「中性脂肪の値が高いと、どんな影響があるんだろう?」
「中性脂肪の値を下げるにはどうしたら良いかな?」
中性脂肪の値が高くなってしまい、下げる方法が分からずお困りの方もいらっしゃるかもしれません。
中性脂肪は体脂肪の大部分を占める物質であり、ヒトにとって重要なエネルギー源の一つです。
しかし摂り過ぎると、肥満や病気を招く可能性があります。
そのため、中性脂肪の値が高い場合はできるだけ早めに対処することが重要です。
中性脂肪の値を下げるためのポイントとしては、食べ過ぎや運動不足を改善する他、十分な睡眠をとることも挙げられます。
この記事では中性脂肪が高い場合のリスク、中性脂肪が高くなる原因、中性脂肪を下げるための生活習慣のポイントを解説します。
1.中性脂肪とは
「中性脂肪って健康に悪そうなイメージがある……」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、中性脂肪は体にとって必要な栄養素です。
中性脂肪はトリグリセリドとも呼ばれ、ヒトの体脂肪の大部分を占めます。
また肉や魚、食用油などの食品中の脂質としても含まれています。
中性脂肪はヒトや動物にとって重要なエネルギー源である他、「脂溶性ビタミン」を吸収するための役割を果たしています。
しかし摂り過ぎると摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、余った分は脂肪として蓄えられ肥満や病気のリスクを高めます。
なお中性脂肪は体内で脂肪などに存在するだけではなく血液中にも溶け込んでおり、「メタボリックシンドローム」などの病気を診断する際には血液中の中性脂肪の数値が使われます。
メタボリックシンドロームについて詳しく知りたいという方は以下の記事をご覧ください。
メタボリックシンドロームとは?診断基準や原因、改善のポイント
中性脂肪の値が150mg/dL以上になると「脂質異常症」の一種である「高トリグリセリド血症」と診断されます[1]。
脂質異常症について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
脂質異常症とは?発症の原因や健康への影響、改善のポイントも解説!
脂質異常症は進行すると重篤な病気を招く原因になるため、早期に改善が必要となります。
中性脂肪の値が高いことによる健康への影響はこの後の章で解説します。
中性脂肪は生きていく上で欠かせないものですが、増え過ぎると健康に悪影響を及ぼすのですね。
【関連情報】 「中性脂肪値が高くなる原因とは?健康上のリスクや改善のポイント」についての記事はこちら
2.中性脂肪の値が高い場合のリスク
「中性脂肪の値が高いと体にどんな影響があるのかな?」
このように気になる方もいらっしゃるでしょう。
中性脂肪が体内で増え過ぎると「動脈硬化」が進行し重篤な病気のリスクが高くなります。
中性脂肪の過剰によって引き起こされる動脈硬化には「コレステロール」が大きく関係しています。
中性脂肪が過剰になると、HDLコレステロールが減りLDLコレステロールが増加します。
LDLコレステロールが過剰になると、血管壁にたまり動脈硬化を引き起こすとされます。
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動脈硬化ではコレステロールなどが血管の内側に沈着して「プラーク」という物質になって血管を狭くしたり、沈着したプラークが破裂して血管が詰まったりすることがあります。
心臓の血管が狭くなると、血流が悪くなり「狭心症」という病気を引き起こします。
またプラークが血管内で詰まった場合には、心臓への血流が途絶えて心筋の細胞が壊れる「心筋梗塞」や、脳への血流が途絶える「脳梗塞」を引き起こす場合があります。
これらの病気は後遺症が残ったり命に関わったりします。
また、高トリグリセリド血症になると「急性膵炎(すいえん)」を引き起こすことがあります。
脂質異常症による急性膵炎の発症率は2%程度であるといわれています[2]。
しかし中性脂肪の値が1,000mg/dLを超える重度の高トリグリセリド血症の場合は、急性膵炎の発症率が15〜20%になることが報告されているため、中性脂肪の値が高過ぎる方は要注意です[2]。
中性脂肪は他の脂質にも悪影響を及ぼし、病気のリスクを高めるのですね。
3.中性脂肪の値が高くなる原因
「中性脂肪が高くなるのは脂質の摂り過ぎによるものなの?」
と思う方も多いかもしれませんが、中性脂肪が高くなるのは脂質の摂り過ぎだけが原因ではありません。
