「自分が低血圧かどうか簡単にチェックできる方法はないかな……」
「不調の原因が低血圧だったら、どうやって改善していけば良いんだろう……」
心筋梗塞や脳梗塞などのリスクがある高血圧とは異なり、低血圧は問題視されないことも少なくありません。
しかし、低血圧の症状のなかには日常生活に支障をきたすものもあるので、安易に考えてはいけません。
日常で気になる症状が低血圧である場合は、予防や改善を図ることが大切です。
この記事では、日常の気になる症状を改善したい方のために、低血圧症状のチェックリストとタイプ別の予防・改善方法についてご紹介します。
1.【9項目】低血圧症状のチェックリスト
低血圧は、血圧が基準値以下になったときに起こります。
医師により見解は異なりますが、収縮期血圧(上の血圧)100mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下の状態が低血圧と定義されています[1]。
高血圧に比べて重要視されないことも多いですが、症状によっては日常生活に支障がみられる場合もあるため注意が必要です。
以下の低血圧症状のチェックリストを参考にしながら、自身の症状と照らし合わせてみましょう。
■低血圧症状のチェックリスト
- 立ちくらみやめまいがある
- 朝起きるのがつらい
- 頭痛がある、頭が重い感じがする
- 倦怠感や疲労感がある
- 肩こりが気になる
- 動悸がする
- 胸痛や胸部圧迫感がある
- 失神発作がある
- 悪心(吐き気)がある
上記の症状は、上にある項目ほど起こりやすいとされています。
2.低血圧症状になりやすい人の特徴
低血圧症状になりやすい体質は以下のとおりです。
- 女性
- やせ型
- 神経質
- 虚弱体質
- 疲労を感じやすい
- 冷え性
また、低血圧の人は、内臓が正常の位置より下にある傾向がみられやすいとされています。
急に立ち上がると立ちくらみがする場合もあるため、すぐに行動に移せないことも少なくありません。
朝は調子が優れなくても、午後になると元気になる人が多いのが特徴です。
3.あなたの低血圧はどのタイプ?
低血圧にはさまざまな種類があり、タイプによって原因や症状が異なります。
ここからは、低血圧の種類について詳しく解説します。
3―1.本態性(一次性)低血圧
低血圧のなかで1番多いタイプが本能性(一次性)低血圧です。
全体の約9割の方にみられ、血圧が慢性的に低い(収縮期血圧100mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下)状態を示します[2]。
原因はやせ型や冷え性などの体質による場合が多く、特別な病気を伴うものではありません。
3-2.症候性(二次性)低血圧
症候性(二次性)低血圧には、以下のような明確な原因疾患があります。
- 心血管系:心筋梗塞、心不全、大動脈弁狭窄症、閉塞性肥大型心筋症、心タンポナーデ、重症不整脈
- 呼吸器系:肺梗塞、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾(COPD)
- 内分泌系:甲状腺機能低下症、アジソン病、下垂体疾患
- 神経系:頸動脈洞過敏症、過換気症候群、舌咽神経痛
これらのほかにも、病気やけがによる出血、栄養不良、がんの末期、脱水や薬剤による影響等でも起こる場合があります。
特に高齢者では脱水も起こしやすく、複数の疾患に対して処方されることで薬の相互作用等も生じやすくなるため、注意が必要です。
3-3.起立性低血圧
起立性低血圧には、特発性起立性低血圧と二次性起立性低血圧があります。
原因は異なりますが、急に立ち上がったり体を動かしたりしたときに立ちくらみなどの症状がみられます。
健康な方は動作を起こす度に不調をきたすことはありません。
しかし、起立性低血圧の方は下半身の血液を心臓に戻す力が弱く、動作を起こすことで血圧が下がりやすくなります。
