水溶性ビタミンとは?9種類のビタミンのはたらきや食事摂取基準

2024年05月02日

2024年09月27日

「水溶性ビタミンって何だろう?」

水溶性ビタミンという言葉を見聞きしたことはあっても、具体的にどのビタミンが該当するのか、それぞれのビタミンにどんなはたらきがあるのかといったことはよくご存じない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

水溶性ビタミンはビタミンのうち、水に溶けやすく油に溶けにくい性質を持つものの総称です。

8種類から成るビタミンB群とビタミンCが該当します。

水溶性ビタミンはそれぞれに異なるはたらきを持ちますがいずれも体に欠かせないものです。

この記事では水溶性ビタミンの種類やはたらき、過不足による影響、食事摂取基準などを解説します。

目次

1.水溶性ビタミンの定義と種類

カラフルなくだもの類

「水溶性ビタミンにはどんなものがあるのかな?」

このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ビタミンという言葉には比較的なじみがありますが、具体的にどんな種類があるのか、それぞれどんな特徴があるのかということについてはなかなか知る機会がないものですよね。

水溶性ビタミンについて説明するために、まずはビタミンについて簡単に解説しましょう。

ビタミンとはヒトの体の機能を正常に保つために必要な「有機化合物」の総称です。

メモ
有機化合物とは、炭素を元素結合の中心とした化合物の総称です。ただし炭素の酸化物、硫化物、炭酸塩、シアン化合物などは無機化合物に分類されます。

ビタミンは全部で13種類あり[1]、それぞれが体内のさまざまな代謝に関わっています。

代謝とは
体内で栄養素を生命の維持に必要な物質やエネルギーに変える化学反応のことです。

ビタミンは体内で合成できないか、合成できたとしても量が十分でないため、食事から摂取する必要があります

いずれも不足すると体に不調を来す恐れがあるため要注意です。

ビタミンはその性質の違いから「水溶性ビタミン」と「脂溶性ビタミン」に分けられます

水溶性ビタミンはビタミンのうち水に溶けやすく油に溶けにくいもののことです。

ビタミンB群(ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン)、ビタミンCの9種類が該当します[1]。

体内では血液などの体液に溶け込んでおり、摂り過ぎても体内には蓄積されず、尿として排せつされます。

このため水溶性ビタミンの過剰摂取による不調が起こる心配はあまりない一方で、毎日一定の量を摂取することが理想的だといわれています。

次の章からは、水溶性ビタミンのはたらきや摂取すべき基準となる量、摂取源について順にご説明しましょう。

メモ
油に溶けやすく水に溶けない性質を持つ脂溶性ビタミンにはビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類があります[1]。体内では脂肪や肝臓に蓄えられており、摂り過ぎると体に不調を来す恐れがあるので要注意です。

[1] 厚生労働省 e-ヘルスネット「ビタミン

【関連情報】 「ビタミンとは?13種類のビタミンのはたらきと食事摂取基準を紹介」についての記事はこちら

2.水溶性ビタミンのはたらき

「水溶性ビタミンにはどんなはたらきがあるんだろう?」

9種類ある水溶性ビタミンが体内でどのように作用しているのか、知っておきたいものですよね。

一口に水溶性ビタミンといっても、はたらきはそれぞれに異なります。

ここでは水溶性ビタミンそれぞれのはたらきをご紹介しましょう。

【水溶性ビタミンの主なはたらき】
種類 主なはたらき
ビタミンB1 ・糖質からのエネルギー代謝に関わる
・皮膚や粘膜の健康維持に関わる
ビタミンB2 ・エネルギー代謝に関わる
・成長を促進する
・皮膚や粘膜を保護する
ナイアシン ・脂肪酸の合成、ステロイドホルモンの合成などに関わる
・「活性酸素」に対抗するはたらきに関わる
・皮膚や粘膜の健康維持に関わる
ビタミンB6 ・たんぱく質の代謝に関わる
・免疫機能の維持に関わる
・皮膚や粘膜の健康維持に関わる
ビタミンB12 ・アミノ酸や脂質の代謝に関わる
・赤血球の形成を助ける
葉酸 ・アミノ酸の代謝やたんぱく質の合成、DNAの合成などに関わる
・赤血球の形成を助ける
パントテン酸 ・エネルギーを生み出す過程や脂質の代謝に関わる
・皮膚や粘膜の健康を維持する
ビオチン ・糖や脂肪酸、アミノ酸の代謝に関わる
・皮膚や粘膜の健康維持を助ける
ビタミンC ・コラーゲンをつくる
・活性酸素を除去する