糖質の摂り過ぎや飲み過ぎ、運動不足などさまざまな原因により中性脂肪の値が高くなると考えられています。
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この章では中性脂肪の値が高くなる原因を解説しましょう。
原因1 カロリーの摂り過ぎ
中性脂肪の値が高くなる原因として、カロリー(エネルギー)の摂り過ぎが挙げられます。
カロリーを摂り過ぎると、消費し切れず中性脂肪として蓄えられ血液中の中性脂肪の量にも影響します。
特にエネルギー源となる糖質や脂質の摂り過ぎは中性脂肪を増やすといわれています。
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糖質はご飯や麺類など主食の他、お菓子や果物などの甘いものに多く含まれています。
特に砂糖が含まれたソフトドリンクを習慣的に飲む方は中性脂肪の値が高い傾向にあるため、注意が必要です。
また脂質は肉類や乳製品、ナッツなどの種実類に多く含まれています。
これらの食品を摂り過ぎないように注意しましょう。
原因2 アルコールの摂り過ぎ
アルコールの摂り過ぎも中性脂肪の値を上昇させる原因の一つです。
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アルコールは肝臓で代謝されますが、摂り過ぎるとその代謝に伴い中性脂肪が多くつくられます。
肝臓で中性脂肪が過剰となると、血液中に漏れて数値が上昇します。
またお酒のなかでもビールやサワーは糖質が多いため、これらを飲み過ぎると糖質の摂り過ぎにもつながります。
さらにアルコールと一緒に摂るおつまみで必要以上の脂質や糖質を摂取してしまうことも、中性脂肪の増加に影響するとされます。
つまりアルコールや脂質の摂取量が増加するため中性脂肪を高めてしまうのです。
原因3 運動不足
運動不足も中性脂肪の値に大きく影響します。
運動による消費エネルギーの方が少ない場合は食事で摂ったエネルギーが消費し切れず、その分中性脂肪として蓄積されてしまいます。
また運動不足で筋肉の減少に伴い「基礎代謝量」が低下するため、その結果、消費エネルギーが減り中性脂肪の増加につながります。
運動不足にも注意したいですね。
原因4 ストレス
ストレスも中性脂肪の値を高める原因になります。
ストレスがかかりそれを解消するために過食をしてしまうと、中性脂肪が増える原因になってしまいます。
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また慢性的なストレスでは、ホルモンのはたらきにより脂肪がため込まれやすくなる場合があります。
さらに睡眠不足も中性脂肪の値を高めることが分かっています。
睡眠不足になると、食欲を抑制するホルモンのレプチンの分泌が減少し食欲を促進するホルモンのグレリンの分泌が増加します。
この結果、食欲が増進され肥満や中性脂肪の増加を引き起こすとされています。
健康な40〜70歳の約2,600人を対象とした研究では、6時間未満の睡眠の場合は中性脂肪の値が上昇するという結果が報告されました[3]。
中性脂肪の値の上昇を防ぐためには過度なストレスや睡眠不足を避けたいですね。
4.中性脂肪の値を下げるための生活習慣のポイント
「中性脂肪が高い場合はどうすれば良いんだろう?」
中性脂肪の値が高い場合の具体的な対策を知りたいですよね。
中性脂肪の値を下げるためには、食事や運動などの生活習慣を改善することが重要です。
この章では、中性脂肪の値を下げる生活習慣のポイントを解説します。
ポイント1 摂取カロリーを適切に制限する
中性脂肪の値を下げるためには、摂取カロリーを抑えて体重を適正値に維持することがポイントです。
まずは自分の体重が適正範囲内かどうかをチェックしましょう。
この判定には国際的な標準指標であるBMI(Body Mass Index)が用いられます。
日本では18.5未満が痩せ、18.5以上25未満が普通、25以上が肥満と判定されます[4]。
自分のBMIが肥満に該当する場合は、できるだけ早く減量に取り組みましょう。
そのためには自分に必要なカロリーを把握して、摂取カロリーを適切に制限することが重要です。
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1日に必要なカロリーは年齢や運動量によって異なります。
1日に必要なカロリーの算出方法などについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1日に必要なカロリーって?計算方法と健康を保つポイントを解説!
