「睡眠ダイエットって、何?」
「寝るだけで、ダイエットができるって本当?」
「睡眠ダイエット」について、一度は聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
睡眠ダイエットとは、しっかりと睡眠をとることでホルモンの分泌や脂肪燃焼などの代謝を整え、ダイエット効果につなげる方法です。
しかし、ただ寝るだけでは十分な効果を得られません。ダイエット成功のカギは、「質の良い睡眠」です。
今回は、睡眠がダイエットにつながるメカニズムについて解説します。
1.睡眠ダイエットとは?「寝ると痩せる」って本当?
睡眠ダイエットとは、十分な睡眠時間をきちんと確保して体内リズムを整え、健康な体づくりをすることです。
しっかりと寝て、睡眠中に分泌される食欲抑制や食欲増進に関係するホルモンのバランスを整えることで肥満のリスクを下げ、ダイエットにつなげるという考え方です。
体に必要な睡眠時間には個人差がありますが、一般的には6~7時間程度の睡眠が理想といわれています。
一方、睡眠不足になると血糖値を上げるホルモンが増えたり、交換神経が優位にはたらいて血圧が高い状態が続いたりするため、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まってしまいます。
睡眠がダイエットと関連しているなんて信じられない……と思う方もいるかもしれませんが、ダイエットをする上で睡眠は重要なポイントになるのです。
【関連情報】 「簡単ダイエット!日々の生活で実践できる8つの工夫」についての記事はこちら
2.睡眠不足で肥満になるメカニズム
睡眠不足はダイエットの大敵です。ここでは、睡眠不足が肥満につながるメカニズムについて解説していきます。
2-1.寝不足は食欲を増大させる「グレリン」の分泌を促す
グレリンは食欲を増大させる効果をもつホルモンです。基本的には空腹時に分泌され、食欲中枢を刺激して、体に必要な栄養を摂るように促してくれます。
食後には満腹中枢を刺激するレプチンが分泌され、グレリンを抑制し、満足感を得られるようになります。
グレリンとレプチンがバランスを保ち、食欲を調整しているのです。
しかし、睡眠不足になるとグレリンの分泌が増え、レプチンの分泌が減ってしまいます。
普段以上に食欲が増加する上に、満腹感を得にくい状態になってしまうのです。
実際に、慢性的な寝不足状態の人は糖尿病や心筋梗塞、狭心症などの生活習慣病にかかりやすくなることが分かっています。
たった2日間寝不足が続いただけでホルモンに影響を与えるといわれていますので、睡眠は非常に重要なことが分かります[1]。
2-2.寝不足になると血糖値が上がりやすくなる
睡眠時間が短くなると、「インスリン抵抗性」が増すと報告されています。
インスリン抵抗性とは、インスリンの作用が鈍くなり、血糖値が上がりやすくなっている状態のことです。
インスリン抵抗性があると、上がった血糖値を元に戻そうと多くのインスリンが分泌されることになります。
この状態が続くと、膵臓の機能が低下して高血糖状態になり、Ⅱ型糖尿病を引き起こしてしまうのです。
またインスリンには、エネルギーとして使い切れなかった糖を、グリコーゲンや中性脂肪として体に蓄えるはたらきがあるため、血糖値の急上昇は肥満の原因になります。
これは睡眠の質が悪いときにも同様の結果がみられるため、単に睡眠時間を確保するだけではダイエットにつながらないということを覚えておきましょう。
2-3.慢性的な疲労感によって運動不足に陥りやすい
睡眠不足は日中の眠気や倦怠感を引き起こし、運動不足の原因になることが考えられます。
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると脂肪として蓄積されるため、運動不足が続くと肥満につながります。
また、筋肉量や基礎代謝が低下すると、エネルギーの消費がさらに減ってしまい悪循環になります。
寝不足で毎日疲れを感じ、活力が湧いてこないと感じている方は注意が必要です。
3.睡眠不足になってない?現在の状態をセルフチェックしよう
実際、睡眠不足を感じている方は多いのではないでしょうか。
現代人の生活は夜型になり、日本人の平均睡眠時間は50年前と比べて約1時間も短くなっています[2]。
これは、仕事や勉強、スマートフォンやテレビなどの影響で、夜遅くまで起きている人が増えているためです。
現在、睡眠不足を感じていない方でも、質の良い睡眠をとれているとは限りません。
ここでは、睡眠不足かどうかを判断するチェックリストをご紹介しますので、ご自身の状態を確認してみてください。
チェックリスト
- 起床時は音の大きな目覚まし時計がないと起きられない
- 朝、布団から出るまで時間がかかる
- 目覚まし時計の音に気づかず、眠っていることがある
- 少しでもビールなどアルコールを飲むとよく眠れる
- 休日や休日の前日はいつもより2時間以上長く眠る
- 以前より気力が無いと感じる
- 以前より仕事や家事に手を抜くことが多くなった
- 知らないうちに居眠りをしていることがある
- 多めの昼食を取った後、強い眠気を感じることがある
- 日中にコーヒーや紅茶、日本茶などを4杯以上飲む
