「30代の血圧の正常値はどのぐらいなのかな?」
「高血圧や低血圧を改善するにはどうすれば良いんだろう?」
30代になり血圧が気になってきた方や、健康診断で血圧が正常値から外れてしまったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
血圧が正常値から外れ高血圧になると、重篤な病気のリスクを高める可能性があります。
一方で、低血圧は高血圧に比較すると病気のリスクは少ないものの、立ちくらみなどの症状が現れる可能性があります。
そのため、自分の血圧を正常の範囲内に維持することが重要です。
この記事では血圧の正常値や血圧が正常値から外れている場合の影響、血圧を正常に保つためのポイントを解説します。
1.血圧の正常値と高血圧の基準値
血圧とは心臓から全身に血液を送り出した際に血管の内側にかかる圧力のことです。
心臓は収縮・拡張を繰り返すことで血液を送り出しているため、血圧は心臓の収縮・拡張に応じて上がったり下がったりします。
血圧は心臓が収縮した際に最も高くなり、このときの値を「上の血圧」あるいは「収縮期血圧(最高血圧)」などといいます。
一方、心臓が拡張した際に最も低くなり、このときの値を「下の血圧」あるいは「拡張期血圧(最低血圧)」といいます。
血圧を測定する際は、収縮期血圧と拡張期血圧の数値で正常かどうかを判断しています。
「30代の血圧の正常値はどれくらいなのかな?」
このように血圧の正常値や高血圧の基準値が気になる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
実は血圧の基準は全年代で共通の値が設定されています。
そのため、30代でも60代でも同じ値が適用されるのです。
【診察室で測定した場合の血圧の基準値】
分類 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
---|---|---|---|
正常血圧 | 120mmHg未満 | かつ | 80mmHg未満 |
正常高値血圧 | 120〜129mmHg | かつ | 80mmHg未満 |
高値血圧 | 130〜139mmHg | かつ/または | 80〜89mmHg |
I度高血圧 | 140〜159mmHg | かつ/または | 90〜99mmHg |
II度高血圧 | 160〜179mmHg | かつ/または | 100〜109mmHg |
Ⅲ度高血圧 | 180mmHg以上 | かつ/または | 110mmHg以上 |
診察室で測定した場合の血圧の正常値は、収縮期血圧が120mmHg未満かつ拡張期血圧が80mmHg未満です[1]。
また家庭で測定した場合の血圧の正常値は診察室で測定した値よりも5mmHg低い基準で設定されており、収縮期血圧が115mmHg未満かつ拡張期血圧が75mmHg未満です[1]。
血圧はストレスや運動などさまざまな要因で変動するため、診察室では緊張していつもより高い値になる場合があります。
そのため、診察室と家庭での測定結果に誤差がある場合は、家庭で測定した血圧が優先されます。
なお、高血圧とは慢性的に正常値より高い状態のことです。
たまたま測った血圧が高い場合ではなく、繰り返し測定しても正常値よりも高い場合のみ高血圧と診断されます。
高血圧の診断基準は、診察室での測定で収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上もしくはその両方です[1]。
一方、家庭で測定する場合は収縮期血圧が135mmHg以上または拡張期血圧が85mmHg以上もしくはその両方で診断されます[1]。
高血圧が体に及ぼす影響はこの後の章で詳しく説明します。
2.30代の血圧の平均値
「30代の血圧の平均値はどれくらいなんだろう?」
自分と同世代の血圧はどれくらいなのか気になりますよね。
30代の血圧の平均値は、診察室で測定した場合、男性が収縮期血圧117.3mmHg・拡張期血圧73.7mmHg、女性は収縮期血圧107.9mmHg・拡張期血圧66.3mmHgです[3]。
血圧の正常値の範囲が収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満であることから、30代の平均的な血圧は男女ともに正常値に近いといえます[4]。
【年代別の血圧の平均値(mmHg)】
年代 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
20代 | 115.3 | 67.7 | 105.7 | 63.8 |
30代 | 117.3 | 73.7 | 107.9 | 66.3 |
40代 | 125.8 | 81.3 | 114.3 | 71.2 |
50代 | 131.7 | 82.0 | 123.7 | 75.4 |