ポイント2 糖質の摂取を制限する
糖質の摂取量を制限することで中性脂肪の値を下げる効果が期待できます。
糖質はご飯やパン、麺類といった主食、果物やお菓子などの甘いものに多く含まれています。
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主食の大盛りや重ね食べを控え、果物やお菓子の摂取を減らすようにしましょう。
ジュースや炭酸飲料などといった糖質を含む飲み物にも注意が必要です。
習慣的にジュースなどを飲む場合は、お茶などの糖質を含まない飲み物に置き換えると良いでしょう。
なお、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では成人の男女に対し、炭水化物(糖質)から摂取するカロリーを1日の必要カロリーの50〜65%にする目標を設定しています[5]。
糖質を含む食品を好んで食べてしまいがちな方は、摂取量を減らすように心掛けてくださいね。
ポイント3 脂質の摂取を制限する
糖質だけではなく、脂質の摂取量を制限することも重要です。
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脂質のうち「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」は体内のコレステロールを増やし脂質異常症を悪化させる可能性があるため、これらを含む食品の摂取を控えておくと良いでしょう。
飽和脂肪酸は肉類の脂身、ラード、バターなどの動物性脂肪に多く含まれています。
肉類を食べる際は、脂身や皮のある部分を避けたり赤身肉を選んだりすると良いでしょう。
また、牛乳は低脂肪乳にすることがおすすめです。
トランス脂肪酸はマーガリンやお菓子などに使用されるショートニングや揚げ物などに含まれています。
揚げ物やスナック菓子、クッキーなどをはじめとした市販の洋菓子の摂り過ぎには注意しましょう。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では成人の男女に対し、脂質から摂取するカロリーを1日の必要カロリーの20〜30%にすると設定しています[6]。
他の脂質の数値に悪影響を与えないためにも、脂質の摂り過ぎに注意したいですね。
ポイント4 n-3系多価不飽和脂肪酸を摂取する
中性脂肪の値を下げるためには、n-3系多価不飽和脂肪酸を摂取しましょう。
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n-3系多価不飽和脂肪酸とは植物や魚に多く含まれる不飽和脂肪酸の一種で、「α-リノレン酸」「DHA(ドコサヘキサエン酸)」「EPA(エイコサペンタエン酸)」があります。
n-3系多価不飽和脂肪酸には肝臓で中性脂肪をつくられにくくする作用があるため、中性脂肪の値を下げるのに有効とされています。
さらに狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患の発症を予防する効果が期待されています。
脂質は体に悪いイメージがあるかもしれませんが、n-3系多価不飽和脂肪酸のように体に良いはたらきをするものもあるのですね。
n-3系多価不飽和脂肪酸は青魚の脂肪に多く含まれているため、1日当たり一切れ程度の魚を摂ることが望ましいとされます[7]。
ただし脂肪酸をはじめとする脂質にはカロリーが含まれているため、適切なカロリー摂取量の範囲内で魚の摂取を増やすようにしましょう。
ポイント5 飲酒を控える
中性脂肪の値を下げるためには、飲酒を控えることも重要です。
お酒を飲み過ぎると肝臓のはたらきにより中性脂肪がつくられ過ぎてしまい、血液中に漏れて中性脂肪の値が上昇します。
そのため、飲酒は適量にとどめておくことが必要なのです。
中性脂肪の値を下げるためには、純アルコールの摂取量を1日当たり25gまでにするように推奨されています[8]。
一般的に飲まれるお酒の量としては、ビールでは中瓶1本、日本酒では1合、ワインでは180mL程度にすると良いでしょう[9]。
2023年に発表された研究結果では、ノンアルコール飲料が飲酒量の減少に有⽤であり、減酒のきっかけにもなる可能性が明らかになりました[10]。
ストレスなく飲酒量を控えるために、ノンアルコール飲料を活用してみるのも良いでしょう。
ただし、糖質が含まれているものもあるため、糖質の摂り過ぎとならないよう、糖質ゼロや糖質オフのものを選ぶと良いですね。
