「60代の血圧の正常値とはどれくらいなのだろう……」
「血圧を正常値に保ちたいものだが、どうしたら良いんだろうか?」
老年期を迎えるに当たり、自分の血圧が正常値に収まっているか気になる方は多いのではないでしょうか。
血圧は高過ぎると脳卒中や心不全、腎臓病などの致命的な生活習慣病を引き起こす危険があります。
年を取ると血管が硬くなって血圧が上がりやすくなるため、十分な注意が必要です。
また血圧が低過ぎる場合は目まいや立ちくらみ、冷えなどの症状が生じて日常生活に支障が出る場合があります。
血圧を正常に保つことは、老後の健康を維持するために極めて重要だといえるでしょう。
この記事では血圧の仕組みや基準となる値、高血圧や低血圧のリスクについて解説します。
また血圧を正常に保つための暮らしのなかでのポイントを紹介していきます。
この記事の内容を参考に血圧をしっかり管理し、健康的な老後を楽しんでくださいね。
1.血圧の正常値と高血圧の基準
「そもそも血圧とは何を示す数値なのだろうか……」
「血圧はどれくらいの数値ならば正常なんだろう?」
血圧の話は聞いたことがあっても、血圧が何を指し示す値なのか、どのくらいなら正常かまでは知らないという方もいらっしゃるでしょう。
血圧は心臓から送り出された血液が血管の内壁を押す際の圧力です。
一般的に血圧といった場合は、上腕にある動脈(上腕動脈)の血圧のことを指します。
血圧には「上の血圧」と「下の血圧」と呼ばれる二つの値があります。
上の血圧は血液を送り出すために心臓が収縮した際の、血管に最も強い圧力がかかっている状態の血圧で、最高血圧、収縮期血圧とも呼ばれます。
下の血圧は次に血液を送り出すために心臓が拡張した際の、血管の圧力が最も下がっている状態の血圧で、最低血圧、拡張期血圧とも呼ばれます。
血圧の値には心臓から送り出される血液量、血管の弾力性、血液の粘度、腎臓や神経系のはたらき、食塩の摂取量など多くの要因が絡んでいます。
血圧の基準は世界共通で、正常値である「正常血圧」は年齢や性別にかかわらず最高血圧120mmHg未満かつ最低血圧80mmHg未満です[1]。
また高血圧の診断基準も世界共通で、年齢や性別にかかわらず最高血圧140mmHg以上かつ/または最低血圧90mmHg以上です。
この値は病院や健康診断などで計測した際の「診察室血圧」と呼ばれる血圧の基準です。
【病院で測定した際の血圧値の基準】
分類 | 最高血圧 | 最低血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | 120mmHg未満 | かつ | 80mmHg未満 |
正常高値血圧 | 120~129mmHg | かつ | 80mmHg未満 |
高値血圧 | 130~139mmHg | かつ/または | 80~89mmHg |
高血圧(Ⅰ度) | 140~159mmHg | かつ/または | 90~99mmHg |
高血圧(Ⅱ度) | 160~179mmHg | かつ/または | 100~109mmHg |
高血圧(Ⅲ度) | 180mmHg以上 | かつ/または | 110mmHg以上 |
一方で、自宅で測定する血圧は「家庭血圧」と呼ばれ、診察室よりもそれぞれ5mmHg低い値が高血圧の診断基準とされます。
【家庭で測定した際の血圧値の基準】
分類 | 最高血圧 | 最低血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | 115mmHg未満 | かつ | 75mmHg未満 |
正常高値血圧 | 115~124mmHg | かつ | 75mmHg未満 |
高値血圧 | 125~134mmHg | かつ/または | 75~84mmHg |
高血圧(Ⅰ度) | 135~144mmHg | かつ/または | 85~89mmHg |
高血圧(Ⅱ度) | 145~159mmHg | かつ/または | 90~99mmHg |
高血圧(Ⅲ度) | 160mmHg以上 | かつ/または | 100mmHg以上 |
血圧の判定においては、家庭血圧の結果が診察室血圧よりも優先されます。
自分の血圧がどれくらいかを把握するためには、自宅で血圧を測定する習慣を付けると良いでしょう。
【関連情報】 「血圧の年代別・男女別平均値を紹介!基準値や高血圧の改善方法は?」についての記事はこちら
2.60代の血圧の平均値
「60代の血圧は平均してどれくらいなんだろう?」
「年を取ると血圧が上がるというけれど、問題ないのだろうか……」
高齢者は血圧に注意が必要とされており、自分の血圧が同年代と比べてどのくらいなのか気になる方も多いでしょう。