動作の前後で収縮期血圧が20mmHg以上または拡張期血圧が10~15mmHg以上低くなります[3]。
低血圧に限らず高血圧の方でも、血圧の急激な低下がみられた際は、起立性低血圧と判断される場合があるのが特徴です。
3-3-1.特発性起立性低血圧
特発性起立性低血圧の原因疾患は明らかではありませんが、神経系の障害により起こる起立性低血圧症で、めまい、立ちくらみ、嘔吐などの症状がみられます。
悪化すると失神するケースもあるようです。
起立性低血圧の約20%が特発性起立性低血圧を示し、体重減少に伴い症状が強く出るようになります[4]。
また、学校の朝礼などで倒れてしまう子どもの多くは、血圧調節障害による特発性起立性低血圧であるといわれており、心配はいりません。
しかし、上記の症状が何度も起こる場合は、てんかんや心臓障害が原因の可能性もあるため、病院でしっかりと検査してもらうことをすすめします。
3-3-2.二次性起立性低血圧
起立性低血圧の約80%を占める二次性起立性低血圧は、糖尿病や内分泌疾患、心臓弁膜症、心筋症などの疾患のある人にみられます[5]。
疾病以外に、薬の影響も考えられます。特に精神安定剤、精神刺激剤、レボドパなどのパ-キンソン病治療剤、降圧剤などが影響する場合があります。
3-4.食後低血圧
食後低血圧は食事の影響を受けやすく、食後に血圧が急降下します。
食べたものを消化するために胃に血液が集まり、心臓に戻りにくくなるために起こります。
高齢者においては3人に1人の割合で起こる症状です[6]。
食後低血圧が起こると食後にだるさや胃もたれ、吐き気などがみられます。
強い眠気に襲われることもあり、酷いときは立ちくらみや失神の原因にもなりかねません。
4.【タイプ別に解説】低血圧を予防・改善する方法
ここからは、タイプ別に低血圧を予防・改善する方法を解説します。まずは低血圧の方で共通して気を付けるポイントを押えておきましょう。
<すべての低血圧の方に共通するポイント>
- 規則正しい生活
- 水分を多めに摂る
- 室温を調整する
これらを意識しながら、タイプ別の予防・改善方法を取り入れてみることをおすすめします。
次項で解説する「気を付けるべきポイント」をもとにまずは生活習慣を見直し、それでもなかなか症状が改善しない場合は医療機関などの専門家に相談しましょう。
4-1.【本態性(一次性)低血圧】筋肉を鍛える
本能性(一次性)低血圧の方は、筋肉不足を解消するために有酸素運動を積極的に行います。
筋肉不足は血の巡りの悪化につながり、低血圧を起こしやすくなってしまいます。
運動を行うときは、無理をせず徐々に運動量を上げていくことが大切です。
水中ウォーキングやエアロビクスなど、自分の体力に合った運動を取り入れてみてください。
4-2.【症候性(二次性)低血圧】薬剤を変更してもらう
症候性(二次性)低血圧は、原因疾患の治療に使われている薬剤を変更してもらうことで改善する場合があります。
脳梗塞やパーキンソン病などの神経疾患、心血管疾患、糖尿病性神経障害、降圧薬や抗うつ薬などの薬剤性により、症候性(二次性)低血圧が引き起こされている場合は、一度担当の医師に相談してみることをおすすめします。
4-3.【起立性低血圧】日常動作に気を付ける
起立性低血圧は、日常動作に気を付けることで予防・改善しやすくなります。どのようなことに気をつけるべきか確認していきましょう。
4-3-1.ゆっくりとした動作を意識する
起立性低血圧の方は急激な血圧低下を防ぐために、ゆっくりとした動作を心掛けることが大切です。
血の巡りを良くしてから動作を行うのがポイントです。
急に体の向きを変えると、血圧の調整がうまくいかずにめまいや失神などを起こしやすくなります。
寝た状態から座ったり立ったりする場合や、座った状態から立つときは体を慣らしながらゆっくり行いましょう。
4-3-2.定期的に足の運動を行う
