量ミネラルにはそれぞれにどんな作用があるんだろう?」

このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

多量ミネラルはいずれも体に必要な栄養素であるため、体内でそれぞれに重要なはたらきをしています。

ここでは、多量ミネラルに該当するミネラルの体内での作用をご説明しましょう。

2-1.ナトリウムの作用

ヒトの体内のナトリウムはほとんどが細胞外液(細胞の外の体液)に存在し、浸透圧を調節することで細胞外液の量を適切に維持しています

また酸性とアルカリ性の調節においても重要なはたらきをしています。

さらに、胆汁、膵液(すいえき)、腸液などの消化液の材料としても使われています。

メモ
胆汁は肝臓でつくられる脂肪を消化するのに必要な消化液です。膵液は膵臓でつくられ、胃の先にある十二指腸に送られるアルカリ性の消化液です。さまざまな消化酵素を含み、栄養素を分解したり胃液で酸性になった食べ物を中和したりしています。腸液は小腸で分泌される消化液で、弱アルカリ性でさまざまな消化酵素を含んでいます。

なお、ナトリウムは主に食塩(塩化ナトリウム)の形で摂取されています

食塩はさまざまな食品に含まれているため通常の食生活を送っている場合にナトリウムが不足することはなく、むしろ過剰摂取による悪影響が懸念されています

ナトリウムを過剰摂取すると口の渇きが生じる他、体が体液の濃度を保とうと水分をため込むため、むくみの原因となります。

また同様に血液中の水分量も増えるため血液量が増え、血管壁を押す力が高まって血圧の上昇が見られるといわれています。

メモ
高血圧は喫煙と並び日本人の生活習慣病による死亡に最も大きく影響する要因であると考えられています。高血圧の状態が続くと血管に負担がかかり、脳出血や脳梗塞などのさまざまな病気を引き起こすのです。なお塩分の摂り過ぎは日本人の高血圧の最大の原因だといわれています。

この他にナトリウムの過剰摂取による影響として、胃がんや食道がんのリスクが高まることが挙げられます。

ナトリウムは体に必要なミネラルの一種ですが、摂り過ぎは体に悪影響を及ぼしてしまうのですね。

2-2.カリウムの作用

カリウムは体内で主に細胞内液の浸透圧を調整し維持するはたらきをしています。

また神経の興奮性や筋肉の収縮に関わったり、体液の酸性とアルカリ性のバランスを保ったりもしています。

この他に、カリウムにはナトリウムを排せつする作用があることでも知られています。

このためカリウムはナトリウムの摂り過ぎによって上昇した血圧を下げるといわれています。

なおカリウムが不足するとこうしたはたらきに影響が及ぶ他、脱力感や食欲不振、不整脈などの症状が見られることが分かっています。

ただし通常の食生活を送っている健康な人においてこのような欠乏症が見られることはなく、下痢をしたときや大量に汗をかいたとき、利尿剤を服用したときなどに生じるといわれています。

一方、カリウムを多く摂っても体内で調節されるため、カリウムの摂り過ぎによって不調を来すことはほとんどありません。

ナトリウムの摂取量が多い日本人はカリウムを積極的に摂取することが推奨されているので、意識的に摂取しましょう。

注意!
腎臓の機能が低下している場合、カリウムの排せつ量が低下し血中のカリウム濃度が高くなる「高カリウム血症」に陥る恐れがあります。高カリウム血症では不整脈が生じ、最悪の場合には心停止に至ります。腎機能が低下している方はカリウムの摂取制限が必要な場合があるため注意してください。