2-1.ビタミンB1のはたらき

ビタミンB1は糖質の代謝に欠かせない水溶性ビタミンです。

糖質とは
炭水化物のうち、エネルギー源となるもののことです。ヒトの体のエネルギー源となる栄養素には炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質の3種類があり、炭水化物はエネルギー源となる糖質とヒトの消化酵素では消化できないためほとんどエネルギーにならない食物繊維に分けられます。

ビタミンB1は糖質からエネルギーを生み出すはたらきに「補酵素」として関わっています。

補酵素とは
酵素の作用に欠かせない物質のことで、多くはビタミンB群などのビタミンからつくられます。酵素は代謝などの体内で起こる化学反応に触媒として必要な物質で、それ単体で作用するものと、補酵素がなければ作用できないものがあります。

糖質はエネルギー源として欠かせないものですが、それだけではエネルギー源として使うことはできず、ビタミンB1などの補酵素の助けが必要なのですね。

またビタミンB1は一部のアミノ酸の代謝にも補酵素として関与しています。

アミノ酸とは
たんぱく質を構成する20種類の物質です[2]。どれか一つでも欠けるとたんぱく質を構成することができなくなります。体内でつくれないため食事から摂取する必要のある9種類の必須アミノ酸と体内で合成可能な11種類の非必須アミノ酸に分けられます[2]。

ビタミンB1は「BCAA(分岐鎖アミノ酸)」とも呼ばれる「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の3種類の必須アミノ酸の代謝に関わっています

これらの必須アミノ酸は筋肉をつくる上で重要なはたらきをするといわれています。

またビタミンB1は皮膚や粘膜の健康維持にも関与しています

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「アミノ酸

2-2.ビタミンB2のはたらき

ビタミンB2はエネルギーを生み出す上で重要なはたらきをする水溶性ビタミンです。

補酵素としてエネルギー代謝に関わっています

また成長を促進したり、皮膚や粘膜を保護したりといった作用もあります

2-3.ナイアシンのはたらき

ナイアシンは体内ではさまざまな代謝に補酵素として必要とされる水溶性ビタミンです。

エネルギーを生み出すはたらきや、脂質の構成要素である脂肪酸の合成、ステロイドホルモンの合成などに関与します。

メモ
ステロイドホルモンは脂質の一種「コレステロール」を原料とした「ステロイド」から副腎皮質や生殖腺でつくられるホルモンの総称です。「コルチゾール」などの「副腎皮質ホルモン」と、「テストステロン」「プロゲステロン」のような「性ホルモン」があります。

またナイアシンはビタミンCやビタミンEを介した、「活性酸素」に対抗するはたらきにも関与しています。

活性酸素とは
呼吸で取り込まれた酸素の一部が体内で通常よりも活性化されたものです。微量であれば細胞伝達物質や免疫機能として有用にはたらきますが、増え過ぎると老化やがん、免疫機能の低下などの原因となります。

