脂溶性ビタミンとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源の食品を紹介

2024年09月26日

2024年11月11日

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「脂溶性ビタミンってどんなビタミンなんだろう?」

「脂溶性ビタミンはどんな食べ物から摂取できるのかな?」

ビタミンという言葉はよく見聞きするものですが、脂溶性ビタミンとは何かまでは詳しく知らないという方も多いでしょう。

脂溶性ビタミンは水に溶けにくく油や一種dルコールに溶けやすいビタミンで、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの四つが該当します

体に必要な栄養素ですが、肝臓や脂肪細胞に蓄積されるという性質から、摂取し過ぎると過剰症を引き起こす恐れがあるので注意が必要です。

この記事では脂溶性ビタミンそれぞれのはたらきや過不足による影響、適切な摂取量や豊富に含む食品などについて詳しく説明します。

1.脂溶性ビタミンとは?

「脂溶性ビタミンって、ビタミンのなかでもどんなもののことをいうの?」

このように気になる方もいらっしゃいますよね。

脂溶性ビタミンとはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類のビタミンのことです。

そもそもビタミンとは、糖質、脂質、たんぱく質の代謝を円滑にする作用を持つ、人体の機能を正常に保つために必要な栄養素です。

ビタミンはヒトの体内では合成できないか、できても十分ではないため、食事から摂取する必要があります。

またビタミンは全13種あり、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」と水に溶けやすい「水溶性ビタミン」に分けられます。

ビタミンの種類

脂溶性ビタミンは水に溶けにくく、油やアルコールに溶けるという性質を持っています。

水に溶けにくい脂溶性ビタミンは尿を通じて排せつされることがなく、体内の肝臓や脂肪組織に蓄えられるため、摂り過ぎると体の不調を招く恐れがあります

一般的な食事で脂溶性ビタミンを過剰に摂取することはありませんが、サプリメント、ビタミン剤のなどの過剰摂取には注意が必要です。

メモ
水溶性ビタミンは摂り過ぎると尿を通じて排せつされるため過剰摂取による不調は起こりにくいといわれています。

また、脂溶性ビタミンには油に溶けることで吸収率が上がるという性質があります。

このため脂溶性ビタミンを含む食品を摂る際には、炒め物や揚げ物など油を使った調理方法がおすすめだといえます。

次章からは各脂溶性ビタミンのはたらきや過不足による影響、食事摂取基準や豊富に含む食品などを紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

メモ
食事摂取基準とは厚生労働省が国民の健康の保持・増進や生活習慣病予防を目的とし、健康な人を対象に設定した1日当たりのエネルギー(カロリー)や栄養素の摂取量の基準のことです。

【関連情報】 「ビタミンとは?13種類のビタミンのはたらきと食事摂取基準を紹介」についての記事はこちら

2.脂溶性ビタミンのはたらき

「脂溶性ビタミンはそれぞれどんなはたらきを持っているのかな?」

脂溶性ビタミンであるビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類それぞれがどのようなはたらきを持つのかは気になるポイントですよね。

4種の脂溶性ビタミンはそれぞれ異なるはたらきを持っています

この章ではビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKそれぞれのはたらきについて詳しくご紹介します。

【脂溶性ビタミンの主なはたらき】
ビタミンAのはたらき ・目の正常な機能を維持する
・皮膚や粘膜を正常に保つ
・抗酸化作用
ビタミンDのはたらき ・骨を健康に保つ
ビタミンEのはたらき ・体内の脂肪の酸化を防ぐ(抗酸化作用)
・血行を促進させる
ビタミンKのはたらき ・血液の凝固に関与する
・骨の健康を維持する
・動脈の石灰化を抑制する

2-1.ビタミンAのはたらき

ビタミンAのはたらき

ビタミンAは目の正常な機能を維持するために欠かせない栄養素です。

また、皮膚や粘膜を正常に保ったり、成長や分化に関わったりするはたらきもあります。

さらにビタミンAには抗酸化作用もあるといわれています。

抗酸化作用とは
活性酸素のはたらきを抑える作用のことです。活性酸素は呼吸で取り込まれた酸素が体内で通常より活性化されたものです。微量であれば免疫機能などとして有用にはたらきますが、増え過ぎると細胞を傷つけ、老化や免疫機能の低下、がん、動脈硬化などの原因となります。