2-3.カルシウムの作用

カルシウムは骨や歯の材料となるミネラルです。

ミネラルのなかでは体内に最も多く存在し、成人の体内には約1kg含まれています[2]。

体内のほとんどのカルシウムは歯のエナメル質や骨を構成しています。

メモ
エナメル質は歯の一番外側を覆う硬い層で、人体のなかで最も硬い組織であるといわれています。

残りのわずかなカルシウムは血液や筋肉、神経などに存在します。

血中のカルシウムは出血した際、血液を凝固させるはたらきに関わっています

また他の組織内のカルシウムは心臓の筋肉の収縮に関わったり、筋肉の興奮性を抑えたりしています。

カルシウムが不足すると骨をつくる材料が不足してしまうため、骨粗しょう症を招きます

骨粗しょう症とは
骨がもろく折れやすくなった状態のことです。骨は「骨芽細胞」が骨をつくる「骨形成」と「破骨細胞」が骨を壊す「骨吸収」が同時に行われることで常に新しくつくり直されています。このバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回ると骨を形成する組織が減り、骨がもろくなってしまいます。

この他に、カルシウムの不足は高血圧や動脈硬化などの原因にもなるといわれています。

メモ
動脈硬化は心臓から全身の組織に送られる血液が通過する血管「動脈」の壁が厚く硬くなった状態のことです。血管が狭まったり詰まったり裂けたりしやすくなるため、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血といったさまざまな病気の原因となります。高血圧も動脈硬化の一因です。

日本人の食生活はカルシウムが不足しがちだといわれているため、積極的に摂取しておきたいところです。

なおカルシウムの吸収はビタミンDに促されるため、ビタミンDをしっかり摂取しておくことも重要だといえるでしょう。

また通常の食事からカルシウムを多く摂っても体内で調節されるため健康を損ねることはありませんが、サプリメントなどから過剰摂取すると泌尿器に結石が生じたり、他のミネラルの吸収が抑制されたりすることがあります。

カルシウムの摂取量はマグネシウムやリンの吸収量に影響を及ぼしてしまうのです。

他のミネラルと共にバランス良く摂取することもポイントだといえますね。

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「カルシウム

2-4.マグネシウムの作用

マグネシウムはカルシウムと共に骨や歯をつくるはたらきをしています

またマグネシウムは体内で起こるほとんど全ての代謝に関わっています。

代謝とは体内で栄養素を生命の維持に必要なエネルギーや物質に変える化学反応のことです。

代謝にはその反応を起こすために「酵素」と呼ばれるたんぱく質でできた触媒が必要となります。

この酵素のなかには作用するために「補酵素」と呼ばれる物質を必要とするものがあり、マグネシウムはさまざまな反応に補酵素として関わっているのです。

重要なミネラルであるマグネシウムですが、通常の食事をしている健康な人において不足による不調が現れることはあまりありません

ただし利尿薬のうちマグネシウムを排せつしやすい性質を持つものを長期にわたって服用している場合や、生活習慣病やアルコール中毒がある場合には腎臓からの排せつが増え、低マグネシウム血症が起こります。

低マグネシウム血症には吐き気、嘔吐(おうと)、眠気、脱力感、震え、筋肉のけいれん、食欲不振などの症状があります。

また長期にわたってマグネシウムが不足すると骨粗しょう症や心疾患、糖尿病などの発症リスクが高まると考えられていますが、現在研究が進められているところです。

一方、通常の食品からのマグネシウムの過剰摂取により健康を損ねた例は確認されていません

これはマグネシウムを摂り過ぎても腸からの吸収が抑制され、下痢を起こしながらも排せつされるためです。

また尿からの排せつも行われます。

ただし腎機能が低下していたり便秘があったりする場合、高齢である場合に長期間マグネシウムの薬剤を服用すると、血中のマグネシウム濃度が上昇し最悪の場合には死に至るケースが確認されています。

通常の食事からマグネシウムを適切に摂取することを心掛けましょう

2-5.リンの作用

リンは全ての生物に必須で、人体にはカルシウムの次に多く含まれているミネラルです[3]。

リンにはカルシウムと共に骨をつくる作用があります

また体内ではエネルギーや脂質の代謝において重要なはたらきをしています。

メモ
ヒトの体は炭水化物(糖質)・脂質・たんぱく質の3種類のエネルギー産生栄養素から生命維持や体を動かすのに必要なエネルギーを生み出しています。なおこのエネルギーの量を表す単位がカロリーです。1cal(カロリー)は非常に小さいため通常はその1,000倍の1kcal(キロカロリー)が最小単位として用いられています[4]。