起立性低血圧は長時間同じ姿勢を続けていたときに起こりやすいため、血の巡りが滞らないよう定期的に体を動かすことが大切です。
筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで、血液が循環します。
重力に逆らって心臓に送られる下半身の血液の循環を助けるために、下半身の筋肉を動かすことをおすすめします。
足関節の運動を行うことが低血圧対策になります。
4-4.【食後低血圧】食事の方法を工夫する
食後低血圧の場合は、食事の方法を工夫することで症状が和らぐことがあります。
低血圧に効果的な水分や糖質摂取のタイミングや食べ方、おすすめの飲み物など、少しの工夫で予防・改善できるものばかりなので、ぜひ参考にしてみてください。
4-4-1.食前に水を飲む
食後低血圧の治療方法として、食前に水を飲むことが注目されています。
食前に350~480mlの水を飲むと、1時間以上の血圧を上げる効果がみられたとの研究結果があるため、有効な手段の一つといえます[7]。
また、食前に水を飲むと交感神経が活発に働くようになるとともに、脱水予防にも効果が期待できます。
4-4-2.食事量と食事回数を工夫する
大食いや一気食いは低血圧の原因になりやすいため、複数回に分けて食事を摂ることをおすすめします。
1回の食事量も少なくして、胃腸にかかる負担を減らします。
高血圧の心配がない人は、塩分も適度に摂ると良いでしょう。
4-4-3.糖質の摂り方に気を付ける
食後低血圧は炭水化物や糖質の影響を受けやすいため、摂取するタイミングも重要です。
特に、食後低血圧は朝に起こりやすいため、日中の食事では炭水化物や糖分の多いものを減らし、不足分を夜に補いましょう。
また、食物繊維は糖の消化吸収を穏やかにするはたらきがあるため、食後低血圧に効果が期待できます。
糖質や食物繊維を気にするあまり、食事の偏りがないように注意することも大切です。
普段からたんぱく質やミネラル、ビタミンが豊富な食品を摂り、バランスの良い食事を心掛けることも忘れないようにしましょう。
4-4-4.食後にカフェインを摂る
食後低血圧の予防・改善には、適度なカフェインの摂取もおすすめです。
カフェインは交感神経を刺激して血の巡りを良くするはたらきがあります。
カフェインを日常的に摂取するには、食後にお茶やコーヒーなどを飲む習慣を取り入れる方法があります。
ただしカフェインによって眠れなくなることが心配な方は、飲む時間帯を朝食前にするなど調整しても問題ありません。
5.低血圧症状のまとめ
低血圧は高血圧に比べて重要視されていませんが、症状によっては日常生活に影響を及ぼす恐れがあります。
低血圧かもしれないと思ったときは、以下の項目をチェックしましょう。
- 立ちくらみやめまいがある
- 朝起きるのがつらい
- 頭痛がある、頭が重い感じがする
- 倦怠感や疲労感がある
- 肩こりが気になる
- 動悸がする
- 胸痛や胸部圧迫感がある
- 失神発作がある
- 悪心(吐き気)がある
当てはまる症状があった場合は、低血圧の種類に応じて対策を講じることが大切です。
すべてに共通しているのは、規則正しい生活や多めの水分摂取を心掛け、室温を調整することです。
これらに加えて低血圧の種類によって食事や運動などの最適な予防・改善方法を取り入れてみてください。
この記事の監修者
おだかクリニック
副院長
【経歴】
総合病院・大学病院での勤務を経て、2018年よりおだかクリニックの副院長として診療・経営にあたる。専門の循環器疾患(虚血性心疾患、心不全、不整脈など)はもちろんのこと、高血圧や高脂血症、糖尿病等の生活習慣病や内科疾患全般の診療に従事。現在は、医療コンサルト・アドバイザー業務や、ライティング業務などにもあたっている。
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