「尿酸値が高いとどんな影響があるのかな」
「尿酸値を下げるためにはどうしたら良いんだろう?」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
尿酸値とは、プリン体が体内で分解されるときに生じる尿酸という物質が血中にどれだけあるのかを表す値です。
尿酸値が高過ぎると痛みを伴うさまざまな病気が引き起こされるため、その高さを指摘された場合は早めに改善することが重要です。
この記事では尿酸値が高い場合に発症のリスクが上昇する病気や、尿酸値が上昇する原因、改善のためのポイントなどについて解説します。
健康な毎日を送る上での参考にしてくださいね。
1.尿酸値とは
「そもそも、尿酸値って何を表しているんだろう?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
尿酸値とは、「尿酸」の血中濃度を表す数値です。
尿酸は「プリン体」という成分が分解される際に生じる老廃物です。
プリン体は細胞の核の中にある核酸の主成分として存在するエネルギー物質で、常に体内でつくられています。
古くなった細胞が新陳代謝で分解されるとプリン体は核酸の外に出ます。
またプリン体はあらゆる生物の細胞内に存在しているため、食品からも摂取されます。
これらのプリン体が体内で分解されることで、尿酸がつくられるのですね。
なお、尿酸は増え過ぎると体内で悪いはたらきをする一方、「抗酸化作用」という体に有用なはたらきも有しています。
尿酸というと悪いもの、というイメージをお持ちの方も多くいらっしゃるかもしれませんが、その存在自体が悪というわけではなく、バランスが重要なのですね。
何らかの理由により尿酸のつくられる量と排せつされる量のバランスが崩れ、尿酸が体内で増え過ぎてしまうとさまざまな不調や異常が起こります。
この尿酸濃度が高くなった状態を「高尿酸血症」といいます。
高尿酸血症は放置しているとさまざまな病気を引き起こすため注意が必要です。
尿酸値が高いことで引き起こされる病気については、次の章で解説します。
[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高尿酸血症の食事」
【関連情報】 「尿酸値とは?基準値や高くなる原因、改善のためのポイントを解説」についての記事はこちら
2.尿酸値が高い場合の影響
「尿酸値が高いと体にどんな影響があるんだろう?」
尿酸値が高いだけでは自覚症状はありません。
しかし放置していて進行してしまうと、激痛を伴う病気を引き起こす恐れがあります。
またさまざまな病気の原因となる動脈硬化を進行させる要因にもなるといわれています。
この章では、尿酸値が高いことで引き起こされる病気について説明します。
2-1.高尿酸血症の発症
高尿酸血症は尿酸値が異常に高い状態のことです。
高尿酸血症は尿酸の排せつに問題を来すタイプ、体内でつくられる尿酸が多過ぎるタイプ、両者に該当する混合タイプの3種類に分けられ、日本人には排せつに問題を来すタイプが多いといわれています。
なお、女性ホルモンには尿酸の排せつを促す作用があるため、高尿酸血症の患者の大半は男性です。
高尿酸血症は尿酸値が7mg/dL以上になると診断されます[2]。
また8mg/dL以上または9mg/dL以上で、腎障害、高血圧、糖尿病、肥満などを伴う場合には薬物療法を含む早めの治療が勧められます[2]。
高尿酸血症を放置していると尿酸が結晶化し、後述する痛風や尿路結石症を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
また、高尿酸血症のある方は、高血圧や脂質異常症、高血糖、肥満などを合併しやすいといわれています。
これらの生活習慣病や肥満は後述する動脈硬化の要因になるともいわれています。
他の重篤な病気を招いてしまう前に、高尿酸血症を改善しておくことが重要だといえるでしょう。
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高尿酸血症」
2-2.痛風の発症
痛風は高尿酸血症が原因となって起こる病気の一つです。
結晶化した尿酸が関節に沈着し、関節とその周辺に痛みを伴う炎症を引き起こします。
