「血行不良だとどんな症状が起こるんだろう?」
「血行不良を改善するにはどうしたら良いのかな……」
血行が不良だと体調が悪くなると聞いたことがあっても、どんな不調が起こるのか分からないという方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
血行不良とは、全身を巡る血液の流れが悪くなった状態のことを指します。
血液の流れが滞ると体の細胞に酸素や栄養素、熱などが行き届かなくなり、同時に水分や老廃物が正常に回収されなくなります。
これによって冷えやむくみ、こりなどの症状が出る他、血管の病気をもたらす可能性もあります。
この記事では血行不良になる原因と引き起こされる病気や症状について紹介します。
さらに血行不良を改善・予防するためのポイントも解説します。
体が冷えたり固まったりしていると感じる方は参考にしてみてくださいね。
1.血行とは
「血行って、正確には何を指しているのかな?」
血行という言葉は知っていても、何を意味するか詳しくは分からないという方もいらっしゃるでしょう。
血行とは、血液が体を巡ることです。
血液は呼吸で取り込んだ酸素や食品から吸収した栄養素を体の隅々まで運ぶとともに、二酸化炭素や老廃物を回収して運び出す役割を担っています。
そのため血行不良になると、体に必要な栄養素が行き渡らなくなって老廃物もたまってしまい、さまざまな不調が起こります。
血行を良い状態に保つことは健康上極めて重要だといえるでしょう。
【関連情報】 「血行を促進させる方法とは?生活習慣で気を付けたいポイントを解説」についての記事はこちら
2.血行不良の原因
「血行不良になる原因は何だろう?」
なぜ血行が悪くなってしまうのか、気になりますよね。
血行不良になる原因は以下のようなものがあると考えられています。
そのなかでも特に大きな原因だといわれているのは体の冷えです。
外気温が低いと血管が体温維持のために収縮し、手足への血流を減少させて血液を体の中心に集めようとします。
そのため手先や足先などの末端まで血液が十分に行き渡らなくなってしまいます。
運動不足も血行不良の原因の一つです。
体の筋肉はポンプのようにはたらいて、体を巡っている血液が心臓に戻る手助けをします。
しかし運動不足で筋力が低下していると、このポンプの力が弱くなって血行が悪くなってしまうのです。
またデスクワークや立ち仕事などで長時間同じ姿勢をとり続けた場合も、筋肉が硬くなって血行不良を引き起こします。
水分不足や食生活の乱れも血行不良の原因となります。
水分が足りず体が脱水状態になると、血液の濃度や粘度が高まって血行が悪くなります。
一方で脂質や糖質ばかりを摂取する食生活が続くと、血液内の糖質やコレステロールが増えて血液がドロドロになってしまい、血行が悪くなります。
またストレスをため過ぎると血管の拡張や収縮をコントロールする自律神経のバランスが乱れてしまい、血管が収縮して血行不良に陥る可能性があります。
これ以外にも喫煙やきつい靴・衣服による締め付けなどによって血行不良が引き起こされます。
血行不良になる原因は一つではなく、日々のさまざまな生活習慣が関わっているといえるでしょう。
3.血行不良によって起こる病気や症状
「血行不良はどんな症状や病気をもたらすのだろう……」
血行不良になると体にどのような影響が出るのか、詳しく知りたい方もいらっしゃるでしょう。
血行不良は体の冷えやむくみ、こりなどのつらい症状の原因となる他、血管の病気の原因にもなります。
この章で解説する症状が出た場合は、血行不良の可能性があるため注意が必要です。
3-1.冷え性
血行不良は冷え性の大きな原因となります。
血の巡りが悪いと毛細血管まで温かい血液が十分に届かなくなるため、心臓から遠い手先や足先などの末端を中心に冷えやすくなります。
冷えが続くと風邪や頭痛、下腹部痛などの不調が起こりやすくなってしまいます。
冷えが血行不良の原因となり、血行不良の結果として冷え性になるという悪循環が起こる危険もあるため特に注意が必要です。
3-2.むくみ
下半身の血行が悪いと脚がむくみやすくなります。
下半身の血液はふくらはぎの筋肉がポンプのように収縮して心臓に送り返しています。
しかし長時間同じ姿勢でいるとポンプのはたらきが弱まって血行不良になってしまいます。
その結果炎症が起こって血液の水分が血管外に染み出し、組織の間にたまるとむくみにつながるのです。
3-3.肩こり・腰痛
血行不良は肩こりや腰痛の原因にもなります。