この他、ナイアシンはDNAの修復や合成、細胞の分化においても作用します。

メモ
DNAはヒトの細胞の核の中の染色体にあり、膨大な遺伝子情報が書き込まれているヒトの体をつくる設計図ともいえる物質です。

このようにさまざまなはたらきをするナイアシンは皮膚や粘膜の健康維持にも関わっているといわれています。

なお、ナイアシンは植物性食品には「ニコチン酸」、動物性食品には「ニコチンアミド」として含まれています

またナイアシンは必須アミノ酸のトリプトファンから合成することも可能です。

このためナイアシンの量はナイアシンにトリプトファンから合成されるナイアシンの量を足した「ナイアシン当量(NE)」で表されます。

2-4.ビタミンB6のはたらき

ビタミンB6はたんぱく質、脂質、炭水化物の代謝に補酵素として関わる水溶性ビタミンです。

特にたんぱく質の代謝においては重要なはたらきをしています

免疫機能の維持にも重要だといわれているので、しっかり摂取しておきましょう。

またビタミンB6は神経伝達物質の一種である「生理活性アミン」の代謝に補酵素として関わったり、ホルモンの調節因子としてはたらいたりもしています。

皮膚や粘膜の健康維持を助けるともいわれていますよ。

2-5.ビタミンB12のはたらき

ビタミンB12は、体内ではアミノ酸や脂質の代謝の補酵素としてはたらきます

また赤血球の形成を助けるはたらきもしています。

赤血球とは
血液に存在する血液細胞の一種です。たんぱく質と鉄からつくられ、酸素を全身に運ぶはたらきをしています。赤血球には「ヘモグロビン」と呼ばれるたんぱく質があり、これが酸素と結合することで酸素を運搬しています。

ビタミンB12は葉酸と共に赤血球の細胞骨格の維持に関わっているのです。

2-6.葉酸のはたらき

葉酸は体内でアミノ酸の代謝やたんぱく質の合成、DNAの合成などに関わっています

細胞の増殖において重要なはたらきをする水溶性ビタミンです。

特に胎児の脳や脊髄などの元となる神経管形成に欠かせないため、妊娠を計画している方や妊娠中の方はしっかりと摂取することが推奨されています。

また葉酸にはビタミンB12と共に赤血球の形成を助けるはたらきもあります。

老若男女にとって重要な栄養素であることが分かりますね。

2-7.パントテン酸のはたらき

パントテン酸は補酵素の構成成分としてはたらく水溶性ビタミンです。

特にエネルギーを生み出す過程や脂質の代謝において重要なはたらきをしています

またパントテン酸には皮膚や粘膜の健康を維持する作用もあります。

2-8.ビオチンのはたらき

ビオチンの主なはたらきは糖や脂肪酸、アミノ酸の代謝に関わる補酵素としてエネルギー産生のサポートをすることです。

ヒトの活動に必要なエネルギー源を栄養素からつくりだすのに欠かせない栄養素といえますね。

また、皮膚や粘膜の健康維持を助けるはたらきもあります。

その他、抗炎症物質を生成しアレルギー症状を和らげる作用があるといわれています。

2-9.ビタミンCのはたらき

ビタミンCは皮膚や腱(けん)、軟骨などを構成するたんぱく質の一種「コラーゲン」をつくるために必須の水溶性ビタミンです。

またビタミンCには抗酸化作用があることが知られています。

体内ではビタミンEと共に活性酸素を除去し、細胞を保護しています。

3.水溶性ビタミンの過不足による影響

「水溶性ビタミンを十分に摂れていないとどうなるんだろう?」

「水溶性ビタミンは摂り過ぎても良くないのかな?」

このように不安に思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ビタミンはいずれもヒトの体の機能を正常に保つため不可欠な物質です。

そのため不足するとさまざまな不調を招く恐れがあります

また水溶性ビタミンは摂り過ぎても尿として排出されるため過剰摂取による不調が起こることはあまりありませんが、一部の水溶性ビタミンは過剰摂取すると体の害になる場合があります

ここでは、水溶性ビタミンの過不足による影響をお伝えしましょう。

【水溶性ビタミンの過不足による影響】
※横にスクロールできます
種類 不足による影響 過剰摂取による影響
ビタミンB1 脚気、ウェルニッケ脳症 特になし
ビタミンB2 成長障害、皮膚炎、口角炎、舌炎、咽頭炎など 特になし
ナイアシン ペラグラ(皮膚炎や下痢、認知機能の低下など) ニコチン酸の過剰摂取によるフラッシング ニコチンアミドの過剰摂取による胃腸や肝臓の障害、消化性潰瘍の悪化
※通常の食事ではなし
ビタミンB6 湿疹、口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、貧血、免疫機能の低下など 神経の障害、骨の痛み、筋肉の弱化など
※通常の食事ではなし
ビタミンB12 巨赤芽球性貧血、手足のしびれ、感覚異常、記憶障害、うつ病など 特になし
葉酸 巨赤芽球性貧血、動脈硬化のリスク増大など 通常の食事ではなし
パントテン酸 手足のしびれ、灼熱(しゃくねつ)感、頭痛、疲労、不眠、胃の不快感を伴う食欲不振など 特になし
ビオチン 食欲不振、吐き気、うつ症状、舌炎、皮膚炎、筋肉痛、結膜炎、脱毛、けいれん、知覚過敏など 特になし
ビタミンC 倦怠(けんたい)感や疲労感、気力低下、壊血病など 通常の食事ではなし

