「名前は聞いたことがあるけど、マンガンっていったい何?」
マンガンと聞いて、ピンと来ないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
マンガンは必須ミネラルの一つで、地球上に広く分布し動物や植物の中にも多く存在しています。
ヒトにおいては、骨の形成や成長、脳機能などに関わるとされています。
この記事ではマンガンのはたらきや、過剰や欠乏による影響などを詳しく解説します。
マンガンを多く含む食品もご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.マンガンとは
マンガンはヒトの体に欠かせない「必須ミネラル」の一種です。
【関連情報】 「ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介」についての記事はこちら
自然界では岩石や土壌、海水、淡水に広く分布し、さまざまな動物や植物にも含まれています。
ヒトの体内では骨やミトコンドリアをはじめ、網膜や毛髪など全身に存在し、酵素の構成成分となる他、骨の形成や生殖、成長、脳機能にも関与します。
マンガンは活性酸素を分解する酵素「スーパーオキシドディスムターゼ(SOD:Superoxide dismutase)」の成分としても重要な役割を果たしています。
SODは種類により含まれるミネラルが異なり、マンガンを含む「SOD2」はミトコンドリアに存在しています。
活性酸素が増加する要因には紫外線や排気ガス、たばこ、食品添加物、酸化した油脂、過度の運動、ストレスなどがあります。
身近な要因があるという方も多いのではないでしょうか。
活性酸素が多く発生すると寿命が短くなるはずですが、こうした要因に囲まれたヒトの寿命が長いのはSODの活性が高いためとされています。
[1] 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「ミネラルについて」
2.マンガンの食事摂取基準
厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」において、マンガンの食事摂取基準を定めています。
それでは早速マンガンの食事摂取基準を見てみましょう。
【マンガンの1日当たりの食事摂取基準】
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢 | 目安量 | 許容上限量 | 目安量 | 許容上限量 |
18歳以上 | 4.0mg | 11mg | 3.5mg | 11mg |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
マンガンの食事摂取基準は「目安量」と「許容上限量」が設定されています。
目安量は一定の栄養状態を維持するのに十分と考えられる量で、この量以上を摂取していれば不足の心配はないとされています。
許容上限量は栄養素を摂取する際に、健康障害を引き起こすリスクがないとされる習慣的な摂取量の上限のことです。
マンガンは植物性の食品に多く含まれるため、穀類や豆類を日常的に摂取する日本人では摂取量が明らかに多くなります。
さらに、サプリメントの利用や厳密な菜食により過剰摂取となる可能性もあるため、許容上限量が設けられています。
3.マンガンの過不足による影響
「マンガンの摂取量が多かったり少なかったりすると何か症状が出るのかな……」
マンガンの過剰摂取や不足により体にどのような影響があるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
この章では、マンガンの過不足による影響について見ていきましょう。
3-1.マンガンを過剰摂取した場合
健康なヒトが通常の食事をしている場合、マンガンを過剰摂取する心配はほぼありません。
マンガンの過剰摂取は、ほとんどが鉱山や工場などで粉じんや微粒子を長期間吸い込んだことによるものです。
マンガンを慢性的に吸い込んでいるとパーキンソン病に似た中枢神経系障害や重度の精神障害、マンガン肺炎などを起こす場合があります。
3-2.マンガンが不足した場合
健康なヒトが通常の食事をしている場合、マンガンが不足する心配はほぼありません。
マンガンが不足すると骨格異常、糖質や脂質の代謝障害、生殖機能低下などの症状が現れるといわれています。
しかしいずれも研究段階で因果関係ははっきりしていません。
4.マンガンを含む食品
「マンガンってどんな食品に含まれているのかな?」
マンガンは穀類、種実類などの植物性食品に多く含まれる他、貝類をはじめとした動物性食品にも含まれます。
ここではマンガンを含む食品を、動物性食品、植物性食品に分けてご紹介します。
4-1.動物性食品
マンガンを含む動物性食品には次のようなものがあります。
【マンガンを含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
しじみ | 生 | 2.78mg |
めざし | 生 | 1.04mg |
かき | 養殖/生 | 0.39mg |
鶏レバー | 生 | 0.33mg |
さくらえび | 素干し | 0.23mg |
しらす干し | 半乾燥 | 0.17mg |
牛小腸(マルチョウ) | 生 | 0.10mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
4-2.植物性食品
マンガンを含む植物性食品には次のようなものがあります。
【マンガンを含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
ヘーゼルナッツ | フライ、味付け | 5.24mg |
しょうが | 皮なし、生 | 5.01mg |
凍り豆腐(高野豆腐) | 乾 | 4.32mg |
くるみ | いり | 3.44mg |
ごま | いり | 2.52mg |
らっかせい | いり | 2.15mg |
玄米 | - | 2.06mg |
油揚げ | 生 | 1.55mg |
糸引き納豆 | - | 1.39mg |
全粒粉パン | - | 1.35mg |
干しそば | 乾 | 1.11mg |
押し麦 | 乾 | 0.86mg |
スパゲティ | 乾 | 0.82mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
5.マンガンについてのまとめ
マンガンは必須ミネラルの一種で微量ミネラルに分類されます。
自然界に広く分布し、さまざまな動物や植物にも含まれています。
ヒトの体内では骨をはじめ全身に存在し、活性酸素を分解するSODなどの酵素の構成成分となります。
また骨の形成や生殖、成長、脳機能などの重要なはたらきにも関わっています。
マンガンの摂取目安量は18歳以上の男性で4.0mg、18歳以上の女性で3.5mgです[2]。
健康なヒトが通常の食生活を送っている場合、マンガンの不足や過剰が起こる心配はほとんどないとされています。
マンガンは玄米やそばなどの穀類、くるみやごまなどの種実類といった植物性食品に多く含まれる他、魚介類や卵などの動物性食品にも含まれます。
この記事を参考に、マンガンの知識を深め日々の健康に役立ててくださいね。
[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」