なお経口摂取されビタミンAとしてはたらく物質には、レチノールとして食品に含まれるものの他、体内でビタミンAに変換される約50種類の「プロビタミンA」と呼ばれる物質があります[1]。

このため食品のビタミンA含有量はレチノールとプロビタミンAから変換されるビタミンAを合わせた「レチノール活性当量(単位:RAE)」で表されます

プロビタミンAのなかでは、緑黄色野菜などに含まれている赤や黄色の色素である「カロテノイド」がよく知られています。

カロテノイドとは
天然に存在する黄色または赤色の脂溶性の色素成分で、「カロテン類」と「キサントフィル類」に大別されます。カロテン類の代表的なものには緑黄色野菜に多いβ-カロテンやトマトのリコピンなどがあります。またキサントフィル類にはみかんに含まれるβ-クリプトキサンチンなどがあります。

ビタミンAになるカロテンのうち、最も効率良く変換されるのが「β-カロテン」で、プロビタミンAとしてのはたらき以外に抗酸化作用も持つことが知られています。

メモ
同じプロビタミンAであるα-カロテンやβ-クリプトキサンチンと比較したとき、β-カロテンの変換率は2倍にもなります[1]。

[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-2.ビタミンDのはたらき

ビタミンDのはたらき

ビタミンDは骨の代謝に関わる重要な栄養素で、骨を健康に保つはたらきがあります

食品から摂取するほか、ヒトを含め動物の皮膚は紫外線を浴びることにより体内でビタミンDを合成できるのです。

また、ビタミンDはカルシウムやリンなどのミネラルの吸収を促進するはたらきを持ちます。

カルシウムが骨や歯をつくる成分であることは広く知られていますが、リンもカルシウムと同じく骨格を形成するはたらきを持つ栄養素なのです。

このためカルシウムやリンなどのミネラルを含む食品を摂取する際には、ビタミンDを含む食品を併せて摂るのがおすすめだといえます。

ネラルについては、以下の記事で豊富に含まれる食品など詳細を紹介しています。

ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介

2-3.ビタミンEのはたらき

ビタミンEのはたらき

ビタミンEには体内の脂肪の酸化を防ぐ抗酸化作用や、血行を促進させるはたらきがあります

ビタミンEは「抗酸化ビタミン」と呼ばれており、がんや生活習慣病の原因となる活性酸素から体を守ってくれるのです。

抗酸化ビタミンとは
活性酸素のはたらきを抑える作用を持つビタミンのことをいいます。ビタミンA、ビタミンCなどもこれに該当します。

またビタミンEは末梢血管の拡張に関わっているため、血行不良の改善など血管を健康に保つはたらきがあります。

ビタミンEはがんのような大きな病気を予防する上でも、身近な悩みの種となる血行不良を防ぐ上でも重要なはたらきをしてくれる栄養素なのですね。

2-4.ビタミンKのはたらき

ビタミンKのはたらき

天然に存在するビタミンKは植物性食品などに含まれるビタミンK1と動物性食品に広く含まれ、腸内細菌によっても合成されるビタミンK2に分けられます。

メモ
天然には存在しないビタミンK3は大量摂取すると毒性が見られるため使用は禁止されています。

ビタミンKは血液の凝固に深く関わる他、骨の健康の維持や動脈の石灰化の抑制といったはたらきを持つビタミンです。

ビタミンKは血液を凝固させるはたらきを持つ「プロトロンビン」を活性化させることで、血液の凝固を促進させます。

けがなどで出血した際に血が止まるのは、このはたらきによるものです。

またビタミンDと同じく、ビタミンKも骨の健康維持に関わります

ビタミンKには骨を形成するたんぱく質「オステオカルシン」を活性化させ、カルシウムを骨に取り込ませるはたらきがあります。

このため、ビタミンK剤は「骨粗しょう症」の治療薬としても処方されています

骨粗しょう症とは
骨密度の低下により骨がもろくなってしまい、骨折しやすくなる病気です。骨粗しょう症の原因には、加齢、女性ホルモンの減少、骨の形成に関わるカルシウムやビタミンDなどの不足や運動不足などが考えられています。