痛風は主に足の親指の付け根に起こり、この他に足首の関節、足の甲、アキレス腱(けん)の付け根、膝の関節に生じるケースもあります。
痛風の痛みは激しく、風が吹くだけでも痛みを感じることから痛風という名前が付いたといわれています。
こうした激しい痛みが現れることを痛風発作といい、夜間に起こりやすいといわれています。
痛みはだんだんと悪化し、関節を動かしたり関節に触れたりしたときに特にひどくなります。
患部は腫れて熱を持ち、赤や紫のような色合いになり、硬さを増したり、光沢を帯びたりするのが特徴です。
また発作時には発熱や心拍数の上昇、全身の倦怠(けんたい)感、悪寒などを伴う場合があります。
痛風発作は1〜2週間程度で落ち着きますが、治療をしなければ繰り返すといわれています[3]。
治療しないと痛風発作が続く時間は伸び、頻度は上昇し、発作が現れる関節も多くなるといわれています。
痛風発作は、けがや病気、手術、アルコールやプリン体の大量摂取に誘発されることがあります。
また利尿薬などの尿酸値を変化させる作用のある薬の服用によっても起こり得るので注意が必要です。
なお尿酸結晶が関節の内側を覆う膜「滑膜」や軟骨、関節付近の骨、関節周囲の皮膚の下などに沈着しこぶのように腫れ上がった状態を痛風結節といいます。
痛風結節は指や手足、アキレス腱、肘の周りなどにできやすく、通常、痛みは伴いませんが、炎症や痛みを引き起こすケースもあります。
痛風結節では関節が変形したり、尿酸の結晶が皮膚を突き破って排出されたりすることがあり得ます。
痛風発作の激しい痛みや痛風結節による外見上の変化を体験する前に、早めに高尿酸血症を改善しておきたいものですね。
[3] 一般社団法人 江戸川区医師会「痛風」
2-3.尿路結石の発症
結晶化した尿酸がたまるのは関節だけではありません。
腎臓から尿道までの「尿路」に結石(尿酸の結晶)が生じた状態のことを尿路結石といいます。
腎臓に結石ができた状態「腎結石」は初期には無症状であることが多く、あっても鈍痛程度であるため、検診で見つかるケースもあります。
しかし腎臓から結石が尿管に落ちていくと、激しい痛みを引き起こします。
痛みは朝方や眠っている間に起こりやすく、耐え切れず救急車で運ばれる患者も少なくないほど激しいものです。
この激痛は腰、脇腹、下腹部などに広がり、吐き気を伴う場合もあります。
また血尿が出るケースもあります。
なお結石が尿管に移動した場合には「尿管結石」、膀胱に移動した場合には「膀胱結石」といいます。
これらを合わせたものが尿路結石です。
膀胱結石や尿道結石では膀胱が刺激されているような症状や、尿が途中で止まってしまう症状が見られることもあります。
尿道は尿管より太いため、結石が膀胱に至れば、多くの場合は排尿時に自然に体外に排出されます。
排出時には痛みや違和感を伴うこともあれば、気付かないうちに体外に出ていることもあります。
ただしまれに膀胱内で大きくなり過ぎたり、尿道にはまってしまったりして体外への排出が難しくなるケースが見られます。
このような場合には体外から結石に衝撃波を当てて砕いたり、内視鏡を用いて装置で結石を割り、体外に排出させたりする手術が行われます。
2-4.動脈硬化の進行
高尿酸血症を放置すると動脈硬化が進行しやすくなるといわれています。
動脈硬化とは、心臓から全身の器官に送られる血液が通過する血管「動脈」の壁が厚く硬くなった状態のことです。
通常、動脈の壁はしなやかで弾力性を有していますが、さまざまな理由により硬くなってしまう場合があります。
動脈硬化自体には自覚症状がないケースが少なくありません。
しかし動脈硬化が進行すると血管が狭まったり、ふさがったり、裂けたりしやすくなってしまい、このためにさまざまな重大な病気を引き起こします。
動脈硬化によって引き起こされる病気の代表例として挙げられるのが狭心症と心筋梗塞、脳梗塞です。
狭心症は心臓の筋肉(心筋)に血液を送る血管「冠動脈」が狭まり、心臓への血液供給が低下する病気です。
血液は酸素を運ぶ役割を果たしているため血液が十分に送られなくなると、心筋が酸欠状態になってしまいます。
これにより、胸の痛みが現れます。
また冠動脈が完全に詰まったり、急速に細くなったりすることで心筋の細胞が死んでしまう病気を心筋梗塞といいます。
