「カロテンってどんな栄養素なんだろう?」
「どんな食べ物からカロテンが摂取できるのかな?」
このように疑問に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
カロテンは緑黄色野菜に多く含まれる色素で、体内でビタミンAに変換される成分の一つです。
カロテンには体内で増え過ぎてしまった活性酸素を取り除く作用があるため、動脈硬化や老化の予防に効果があると考えられています。
カロテンという名前は聞いたことがあっても、どのような効果があるのかということまでは今まであまり知る機会がなかったという方もいらっしゃるでしょう。
この記事ではカロテンの効果や多く含む食材、効率的に摂取するためのポイントなどについて詳しく解説します。
1.カロテンとは
カロテンは緑黄色野菜に多く含まれる「カロテノイド」の一種です。
カロテンのうちβ-カロテン、α-カロテンやγ-カロテン、β-クリプトキサンチンなどは体内でビタミンAに変換されます。
ビタミンAに変換されるカロテンは約50種類*1ありますが、特に効率よく変換されるのがβ-カロテンです。
ビタミンAには目の機能を正常に保ったり、皮膚や粘膜の健康を維持したりするはたらきがあります。
さらに、カロテンは「活性酸素」の発生を抑えたり除去したりする作用のある「抗酸化物質」として、動脈硬化や細胞の老化などを予防することに役立つとされています。
カロテンは私たちの体の中で、ビタミンAに変化したり増え過ぎた活性酸素を除去したりと重要な役割を果たしてくれているのですね。
*1 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
【関連情報】 「カロテノイドとは?体内でのはたらきや摂取源、効率的な摂取法を紹介」についての記事はこちら
2.抗酸化物質カロテンに期待できる効果
「ビタミンAとしてはたらく以外にカロテンにはどんな効果があるの?」
カロテンの効果についてさらに詳しく知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
体内に取り込まれたカロテンは必要とされる量がビタミンAに変換され、残りは抗酸化物質としてはたらくと考えられています。
ここでは、カロテンの抗酸化物質としての効果について解説していきましょう。
効果1 動脈硬化を予防する
カロテンの持つ抗酸化作用により、動脈硬化を予防する効果があるといわれています。
体内に増え過ぎてしまった活性酸素により、血液中の脂質が酸化しやすくなります。
血液中の脂質のなかでも、特に活性酸素の影響を受け酸化しやすいものが悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールです。
LDLコレステロールが活性酸素などによって酸化させられると、動脈硬化の原因となります。
酸化したLDLコレステロールは血管壁を傷つけ、健康な血管が持っている血管の拡張作用を損ないます。
また血管壁に酸化したLDLコレステロールが沈着し、これを異物と見なした免疫細胞が集まって酸化LDLを捕食してそこにたまると、残骸がプラークとなり、動脈硬化を引き起こしてしまうのです。
プラークが破綻して血栓ができると血管が詰まって心臓に負担がかかるため、心筋梗塞や脳梗塞などの原因にもなります。
抗酸化物質であるカロテンを十分に摂取することは、脂質が酸化する原因となる活性酸素の発生を抑えたり除去したりすることにつながるため、動脈硬化が予防できるといえるのですね。
効果2 免疫機能を正常に保つ
カロテンには免疫機能を正常に保つ作用が期待されています。
私たちには、体内にウイルスや病原菌が侵入すると異常を認識し体を守ってくれる防御システム、つまり免疫機能が備わっています。
この免疫機能のためにはたらくのが「免疫細胞」と呼ばれる白血球の仲間です。
免疫細胞は体内に侵入したウイルスなどを攻撃したり体から排除するための抗体を作ったりしています。
そのおかげで、私たちは免疫機能を保っているのです。
しかし、体内で活性酸素が過剰発生してしまうと免疫細胞のはたらきが弱まり、免疫機能の低下につながる可能性があります。
免疫機能を正常に維持するためには、活性酸素を無毒化するカロテンなどの抗酸化物質が重要な役割を果たしているといえますね。
効果3 老化を防止する
過剰に発生した活性酸素により細胞が傷つけられると老化につながってしまいます。
そのため、活性酸素の発生を抑えるとされているカロテンは、老化の防止にも役立つといえるでしょう。
例えば、活性酸素の過剰発生につながる原因の一つが紫外線です。
紫外線を浴びることで肌の細胞が傷つくと、しわやたるみといった肌の老化を引き起こします。
また、活性酸素による血中脂質の酸化で起こる動脈硬化は、血管の老化の原因であるといえます。
活性酸素から受けるダメージを軽減して老化を防止するために、カロテンは重要な役割を担ってくれるといえるのかもしれませんね。