血行不良で血の流れが滞ると、筋肉を動かした際に発生する疲労物質がうまく流れずに停滞してしまいます。
疲労物質が停滞したままたまっていくと、筋肉が緊張したり炎症を起こしたりして痛みが生じやすくなります。
こうした痛みは特に頭を支える首や肩、体の軸となる腰に加え、常に動かしている関節などでも生じます。
3-4.眼精疲労
目が血行不良になると眼精疲労が起こります。
眼精疲労は目がしょぼしょぼしたりかすんだりピントが合わせにくくなったりといった症状に加え、頭痛や肩こり、吐き気なども引き起こします。
特にスマートフォンやパソコンの細かい文字を長時間見続けた場合などは、目の周囲の筋肉が緊張して血行不良となり、眼精疲労につながります。
3-5.肌のトラブル
血行不良は肌のトラブルももたらします。
血液は肌の古い細胞と新しい細胞が入れ替わる「ターンオーバー」に必要な酸素や栄養素を運んでいます。
しかし血行不良になると、十分な酸素や栄養素が細胞に行き渡らなくなってしまいます。
その結果ターンオーバーが乱れて肌荒れや乾燥、シミやシワ、吹き出物といった肌のトラブルが起こりやすくなります。
目の下のクマも血行不良によって起こりますよ。
3-6.血管の病気
血行不良は血管の病気にもつながります。
まず気を付けたいのが脚の静脈がこぶ状に浮き出て見える下肢静脈瘤(りゅう)という病気です。
下肢静脈瘤の原因は静脈にある血液の逆流を防ぐ静脈弁が壊れてしまうことで、血液の循環が滞って老廃物がたまり、炎症が起こります。
静脈弁は運動不足や長時間の立ち仕事などによる血行不良で足に血液がたまり、負担がかかることで壊れることがあります。
また女性では妊娠・出産に伴って壊れるケースもあります。
下肢静脈瘤では脚に痛みやかゆみが生じる他、滞った血液から感染や炎症が起こったり、皮膚がもろくなって出血しやすくなったりすることがあります。
より注意が必要なのが、命の危険があるエコノミークラス症候群です。
エコノミークラス症候群は脚の骨の近くや筋肉の中といった深い部分の静脈に血栓ができ、詰まってしまう病気(深部静脈血栓症)です。
飛行機や車の座席などの狭い場所で長時間足を動かさないまま水分が欠乏すると血行不良になり、エコノミークラス症候群を発症する危険が高まります。
エコノミークラス症候群では血栓が剥がれて流れ、肺の血管に詰まって(急性肺血栓塞栓症)死に至る危険があります。
エコノミークラス症候群になった場合、急速に片方の側の脚がむくんで腫れ上がり、痛みや違和感が現れます。
突然の呼吸困難や胸痛のような症状が起こった場合は直ちに救急車を呼んでください。
4.血行不良を改善するポイント
「血行不良はどうすれば改善できるんだろう……」
血行不良をなんとか改善したいと考えている方は多いのではないでしょうか。
血行不良の原因がさまざまなように、改善方法も一つではありません。
自分で特に思い当たる血行不良の原因に合わせて改善策を選んでみてくださいね。
ポイント1 運動習慣を付ける
血行不良の改善には運動習慣を付けることが効果的です。
これは筋肉が血液をスムーズに流すポンプの役割を担っているためで、しっかり鍛えてポンプの力を維持することで十分な血行が保たれます。
特にふくらはぎは、足の血液を重力に逆らって上へと押し返していることから「第2の心臓」とも呼ばれます。
血行が悪い方は意識してふくらはぎを鍛えるようにしましょう。
運動の時間を取りにくい方は、ふくらはぎの筋肉を使う階段の上り下りを積極的に行うと血行改善が期待できますよ。
また同じ姿勢を続けて硬くなった筋肉をほぐすには、ストレッチで体を動かすことが有効です。
背筋や腕、足を伸ばしたり、体をひねったりするだけでも筋肉はほぐれてくれます。
デスクワークや立ち仕事の合間に、数十分に一度くらいのペースで行ってみましょう。
また、運動習慣のない若い女性を対象とした小規模試験の結果、2週間のウォーキングで冷え性が改善し深い眠りも増加することが報告されました[1]。
運動習慣のない方は少しずつでもよいので、まず軽いウォーキングから始めてみましょう。
[1] Yamazaki F, et al.「A two-week exercise intervention improves cold symptoms and sleep condition in cold-sensitive women」(J Physiol Anthropol. 2023 Sep 29;42(1):22.)