さらにビタミンKには、動脈(血管)の内側にカルシウムが沈着して硬くなってしまう「石灰化」を抑制する作用があります

ビタミンKは血管や骨の健康のために重要な栄養素なのですね。

3.脂溶性ビタミンの欠乏症と過剰症

「脂溶性ビタミンが足りないとどうなってしまうの?」

「反対に摂り過ぎてしまっても体に悪影響があるのかな?」

脂溶性ビタミンが足りなかったり、反対に過剰に摂取してしまったりした場合の影響が気になるという方もいらっしゃいますよね。

不足ももちろん意識すべき点ですが、水溶性ビタミンと比べると脂溶性ビタミンは過剰摂取にも注意が必要です。

過剰に摂取した分が尿とともに排泄される水溶性ビタミンと異なり、脂溶性ビタミンは肝臓や脂肪組織に蓄積されます。

脂溶性ビタミンが過剰に蓄積された状態が続くと、過剰症を引き起こしてしまう場合があるのです。

この章では脂溶性ビタミンそれぞれの欠乏症と過剰症について詳しく解説していきます。

3-1.ビタミンAの欠乏症と過剰症

通常の食事をしている方は、ビタミンAの欠乏症に陥る心配はほぼありません。

しかしビタミンAが不足すると目の粘膜や角膜がダメージを受け、夜盲症を引き起こしたり、最悪の場合は失明に至ったりします

メモ
夜盲症とは、明るいところから暗いところに移動した際に目が暗さに慣れず、暗いところでものが見えにくくなる病気です。

また皮膚や粘膜の乾燥、免疫機能が低下などを引き起こす場合もあります。

一方、ビタミンAの過剰症は通常の食生活ではあまり起こらないとされています。

メモ
皮膚にカロテンの色素が沈着し黄染する「柑皮症」という症状が起こることがあります。柑皮症というとなじみがないかもしれませんが、みかんなど柑橘類を食べ過ぎた際に手足が黄色くなることをご存じの方も多いでしょう。柑皮症は黄疸に間違われる場合もありますが、健康に害はありません。

ただしサプリメントからプロビタミンAの一種であるβ-カロテンを多量に摂取した際には、人体に有害な作用がはたらくことがあります

ビタミンAの過剰症には吐き気や頭痛、目まい、目のかすみや脱毛などがあります。

また子どもがビタミンAを過剰に摂取した場合には頭蓋内や骨格の異常、妊娠中の場合には胎児の奇形が生じる可能性があります。

通常の食生活では心配はないものの、ビタミンAの不足や過剰摂取はヒトの体に悪影響を及ぼします。

3-2.ビタミンDの欠乏症と過剰症

ビタミンDが不足すると骨をつくるカルシウムの吸収率が低下するため骨の健康を損ねる恐れがあります

ビタミンD不足は強度の不十分な弱い骨ができてしまう「骨軟化症」という病気を引き起こします。

メモ
骨軟化症は身長の伸び止まった成人で起こった場合の病名で、小児で起こった場合は「くる病」と呼びます。

またビタミンDはカルシウムの吸収を促進するため、不足すると骨粗しょう症のリスクが高まるともいわれています。

この他に、ビタミンDの欠乏症として「低カルシウム血症」が生じる可能性もあります。

低カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が極度に低い状態のことです。

低カルシウム血症が進行すると強い痛みを伴う筋肉のけいれんが多く見られます。

また身体的な症状のみならず、錯乱や抑うつ、忘れっぽくなるなどの症状が現れることもあります。

一方、ビタミンDを摂り過ぎると過剰症の一つとして血液中のカルシウム濃度が高くなってしまう「高カルシウム血症」が生じる場合があります。

高カルシウム血症では多尿や頻尿を引き起こす腎機能障害、吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振などの症状が見られます。