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またお酒と一緒に摂るおつまみも中性脂肪の値を高める原因となるため、脂質や糖質の多いおつまみを食べ過ぎないように注意してくださいね。
[10] H. Yoshimoto et al. 「Effect of provision of non-alcoholic beverages on alcohol consumption: a randomized controlled study」(BMC Medicine, volume 21, Article number: 379 (2023) )
ポイント6 運動習慣を身に付ける
運動習慣を身に付けることも中性脂肪の値を下げるのに有効です。
中性脂肪の値を改善するためには、1日合計30分以上の「中強度以上の有酸素運動」をできるだけ毎日継続することが推奨されています[11]。
有酸素運動にはウォーキング、ジョギング、サイクリング、エアロビクスダンス、水泳などがあります。
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これらの運動は脂肪をエネルギー源とするため、中性脂肪やコレステロールの減少が期待できます。
運動強度としては、通常の歩行速度かそれ以上になるように行うことがポイントです。
なお運動による中性脂肪の減少効果はすぐには得られるものではないため、数カ月以上にわたり長期的に取り組むことが重要とされています。
自分にできる範囲で継続していきましょう。
ポイント7 十分な睡眠をとる
中性脂肪を下げるためには、十分な睡眠をとることも必要です。
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睡眠不足になると食欲をコントロールするホルモンが乱れ、食欲が増進し肥満や中性脂肪の増加につながる可能性があります。
また睡眠不足などが原因でストレスがたまると、中性脂肪の値が高くなることもあります。
十分な睡眠をとるためには、規則正しい生活を心掛けるようにしましょう。
寝る時間・起きる時間を一定にし、規則正しい睡眠習慣にすることがポイントです。
また睡眠を妨げるものを避けると良いでしょう。
コーヒーやお茶などのカフェインを含む飲料、たばこ、アルコールなどは睡眠を妨げることが知られています。
明るい照明も寝付きを悪くさせるため、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用を控えるようにしましょう。
ご自身の生活習慣を見直し、十分な睡眠をとるようにしてくださいね。
5.中性脂肪の値が低過ぎる場合も注意が必要
中性脂肪の値が高いことだけではなく、中性脂肪の値が低過ぎることも体に悪影響を及ぼします。
中性脂肪の値が低過ぎると、エネルギー不足となり疲れやすくなったり集中力が低下したりすることがあります。
また中性脂肪は体内の体温調節にも関わっているため、不足すると低体温や手足の冷えにつながります。
その他にも脂肪性ビタミンの吸収にも影響を及ぼし、肌荒れや「免疫機能」の低下などさまざまな症状が現れます。
中性脂肪の値が低過ぎる場合は、過度な食事制限や激しい運動、何らかの疾患が原因と考えられています。
栄養不足によるものがほとんどであるため、中性脂肪値の改善にはご自身の生活習慣を見直し栄養バランスを意識することが重要です。
少しでも不安を感じたら医師に相談するようにしましょう。
6.中性脂肪を下げるためのポイントのまとめ
中性脂肪は体脂肪の大部分を占める物質であり、ヒトの重要なエネルギー源です。
しかし摂り過ぎると、体脂肪として蓄積され肥満を引き起こしてしまいます。
さらに血液中の中性脂肪が増加すると、高トリグリセリド血症を発症し重篤な病気になるリスクが高くなるため早期に改善が必要です。
中性脂肪の値はカロリーやアルコールの過剰摂取や運動不足、ストレスなどにより高くなります。
中性脂肪の値を下げるためには、摂取カロリーを見直し、脂質や糖質の摂取量を制限することが必要です。
またn-3系多価不飽和脂肪酸を含む魚を摂取するようにしましょう。
さらに定期的に運動を行うこと、十分な睡眠をとることも中性脂肪の値を下げるのに効果的とされます。
ただし中性脂肪の値が低過ぎると疲労感を覚えたり低体温になったりする恐れがあるため、過度な食事制限をしないように注意しましょう。
中性脂肪の値が高いと診断されたら、主治医と相談しながらご自身の生活習慣を見直して改善に努めてくださいね。