「どうして生理前になるとイライラするんだろう……」
「生理前のイライラ、何とかならないのかな?」
このようなお悩みをお持ちの女性は多いのではないでしょうか。
生理前にイライラするのは月経前症候群(PMS)の症状の一つです。
この時期の多少の心身の変化は自然なことで、通常であれば上手に付き合うことができる程度です。
ただしストレスなどの影響で症状が強く現れ、つらい思いを強いられることがあります。
この記事では生理やPMSについて、さらにイライラの原因や対処法などを分かりやすく解説しますので参考にしてくださいね。
1.生理のメカニズム
「どうして毎月生理が来るのかな……」
女性にとって生理は身近なものですが、そのメカニズムについて詳しくない方もいらっしゃいますよね。
思春期以降、女性の卵巣では赤ちゃんをつくるために必要な排卵が一定の周期で起こります。
排卵後、子宮の内側の子宮内膜は厚みを増し、受精卵を受け入れる環境を整えます。
妊娠しなかった場合はこの内膜ははがれ血液と一緒に排出されます。
このときに起こる出血が生理です。
はがれた内膜の下には新たな内膜をつくる基底層が存在し、翌月も同じことが繰り返されます。
生理が周期的に起こるのはこのためです。
【関連情報】 「PMSとは?月経前症候群の主な症状や受診の目安、治療法を解説」についての記事はこちら
2.生理前のイライラの原因
生理前のイライラは月経前症候群(PMS)の症状の一つです。
PMSの詳しい原因は今のところ分かってはいませんが、女性ホルモンの急激な変動と関係があるといわれています。
女性ホルモンには、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」があります。
生理周期は、排卵前の卵胞期、排卵期、月経前の黄体期に分類されます。
卵胞期は精神状態を安定させる作用のあるエストロゲンが増加し、心身共に快適に過ごせる時期です。
排卵期に入ると、エストロゲンの分泌がピークに達し排卵が起こります。
排卵直後からはプロゲステロンの分泌が増加し黄体期へ移り、妊娠の準備が始まります。
黄体期には、排卵期に減少したエストロゲンが再び増え、プロゲステロンはピークまで増加します。
これによりさまざまな不調が起こりやすくなります。
妊娠しなかった場合はエストロゲン・プロゲステロン共に分泌が急激に減少し生理を引き起こします。
また、生理前には心の落ち着きや安定感をもたらす脳内ホルモン(神経伝達物質)であるGABAやセロトニンの分泌が通常どおりに行われなくなります。
これにより、イライラしたり落ち込みやすくなったりするといわれています。
PMSの発症には、生理周期におけるホルモンの激しい増減と神経伝達物質の分泌の異常が関連しているのではないかと考えられています。
3.生理前のイライラが症状として現れる病気
生理前のイライラは、月経前症候群(PMS)や月経前不快気分障害(PMDD)という病気の症状の一つです。
PMSやPMDDは生理前に起こる心身の不調な症状のことで、生理のある多くの女性が長年悩まされています。
この章ではPMSとPMDDのそれぞれの特徴について解説します。
3-1.月経前症候群(PMS)
月経前症候群(PMS)とは生理前の3~10日間続く、精神的または身体的な症状のことです[1]。
生理が始まると、症状は弱まる、もしくはなくなります。
精神的な症状にはイライラの他、情緒不安定、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、食欲不振・過食、倦怠(けんたい)感などがあります。
また身体的な症状として、腹痛、腰痛、むくみ、おなかや乳房の張りなどが挙げられます。
PMSの原因は明らかではありませんが、黄体期のエストロゲンとプロゲステロンの急激な増減による脳内ホルモンや神経伝達物質の異常と考えられています。
ただし、脳内ホルモンや神経伝達物質はストレスなどの影響を受けやすいため、必ずしも女性ホルモンのみが原因とはいえません。
PMSについては以下の記事で詳しく解説しています。
PMSとは?月経前症候群の主な症状や受診の目安、治療法を解説
[1] 公益財団法人日本産婦人科医会「(2)月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome)」
3-2.月経前不快気分障害(PMDD)
PMSの症状のうち、特に精神的な不安定さが強く見られる状態のことを月経前不快気分障害(PMDD)といいます。
PMDDの代表的な症状はイライラの他、抑うつ気分、不安・緊張、情緒不安定、怒りなどです。
PMSの場合も精神的な不調を感じることはありますが、社会生活に支障を来たすことはありません。
しかしPMDDの場合、気持ちの安定を保つことができなくなり、外出ができなくなったり職場で急に泣き出してしまったりということが起こります。
