「ヨウ素とはどんな栄養素なのかな?」
「ヨウ素のはたらきについて知りたい」
ヨウ素についてよく知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ヨウ素とはエネルギー代謝や神経細胞の発達、細胞活動などに関わる必須ミネラルです。
ヨウ素不足は日本ではほとんど見られませんが、世界的には起こりやすいといわれます。
不足すると甲状腺に異常を来すことがあります。
この記事ではヨウ素のはたらきや過不足によって体に表れる影響について解説します。
またヨウ素を多く含む食品も紹介しますので普段の食生活の参考にしてみてくださいね。
1.ヨウ素とは
「ヨウ素ってあまりなじみがないけど、どんな栄養素なのかな?」
このようにそもそもヨウ素がどんな栄養素なのか知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ヨウ素はヨードとも呼ばれ、ヒトに欠かせない必須ミネラルの一つです。
【関連情報】 「ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介」についての記事はこちら
ヨウ素は体内に吸収されるとそのほとんどが甲状腺に取り込まれ、「甲状腺ホルモン」の構成成分となります。
甲状腺ホルモンとはエネルギー代謝や神経細胞の発達、細胞活動などに関わるホルモンです。
甲状腺ホルモンには新陳代謝の促進や脈拍数・体温・自律神経などを調節し、エネルギー消費を一定にするといったはたらきがあります。
その他にも子どもの成長を促したり、大人の脳のはたらきを維持したりする役割を担っています。
[1] 国立研究開発機構 国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」
2.ヨウ素の摂取不足と過剰摂取による体への影響
「ヨウ素が不足すると体にどんな影響が表れるのかな?」
「ヨウ素は摂り過ぎたら良くないのかな?」
ヨウ素は体に欠かせないミネラルですが、摂り過ぎたり不足したりすると体に悪影響が表れます。
ここからはヨウ素の過不足によって表れる体への影響を紹介していきます。
2-1.ヨウ素の摂取不足による体への影響
ヨウ素が不足すると体内で甲状腺ホルモンが生成できなくなります。
甲状腺ホルモンの分泌量が減るとヨウ素不足を補おうとして、脳の下垂体から甲状腺刺激ホルモンの分泌が増加し、甲状腺の発達を促します。
この状態が続くと甲状腺の肥大や「甲状腺腫」といった症状が現れます。
この他にも甲状腺ホルモンの生成が不足すると無気力や疲労感、むくみ、体重増加などの症状が見られる「甲状腺機能低下症」や、精神発達の遅れ、成長発達異常などが起こるとされています。
ヨウ素不足によって現れる疾患のなかでも最も重篤なものはクレチン症です。
クレチン症は母親のヨウ素不足が主な原因とされる疾患で、精神障害や神経系の障害を伴う成長不全をもたらします。
ヨウ素は世界的には不足しやすいミネラルといわれており、特に山岳地帯や内陸部などの土壌中のヨウ素含有量が少ない地域ではヨウ素不足が深刻な問題となっています。
しかし日本では、ヨウ素を多く含む海藻類や魚介類を取り入れた食習慣が長く根付いているため、ヨウ素不足が問題になることはほとんどありません。
2-2.ヨウ素の過剰摂取による体への影響
ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能低下症や甲状腺腫、甲状腺ホルモンのはたらきが過剰になる「甲状腺中毒症」などを引き起こす恐れがあります。
甲状腺中毒症では動悸(どうき)や手足の震え、体重減少、多汗といった症状が見られます。
健康な人であればヨウ素の摂取量が多少増えても、尿中に排せつされることで調節できます。
しかし長期間にわたって過剰摂取が続けば過剰症が起こる可能性があります。
日本人はヨウ素を多く含む海産物を摂取する食習慣があるため、体質的に過剰摂取の影響が表れにくい民族と考えられていますが、過去には海藻の多量摂取によって過剰症が起こったという報告があります。
過剰症が現れにくいとはいえヨウ素の摂り過ぎには注意しましょう。
3.ヨウ素の1日当たりの食事摂取基準
「ヨウ素はどれくらい摂取すれば良いのかな?」
厚生労働省が公表する「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに、ヨウ素の食事摂取基準をみていきましょう。
ヨウ素の食事摂取基準は以下のとおりです。
月齢・年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5(月) | ||||
6~11(月) | 1~2歳 | 3~5歳 | 6~7歳 | 8~9歳 | 10~11歳 | 12~14歳 | 15~17歳 | 18~29歳 | 30~49歳 | 50~64歳 | 65~74歳 | 75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
妊婦や授乳婦には推定平均必要量と推奨量に付加量が設定されています。
- | 推定平均必要量の付加量 | 推奨量の付加量 | 目安量の付加量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|
妊婦 | 授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
胎児や新生児はヨウ素に対する感受性が高いため、妊娠期や授乳期のうちもヨウ素の長期的な過剰摂取に注意しましょう。
4.ヨウ素を多く含む食品
「ヨウ素はどんな食品に多く含まれるのかな?」
身近な食品のヨウ素の含有量が気になる方も多いかもしれませんね。
ヨウ素は主に海水中に存在するため、魚介類や海藻類などの海産物に特に多く含まれます。
ここでは魚介類と海藻類のヨウ素の含有量をご紹介します。
4-1.魚介類
ヨウ素を多く含む魚介類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
まだら | ||
あわび | たらこ | さくらえび | さざえ | あんこう(肝) | うなぎかば焼き | ししゃも(生干し) | かき | あさり |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
このようにヨウ素はさまざまな魚介類に含まれていることが分かります。
普段の食事の参考にしてくださいね。
4-2.海藻類
ヨウ素を多く含む海藻類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
刻み昆布 | ||
ひじき | 乾燥わかめ | あおのり(素干し) | 焼きのり | わかめ | めかぶわかめ | ところてん |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
わかめやひじき、焼きのりなど、日本人になじみの食品が多いですね。
5.ヨウ素のはたらきについてのまとめ
ヨウ素はヨードとも呼ばれ、ヒトにとって欠かせない必須ミネラルの一つです。
甲状腺ホルモンの構成成分として、エネルギー代謝やたんぱく質の合成、神経細胞の発達、細胞の活動などさまざまなはたらきに関わっています。
ヨウ素不足によって甲状腺ホルモンの生成ができなくなります。
甲状腺ホルモンの分泌が減るとヨウ素を補おうと甲状腺刺激ホルモンの分泌量が増加します。
この状態が続くと甲状腺の肥大や甲状腺腫といった症状が現れます。
またヨウ素を長期にわたって過剰摂取した場合は甲状腺機能低下症や甲状腺腫、甲状腺中毒症が起こる恐れがあります。
日本は海に囲まれておりヨウ素の摂取源となる海産物を中心とした食習慣があることから、ヨウ素の摂取不足や過剰摂取による影響が表れにくいと考えられています。
しかし、過去にはヨウ素の摂り過ぎによる過剰症の報告があるため、食事摂取基準を守って適切な量を摂取しましょう。