【関連情報】 「老化を予防する乳酸菌」についてもっと知りたい方はこちら
3.カロテンを多く含む食べ物
カロテンといえばにんじんをイメージするという方も多いのではないでしょうか。
しかし、それ以外はあまり思い浮かばないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
カロテンは主に緑黄色野菜に多く含まれています。
緑黄色野菜とは厚生労働省の定義によると「原則として可食部100g当たりβ-カロテン当量が600μg以上のもの」*2です。
ただし、トマトやピーマンなどのようにβ-カロテン当量が基準に当てはまっていない野菜でも、食べる量や頻度が多いことを考慮し緑黄色野菜に分類されているものもあります。
【緑黄色野菜100g当たりのβ-カロテン当量】
食品名 | 加工状態など | β-カロテン当量 |
---|---|---|
モロヘイヤ | 生 | 10,000μg |
にんじん | 皮なし、生 | 7,600μg |
春菊 | 生 | 4,500μg |
ほうれん草 | 生 | 4,200μg |
にら | 生 | 3,500μg |
小松菜 | 生 | 3,100μg |
西洋かぼちゃ | 生 | 2,600μg |
チンゲンサイ | 生 | 2,000μg |
サニーレタス | 生 | 2,000μg |
水菜 | 生 | 1,300μg |
赤ピーマン(パプリカ) | 生 | 1,100μg |
ミニトマト | 生 | 960μg |
ブロッコリー | 生 | 900μg |
トマト | 生 | 540μg |
オクラ | 生 | 520μg |
ピーマン | 生 | 400μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
こうして見てみると、カロテンはいつも食べている身近な野菜に多く含まれているようですね。
よほどの野菜嫌いでなければ日常的にカロテンを摂れていると考えられます。
しかし、摂取量をさらに増やしたいという方は、カロテンを多く含む野菜をより意識して取り入れてみましょう。
*2 厚生労働省「「日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)」の取扱いについて」
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4.カロテンを効率よく摂取するポイント
「カロテンを効率よく摂取するための食べ方ってあるのかな?」
手軽に手に入る野菜に含まれているカロテンですが、どんな食べ方をすればより効率よく摂取できるのか気になっている方も多いかもしれませんね。
ここでは、カロテンを効率よく摂取するためポイントについて説明していきます。
ポイント1 加熱調理する
ゆでる、煮るなどの加熱調理によりカロテンの吸収率をアップさせることができます。
カロテンは主に野菜に多く含まれていますが、野菜の細胞には固い「細胞壁」がありそのままでは栄養成分が吸収されにくい状態にあります。
この細胞壁を加熱により軟らかくして破壊しやすくすることで、カロテンが細胞壁の外に出て、吸収されやすくなるのです。
また、脂溶性色素であるカロテンは油と一緒に摂取することでも吸収が良くなります。
そのため、加熱した野菜にオイル入りのドレッシングをかけたり卵や肉類などの脂質を多く含む食品と一緒に摂ったりすると、よりカロテンの吸収を高めることができるでしょう。
ポイント2 他の抗酸化物質と合わせて摂取する
カロテンと同様に抗酸化作用を持つのがビタミンC、ビタミンEです。
これらの成分を組み合わせて摂取することによる相乗効果で、抗酸化作用が強まるとされています。
緑黄色野菜はカロテンが多い上にビタミンCも豊富です。
そのため、抗酸化作用においては一石二鳥の食品であるといえますが、より効果を高めたいという方はビタミンCが豊富な果物類などを組み合わせて摂取すると良いでしょう。
また、ナッツ類などのビタミンEを豊富に含む食材を加えることでも抗酸化作用が高まることが期待できるため、意識的に取り入れるようにしてみるのもおすすめです。
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5.カロテンについて まとめ
カロテンは、野菜などに含まれる赤色や黄色の色素「カロテノイド」の一種です。
体内で必要に応じてビタミンAに変換されるため、私たちにとって非常に重要な物質でもあります。
また、カロテンは抗酸化物質として動脈硬化や老化の予防に関わったり、免疫機能を維持したりといった役割が期待されています。
主に緑黄色野菜に多く含まれるカロテンを効率よく摂取するポイントは「加熱すること」と「油と一緒に摂ること」です。
さらに抗酸化作用を持つビタミンC、ビタミンEと組み合わせることで、よりその効果を高めることができるといわれています。
この記事を参考に、カロテンを効率良く摂取して健康づくりに活かしてみてくださいね。