60代 | 135.8 | 78.5 | 131.0 | 76.7 |
70代以上 | 135.8 | 73.1 | 136.1 | 73.0 |
表のように、年齢を重ねると血圧の平均値も上昇していることが分かります。
「どうして年齢を重ねると血圧が上がるんだろう?」
と疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、血圧が上昇するのは加齢に伴い血管の弾力性が失われてしまうことが原因とされます。
ただし年齢とは関係なく食事や飲酒などの生活習慣の乱れが高血圧を引き起こす可能性もあります。
そのため、30代で若いからといって油断せず、健康的な生活を送るように心掛けることが重要なのです。
3.血圧が正常値から外れた場合の影響
「血圧が正常値から外れたらどんな影響があるんだろう?」
このように気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
高血圧を放置していると心臓病や脳卒中などの病気を発症するリスクがあります。
一方で低血圧は高血圧に比べると病気のリスクが少ないものの、目まいなどの症状が現れることがあります。
この章では、高血圧・低血圧による体への影響について解説します。
3-1.高血圧による体への影響
高血圧は命に関わる重篤な病気の発症リスクを高めます。
高血圧の状態が長く続くと血管は常に張り詰めた状態になるため、次第に血管が厚く硬くなり本来の弾力性を失う「動脈硬化」という状態になります。
動脈硬化が進むと血管が詰まったり破れたりしやすくなるため、脳卒中や心臓病などを引き起こす可能性があります。
高血圧は自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに動脈硬化が進行してさまざまな病気を引き起こしやすいとされます。
そのため、高血圧は別名「サイレントキラー」とも呼ばれています。
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると日本人の高血圧の患者数は20歳以上の約半数であり、特に40代以上になると患者数が増えていきます[5]。
また、高血圧は妊娠中でも発症するリスクがあります。
妊娠時に高血圧を発症した場合を「妊娠高血圧症候群」といい、妊婦の約20人に1人の割合で発症するといわれています[6]。
特に妊娠34週未満で発症すると重症化しやすく、母体の健康と胎児の発育に悪影響を及ぼします[6]。
妊娠高血圧症候群は予防法や治療法が確立されておらず、発症した場合は医師の指導を受けなければなりません。
30代の血圧の平均値が正常値に近いからといって安心せずに、血圧を測定することを習慣化し正常の範囲内を保つように心掛けましょう。
3-2.低血圧による体への影響
低血圧は高血圧に比べて深刻な病気のリスクが少ないため、低血圧の基準は明確に設定されておらず医師によっても意見が異なります。
ただし、一般的に収縮期血圧が100mmHg未満である状態のことを低血圧と定義しています[7]。
病気発症のリスクが少ないものの、血圧が低下すると臓器に送られる血液量が減少し臓器が機能障害に陥る場合もあるため注意が必要です。
臓器のなかでも脳は血圧が低下した際に最初に症状が現れます。
具体的には立ちくらみや目眩といった症状がよく見られます。
その他にも肩こり、食欲不振、頭痛などの症状が現れるともいわれています。
低血圧は特に若い女性に多い傾向にあり、朝に症状が強く現れ生活に支障を来すこともあります。
高血圧に比べると命に関わる病気の発症リスクはありませんが、症状がつらい場合には医療機関を受診しましょう。
4.血圧を正常に保つためのポイント
「血圧を正常に保つためには何をすれば良いのかな?」
このように具体的な方法が分からずお困りの方もいらっしゃるでしょう。
血圧は生活習慣から大きく影響を受けるため、生活習慣を改善することが重要です。
ここからは血圧を正常に保つためのポイントをご紹介します。
これからお伝えするポイントを参考に、ご自身の生活を見直してくださいね。
ポイント1 食生活を改善する
血圧を正常に保つためには、食生活を見直し改善するようにしましょう。
特に高血圧を予防・改善する上で欠かせないのは、減塩に取り組むことです。
塩分の摂り過ぎは日本人の高血圧の最大の原因といわれています。
塩分を摂り過ぎると「ナトリウム」のはたらきにより、血圧が上昇します。
通常、体内では水分とナトリウムが一定の濃度に保たれています。
塩分を摂り過ぎると血液中のナトリウムの濃度が高くなり、濃度を正常に戻すために体は水分をため込もうとします。
そのため、血液量が増加し血管を押す力が強くなり血圧が上昇するのです。
