「おからにはどんな栄養素が含まれているのかな……」
おからは日本に住む私たちにとっておなじみの食品ですが、含まれる栄養素や期待できる効果について詳しくご存じの方は少ないかもしれません。
おからは豆腐を製造する過程でできる副産物で、豆乳を搾った後の残りかすです。
かすとはいっても、おからには優れた整腸作用を持つ食物繊維をはじめ多くのビタミンやミネラルが含まれています。
この記事では、おからに含まれる栄養素とそのはたらきについて詳しく解説します。
調理のポイントや保存方法についてもご紹介しますので参考にしてくださいね。
1.おからの基礎知識
おからは豆腐を作る際にできる副産物です。
豆腐は、すりつぶしゆでた大豆をしぼった液体(豆乳)に、にがりを加えて固めることで作られます。
大豆から豆乳を搾った後に残ったかすがおからです。
おからには「雪花菜(きらず)」や「卯の花」という別名があります。
雪花菜は、調理の際に包丁を使わないことに由来し名付けられたといわれています。
また、白い花を付ける卯の花にちなんで卯の花とも呼ばれます。
おからは江戸時代には広く食べられるようになり、今ではおなじみの炒り煮をはじめ、小麦の代用品としてケーキやクッキーの材料としても使われています。
加工方法の違いにより、大きくは「生おから」「乾燥おから」「おからパウダー」に分けられます。
生おからは豆乳を搾っただけのもので、スーパーの豆腐売り場などで見かけるしっとりとしたおからです。
水分が多く日持ちはしませんが、より大豆の風味を感じることができます
乾燥おからは、生おからを乾燥させたものです。
長期の保存ができ、水で戻すと生おからと同じように使えるため、便利で活用の幅が広いのが特長です。
おからパウダーは乾燥おからの粒子をさらに細かくしたものです。
飲み物や汁物に入れても食感が滑らかで、お菓子作りにも向いています。
用途に応じて使い分けができるのは便利ですね。
おからのカロリーが気になる方もいらっしゃるかもしれません。
「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」に記載のある、生おからと乾燥おからのカロリーは次の表のとおりです。
なお生おからに比べて乾燥おからのカロリーが高いのは、水分量の違いによるものです。
乾燥おからの水分は生おからの10分の1ほどで、その他の成分が凝集され100g当たりのカロリーは高くなります[1]。
水で戻した乾燥おからは生のおからと同様、カロリーの低い食品です。
食品名 | 加工状態など | カロリー |
---|---|---|
生おから | ||
乾燥おから |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
参考として、他の大豆製品のカロリーも見てみましょう。
食品名 | 加工状態など | カロリー |
---|---|---|
絹ごし豆腐 | ||
木綿豆腐 | ||
生揚げ | ||
納豆 | ||
油揚げ | ||
凍り豆腐 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
大豆製品のなかでも、おからのカロリーは高くはありません。
ダイエット中でも安心して食べられますね。
[1] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2.おからに豊富に含まれる栄養素
「おからにはどんな栄養素が多く含まれているんだろう?」
おからに多く含まれる栄養素が知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
おからには、優れた整腸作用を持つ食物繊維や各種ビタミン、ミネラルなど多くの栄養素が豊富に含まれています。
この記事では、一般的におからといわれる生おからに多く含まれる栄養素とそのはたらきをご紹介します。
この章では成人男女向けに1日当たりの摂取量の目安(食事摂取基準)を紹介しています。
17歳以下の方は、妊娠中・授乳中の方は必要量が増える栄養素もあるため、以下の食事摂取基準で付加量をご確認ください。
17歳以下の方
妊娠中・授乳中の方
栄養素 | 含有量 |
---|---|
食物繊維 | |
ビタミンB1 | |
ナイアシン当量 | |
カリウム | |
カルシウム | |
マグネシウム | |
鉄 | |
銅 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
[2] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」
[3] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック」
[4] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-1.食物繊維
おからには食物繊維が豊富に含まれています。
おから100g当たりの食物繊維含有量は11.5gです[5]。
通常、栄養素は消化管を通過する際に消化酵素により分解され小腸で吸収されます。
一方、食物繊維は消化酵素の影響を受けずに小腸を通過し大腸まで達します。
食物繊維は便の体積を増やし、便通を良くします。
また、善玉菌と呼ばれるビフィズス菌や乳酸菌などの餌となることにより、善玉菌の数を増やし腸内環境を整えます。
善玉菌には腸の活動を促し、食中毒菌や病原菌による感染を防いだり、発がん性物質の産生を抑えたりするはたらきがあります。
さらに、食物繊維には免疫機能の向上や血清コレステロールの低下などへの効果も期待されています。