また重度の高カルシウム血症は昏睡(こんすい)を伴った脳の機能障害や筋力の低下を引き起こす場合もあり、最悪の場合には死に至るため十分に注意が必要です。

3-3.ビタミンEの欠乏症と過剰症

ビタミンEが不足すると、神経や筋肉に障害を来す場合があります。

ただしビタミンEの不足による不調は、ヒトではほとんど見られません

また通常の食生活を送っていれば過剰症の心配もありません。

ただしサプリメントの大量摂取による過剰摂取は出血のリスクや死亡率を高めるともいわれているため注意が必要です。

通常の食事でビタミンEが過不足することはまれですが、体に必要な栄養素なので適宜摂取することを心掛けましょう。

3-4.ビタミンKの欠乏症と過剰症

ビタミンKの欠乏症は主に血液や骨に関係する症状として現れます。

血液が凝固しにくくなる、鼻血や内臓からの出血、血尿、月経過多といった症状が見られます。

また慢性的なビタミンK不足は骨粗しょう症や骨折を引き起こす原因となるため、十分に注意が必要です。

ビタミンK不足の原因には摂取不足の他、長期にわたる抗生物質の投与により腸内細菌からのビタミンK供給が減少することが挙げられます。

また慢性の胆道閉塞や脂肪吸収不全、肝臓病といった病気がある場合にもビタミンK不足が起こる可能性があります。

ただし一般的な食生活を送っていれば、ビタミンKの不足による不調はほとんど起こらないといわれています。

一方、ビタミンKの過剰症はビタミンK1やK2では起こらないといわれています。

次章でビタミンKを含む脂溶性ビタミンの食事摂取基準を紹介するので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

4.脂溶性ビタミンの食事摂取基準

「脂溶性ビタミンはそれぞれ毎日どれくらい摂れば良いんだろう?」

それぞれの脂溶性ビタミンを毎日どれくらい摂取すれば良いか、気になりますよね。

この章ではビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの脂溶性ビタミン4種の食事摂取基準の一部を紹介します。

また5章では具体的な食品と各ビタミンの含有量を紹介しているので、併せて日々の食事の目安としてみてくださいね。

本記事では18歳以上の男女の食事摂取基準をご紹介します。未成年の方は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の「乳児・小児」の項、妊娠中・授乳中の方は「妊婦・授乳婦」の項をご覧ください。

乳児・小児

妊婦・授乳婦

4-1.ビタミンAの目安量および耐容上限量

成人のビタミンAの目安量および耐容上限量は以下のとおりです。

なお、目安量とは一定の栄養状態を維持するのに十分な量のことです。

また耐容上限量は過剰摂取による健康障害の回避のために設定された基準値です。

【ビタミンAの目安量および耐容上限量 (μgRAE/日)】
年齢 男性 女性
目安量 耐容上限量 目安量 耐容上限量
18~29歳
850
2,700
650
2,700
30~49歳
900
2,700
700
2,700
50~64歳
900
2,700
700
2,700
65~74歳
850
2,700
700
2,700
75歳以上
800
2,700
650
2,700

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

ビタミンAを摂取する際の参考にしてくださいね。

4-2.ビタミンDの目安量および耐容上限量

成人のビタミンDの目安量および耐容上限量は以下のとおりです。

【ビタミン D の目安量および耐容上限量 (μg/日)】
年齢 男性 女性
目安量 耐容上限量 目安量 耐容上限量
18~29歳
8.5
100
8.5
100
30~49歳
8.5
100
8.5
100
50~64歳
8.5
100
8.5
100
65~74歳
8.5
100
8.5
100
75歳以上
8.5
100
8.5
100

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

ビタミンDを過不足なく摂取するよう心掛けましょう。

4-3.ビタミンEの目安量および耐容上限量

成人のビタミンEの目安量と耐容上限量は以下のとおりです。

【ビタミンEの目安量および耐容上限量 (mg/日)】
年齢 男性 女性
目安量 耐容上限量 目安量 耐容上限量
18~29歳
6.0
850
5.0
650
30~49歳
6.0
900
5.5
700
50~64歳
7.0
850
6.0
700
65~74歳
7.0
850
6.5
650
75歳以上
6.5
750
6.5
650

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

メモ
ビタミンEは4種のトコフェロールと4種のトコトリエノールの合計8種類の化合物の総称です。トコフェロールにはα、β、γ、δがあり、ヒトの血液や組織中に存在するビタミンEの大部分はα-トコフェロールが占めています。このことから厚生労働省が定めるビタミンEの食事摂取基準はα-トコフェロールのみを指標としています。