高血圧を予防・改善するためには、1日の食塩摂取の目標量を6g未満にすることが望ましいとされます[8]。
厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、30代の男性の食塩摂取量の平均値は食塩相当量で10.4g、同じく女性の平均値は8.5gです[9]。
他の年代の平均値も目標量よりも上回っていることから、多くの方が摂り過ぎていると考えられます。
まずは以下の表を参考に減塩に取り組むようにしましょう。
しょうゆやソースなどの調味料をかける習慣がある場合は、つける習慣に変えるだけでも減塩することができます。
また漬物をよく食べたり汁物をよく飲んだりする場合は、1回の量や頻度を減らすことがポイントです。
麺類の汁を全て飲むとそれだけで1日に必要な塩分をほとんど摂取してしまうため、飲み干さないようにしましょう。
また、血圧を下げるはたらきのある「カリウム」を多く含む野菜や果物を摂ることも重要です。
カリウムを多く含む食べ物について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
毎食1品以上の野菜料理を取り入れ積極的に摂取しましょう。
また肥満の方は高血圧を引き起こしやすいとされているため、ご自身の年齢と活動量に合ったカロリーを把握し食べ過ぎに注意しましょう。
ご自身の食生活で塩分やカロリーなどを摂り過ぎていないか見直し、改善するように努めてくださいね。
1日に必要なカロリーを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
ポイント2 運動する習慣を身に付ける
血圧を正常に保つためには運動する習慣を身に付けることも重要です。
運動は血管を広げて血液循環を良くするため、高血圧や低血圧を改善する効果が期待できます。
高血圧の改善には、ややきついと感じる強度の有酸素運動を1日30分以上できれば毎日行うことが推奨されています[10]。
家事や仕事で忙しくまとまった時間が取れない場合は、短時間の運動を数回することがおすすめです。
連続して運動できなくても、1回につき少なくとも10分以上の運動を1日合計40分以上になるように行っても血圧を下げる効果が期待できます[10]。
また、適度な運動は低血圧の改善にも効果が期待できます。
特に散歩や水中ウォーキングなどといった下半身が鍛えられる運動がおすすめです。
足の筋肉にはポンプのように上半身に血液を送り出すはたらきがあるため、下半身を鍛えると血流が良くなるといわれています。
ただし運動を行う際は、けがや疲労蓄積を予防するために運動前後に「ストレッチ」を行うようにしましょう。
運動する習慣がない方は運動を急に行うと体に負担がかかるため、まずは掃除、洗濯、買い物など日常生活のなかで活動量を増やすことから始めることがおすすめです。
ポイント3 飲酒を控える
血圧を正常に保つためには飲酒量や飲酒頻度に気を付けることも必要です。
過度な飲酒は血圧を上昇させ、高血圧を引き起こす可能性があります。
血圧を正常の範囲内に保つためには、適切な飲酒量を守りましょう。
なお、お酒による体への影響はお酒の量ではなくお酒に含まれる純アルコール量によります。
厚生労働省では純アルコール換算で1日平均約20gを適度な飲酒量としています[11]。
一般的に飲まれるお酒の純アルコール20gに相当する量は以下のとおりです。
また、飲酒量だけではなく休肝日を設けることも重要であるため、週に1日以上は飲酒をしない日を設けるようにしましょう[12]。
また、低血圧の場合は飲酒を控えることが良いとされます。
少量のアルコールは血圧を一時的に低下させる作用があるため、低血圧の方が飲酒するとさらに血圧が低下する可能性があります。
そのため、体調に合わせて飲酒を控えるなどしてくださいね。
2023年に発表された研究結果では、ノンアルコール飲料が飲酒量の減少に有⽤であり、減酒のきっかけにもなる可能性が明らかになりました[13]。
ストレスなく飲酒量を控えるために、ノンアルコール飲料を活用してみるのも良いでしょう。
[11] 厚生労働省「アルコール」
[13] H. Yoshimoto et al. 「Effect of provision of non-alcoholic beverages on alcohol consumption: a randomized controlled study」(BMC Medicine, volume 21, Article number: 379 (2023) )
ポイント4 禁煙をする
高血圧の予防・改善のためには、禁煙するようにしましょう。
たばこは高血圧を引き起こす原因になる他、心臓病や脳卒中のリスクを高めます。
たばこの煙にはニコチン、一酸化炭素、活性酸素などの有害物質が含まれており、この有害物質が血圧を上昇させ動脈硬化を引き起こすとされます。