現在は穀類・いも類・豆類の摂取の減少に伴い、日本人の多くで食物繊維が不足している状況です。
健康への影響が大きいため、積極的に摂りたい栄養素です。
食物繊維の1日当たりの摂取目標量は男性の場合18~64歳で21g以上、65歳以上で20g以上です[6]。
女性は18~64歳で18g以上、65歳以上で17g以上です[6]。
食物繊維についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
食物繊維は1日にどのくらい摂ればいい?期待できる効果や食材を紹介
[5] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.ビタミンB1
おからにはビタミンB1が豊富に含まれています。
おから100g当たりのビタミンB1含有量は0.11mgです[7]。
ビタミンB1は水溶性ビタミンの一種です。
ビタミンB1は、主に糖質やアミノ酸が体内で代謝される際の補酵素としてはたらきます。
ビタミンB1の不足は、食事からの摂取不足が続いたり糖質の多い食事や過度の飲酒をしたりしたときに、ビタミンB1の需要が高まり起こりやすくなります。
糖質の代謝に関わるビタミンB1が不足すると、糖質を主なエネルギーとして利用する神経や脳が影響を受けます。
代表的な欠乏症は脚気(かっけ)で、主な症状として全身の倦怠(けんたい)感や四肢の知覚障害、腱(けん)反射の喪失などが挙げられます。
ビタミンB1の1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~49歳で1.4mg、50~74歳で1.3mg、75歳以上で1.2mgです[8]。
女性は18~74歳で1.1mg、75歳以上で0.9mgです[8]。
ビタミンB1についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB1が豊富に含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説
[7] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[8] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-3.ナイアシン
おからにはナイアシンが豊富に含まれています。
おから100g当たりのナイアシン含有量はナイアシン当量(NE)で1.6mgです[9]。
ナイアシンは、エネルギーの元となるATP(アデノシン三リン酸)の産生、ステロイドホルモンや脂肪を構成する脂肪酸の生合成の他、DNAの修復や合成、細胞分化などに関わるビタミンです。
ナイアシンの1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~49歳で15mgNE、50~74歳は14mgNE、75歳以上は13mgNEです[10]。
女性は18~29歳で11mgNE、30~49歳で12mgNE、50~74歳で11mgNE、75歳以上で10mgNEです[10]。
[9] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[10] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-4.カリウム
おからにはカリウムが豊富に含まれています。
おから100g当たりのカリウム含有量は350mgです[11]。
カリウムはミネラルの一種で、ごく一部が血液やリンパなどの細胞外液や骨に含まれる以外はほとんどが細胞内に存在します。
カリウムは主に、体液の浸透圧を調整したり、筋肉の収縮へ関与したりします。
また、ナトリウムを体外へ排出しやすくする作用があり、塩分の摂り過ぎを調節するために役立ちます。
カリウムの1日当たりの摂取目標量は、18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です[12]。
カリウムについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
[11] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[12] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-5.カルシウム
おからにはカルシウムが豊富に含まれています。
おから100g当たりのカルシウムの含有量は81mgです[13]。
カルシウムは骨や歯を構成する主要な成分で、体内ではほとんどが骨と歯に存在しています。
残りのカルシウムは血液や細胞外液に含まれ、血液凝固や心機能、筋収縮などの重要なはたらきに関与しています。
カルシウムの不足は、食事からの摂取が不十分な場合や、カルシウムの吸収を促すビタミンDが欠乏した際に起こることがあります。
カルシウムが不足すると骨量の減少や骨粗しょう症の他、高血圧や糖尿病、軟骨の変性、変形性関節症などが引き起こされることがあるため注意が必要です。
日本人のカルシウム摂取量は目標に達していないため、積極的に摂取したい栄養素の一つです。
カルシウムの1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~29歳で800mg、30~74歳は750mg、75歳以上は700mgです[14]。
女性は18~74歳で650mg、75歳以上で600mgです[14]。
カルシウムについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
カルシウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を解説
[13] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[14] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-6.マグネシウム
おからにはマグネシウムが豊富に含まれています。
おから100g当たりのマグネシウムの含有量は40mgです[15]。
マグネシウムは骨に多く存在する他、すべての細胞に含まれています。
体内で行われるほとんどの生合成や代謝反応に補酵素として関わる必須ミネラルです。
カルシウムと密接に関わり骨の健康を保つ他、神経伝達、ホルモン分泌やその活性の発現、筋収縮など生命維持のための重要なはたらきを担っています。
マグネシウムは骨や細胞に広く存在するため、精製・加工されていないほとんどの食品に含まれています。
そのため、日常の食生活で不足することはほとんどありません。
マグネシウムの1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~29歳で340mg、30~64歳で370mg、65~74歳で350mg、75歳以上で320mgです[16]。
女性は18~29歳で270mg、30~64歳で290mg、65~74歳で280mg、75歳以上で260mgです[16]。
マグネシウムについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説
[15] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[16] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-7.鉄
おからには鉄が豊富に含まれています。
おから100g当たりの鉄の含有量は1.3mgです[17]。
鉄は必須ミネラルの一種で、体内では多くが赤血球のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンに存在しています。
その他の鉄は、肝臓や骨髄、筋肉に貯蔵されています。
鉄は体内の酸素の運搬や細胞呼吸において重要な役割を果たしており、酵素の成分としても欠くことができません。
鉄の不足は成長の著しい乳児や幼児、月経のある女性、鉄の需要が多くなる妊婦や授乳婦において起こりやすくなります。
また、食事からの摂取が不足したり出血などで鉄が失われたりすると鉄欠乏を招くことがあります。
欠乏症の代表的な症状として鉄欠乏性貧血があり、発症すると頭痛やめまい、動悸(どうき)、息切れなどを起こすことがあります。
このような症状は鉄欠乏が重症化しないと現れないため、日ごろから貧血にならないよう注意が必要です。
鉄の1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[18]。
女性は月経がある場合18~49歳で10.5mg、50~64歳で11.0mg、月経がない場合18~64歳で6.5mg、65歳以上で6.0mgです[18]。
鉄についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
[17] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[18] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-8.銅
おからには銅が豊富に含まれています。
おから100g当たりの銅の含有量は0.14mgです[19]。
銅は筋肉や骨に多く含まれる他、肝臓の中にも存在します。
主にエネルギーの産生や鉄代謝、神経伝達物質の産生、活性酸素の除去の他、鉄と共に造血作用にも関わっています。
健康なヒトにおいて通常の食生活を送っている場合、銅が不足することはほとんどありません。
銅の1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~74歳で0.9mg、75歳以上で0.8mgです[20]。
女性は18歳以上で0.7mgです[20]。
[19] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[20] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3.おからに含まれる栄養素
おからにはたんぱく質や各種ビタミン・ミネラルが含まれています。
この章ではおからに含まれている栄養素について見ていきましょう。
この章では成人男女向けに1日当たりの摂取量の目安(食事摂取基準)を紹介しています。
栄養素 | 含有量 |
---|---|
たんぱく質 | |
ビタミンE | |
ビタミンK | |
ビタミンB6 | |
葉酸 | |
パントテン酸 | |
ビオチン | |
亜鉛 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
[21] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック」
[22] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
3-1.たんぱく質
おからにはたんぱく質が含まれています。