心筋梗塞では心筋の細胞がどれだけ死ぬかによって深刻度は変わり、不整脈や心臓の機能の低下といった症状が現れます。
また場合によっては死に至ります。
脳梗塞はこの心筋梗塞のように脳の血管がふさがってしまうことで起こる病気です。
脳細胞が死んでしまい、手足のまひやしびれ、言語障害、視野の欠損、目まいなどのさまざまな症状が現れます。
また多くの場合には後遺症が見られます。
こうした命を脅かす重大な病気を防ぐためにも、高尿酸血症は早めに改善しておくことが重要なのですね。
動脈硬化について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
動脈硬化とは?原因や病気のリスク、進行を防ぐポイントを徹底解説
3.尿酸値が高くなる原因
「尿酸値が高いと言われたけれどどうしてだろう?」
「尿酸値が上昇するのにはどんな原因があるのかな」
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
高い尿酸値を改善するために原因を知っておきたいという方もいらっしゃるかもしれませんね。
通常の状態では、体内でつくられる尿酸の量と体から排出される尿酸の量はほぼ同じだといわれています。
このため尿酸が健康上の問題になることはありません。
しかし尿酸の産生量が増え過ぎたり、腎臓からの排せつ量が低下したりすると尿酸値が高くなってしまいます。
その原因として、食事や飲酒、運動などの生活習慣や、遺伝子異常が考えられています。
ここでは、尿酸値が高くなる原因として考えられる要素を五つご紹介しましょう。
3-1.プリン体を多く含む食品の摂り過ぎ
尿酸値が上昇する原因はまだはっきりと解明されていませんが、食生活が関連していると考えられています。
特に尿酸の材料となるプリン体の摂り過ぎは尿酸値上昇の要因となるといえるでしょう。
プリン体はあらゆる生物の細胞に存在するためさまざまな食品に含まれていますが、特に、レバーや魚卵、牛肉、豚肉などに多いといわれています。
これらの食品を多く摂取している方は、食生活の改善を心掛けましょう。
3-2.酒の飲み過ぎ
お酒の飲み過ぎも尿酸値が高くなる要因の一つだと考えられます。
アルコールには体内のエネルギー源となる「ATP」という物質の分解を進める作用があります。
ATPが分解される際にはプリン体が増加するため、このプリン体が分解されることで体内の尿酸が増えてしまいます。
またアルコールは腎臓の機能を低下させるため、尿酸を排せつしにくい状態を招いてしまいます。
加えてお酒のおつまみとなる食べ物には、プリン体を多く含むものがあります。
これらの原因から、お酒を飲むことで尿酸値が上昇すると考えられるのですね。
またお酒のなかにもプリン体を含むものがあり、特にビールにはプリン体が多く含まれています。
飲酒の習慣がある方は、知らず知らずのうちに尿酸値上昇の原因をつくってしまっているかもしれませんね。
3-3.肥満
肥満と尿酸値には強い関連性があるとされています。
プリン体はほとんど全ての食品に含まれるため、肥満の原因でもある食べ過ぎはプリン体の過剰摂取につながります。
また肥満の状態では、体内で尿酸の再吸収が促進されるため、尿酸の排せつ量が低下するとも考えられています。
尿酸は腎臓の尿細管という管を通る際、多くが血液中に再吸収されます。
しかし何らかの理由によって再吸収のはたらきが強まってしまうと、尿酸の排せつ量が低下し、尿酸値が上昇してしまうのです。
特にメタボリックシンドロームや高血圧などがある場合、尿酸の再吸収が高まることが分かっています。
肥満は内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満に分けられますが、特に前者は健康を損ねるリスクが高いといわれています。
内臓脂肪が蓄積していると、高血圧や高血糖、脂質異常症のリスクが高まり、結果としてメタボリックシンドロームに至ってしまうリスクが高まるのです。
また内臓脂肪の蓄積は、尿酸の産生量を増やすとも考えられています。
肥満はさまざまな生活習慣病の発症と関わり、尿酸値上昇のリスクも上昇させてしまうのですね。
[4] 厚生労働省 e-ヘルスネット「メタボリックシンドロームの診断基準」
3-4.閉経に伴う女性ホルモンの低下