また、たばこは吸っている本人だけではなく周りにも悪影響を及ぼします。
たばこの煙のなかでもたばこの先から出ている「副流煙」は有害物質が多く含まれています。
近くに喫煙者がいると、ご自身が吸っていなくてもこの副流煙を吸い込んでしまい健康を損なう場合があります。
このように周囲のたばこの煙にさらされることを「受動喫煙」といいます。
実際に、家庭での受動喫煙によって高血圧の発症率が高くなると報告されています[14]。
ご自身だけではなく家族や周りの方の健康を守るために、禁煙に取り組んでいきたいですね。
「長年吸っていたらすでに手遅れじゃない?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、禁煙するのに遅過ぎることはありません。
病気の有無に関係なく、禁煙は病気の予防や改善に効果が期待できるといわれています。
さらに禁煙してから10〜15年経つと、非喫煙者のレベルまで病気のリスクが減少することが分かっています[15]。
しかしたばこには依存性のある物質も含まれるため、ご自身の意志だけを頼りに禁煙を行うのは難しい場合もあるでしょう。
最近では医師の指導による「禁煙外来」や保健師などによる「禁煙支援」もあり、専門家によるサポートや治療薬の使用により禁煙の成功率が高まるといわれています。
禁煙治療は一定の基準を満たすと保険が適用されます。
詳しい条件は厚生労働省のe-ヘルスネット「禁煙治療ってどんなもの?」を確認してください。
自分なりの方法で周りの協力を得ながら禁煙を進めてくださいね。
ポイント5 十分な睡眠と休息をとる
血圧を正常に保つためには、十分な睡眠と休息をとることも重要です。
過剰なストレスは血圧に悪影響を与えます。
ストレスを受けると「交感神経」が活発になり、アドレナリンやノルアドレナリンというホルモンが大量に分泌されます。
アドレナリンは心拍数を高め、ノルアドレナリンは血管を収縮させる作用があり、これらの作用により血圧が上昇することが分かっています。
ストレスの主な原因としては、睡眠不足や過労といったものが挙げられます。
そのため十分な睡眠と休息をとることで、ストレスをためないようにしましょう。
また睡眠不足や不規則な生活によって低血圧が悪化することがあります。
夜更かしをすると低血圧の症状を悪化させるため、生活習慣を整えることを心掛けると良いでしょう。
しかし、ストレスがたまった状態ではすぐに寝付けない場合もありますよね。
なかなか寝られない場合は、眠くなるまで好きな本を読んだり音楽を聴いたりしてリラックスすることがおすすめです。
ポイント6 体調に合わせて入浴を行う
血圧を正常に保つためには入浴も効果的であるため、体調に合わせて入浴を行うことが良いでしょう。
血圧が高めの場合は、ぬるめのお湯につかることがおすすめです。
入浴は精神的にリラックスさせる作用もあるため、ストレス解消にも効果的とされます。
ただし熱いお湯は交感神経を活発にして血圧を上昇させるため、注意が必要です。
一方で低血圧の場合は少し熱めのお湯につかるのが良いとされます。
肩までお湯につかり体を十分に温めることで、血液循環が良くなり症状の改善が見込まれます。
朝起きた際にだるさを感じる場合は、シャワーを浴びて血行を良くするのもおすすめです。
5.30代の正常な血圧についてのまとめ
血圧の正常値はどの年代も同じ値が設定されています。
診察室で測定する場合は、収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満が血圧の正常範囲です[16]。
一方で血圧の平均値は年齢によって異なり、年齢が高くなると血圧が上昇する傾向にあります。
30代の血圧の平均値は男性が収縮期血圧117.3mmHg、拡張期血圧73.7mmHg、女性が収縮期血圧107.9mmHg、拡張期血圧66.3mmHgであり、正常の範囲内であることが分かります[17]。
しかし年齢にかかわらず、食生活や飲酒、喫煙などの生活習慣により血圧が正常値から外れて健康を損なう場合があります。
特に高血圧になると、動脈硬化が進行して重篤な病気を引き起こすリスクが高まります。
また低血圧は高血圧に比較すると深刻な病気に発展するリスクは少ないものの、目まいや立ちくらみといった症状が現れることがあります。
血圧を正常に保つためには、食生活の改善や運動などに取り組むことが重要です。
ご自身の血圧を把握し、血圧を正常に保つ努力をして健康的な毎日を送りましょう。
[16] 厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」
[17] 厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査」