おから100g当たりのたんぱく質の含有量は6.1gです[23]。
たんぱく質はエネルギー産生栄養の一つで、生命を維持するために重要なものです。
たんぱく質は細胞を構成する主な成分で、筋肉や臓器、ホルモンなどの材料として欠くことができません。
食事からの摂取不足などによりたんぱく質が欠乏すると、成長障害、体力や免疫機能の低下などが起こることがあります。
特に、高齢者などでは食事摂取量の低下によりたんぱく質が不足する場合があるため注意が必要です。
たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~64歳で65g、65歳以上で60gです[24]。
女性の場合18歳以上で50gです[24]。
たんぱく質についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
たんぱく質を多く含む食べ物は?摂取量の目安やおすすめの食材を解説
[23] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[24] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-2.ビタミンE
おからにはビタミンEが含まれています。
おから100g当たりのビタミンEの含有量は0.4mgです[25]。
ビタミンEは細胞膜や脂質に多く存在し、抗酸化ビタミンとしてはたらきます。
通常の食事をしている場合、ビタミンEの不足や過剰摂取はほとんどありません。
ビタミンEの1日当たりの摂取目安量は、男性の場合18~49歳で6.0mg、50~74歳で7.0mg、75歳以上で6.5mgです[26]。
女性の場合18~29歳で5.0mg、30~49歳で5.5mg、50~64歳で6.0mg、65歳以上で6.5mgです[26]。
ビタミンEについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンEが多く含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説
[25] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[26] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-3.ビタミンK
おからにはビタミンKが含まれています。
おから100g当たりのビタミンKの含有量は8μgです[27]。
ビタミンKは、肝臓内の血液凝固因子を活性化し血液凝固を促すことで知られるビタミンです。
他にも、動脈が石のように固くなる石灰化の抑制や、骨形成への関与など重要なはたらきを担っています。
通常の食事をしている場合、ビタミンKの欠乏はほぼ見られません。
ビタミンKの1日当たりの摂取目安量は18歳以上の男女共に150μgです[28]。
ビタミンKについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンKにはどんな効果がある?摂取目安量とおすすめの食材を紹介
[27] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[28] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-4.ビタミンB6
おからにはビタミンB6が含まれています。
おから100g当たりのビタミンB6の含有量は0.06mgです[29]。
ビタミンB6はたんぱく質・脂質・炭水化物や神経伝達物質の代謝に使われる補酵素の役割を果たします。
不足した場合には、湿疹や口角炎、舌炎、皮膚炎、貧血、免疫機能の低下などの症状が起こることがあります。
ただしビタミンB6の不足は単独では起こることは少なく、他のビタミンの不足と同時に生じます。
ビタミンB6の1日当たりの摂取推奨量は、男性は18歳以上で1.4mg、女性は1.1mgです[30]。
ビタミンB6についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
[29] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[30] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-5.葉酸
おからには葉酸が含まれています。
おから100g当たりの葉酸の含有量は14μgです[31]。
葉酸は、遺伝情報を伝達する役割を持つDNAやRNAの合成やアミノ酸の代謝、たんぱく質の合成などに携わり、細胞の増殖と強い関わりを持つビタミンです。
食事からの摂取不足などが原因で葉酸が不足すると、細胞分裂が抑制され造血作用が正常に行われず、貧血、神経や腸機能の障害を起こすことがあります。
また、妊娠初期の胎児の細胞増殖が活発な時期に葉酸が不足すると、胎児の神経管が正常に成長することができず、神経管閉鎖障害と呼ばれる先天異常の発症率が高まることが明らかになっています。
葉酸の1日当たりの摂取推奨量は、男女共に18歳以上で240μgです[32]。
葉酸についてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
[31] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[32] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-6.パントテン酸