女性においては、閉経に伴う女性ホルモンの低下も尿酸値が高まる要因になるといえるでしょう。
尿酸値の上昇は男性に起こりやすいことが分かっています。
これは女性ホルモンの一種「エストロゲン」に尿酸の排せつを促す作用があり、女性は男性よりも尿酸値が低い傾向にあるためです。
しかし、女性においても閉経後は女性ホルモンの分泌量が低下するため、尿酸値が上昇するリスクが高まります。
該当する方は、食生活などに注意するようにしましょう。
3-5.遺伝的要因
尿酸値が高くなる要因として、遺伝的な要素も関係していると考えられています。
血縁者に高尿酸血症の患者が多い場合、その人も高尿酸血症を発症するリスクが高まります。
これはある種の遺伝子の変異により、尿酸の排せつ量が低下してしまう体質が生じるためだといわれています。
ご家族に尿酸値の高さを指摘された方がいらっしゃる場合、特に生活習慣に留意した方が良いといえるでしょう。
4.尿酸値を改善するためのポイント
「尿酸値を改善するにはどうしたら良いの?」
このようにお悩みの方もいらっしゃるかもしれませんね。
高くなってしまった尿酸値を下げるには、食事や運動などの生活習慣を改善することが重要です。
ここでは、尿酸値を改善するためのポイントを五つご紹介しましょう。
ポイント1 摂取カロリーを適切に抑える
肥満は尿酸値を上昇させるリスクになります。
現在肥満の状態にある方は肥満の解消のために、肥満でない方も予防のために、摂取カロリーを適切に抑えることから始めましょう。
体重は摂取カロリーが消費カロリーを上回っていると増え、反対に消費カロリーが摂取カロリーを上回っていると減ります。
このため減量においては摂取カロリーを適切に抑えることが重要になるのですね。
1日に摂取すべきカロリーは体格やどれだけ体を動かしているかによって異なります。
まずはご自身の日常的な活動量から「身体活動レベル」を確認しましょう。
身体活動レベル | 日常生活の内容 |
---|---|
低い(Ⅰ) | 生活の大部分を座って過ごし、あまり活動しない場合 |
普通(Ⅱ) | 座って過ごすことが多いが、歩いたり立ったりした状態での作業や仕事をする場合、通勤や買い物などで歩いたり、家事や軽いスポーツを行ったりする場合 |
高い(Ⅲ) | 歩いたり立ったりした状態での作業が多い仕事に従事している場合、余暇に活発に運動する習慣がある場合 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
身体活動レベルが分かったら、目標体重を確認しましょう。
肥満の方は「標準体重」を目指しての減量が勧められます。
標準体重とはBMIが22になるときの体重で、最も病気になるリスクが低いといわれています[5]。
標準体重は[身長(m)の2乗]×22で求められます[5]。
例えば身長160cmの場合、標準体重は1.6(m)×1.6(m)×22=56.32kgになることが分かりますね。
このようにして標準体重が求められたら、以下の表の体重当たりの推定必要カロリー(推定エネルギー必要量)と掛け合わせます。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
身体活動レベル | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | 低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) |
18〜29歳 | ||||||
30〜49歳 | ||||||
50〜64歳 | ||||||
65〜74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
標準体重が56.32kg、身体活動レベルが「普通(Ⅱ)」の40代男性であれば、必要カロリーは1日当たり56.32(kg)×39.3(kcal)で2,213kcal(小数第1位で四捨五入)ということになりますね。
なお、ヒトのエネルギー源となる栄養素(エネルギー産生栄養素)には炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の3種類があります。