60代の血圧の平均値は、男性では最高血圧が135.8mmHg、最低血圧が78.5mmHg、女性では最高血圧が131.0mmHg、最低血圧が76.7mmHgです[2]。
男女ともに最高血圧が正常血圧を超えて「高値血圧」の数値になっています。
血圧は年齢が上がるごとに高くなっていく傾向にあります。
【年代別の血圧の平均値(mmHg)】
年代 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
最高血圧 | 最低血圧 | 最高血圧 | 最低血圧 | |
20代 | 115.3 | 67.7 | 105.7 | 63.8 |
30代 | 117.3 | 73.7 | 107.9 | 66.3 |
40代 | 125.8 | 81.3 | 114.3 | 71.2 |
50代 | 131.7 | 82.0 | 123.7 | 75.4 |
60代 | 135.8 | 78.5 | 131.0 | 76.7 |
70代以上 | 135.8 | 73.1 | 136.1 | 73.0 |
これは年齢と共に血管が老化し、血管の壁が硬く弾力性の低い状態になる「動脈硬化」が進行するためです。
また、高齢者の血圧の特徴として、最高血圧が高く最低血圧が低い「(孤立性)収縮期高血圧」が挙げられます。
この状態は動脈硬化が進んだ高齢者によく見られるもので、最高血圧と最低血圧の差(脈圧)が大きい方は特に注意が必要です。
加齢による動脈硬化が高血圧を招くと同時に高血圧も動脈硬化を招くため、高齢で高血圧の方は生活習慣病のリスクが高いといえるでしょう。
生活習慣病のリスクを下げるためには血圧を下げることが重要なのですね。
3.血圧が正常値から外れた場合のリスク
「血圧が正常値から外れたら危険なのだろうか?」
「高血圧が怖いとは聞くけれど、低い場合は問題ないのだろうか……」
血圧が正常値を外れるとどうなるのか、気になる方も多いでしょう。
高血圧になると動脈硬化が進み、脳卒中や心不全、腎臓病などの致命的な生活習慣病の引き金になります。
低血圧は直ちに重大な病気にはつながりませんが、目まいや立ちくらみなどが起こり日常生活に支障が出る場合があります。
この章では高血圧や低血圧になった場合のリスクを解説します。
3-1.高血圧の場合
高血圧は心不全や脳卒中、腎臓病など多くの致命的な生活習慣病のきっかけとなります。
しかし高血圧になっても直ちに自覚できる症状は現れないことから、しばしば「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」と表現されます。
高血圧の状態が続くと血管が長期間張り詰めた状態に置かれるため、本来の弾力性を失って厚く硬くなる動脈硬化が起こります。
高血圧になると、脳や心臓を含む大小の血管でこの動脈硬化が起こってしまうのです。
動脈硬化は心臓では心筋梗塞や狭心症などの心不全を、脳では脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中を、腎臓では腎硬化症や慢性腎不全などの腎臓病を引き起こします。
これらはいずれも命に関わったり治療が難しかったりする危険な病気のため、高血圧を予防・改善することは健康にとって極めて重要です。
現在日本では4,300万人が高血圧で、そのうち3,100万人が血圧を適切にコントロールできていないとされています[3]。
また年齢と共に高血圧の方の割合は増加する傾向にあり、60代の男性では39.1%、女性では29.9%が高血圧の基準を超えています[4]。
【年代別の高血圧の割合】
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代 | 7.1% | 0.0% |
30代 | 6.3% | 3.3% |
40代 | 30.9% | 9.1% |
50代 | 38.9% | 19.7% |
60代 | 39.1% | 29.9% |
70代以上 | 36.6% | 42.8% |
多くの60代の方にとって、高血圧は自らの問題として対策すべき非常に身近な疾患だといえるでしょう。
3-2.低血圧の場合
低血圧は重大な生活習慣病などにはつながらないため、原則として治療が必要な病気だとは考えられていません。
そのため低血圧の基準は厳密には定義されていませんが、一般的には最高血圧が100mmHg未満の場合を低血圧と判断することが多いようです[5]。
低血圧の主な症状は目まいや立ちくらみです。
他にも頭痛や全身のだるさ、疲労感や肩こり、動悸(どうき)などが起こり日常生活に支障が出る場合があります。
低血圧の症状は朝に出やすく、起きるのがつらいなど午前中の生活に影響があります。