PMMDの原因については、はっきりとは分かっていません。
4.生理前のイライラを和らげるポイント
「生理前のイライラを抑える方法はないのかな……」
このようにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは日常生活のなかでできる生理前のイライラを和らげる方法についてご紹介します。
ぜひ試してみてくださいね。
ポイント1 食べるものや食べ方に気を付ける
生理前のイライラを和らげるために、食べるものや食べ方に気をつけましょう。
生理前のイライラは、血糖値が下がった空腹の状態で強く出るといわれます。
血糖値が下がった状態では食欲が高まり、甘いものが欲しくなったりドカ食いしたくなったりします。
しかし、このような食事をすると血糖値が一気に上昇し、その後急降下を招くため、かえってイライラの症状が悪化するといわれています。
イライラを軽減するためには、緩やかな血糖値の上昇が有効です。
そのため果物や砂糖の多く入ったチョコレートやケーキなど、急激な血糖値の上昇を招く食品は避けましょう。
血糖値をゆっくり上昇させる穀類やいも類、豆類などを少しずつ小分けにして摂ることがおすすめです。
また、カフェインの過剰摂取はイライラを強くするとされています。
コーヒーや紅茶、栄養ドリンクなど、カフェインが含まれる食品の過剰摂取は控えましょう。
ポイント2 適度に体を動かす
生理前のイライラの改善に運動が効果的といわれます。
運動すると、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の分泌が高まります。
これらの物質は気分の改善に有効で、幸福感をもたらすとされています。
「生理中に運動なんて無理……」
このような方もいらっしゃいますよね。
もちろん、無理をする必要はありませんが、ストレッチやヨガ、散歩など、軽く体を動かすだけでも気分転換になりますし、代謝も上がりPMSを和らげることにもつながります。
何もする気が起こらないときには深呼吸をするのもおすすめですよ。
決して無理はせず、体の状態に応じて行うようにしましょう。
ポイント3 リラックスや休養を心掛ける
生理前のイライラしているときにストレスがかかると、余計にイライラしたり気分の落ち込みが激しくなったりすることがあります。
この期間は心身ともにリラックスすることを心掛けましょう。
ゆっくりお風呂に入る、アロマを楽しむ、読書をするなど、リラックスの方法は人それぞれです。
好きなことをしながらゆったりと過ごしましょう。
極度の眠気も生理前によく見られる症状ですが、睡眠が不十分だとイライラの症状が強まる原因になります。
心身の不調にもつながるため、できるだけ休養を取ることを心掛けましょう。
睡眠については以下の記事で詳しく解説しています。
睡眠不足が及ぼす影響とは?適切な睡眠時間や生活習慣を詳しく解説
5.つらい場合は受診して適切な治療を受ける
症状がつらい場合、我慢せずに婦人科を受診しましょう。
医師に相談することで気持ちが楽になることもあります。
診断によって、感情をコントロールする漢方薬が処方されることがあります。
また、GABAやセロトニンなど幸福感や安定感の元になる神経伝達物質の不足を補うため、抗うつ剤が処方される場合もあります。
婦人科はメンタル面の不調にも応じてくれるので、一人で悩まずに受診して相談してみましょう。
6.生理前のイライラについてのまとめ
生理前のイライラは月経前症候群(PMS)の症状の一つです。
PMSの詳しい原因は今のところ分かってはいませんが、女性ホルモンの急激な変動と関係があるといわれています。
エストロゲンは卵胞期に増加しピークに達します。
黄体期にはエストロゲンは再び増えると同時にプロゲステロンがピークまで増え、妊娠しない場合はどちらも急激に減少し生理が起こります。
この激しいホルモンの増減と神経伝達物質の分泌の異常がPMSの原因の一つと考えられています。
生理前のイライラはPMSの他、月経前不快気分障害(PMDD)という病気が原因の場合があります。
PMSは生理前の3~10日間続く精神的または身体的な不調のことで、主な症状はイライラの他、不安、眠気、倦怠感、腹痛、むくみなどです[2]。
一方、PMDDではイライラ、抑うつ気分、不安、緊張、怒りなど、特に精神的な不安定さが強く見られます。
PMDDはPMSとは違い、精神的な不調により社会生活に支障を来たしてしまうことがあります。
生理前のイライラを和らげるためには、食事に気を付ける他、適度に体を動かしたりリラックスや休養の時間を持ったりすることが効果的です。
症状がつらい場合は我慢せずに婦人科を受診し、適切な処置を受けましょう。
医師に相談することで気持ちが楽になることもありますよ。
[2] 公益財団法人日本産婦人科医会「(2)月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome)」