ビタミンEを摂取する際に意識してみてくださいね。

4-4.ビタミンKの目安量

ビタミンKには耐容上限量の設定はありません。目安量は以下のとおりです。

【ビタミンKの目安量μg/日)】
年齢 男性 女性
18~29歳
150
150
30~49歳
150
150
50~64歳
150
150
65~74歳
150
150
75歳以上
150
150

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

ビタミンKを十分に摂取するよう心掛けましょう。

5.脂溶性ビタミンの摂取源となる食品

「脂溶性ビタミンはそれぞれどんな食品から摂取できるの?」

「脂溶性ビタミンを豊富に含んでいて、毎日の食事に取り入れやすいものはないかな?」

それぞれの脂溶性ビタミンがどのような食品から摂取できるのかが気になりますよね。

また日々の食事に取り入れやすい食品が知りたいと考えている方いらっしゃるでしょう。

この章ではビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKを豊富に含む食品をご紹介します。

メモ
この章でご紹介する食品は、食品表示基準にのっとって100g当たりまたは100kcal当たりの含有量が「含まれる」または「豊富である」と表現できるものです[2]。

[2] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック 食品表示基準に基づく栄養成分表示の方法等

5-1.ビタミンAの摂取源となる食品

まな板の上の人参

ビタミンAの主な成分であるレチノールは動物性食品の、特に卵やレバーなど肝臓に多く含まれています

また、体内でビタミンAとなるカロテノイド(α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンなど)は植物性食品の、特に緑黄色野菜に多く含まれます

具体的にどのような食品にどれだけのビタミンAが含まれるのか、表で確認してみましょう。

【ビタミンAを含む動物性食品と可食部100g当たりのビタミンA含有量(レチノール活性当量)】
食品名 加工状態など 含有量
鶏レバー
14,000μg
豚レバー
13,000μg
あんこう(肝)
8,300μg
ほたるいか
1,500μg
うなぎ
蒲焼き
1,500μg
発酵バター(有塩)
発酵バター
780μg
卵(卵黄)
690μg
有塩バター
無発酵バター
520μg
あなご
500μg
あゆ(養殖)
焼き
480μg
わかさぎ
つくだ煮
460μg
いわし(たたみいわし)
410μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

動物性食品のなかでは特にレバーが多くのビタミンAを含んでいます

カロテノイドを豊富に含むにらと併せ、脂溶性ビタミンの吸収率を上げる油炒めにすると良いでしょう。

またビタミンAは魚類にも含まれており、うなぎの蒲焼きやわかさぎの佃煮などの加工された食品からも簡単に摂取することができますよ。

それでは次に、ビタミンAを豊富に含む植物性食品を見ていきましょう。

【ビタミンAを含む植物性食品と可食部100g当たりのビタミンA含有量(レチノール活性当量)】
食品名 加工状態など 含有量
焼きのり(あまのり)
焼きのり
2,300μg
あおのり
素干し
1,700μg
とうがらし
乾燥
1,500μg
しそ
880μg
モロヘイヤ
840μg
にんじん
720μg
わかめ(板わかめ)
乾燥
710μg
パセリ
620μg
バジル
520μg
あんず
乾燥
410μg
しゅんぎく
380μg
ほうれんそう
350μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