低血圧の症状で日常生活に困難を感じた場合は、医療機関を受診して改善を目指しましょう。
[5] 日本医師会「低血圧」
4.血圧を正常に保つためのポイント
「血圧を正常に保つにはどうしたら良いものか……」
「高めになった血圧は正常値に戻せるのだろうか?」
血圧が高くなり過ぎたり低くなり過ぎたりすると健康に影響が出るため、正常に保つにはどうすれば良いか気になりますよね。
多くの場合は高血圧も低血圧も、日頃の生活習慣を見直すことで正常値に近づけることができます。
この章では、自分でできる日常生活上の血圧改善ポイントを紹介します。
小さな変化でも継続すれば大きな改善が期待できるため、ぜひ挑戦してくださいね。
ポイント1 食生活の改善
血圧を正常に保つためには食生活を見直しましょう。
血圧の高い方は、まず塩分の摂取量を減らす必要があります。
日本人は日常生活のなかで塩分の多いしょうゆ、みそなどの調味料や、インスタントラーメンのような加工食品を頻繁に口にしています。
そのため、多くの日本人が塩分を過剰摂取しています。
厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査報告」によると、日本人の1日の塩分摂取の平均量は成人男性で10.9g、成人女性で9.3gです[6]。
しかし60代の平均量を見ると男性で11.5g、女性で10.0gと成人全体の平均を上回っています[6]。
日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」では高血圧の方の減塩目標値を1日当たり6g未満としており[7]、平均量から計算すると60代の男性は5.5g、女性は4gもの減塩が必要となります。
なお現時点で高血圧でない方は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」による成人男性7.5g未満、成人女性6.5g未満の塩分摂取目標量を参考に減塩を目指してみましょう[8]。
具体的な減塩方法としては、まず全体的に薄味の調理を心掛けることが重要です。
またしょうゆやソースなどの調味料はそのままかけると量が多くなりがちなため、小皿に出してつけるようにしましょう。
他にも以下のような工夫をすることで、無理なく日常生活のなかで減塩を始められます。
特にラーメンなどの麺類の汁は全部飲むと6g近い塩分を摂取してしまうため、どんなにおいしくても残す習慣を付けてください。
減塩には、塩分の摂取量を減らす以外にも効果的な方法があります。
カリウムというミネラルには腎臓からの塩分排出を促すはたらきがあります。
カリウムを多く含む食品には、バナナやキウイフルーツなどの果物、さつまいもやながいもなどのいも類、ほうれん草などの野菜、わかめやこんぶなどの海藻類があります。
また納豆や肉類、魚介類などにもカリウムは含まれています。
カリウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
また食物繊維には塩分を吸着して体外に排出するはたらきがあります。
食物繊維を多く摂ることで、摂取した塩分が体内に吸収されにくくなるのですね。
食物繊維は塩分だけでなく脂肪や糖類の排出も促すため、肥満や糖尿病などの予防・改善にも効果が期待できます。
肥満や糖尿病は動脈硬化をもたらすリスクがあるため、しっかり食物繊維を摂ることは高血圧改善にとどまらない効果があるといえるでしょう。
食物繊維は野菜や果物に加え、豆類、いも類やきのこ、海藻類、穀類などの植物性食品に多く含まれています。
食物繊維については以下の記事で詳しく解説しています。
また肥満も高血圧の大きな原因の一つで、肥満者が高血圧になる可能性は正常体重者の2~3倍[10]といわれています。
そのため肥満を解消することは高血圧の改善に効果的といえます。
肥満を解消するには、減量によって体脂肪を減らす必要があります。
具体的な減量の方法は食事から摂取するエネルギーを減らすことと、運動によって消費するエネルギーを増やすことです。
摂取エネルギーを減らすダイエットは重要ですが、極端な食事制限は長続きせずリバウンドの原因ともなります。
また必要な栄養素が不足すると骨粗しょう症や貧血、便秘などを引き起こし健康を損なう危険もあるため、栄養バランスに気を付けながら無理なく行いましょう。
肥満は高血圧の原因となるだけでなく、高血糖や糖尿病など多くの生活習慣病をもたらします。
肥満の解消は高血圧をはじめとする多くの生活習慣病のリスクを減らすための効果的な方法だといえるでしょう。
低血圧の解消にも食生活の改善は有効です。
低血圧の方は偏食を避け、たんぱく質やミネラル、ビタミンの豊富な食品をバランス良く摂ることを心掛けましょう。