リンは日常的に摂取する食品に多く含まれているため通常の食生活を送っていて不足することはほとんどありません

ただし長期間、胃酸を抑える胃薬の一種「水酸化アルミニウム」を服用していると吸収が妨げられ、食欲が衰えたり、倦怠(けんたい)感を覚えたりする場合があります。

一方長期的にリンを過剰摂取すると腎機能が低下したり、副甲状腺機能が高まったり、カルシウムの吸収が抑制されたりすることが分かっています。

リンは食品添加物として用いられることが多く、必要以上に摂取されていると考えられています。

リンの摂取量はカルシウムの代謝にも影響するので加工食品の摂り過ぎに注意し、適切な量を摂取するよう心掛けましょう。

[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「リン

[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-6.塩素の作用

塩素というと水道水やプールの消毒に使われる物質というイメージが強いかもしれません。

実は私たちの体に必要なミネラルの一種でもあるのですね。

例えば食塩の主成分は「塩化ナトリウム」という塩素とナトリウムの化合物です。

気付かないうちに塩素を十分に摂取しているといえるでしょう。

塩素は体内では細胞外液に多く存在しています。

浸透圧の調節に関わる他、酸性・アルカリ性のバランスを保つはたらきをしています

また塩素は胃液に含まれる塩酸(胃酸)の構成成分でもあります。

このため塩素が不足すると食欲不振や消化不良になるといわれていますが、食塩にも含まれている塩素が不足することはほとんどないと考えられるでしょう。

メモ
塩素不足が生じた場合、同時にナトリウム不足が起こっていることが多いといわれています。

2-7.硫黄の作用

硫黄は髪の毛や爪を構成するたんぱく質の材料となるアミノ酸の構成要素となります

メモ
たんぱく質はエネルギー源の他、筋肉や臓器、肌、髪の毛など体の組織の材料になります。またたんぱく質はホルモンや酵素、抗体などの体の機能を調節する物質の成分でもあります。たんぱく質にはさまざまな種類がありますがいずれも20種類のアミノ酸が約50〜1,000個結合してできています[5]。

硫黄は食品中のたんぱく質にも含まれているため、不足することはまれです。

[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「たんぱく質

3.多量ミネラルの食事摂取基準

「多量ミネラルはそれぞれどれくらい摂取したら良いんだろう?」

このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

多量ミネラルはいずれも体に必要な栄養素であるため、摂取量が多過ぎたり少な過ぎたりすると体に不調を来す恐れがあります

適量を摂取することが重要なのですね。

ここでは、厚生労働省が成人に対し定める多量ミネラルの食事摂取基準をご紹介しましょう。

メモ
塩素と硫黄は過不足に陥る心配が少ないため食事摂取基準が設定されていません。またこの記事では18歳以上の食事摂取基準しか紹介していないため、未成年や妊産婦の食事摂取基準を確認したい場合は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をご確認ください。

日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-1.ナトリウムの食事摂取基準

厚生労働省は成人に対し、ナトリウムの目標量を定めています。

目標量とは
生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量として設定された食事摂取基準です。

ナトリウムの摂り過ぎは高血圧の原因となったり、胃がんや食道がんの発症リスクを高めたりするため、過剰摂取を防ぐ目的で目標量が設定されているのですね。

なおナトリウムの目標量はナトリウム単体に対してではなく、食塩相当量で定められています。

食塩相当量とは
食品に含まれるナトリウムの量を、そのナトリウムが全て食塩として含まれていた場合の食塩の量に換算した値です。ナトリウム量(g)×2.54という式で求められます[6]。ただし食品に含まれるナトリウムには食塩(塩化ナトリウム)の他にうまみ成分であるグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなどがあり、食塩相当量は実際の食塩含有量とは異なる点に注意が必要です。