この表から、ビタミンAは海苔などの藻類や緑黄色野菜に多く含まれているのが分かりますね。

焼き海苔は手軽に食事にプラスできるのでおすすめです。

納豆や冷や奴などの副菜に刻み海苔をかけるだけでも簡単にビタミンAを摂取できますよ。

また、しそは薬味としても使い勝手が良いため普段の食事にも取り入れやすいでしょう。

モロヘイヤはなじみがない方もいらっしゃるかもしれませんが、おひたしなどで食べられることが多い食品です。

β-カロテンは加熱調理することで吸収性が高まるため、おひたしのような火を通す調理方法はおすすめです。

ほかにもにんじんやほうれんそう、しゅんぎくなど、ビタミンAを豊富に含む食品はたくさんあるので、ぜひ毎日の献立に取り入れてみてくださいね。

5-2.ビタミンDの摂取源となる食品

ザルにのった煮干し

「ビタミン」と聞くと、果物や野菜をイメージする方も少なくないですよね。

しかしビタミンDは野菜や果物にはほとんど含まれておらず、魚類や魚の内臓、魚卵、きのこ類に多く含まれています

具体的にどのような食品にどれだけのビタミンDが含まれるのでしょうか。

まずはビタミンDを豊富に含む動物性食品から見ていきましょう。

【ビタミンDを含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
塩辛(かつお)
-
120.0μg
あんこう(肝)
110.0μg
しらす干し
半乾燥
61.0μg
丸干しいわし(まいわし)
乾燥
50.0μg
いくら
44.0μg
紅鮭
33.0μg
さんま
16.0μg
まがれい
13.0μg
卵黄
12.0μg
さば缶詰(水煮)
-
11.0μg
ぶり
8.0μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

魚類ではかつおの塩辛やしらす干しなどがビタミンDを多く含んでいます

どちらも一度の食事で食べられる量は多くはないですが、このようなあらかじめ加工された形で売られているものからでも手軽に摂取することができるのはうれしいですよね。

またさばの缶詰(水煮)も比較的多くのビタミンDが含まれているので、魚を調理する機会が少ないという方でも気軽に摂取できますよ。

【ビタミンDを含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
きくらげ(あらきくらげ)
乾燥
130.0μg
干ししいたけ
乾燥
17.0μg
まいたけ
4.9μg
エリンギ
1.2μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

特にきくらげはきのこ類のなかでも多くのビタミンDを含んでいます

ビタミンDの他にも鉄分やビタミンB2、カルシウム、食物繊維を含んでおり、また低カロリーであるため、積極的に摂取したい食品です。

特にもどしたきくらげを油炒めにする調理方法がおすすめですよ。

同じきのこ類であるしいたけは、紫外線にあたるとビタミンDが増えます

干ししいたけでも調理前にもう一度日光に当てることで、より多くのビタミンDが得られますよ。

魚類やきのこ類を意識して普段の食事に取り入れ、ビタミンDの適切な摂取を心掛けましょう。

5-3.ビタミンEの摂取源となる食品

スプーンですくったオイル

ビタミンEは主に植物性油やナッツ類に多く含まれます

具体的にどのような食品にどれだけのビタミンEが含まれているのかを表で見てみましょう。

メモ
厚生労働省が定めるビタミンEの食事摂取基準はα-トコフェロールのみを指標としています。

まずはビタミンEを豊富に含む動物性食品から紹介します。

【ビタミンE(α-トコフェロール)を含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
あんこう(肝)
14.0mg
すじこ
11.0mg
まぐろフレーク(油漬け/ホワイト)
缶詰
8.3mg
いわし缶詰(油漬け)
缶詰
8.2mg
さくらえび
素干し
7.2mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

ビタミンEは魚肉のみでなく、あんこうの肝やすじこといった魚卵にも多く含まれます

まぐろフレークはいわゆる「ツナ缶」として売られているものです。

パンに挟んだり、サラダや和え物にしたりなどアレンジの幅が広く、食卓に取り入れやすいためおすすめですよ。

次に、ビタミンEを豊富に含む植物性食品を見ていきましょう。

【ビタミンE(α-トコフェロール)を含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
ひまわり油
-
39.0mg
アーモンド
乾燥
30.0mg
とうがらし
乾燥
30.0mg
サフラワー油(べに花油)
-
27.0mg
ドライトマト
乾燥
18.0mg
なたね油
-
15.0mg
落花生
乾燥
11.0mg
オリーブオイル
-
7.4mg
たらこ
7.1mg
モロヘイヤ
6.5mg
西洋かぼちゃ
3.9mg
アボカド
3.3mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