また水分をしっかり摂取し、塩分も控え過ぎないようにしましょう。
高齢者では、食後に消化のために血液が胃に集中することによる「食後低血圧」が発生する場合があります。
食後に低血圧の症状が出る場合は、食事の後にお茶やコーヒーなどでカフェインを摂取するのも効果的です。
[10] 日本肥満症予防協会「3. 肥満と高血圧」
ポイント2 適度な運動
運動も血圧を正常に保つために有効です。
高血圧の改善のためには、日々適度に運動することが推奨されています。
運動をすると、血管の内側の内皮細胞に刺激が加わり活性化します。
活性化した内皮細胞は血管を柔らかくしなやかにする一酸化窒素を放出するため、動脈硬化が改善されて血圧が下がるのです。
また運動によってインスリンの効果が高まり分泌量が抑制されるため、血管の収縮を防ぎ、結果として血圧の上昇を防ぎます。
さらに運動は消費エネルギーを増やすため、高血圧の原因の一つである肥満の解消にも有効です。
食生活の改善と共に、適度な運動は血圧を正常に保つために非常に効果的だといえるでしょう。
高血圧改善を目指す運動としては、ウォーキングやステップ運動、ジョギングなどの有酸素運動が推奨されています。
できるだけ毎日30分以上、もしくは1週間で計180分以上を目安に[11]運動を継続させましょう[11]。
なお運動をする際はややきついと感じる程度にとどめ、無理をしないことが重要です。
また有酸素運動に加えて筋力トレーニングやストレッチも推奨されているため、こちらも無理のない範囲で生活に取り入れてみましょう。
運動時間が取りにくい方は階段を使う、通勤時に一駅分歩く、積極的に掃除や片付けを行うなどして意識的に体を動かすようにしてみてくださいね。
低血圧の方は手足などの末端部分の血管の収縮力が悪く、血液の循環が滞りやすい傾向があります。
そのため血液の循環に深く関係するふくらはぎなどの下半身の筋肉を鍛えることで、改善が期待できる場合があります。
自分のペースに合わせ、無理なくウォーキングなどの有酸素運動を行ってみましょう。
ただし目まいや立ちくらみなどの症状が出ている場合は転倒などの危険があるため、医師に相談してから運動を始めるようにしてください。
[11] 日本高血圧学会「高血圧の話」
ポイント3 節酒・禁煙
血圧を正常に保ちたい方は節酒・禁煙をしましょう。
飲酒の習慣は高血圧の原因となるため、高めの血圧が気になっている方はお酒の量を控えましょう。
日本高血圧学会は、高血圧の予防・改善のためには1日の飲酒量として、純アルコール量で男性は20~30mL以下、女性はその半分の10~20mL以下とすることを推奨しています[12]。
純アルコールの量で20~30mLはビールでは中瓶1本、日本酒では1合、焼酎では半合、ワインでは2杯、ウイスキーやブランデーではダブルで1杯程度に相当します[12]。
加えて週に1日程度は休肝日を設けましょう[13]。
医師から特に指示されていない限りは、高血圧を理由に禁酒する必要はありません。
なお、おつまみには塩味の濃いものが多いため、できるだけ薄味のものを選ぶようにしてくださいね。
一方、たばこの煙にはニコチンや活性酸素など血圧に関係する有害物質が含まれおり、高血圧の重大なリスクとなります。
ニコチンは交感神経にはたらきかけて血管を収縮させるため、血圧を上昇させて心臓や血管に負担をかけます。
また活性酸素は血管内皮に炎症を起こさせて組織障害を起こすと同時に、インスリンを効きにくくさせて過剰分泌をもたらします。
インスリンが過剰に分泌されると交感神経が活発になり、血管が収縮するため血圧が上がります。
さらに喫煙は高血圧だけでなく動脈硬化の原因にもなるため、心不全や脳卒中のリスクも高めてしまいます。
たばこはがんや呼吸器疾患、糖尿病などのリスクも増大させるため、喫煙は文字どおり百害あって一利なしといえます。
しかも喫煙によるリスクは自分だけにとどまらず、受動喫煙によって同居する家族らにもリスクを負わせてしまうことを忘れてはならないでしょう。
高血圧に限らず、自分と周りの人の健康を考えるならば早急に禁煙しましょう。
ポイント4 十分な休養と睡眠
血圧を正常に保つため、十分に休養と睡眠をとるようにしましょう。
日々のストレスは高血圧の原因となります。
人間の体はストレスを受けると緊張し、防御反応として交感神経が活発になります。
交感神経が活発になると血管が収縮するため、血圧が上がってしまうのです。
そのため、ストレスをため込まずに解消することが血圧を正常に保つために重要なのですね。
自宅で簡単にできるストレス解消の方法としては、入浴が効果的です。