成人のナトリウムの目標量は以下のとおりです。

【成人のナトリウム目標量】
年齢 男性 女性
18歳以上
7.5g未満
6.5g未満

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

まずは1日の食塩摂取量がこの数値を上回らないよう心掛けましょう。

なおWHOのガイドラインは、成人に対し1日のナトリウム摂取量を食塩相当量で5g未満にすることを強く推奨しています[6]。

しかし日本人の平均的なナトリウム摂取量はこれを大きく上回っているため、実現可能性を考慮して設定されているのが前掲の目標量です。

健康のためには可能な範囲で減塩に努めましょう

[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-2.カリウムの食事摂取基準

成人のカリウム目標量は以下のとおりです。

【成人のカリウム目標量】
年齢 男性 女性
18歳以上
3,000mg以上
2,600mg以上

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

なおWHOのガイドラインでは、1日当たりに3,510mgのカリウムを摂ることが推奨されています[7]。

しかし日本人のカリウム摂取量は理想に程遠く、前掲の目標量は実現可能性を考慮して設定されたものです。

日本人はナトリウム摂取量が多いことから、ナトリウムの排せつを促すカリウムを積極的に摂るべきであるといわれています。

日頃からカリウムを十分に摂取するよう心掛けましょう。

[7] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-3.カルシウムの食事摂取基準

厚生労働省はカルシウムの推奨量および耐容上限量を定めています。

推奨量はほとんどの人にとって十分だと考えられる量、耐容上限量は過剰摂取による健康障害の回避を目的に設定された量です。

成人のカルシウム推奨量は以下のとおりです。

【成人のカルシウムの推奨量】
年齢 男性 女性
18〜29歳
800mg
650mg
30〜49歳
750mg
650mg
50〜64歳
750mg
650mg
65〜74歳
750mg
650mg
75歳以上
700mg
600mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

また成人の耐容上限量は以下のとおりです。

【成人のカルシウムの耐容上限量】
年齢 男性 女性
18歳以上
2,500mg
2,500mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

カルシウムを過不足なく摂取するよう心掛けましょう。

またカルシウムの吸収はビタミンDによって促されるためビタミンD を十分に摂ることも重要です。

3-4.マグネシウムの食事摂取基準

厚生労働省はマグネシウムの推奨量を設定しています。

成人のマグネシウム推奨量は以下のとおりです。

【成人のマグネシウムの推奨量】
年齢 男性 女性
18〜29歳
340mg
270mg
30〜49歳
370mg
290mg
50〜64歳
370mg
290mg
65〜74歳
350mg
280mg
75歳以上
320mg
260mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

またマグネシウムをサプリメントなど通常の食品以外から摂取する場合、成人の耐容上限量は350mgであるとされています[8]。

通常の食品から摂取する場合と健康への影響が異なる点に注意しましょう。

[8] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-5.リンの食事摂取基準

リンには目安量および耐容上限量が設定されています。

成人のリンの目安量は以下のとおりです。

【成人のリンの目安量】
年齢 男性 女性
18歳以上
1,000mg
800mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

【成人のリンの耐容上限量】
年齢 男性 女性
18歳以上
3,000mg
3,000mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

リンは摂り過ぎるとカルシウムの吸収を妨げてしまいます。

食品添加物に多く使用されているため、加工食品を頻繁に摂取している方は摂り過ぎに注意が必要です。

4.多量ミネラルの摂取源となる食べ物

「多量ミネラルはどんな食べ物に多く含まれているんだろう?」

「不足しがちな多量ミネラルを摂取するには何を食べたら良いの?」

このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは、多量ミネラルの摂取源となる食べ物をご紹介しましょう。

メモ
食品に含まれる栄養素の量をまとめている文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」において、食品中の塩素と硫黄の含有量は測定されていないため、ここでは塩素と硫黄を除く多量ミネラルの摂取源をご紹介しています。