たんぱく質はエネルギー源となる他に筋肉や臓器、皮膚、髪の毛などの体の組織の材料となるなど、それぞれにエネルギー源となる以外のはたらきも有するためどれかを極端に減らすことは勧められません。
摂取カロリーを計算しつつ、それぞれのエネルギー産生栄養素をバランス良く摂取することを心掛けましょう。
エネルギー産生栄養素の理想のバランスについては以下の記事をご覧ください。
エネルギー産生栄養素とは?それぞれのはたらきや理想のバランス
[5] 厚生労働省 e-ヘルスネット「肥満と健康」
[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「BMI」
ポイント2 プリン体を摂り過ぎない
尿酸値改善のためにはプリン体を摂り過ぎないことも重要です。
肉、なかでもいわゆる内臓肉と呼ばれる部位のものや肉汁にはプリン体が多く含まれているため食べ過ぎないよう注意しましょう。
またプリン体を多く含むとされている食べ物には以下のようなものがあります。
極めて多い(100g当たり300mg〜) | ・鶏レバー
・まいわし干物 ・たら白子 ・ふぐ白子 ・いさき白子 ・あんこう肝酒蒸し ・かつおぶし ・にぼし ・たちうお ・干ししいたけ ・DNA/RNA、ビール酵母、クロレラ、スピルリナ、ローヤルゼリーなどの一部の健康食品 |
---|---|
多い(100g当たり200〜300mg) | ・豚レバー
・牛レバー ・かつお ・まいわし ・たいしょうえび ・おきあみ ・まあじ干物 ・さんま干物 |
日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改定委員会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」および公益財団法人 痛風・尿酸財団「食品中のプリン体含有量」をもとに執筆者作成
日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改定委員会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」
これらの食品の食べ過ぎには十分注意しましょう。
ただし体内でつくられる尿酸は食品由来のものより細胞の新陳代謝に伴うものが多くなっています。
過剰な制限は必要ないので安心してくださいね。
ポイント3 アルコールを控える
飲酒の習慣がある方はアルコールの摂取を控えましょう。
特にビールはプリン体を多く含んでいます。
またプリン体を含まないお酒であっても、アルコールには細胞由来の尿酸の産生量を増やし、尿酸の排せつを抑制する作用があります。
おつまみとしてプリン体が多い食品をつい摂ってしまいがちになる点も問題です。
さらにアルコールには食欲を増進する作用があるため、肥満も招きかねません。
適正な飲酒量にとどめるようにしましょう。
厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」を純アルコールで1日平均20g程度としています[7]。
代表的なお酒の純アルコール20g相当の量は以下のとおりです。
公益社団法人 アルコール健康医学協会「お酒と健康 飲酒の基礎知識」をもとに執筆者作成
この量を目安に節酒に努めましょう。
なお、アルコールの分解能力には個人差があるためお酒に弱い方はご自分の体質に合わせて適切に節酒しましょう。
また元から飲酒習慣のない方は引き続き飲まないようにしてくださいね。
加えて尿酸値改善のためには休肝日を設けることも重要です。
週に2日はお酒を飲まないようにしましょう[9]。
[7] 厚生労働省「健康日本21(アルコール)」
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「飲酒量の単位」
[9] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高尿酸血症の食事」
ポイント4 水分を十分に摂る
尿酸は尿を通じて体外に排出されます。
このため、水分を十分に摂ることも尿酸値の改善に有効だといわれています。
水分を摂ることで尿の量が増え、尿酸の排せつにつながると考えられるのです。