ポイント2 こまめに水分補給する
血行不良の方はこまめに水分を補給してください。
水分は尿として排せつされる他、発汗や呼吸などで常に体から失われていきます。
体の水分が不足すると血液の濃度や粘度が高まり、ドロドロになって血行不良になります。
そのためこまめな水分補給を行うようにしましょう。
汗をかきやすい夏場はもちろん冬場でも水分は失われるため、毎日しっかり水分を摂る習慣を付けましょう。
水分はお茶やコーヒーではなく常温の水で、起きてすぐや運動の前後、入浴の前後や寝る前などに細かく摂ると効果的です。
ポイント3 入浴する
血行不良の方はシャワーだけで済まさず湯船につかる習慣を付けましょう。
温かい湯船につかると体が温まり、血管が広がるため血行が改善します。
それだけでなく、お湯の水圧が手先や足先にたまった血液も押し流してくれます。
お湯の温度はぬるめにして、じっくり時間をかけて温まると効果的ですよ。
また入浴後は湯冷めしないようすぐに体を拭き、服を着て保温に努めてくださいね。
入浴すると汗をかくため水分補給も忘れないようにしましょう。
ポイント4 バランスの良い食事を摂る
血行の悪い方はバランスの良い食事を摂るよう心掛けてください。
肉類や揚げ物、お菓子やジャンクフードのような脂質や糖質の多い物ばかり食べると、血液内の糖質やコレステロールが増えてドロドロになり、血行不良になります。
こうした食品を摂取しがちな方は意識して控えると良いでしょう。
ポイント5 きつい靴や衣類を避ける
血行不良を改善するには、きつい靴や衣服の着用を極力避けるようにしましょう。
ハイヒールなどのかかとの高い靴や締め付けの強い靴は足の血流を妨げ、血行不良の原因になります。
可能であれば仕事場でスニーカーやサンダル、スリッパのような足を締め付けない靴に履き替え、負担を減らしましょう。
またきつめのブラジャーやガードルなどの補整下着をはじめ、体を締め付ける衣服の着用も血行不良につながります。
できる限りゆったりとした服装を心掛け、ベルトも締め過ぎないようにしましょう。
ポイント6 禁煙する
血行不良を改善するには禁煙しましょう。
たばこに含まれるニコチンには血管を収縮させるはたらきがあるため、血行不良の大きな原因となります。
また喫煙では大量の一酸化炭素を吸い込むため酸欠状態となり、赤血球が増えて血がドロドロになってしまいます。
たばこは血行に対して極めて大きな悪影響を及ぼすといえるでしょう。
加えてたばこの害は受動喫煙という形で周囲にまで及ぶため、速やかな禁煙が強く求められます。
禁煙の方法については以下の記事で詳しく解説しています。
禁煙の効果とは?健康への影響や禁煙するための方法を詳しく解説
5.血行不良についてのまとめ
血行は血液が体を巡ることで、血行不良とはその血液の巡りが滞ることです。
血行不良は冷えや運動不足、食生活の乱れや水分不足、ストレスや喫煙などさまざまな原因で起こります。
血行不良になると、酸素や栄養素を全身に運び二酸化炭素や老廃物を回収するという血液のはたらきが十分行えなくなります。
そのため冷えやむくみ、肩こり・腰痛や眼精疲労、肌のトラブルなど多くの体調不良を引き起こし、血管の病気の引き金にもなります。
血行不良を改善するには運動や入浴の習慣を付け、十分な水分補給とバランスの良い食事を心掛けると共に、きつい靴や衣服を避けて禁煙しましょう。
自分の血行不良の原因が何かを知り、改善するための参考にしてくださいね。