日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

4-1.ナトリウムの摂取源となる食べ物

小皿に醤油を注いでいるところ

ナトリウムの主な摂取源となるのは塩をはじめとした調味料です。

食塩相当量も併せてご紹介するのでご確認くださいね。

【ナトリウムの摂取源となる食べ物と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など ナトリウム含有量 食塩相当量
食塩
-
39,000mg
99.5g
おでん用顆粒だし
-
22,000mg
56.4g
顆粒中華だし
-
19,000mg
47.5g
減塩タイプ食塩
-
19,000mg
49.4g
即席すまし汁
-
18,000mg
45.7g
固形ブイヨン
-
17,000mg
43.2g
顆粒和風だし
-
16,000mg
40.6g
カットわかめ
乾燥
9,300mg
23.5g
ナンプラー
-
9,000mg
22.9g
梅干し(塩漬け)
-
7,200mg
18.2g
塩昆布
-
7,100mg
18.0g
トウバンジャン
-
7,000mg
17.8g
うすくちしょうゆ
-
6,300mg
16.0g
こいくちしょうゆ
-
5,700mg
14.5g
アンチョビ(缶詰)
-
5,200mg
13.1g
米みそ(赤色辛みそ)
-
5,100mg
13.0g
米みそ(淡色辛みそ)
-
4,900mg
12.4g
オイスターソース
-
4,500mg
11.4g
豆みそ
-
4,300mg
10.9g
麦みそ
-
4,200mg
10.7g

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

調味料の使い過ぎには注意しましょう。

調味料を目分量ではなくきちんと計量して使うこと、料理にしょうゆやソースなどをかけるのではなくつけるようにすることで調味料の使用量を減らせるかもしれません。

まただしなどのうまみを利用したり、減塩調味料を用いたりするのもおすすめですよ。

4-2.カリウムの摂取源となる食べ物

茹でる前のほうれんそう

カリウムは野菜や果物、ナッツ類などに含まれている傾向にあります

カリウムの主な摂取源となる食べ物と100g当たりの含有量は以下のとおりです。

【カリウムの摂取源となる食べ物と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
いり大豆(黄大豆)
-
2,000mg
ピスタチオ
いり、味付け
970mg
らっかせい
いり
760mg
アーモンド
いり、無塩
740mg
ほうれんそう
690mg
えだまめ
冷凍
650mg
アボカド
590mg
モロヘイヤ
530mg
たけのこ
520mg
にら
510mg
こまつな
500mg
まだい(養殖)
皮なし、生
490mg
ルッコラ
480mg
さつまいも
皮なし、生
480mg
ひらめ(養殖)
皮なし、生
470mg
ブロッコリー
460mg
そらまめ(未熟豆)
440mg
れんこん
440mg
西洋かぼちゃ
430mg
豚ヒレ肉
赤肉、生
430mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

これらの食品を積極的に食事に取り入れるようにしましょう。

また調理の際にはカリウムは水溶性であることにも留意しておくと良いでしょう。

カリウムは煮たりゆでたりすると流出してしまうため、摂取源となる食材は生の状態で摂取したり、電子レンジで加熱したり、塩分の摂り過ぎに注意しつつ煮汁ごと摂取できる料理に使ったりするのがおすすめです。

4-3.カルシウムの摂取源となる食べ物

カップにはいった白い飲み物

カルシウムは乳製品や小魚などに含まれている傾向にあります

また意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが一部の葉物野菜からもカルシウムを摂取することができますよ。

【カルシウムの摂取源となる食べ物と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
かたくちいわし
煮干し
2,200mg
パルメザンチーズ
-
1,300mg
チェダーチーズ
-
740mg
プロセスチーズ
-
630mg
さくらえび
630mg
しらす干し(半乾燥)
-
520mg
カマンベールチーズ
-
460mg
わかさぎ
450mg
モッツァレラチーズ
-
330mg
油揚げ
310mg
がんもどき
-
270mg
アーモンド
いり、無塩
260mg
モロヘイヤ
260mg
しじみ
240mg
みずな
210mg
こまつな
170mg
いり大豆(黄大豆)
-
160mg
焼き豆腐
-
150mg
ヨーグルト(無脂肪無糖)
-
140mg
普通牛乳
-
110mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