普通に生活しているだけでヒトの体からは1日2.5Lの水分が尿や便、呼吸や汗などを通じて失われているといわれています[10]。
食事から摂取される水分が1.0L、体内でつくられる水が0.3Lあるため、最低でも残りの1.2L以上の水分をしっかり摂取しておくことが必要です[10]。
ただし、通常尿や便を通じて排せつされる水分は1.6Lですが[10]、高尿酸血症の改善のためには1日2L以上の尿を出すことが望ましいとされています[11]。
こまめに十分な量の水分を補給するよう心掛けましょう。
なお、水分の代わりにジュースや牛乳、お酒といった糖質や脂質の多い飲み物を飲まないようにしてくださいね。
[10] 厚生労働省「健康のため水を飲もう講座 〜からだと水の関係〜」
[11] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高尿酸血症の食事」
ポイント5 適度な有酸素運動を行う
尿酸値の改善には有酸素運動を行うことも有効だと考えられています。
有酸素運動は体脂肪を燃焼させるため直接的な肥満の改善効果があるといわれています。
肥満には尿酸値を高めるさまざまな要因があるため、有酸素運動を行って肥満を改善することで、尿酸値の改善が期待できるのです。
尿酸値の改善を目標とする場合、ジョギングやサイクリングなどの有酸素運動を脈が少し速まる程度の激しさで、1日に30〜60分程度行うことが勧められています[12]。
なお続けて行うのが厳しい場合、運動は1回当たり10分以上であれば何回かに分けて行っても構いません[12]。
毎日の習慣にすることを目指しましょう。
ただし激しい運動は反対に尿酸値の上昇を招く恐れがあります。
事前にかかりつけ医に相談し、適度な強度の有酸素運動を行うようにしましょう。
[12] 日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改定委員会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」
5.尿酸値が高い場合は受診しよう
健康診断などで尿酸値の高さを指摘された方は、早めに医療機関を受診しましょう。
尿酸値が高いだけでは自覚症状はありませんが、その状態を放置していると突然痛風発作や尿路結石の激痛に襲われる恐れがあります。
また高尿酸血症の患者には脂質異常症などを合併している方が多く、医療機関でしっかり現在の健康状態を確認し、コントロールすることが重要です。
高尿酸血症の治療では生活習慣の改善が基本となります。
厳しい食事制限が課されるのではないかと不安に思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、厳し過ぎる食事制限は多くの場合反動を招いてしまいます。
まずは医療機関で専門医に相談し、改善の必要性を理解しましょう。
ストレスをあまり感じない範囲で正しい生活習慣を身に付けることを目指してくださいね。
6.尿酸値が高い場合についてのまとめ
尿酸とはプリン体が分解されるときにつくられる老廃物です。
血中の尿酸の濃度が高まると高尿酸血症に至り、放置していると痛風や尿路結石といった激痛を伴う病気を引き起こします。
また尿酸値が高い状態は動脈硬化の進行も招くといわれています。
尿酸値が高いと指摘された場合は自覚症状がなくとも早めに改善に努めることが重要なのですね。
尿酸値が高くなる原因としてはプリン体を多く含む食品の摂り過ぎ、酒の飲み過ぎ、肥満、遺伝的要因などがあると考えられています。
また女性では女性ホルモンの分泌量が低下する閉経後に尿酸値上昇のリスクが高まります。
尿酸値を改善するためには生活習慣の改善が重要です。
まずは摂取カロリーを適切に抑え、肥満の状態にある方は肥満を改善しましょう。
現在は肥満でない方も肥満予防のために適切なカロリー摂取が勧められます。
またプリン体を摂り過ぎないことも重要です。
内臓肉や干物類などは食べ過ぎないよう努めましょう。
加えてアルコールは尿酸値上昇の原因となるので控えるようにしてくださいね。
水分を十分に摂り、尿酸の排せつを促すことも重要です。
さらに有酸素運動も尿酸値の改善には有効だと考えられています。
尿酸値の高さを指摘されている方はこの記事を参考に改善に努めてくださいね。