おからにはパントテン酸が含まれています。
おから100g当たりのパントテン酸の含有量は0.31mgです[33]。
パントテン酸は糖や脂質の代謝に関わるビタミンです。
食事から摂取される他、腸内細菌群によりわずかに産生されます。
パントテン酸はギリシャ語で「至る所に存在する酸」を意味し、名前のとおりさまざまな食品に含まれています。
そのため、通常の食事をしている場合に不足することはほぼないとされています。
パントテン酸の1日当たりの摂取目安量は、男性は18~49歳で5mg、50歳以上で6mg、女性は18歳以上で5mgです[34]。
[33] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[34] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-7.ビオチン
おからにはビオチンが含まれています。
おから100g当たりのビオチンの含有量は4.1μgです[35]。
ビオチンは「糖新生」やアミノ酸や脂肪酸の合成、エネルギー代謝などに関わるビタミンです。
また、ビオチンには抗炎症物質を産生しアレルギー症状を和らげる作用があります。
ビオチンは多くの食品に含まれているため、通常の食生活において不足することはほとんどありません。
ビオチンの1日当たりの摂取目安量は18歳以上の男女共に50μgです[36]。
ビオチンについてさらに詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
ビオチンとは?はたらきや摂取の目安量、摂取源となる食品を解説
[35] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[36] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-8.亜鉛
おからには亜鉛が含まれています。
おから100g当たりの亜鉛の含有量は0.6mgです[37]。
亜鉛は筋肉や、骨、皮膚、肝臓、脳、腎臓などに含まれるミネラルです。
主に、酵素を構成する材料となり酵素反応を活性化する他、ホルモンの合成や分泌の調節、DNAやたんぱく質の合成などに関与します。
食事からの摂取不足などで亜鉛が不足すると、皮膚炎や味覚障害、下痢、免疫機能障害などが起こることがあります。
亜鉛の1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~74歳で11mg、75歳以上で10mgです[38]。
女性は18歳以上で8mgです[38]。
[37] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[38] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4.おからをおいしく食べるためのポイント
「おからを料理に使ったことがないけど上手にできるかな?」
「使い切れず余ったらどうしよう……」
日ごろあまり食べない方にとっては、おからの扱いは難しく感じるかもしれませんね。
ここではおからで料理を作るときのコツや保存方法についてご紹介します。
ポイント1 油やだし汁を効果的に使う
おから料理と聞いて、真っ先に炒り煮を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
「炒り煮はパサパサ感が苦手だな……」
そのような方もいらっしゃるかもしれません。
生のおからでパサパサしない炒り煮を作るコツは、炒めるときに油を多めに使うことです。
そうすることでしっとりと口当たり良く仕上がります。
乾燥おからは油分や水分を吸いやすいので、油や塩分の摂取を制限している場合はだし汁を上手に使いましょう。
おからにだし汁をしっかり含ませると、少ない油でしっとりとした食感を楽しむことができます。
また、だし汁を使うことで調味料の使い過ぎを避け、塩分量を抑えることもできますよ。
ポイント2 小分けにして冷凍で保存する
生のおからは日持ちがしませんが、冷凍すると長く保存することができます。
ラップに小分けにし薄く平らにしたものを保存袋に入れ、しっかり空気を抜いて冷凍庫で保存しましょう。
あらかじめおからを乾いりしてから冷凍すると、さらに長く持たせることが可能です。
凍ったままで調理に使うことができるので、冷凍保存しておくと便利ですよ。
5.おからに含まれる栄養素についてのまとめ
おからは豆腐を作る際にできる副産物です。
大豆をすりつぶしゆでたものを搾った液体が豆乳で、残ったかすがおからです。
おからは加工方法の違いにより、大きくは「生おから」「乾燥おから」「おからパウダー」に分けられます。
おからのカロリーは生おからが88kcal、乾燥おからが333kcalです[39]。
一般的におからといわれる生おからには食物繊維をはじめ、ビタミンB1、ナイアシン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅が豊富に含まれています。
また、たんぱく質やビタミンE、ビタミンK、ビタミンB6、葉酸、パントテン酸、ビオチン、亜鉛が含まれています。
生のおからを料理に使うとパサパサしやすいため、油を多めに使うのがしっとりした食感に仕上げるコツです。
乾燥おからは油分や水分を吸いやすいため、だし汁を活用すると油や塩分を抑えることができます。
生のおからは日持ちがしないので、小分けにして冷凍庫で保存しましょう。
[39] 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」