ビタミンEは植物性油に多く含まれているため、炒めものやオリーブオイルなどを使用したドレッシングからでも、手軽にビタミンEを摂取できますよ。

ほかにもアーモンドや落花生(ピーナツ)にも、ビタミンEが豊富に含まれています

間食やお酒のおつまみをアーモンドやピーナツにするだけでも、手軽にビタミンEが補えますね。

注意!
ビタミンEは光に弱いため、ビタミンEを豊富に含む食品を保存する際には太陽光など光を避けて保存しましょう。

5-4.ビタミンKの摂取源となる食品

パックの納豆

ビタミンKは緑黄色野菜や藻類や豆類に多く含まれています

具体的にどのような食品にどれくらいのビタミンKが含まれているのかを表で見てみましょう。

【ビタミンKを含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
鶏皮(親どり・もも)
120μg
鶏皮(親どり・むね)
110μg
鶏肉(親どり・手羽皮付き)
70μg
鶏もも肉(親どり・皮付き)
62μg
鶏ハツ(心臓)
51μg
鶏むね肉(親どり・皮付き)
50μg
鶏肉(若どリ・手羽先皮付き )
45μg
まぐろフレーク
缶詰
44μg
鶏肉(若どリ・手羽皮付き)
42μg
鶏肉(若どリ・手羽もと皮付き)
39μg
卵(鶏卵・卵黄)
39μg
うに
27μg
鶏ひき肉
26μg
牛肉(もも・かた)
23μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

ビタミンK含有量の多い動物性食品としては主に鶏肉が挙げられます。

特に皮の部分に多く含まれているため、皮ごと調理するのがおすすめですよ。

次にビタミンKを豊富に含む植物性食品を見ていきましょう。

【ビタミンKを含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
抹茶
粉末
2,900μg
あまのり
干し
2,600μg
板わかめ
乾燥
1,800μg
いわのり
素干し
1,700μg
青汁(ケール)
-
1,500μg
わかめ
乾燥
890μg
納豆(糸引き)
-
870μg
パセリ
850μg
乾燥わかめ
素干し
890μg
しそ
690μg
のり(あまのり)
味付けのり
650μg
モロヘイヤ
640μg
ひじき
乾燥
580μg
つるむらさき
350μg
ほうれんそう
270μg
しゅんぎく
250μg
みつば(糸みつば)
220μg
ブロッコリー
210μg
こまつな
210μg
大豆油
-
210μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

ビタミンKは動物性食品よりも植物性食品に多く含まれています

海苔やわかめといった藻類、パセリやしそ、モロヘイヤやほうれんそうなどの緑黄色野菜が目立ちますね。

他にも、食事に取り入れやすい食品としては納豆が挙げられます

そのままでもおかずの一品になりますし、ひきわり納豆であればおみそ汁やあえ物に入れるといったアレンジもできますよ。

ビタミンKを豊富に含む食品は数が多いので、バリエーションを楽しみながら日々の食事に取り入れてみましょう。

6.脂溶性ビタミンについてのまとめ

脂溶性ビタミンは水に溶けにくく油脂やアルコールに溶ける性質を持つビタミンの総称です。

ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが該当します

脂溶性ビタミンは、それぞれが以下のような特徴を持ちます。

ビタミンAは目・皮膚の正常な機能を保つはたらきを持ち、また抗酸化作用があります

抗酸化作用は動脈硬化・がん・老化・免疫機能の低下の原因となる「活性酸素」のはたらきを抑える作用です。

ビタミンDはカルシウムやリンの吸収を促進し、骨の健康を維持するために必要なビタミンです。

食品から摂取できる他、紫外線を浴びることでも体内でも合成できます。

ビタミンEは強い抗酸化作用を持ち、また血行を促進するはたらきがあります

末梢血管の拡張に関わっているため、血行不良の改善など血管を健康に保ってくれますよ。

ビタミンKは血液の凝固や骨の健康維持に関与し、また動脈の石灰化を抑制します。

出血があった際に血液を止める作用や、カルシウムを骨に取り込むというはたらきを持っているのです。

このように脂溶性ビタミンのはたらきは、どれもヒトの体にとっては欠かせないものです。

一方で脂溶性ビタミンは肝臓や脂肪組織に蓄積されやすいため、サプリメントやなどでの過剰摂取には注意が必要です。

日々の食事から脂溶性ビタミンを過不足なく摂取して、健康の維持・促進に努めたいものですね。

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