シャワーだけで済まさずに少しぬるめのお湯にじっくりつかり、読書や音楽鑑賞などお好みの方法でリラックスしてみてください。
また適度な運動は血圧を下げるだけでなく、ストレス解消の効果もあります。
食後のウォーキングやちょっとした散歩といった有酸素運動を習慣にしてみましょう。
ストレスというと仕事や人間関係などによる精神的なストレスを思い浮かべがちですが、過労や睡眠不足、暑さや寒さなどの気候などによる身体的ストレスもあります。
過労や睡眠不足の方は規則正しい生活を心掛け、十分な休養と睡眠をとるようにしましょう。
ストレスで寝付けない場合は無理に眠ろうとせず、好きな本を読んだり好きな音楽を聴いたりして脳をリラックスさせることが大切です。
身体的ストレスのなかでも特に危険なのが、寒い時期の急激な温度変化によるストレスです。
暖かい室内などから急に寒い場所に移動すると血管が収縮して血圧が上がります。
激しい温度変化を避けるため外出時は帽子やマフラー、手袋などで肌の露出を抑えるようにしましょう。
また冬の起床時や入浴時も血圧が急変しやすいため注意が必要です。
起床時間に合わせて寝室の暖房をタイマー設定する、入浴時には脱衣所や浴室に暖房を入れ、熱過ぎるお湯につからないなどの対策を取りましょう。
一方、就業中の方の場合精神的ストレスで気を付けたいのは仕事上のストレスによる「職場高血圧」です。
職場高血圧はストレスに起因する高血圧のなかでも代表的なものです。
職場ではパワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの人間関係による精神的なストレスだけでなく、長時間労働や激務による身体的なストレスが加わることもあります。
就業中の方は職場でのストレスを一人で抱え込まず、早い段階で職場の上司や同僚、場合によっては労働基準監督署や労働局、弁護士などに相談してみても良いでしょう。
また高齢になると退職による社会的役割の変化や収入の減少、身近な家族や友人との死別などの生活の変化がストレスになるケースが増えます。
こうした状況の変化に対しても自分だけで悩まず、誰かに話を聞いてもらったり、医師やソーシャルワーカーに相談したりすると気持ちが楽になるかもしれません。
低血圧の方にも、休養と睡眠は重要です。
過労を避け、夜更かしせずに十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心掛けてください。
また低血圧の方は入浴の際、少し熱めのお湯に肩までつかって温まるようにしましょう。
5.血圧が正常値から外れたら医師に相談しよう
血圧が正常値から外れていることが分かったら、早めに医療機関を受診しましょう。
高血圧の場合は医師の判断で、降圧剤などによる服薬治療が必要になる場合があります。
高血圧は自覚症状がほとんどないため、自分で気付くことは困難です。
そのため、毎年健康診断を受けることが極めて重要です。
また家庭用血圧計を購入し、自宅で家庭血圧を日々測定することも高血圧予防には有効です。
普段から自分の血圧をしっかり把握し、高い数値が続いた場合には自己判断せず、医療機関を受診するようにしてください。
低血圧の場合は、目まいや立ちくらみが転倒などの危険に直結します。
そのような症状が出た場合は早急に医療機関を受診し、改善を目指すようにしてください。
症状によっては昇圧剤などによる服薬治療が発生します。
6.60代の正常な血圧についてのまとめ
血圧の正常値は年齢によって変化しません。
正常値とされる正常血圧は20代であっても60代であっても最高血圧120mmHg未満かつ最低血圧80mmHg未満です[14]。
一方、血圧の平均値は年齢と共に上昇する傾向にあり、60代の男性では39.1%、女性では29.9%が高血圧の基準を超えています[15]。
これは加齢によって血管が老化し、しなやかさや弾力を失った状態になる動脈硬化が進行するためです。
これに伴い、高齢者では最高血圧が高く最低血圧が低い「(孤立性)収縮期高血圧」になりやすいことが知られています。
高血圧になっても直ちに分かりやすい症状は出ませんが、動脈硬化が進行し、心不全や脳卒中、腎臓病などの致命的な生活習慣病の原因となります。
一方の低血圧は深刻な病気につながりにくいものの、目まいや立ちくらみなどによって日常生活に支障が出る場合があります。
血圧を正常に保つためには、バランスの良い食生活を送り、適度に運動を行い、節酒や禁煙を心掛け、十分な休養と睡眠でストレスをため込まないようにしましょう。
また家庭で血圧を計る習慣を付け、日々の血圧の変化を知ることも大切です。
血圧が正常値を外れた場合は速やかに医療機関を受診し、医師の指示を仰ぐようにしてくださいね。