A.1個以下 だいたい適切な睡眠時間が確保できています
B.2~5個 睡眠量不足の傾向があり、注意力散漫になりがちです
C.6~8個 かなりの睡眠量不足で、仕事を丁寧にすることが難しくなってきます
D.9個以上 深刻な睡眠量不足の状態です
B~Dの方は生活習慣病のリスクがあるため、質の良い睡眠がとれるよう心掛けましょう。
4.ダイエットにつながる「質の良い睡眠」のとり方
睡眠は健康的な体づくりのために重要です。チェックリストでB~Dの判定が出た方は、質の良い睡眠がとれるように工夫してみましょう。
4-1.毎日同じ時間に布団に入る
質の高い睡眠を得るには、規則正しい生活をすることが大切です。
普段からバランスの良い食事や適度な運動を心掛けても、生活習慣が乱れると睡眠の質が低下してしまいます。
そのため、毎日同じ時間に布団に入るようにしましょう。
体内時計が整い、快適な睡眠に備えてホルモンの分泌や生理的な活動を調節してくれるようになります。
4-2.夕方~夜に有酸素運動をする習慣をつける
夕方から夜に有酸素運動をする習慣をつけましょう。
運動中は脳の温度が上昇し、活動を終了すると徐々に脳の温度が下降します。
人は、深部体温が低くなると睡眠を得やすくなるといわれていますので、一時的に脳の温度を上げて、低下量を増やすことが快眠のポイントです。
国内外の疫学研究でも、運動習慣がある人は不眠症が少ないといわれています[3]。
就寝の3時間くらい前に運動をすると、就寝時に脳の温度が最も低くなり、深い眠りに入りやすくなるでしょう。
ただし、激しい運動は逆効果です。興奮状態を長引かせたり、体温がうまく下がらず睡眠を妨げたりする可能性があるからです。
早足のウォーキングやジョギング程度に留めておきましょう。
4-3.就寝2~3時間前に入浴する
就寝2〜3時間前に入浴するのがおすすめです。
有酸素運動をするのと同じ原理で、お湯につかって深部体温を一時的に上げることで、就寝時の寝つきが良くなり、深い眠りが得られやすくなります。
半身浴でも同じ効果が得られます。38℃程度で25〜30分程度行うのが良いでしょう。
ただし、熱めのお湯は心臓に負担がかかるので注意してください。
熱いお湯につかるのが好きな方は、42℃に設定して、入浴時間は5分程度にしましょう。
4-4.照明は暖色系にする
青っぽい昼白色の蛍光灯には、覚醒作用があるといわれています。
一般的な家庭の照明(照度100~200ルクス)でも、体内時計だけでなく自律神経の中枢に伝達され、交感神経を優位にしてしまうのです。
そのため、明るい光をつけたまま寝るのは快適な睡眠を妨げてしまいます。
一方、日中であれば眠気を軽減させるのに役立つため、光を利用することで昼夜のメリハリをつけることが大切です。
また、昼時に明るい光を浴びると、夜間時のメラトニンの分泌を増やすといわれています。メラトニンには催眠作用があるため、スムーズな入眠を促してくれます。
昼は明るい光を浴びて、夜は暗めの光を浴びるようにしましょう。就寝時の照明は赤っぽい暖色系のものがおすすめです。
4-5.覚醒作用のあるカフェイン・ニコチン・アルコールは控える
カフェイン・ニコチン・アルコールなどは覚醒作用があるので、できるだけ控えましょう。
カフェインは、コーヒーや緑茶などに多く含まれる成分です。就寝5〜6時間前からはカフェインを控え、睡眠に備えることが大切です。
また、ニコチンを就寝前に摂取すると、入眠までの時間が長くなったり、眠りが浅くなったりすることが分かっています。
寝るときに体内にニコチンが残らないよう、夜は喫煙をしないようにすることがおすすめです。
アルコールは、寝付きを良くする一方で、明け方の睡眠を妨げてしまいます。なかなか眠れないときにお酒を飲む方は多いかもしれませんが、できるだけ避けた方が良いでしょう。
4-6.朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びる
朝起きたら、太陽の光を浴びるようにしましょう。
多くの場合、人間の体内時計は、外界の24時間周期よりも少し長いリズムであることが分かっています。
朝に光を浴びることで、後ろにずれる体内時計を早めることができるため、睡眠や覚醒のリズムが正常になるのです。
5.睡眠ダイエットについてのまとめ
睡眠ダイエットとは、「寝ると痩せる」という単純なものではなく、健康的な体づくりをしてダイエットにつなげる考え方です。
睡眠不足は肥満だけでなく、生活習慣病のリスクを高めてしまうため、普段から十分に眠れていない方や日中に眠気を感じている方は注意が必要です。
体に必要な睡眠時間を確保することで、痩せやすい体を目指すことができます。
とはいえ、毎日、質の高い睡眠を得られている方は少ないでしょう。
本記事のポイントを参考に、就寝時の環境を整え、快眠のための工夫をしてみてはいかがでしょうか。
この記事の監修者
内科認定医・がん治療認定医
【経歴】
国立大学医学部医学科卒業後、公立病院にて初期研修の2年を終了後、3年目からはがん治療を専門としながら幅広く内科疾患の診療に従事。治療が必要となる前の生活習慣の改善、また病気についての正しい知識が大事であることを実感し、病気についての執筆活動にもあたっている。