カルシウムは不足しがちなミネラルなので意識的に摂取するようにしましょう。

4-4.マグネシウムの摂取源となる食べ物

アーモンド

マグネシウムはナッツ類や二枚貝、大豆製品などに含まれている傾向にあります。

また穀類からも摂取が可能です。

【マグネシウムの摂取源となる食べ物と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
カットわかめ
乾燥
460mg
アーモンド
いり、無塩
310mg
いり大豆(黄大豆)
-
240mg
カシューナッツ
フライ、味付け
240mg
らっかせい
いり
200mg
油揚げ
150mg
ヘーゼルナッツ
フライ、味付け
160mg
玄米
炊飯前
110mg
納豆
-
100mg
がんもどき
-
98mg
あさり
92mg
はまぐり
81mg
えだまめ
冷凍
76mg
ほうれんそう
69mg
かき(養殖)
65mg
そば
65mg
木綿豆腐
-
57mg
マカロニ、スパゲッティ
乾麺
55mg
ごぼう
54mg
オクラ
51mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

マグネシウムはさまざまな食品に含まれているので偏りのない食生活を心掛けていれば不足の心配は少ないでしょう。

4-5.リンの摂取源となる食べ物

カットしたサラミ

リンは小魚やナッツ類、肉類などに含まれています

【リンの摂取源となる食べ物と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
かたくちいわし
煮干し
1,500mg
しらす干し(半乾燥)
-
860mg
パルメザンチーズ
-
850mg
プロセスチーズ
-
730mg
いり大豆(黄大豆)
-
710mg
焼きのり
-
700mg
きな粉(黄大豆、全粒大豆)
-
660mg
卵黄(鶏卵)
540mg
イクラ(しろさけ)
-
530mg
カシューナッツ
フライ、味付け
490mg
アーモンド
いり、無塩
480mg
ピスタチオ
いり、味付け
440mg
ししゃも
生干し
430mg
白子(まだら)
430mg
たらこ(すけとうだら)
390mg
豚レバー
340mg
牛レバー
330mg
鶏レバー
300mg
ショルダーベーコン
-
290mg
ロースハム
-
280mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

リンはさまざまな食品に含まれており、食品添加物にも多く使用されています。

自覚なく摂り過ぎてしまう場合もあるので、意識的にリンを摂取する必要はないといえるでしょう。

5.多量ミネラルについてのまとめ

多量ミネラルとは必須ミネラルのうち、1日の摂取量が比較的多いもののことです。

一般的には1日の摂取量がおおむね100mg以上のものを多量ミネラル(主要ミネラル)、それ未満のものを微量ミネラルといいます[9]。

この基準にのっとって分類すると、多量ミネラルに該当するのはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、硫黄の7種類です。

また厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」においてはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンの5種類が多量ミネラルであるとされています。

これらの多量ミネラルにはそれぞれに異なる重要なはたらきがあります

ナトリウムは細胞外液の浸透圧を調節する他、酸性とアルカリ性の調節をしたり、胆汁や膵液、腸液などの消化液の材料となったりしています

しかし摂り過ぎは高血圧などの原因となるため注意が必要です。

カリウムは細胞内液の浸透圧を調節するミネラルで、神経の興奮性や筋肉の収縮に関与する、体液の酸性とアルカリ性のバランスを保つといったはたらきもしています

ナトリウムの排せつを促す性質があることから積極的な摂取が勧められています。

カルシウムは骨や歯の材料となる他、血液凝固や心筋の収縮に関わったり、筋肉の興奮性を抑えたりしています

マグネシウムはカルシウムと共に骨や歯を形成し、体内で起こる多くの代謝に補酵素として関わっています

リンもカルシウムと共に骨をつくるはたらきのあるミネラルです。

またエネルギーや脂質の代謝においても重要なはたらきをしています

塩素は栄養素としてはあまり知られていませんが、細胞外液に多く存在して浸透圧の調節に関わったり、酸性とアルカリ性のバランスを保ったりしています。

また胃液に含まれる塩酸の構成成分としてもはたらきます。

硫黄は髪や爪をつくるたんぱく質を構成するアミノ酸の材料となります。

このように多量ミネラルはそれぞれに重要なはたらきをしているのですね。

いずれも体に欠かせない栄養素であるため、健康を保つには過不足なく摂取することが必要です。

この記事を参考に多量ミネラルの摂取量を意識してみてくださいね。

[9] 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「「健康食品」の安全性・有効性情報「ミネラルについて

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