3-1.ビタミンB1の過不足による影響

ビタミンB1の不足は、糖質を主なエネルギー源としている脳や神経に影響を及ぼします

特に精白米を常食している東洋人では、ビタミンB1が不足すると「脚気(かっけ)」が見られる場合があります。

脚気とは
ビタミンB1の不足によって神経に異常を来す病気です。全身の倦怠感や手足のしびれ、脚のむくみ、食欲不振などの症状が現れ、重症の場合には心不全に至り死を招くこともあります。

脚気は国内では明治時代、精白米が普及したことで「国民病」と呼ばれるほど流行していましたが[3]、現在では医学が進歩しビタミンの研究が進んだことでほとんど見られなくなっています。

しかし食生活が偏っており長期的にビタミンB1を十分に摂取できていない場合には脚気になるリスクもあるため注意が必要です。

メモ
ビタミンB1を全く含まない食事を2週間以上続けると脚気の症状が生じる可能性があると考えられています[4]。

特に糖質の多い食品やアルコールを多量に摂取した際にはビタミンB1の需要が高まり、不足が起こりやすくなるといわれています。

またアルコールを多く飲む西洋人においてビタミンB1が不足した場合は、「ウェルニッケ脳症」が見られる場合があります。

ウェルニッケ脳症とは
脳幹部と呼ばれる脳の奥にある部位に小さな出血が起こり、眼球が細かく震える「眼振」や、目の動きに制限が出る眼球運動障害、意識障害、ふらつきといった症状が急激に出る病気です。

ビタミンB1が不足すると重篤な病気を招くため、しっかりと摂取しておくことが重要なのですね。

なお、食事やサプリメントによってビタミンB1を摂取しても、健康に悪影響が及んだという報告はありません

過剰摂取による不調の心配はないといえるでしょう。

[3] 農林水産省「脚気の発生

[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-2.ビタミンB2の過不足による影響

ビタミンB2が不足すると成長障害や皮膚炎、口角炎、舌炎、咽頭炎などが見られます

ビタミンB2はエネルギー代謝に関わっているため、不足すると細胞が成長することができなくなってしまいます。

このため成長期の子どもがビタミンB2を十分に摂取しないと、成長が遅れたり、体重が増えなくなったりといった成長障害を起こす恐れがあるのです。

ビタミンB2不足は食事からの摂取量が不足した場合の他、代謝異常や肝臓の病気、糖尿病などの病気がある場合、特定の薬を服用している場合などに起こりやすいといわれています。

ただしビタミンB2が単独で不足することはまれで、他のビタミン不足と同時に起こることが知られています。

ビタミンはバランス良く摂っておくことが重要なのですね。

一方、ビタミンB2を多く摂取しても尿を通じて排せつされるため、過剰摂取による悪影響はあまり見られません

ビタミンB2は黄色をしているため摂り過ぎると尿の色が濃くなることはありますが、健康に問題はないといえるでしょう。

3-3.ナイアシンの過不足による影響

ナイアシンが不足すると「ペラグラ」という病気になることが分かっています。

ペラグラでは皮膚や粘膜、消化管、中枢神経など幅広い場所に症状が現れ、皮膚炎や下痢、認知機能の低下などを引き起こします。

メモ
中枢神経とは、脳と脊髄のことです。

ペラグラは治療しないと死に至ることもある重篤な病気です。

日本ではまれですが、アルコール依存症患者においてたんぱく質や他のビタミンと共にナイアシンが不足しているケースが見られることがあります。

また水溶性ビタミンには珍しく、ナイアシンは過剰症が見られるビタミンです。

植物性食品に含まれるニコチン酸は摂り過ぎると顔が紅潮したり、むず痒くなったりする「フラッシング」と呼ばれる症状を引き起こすことがあります。

一方、動物性食品に含まれるニコチンアミドを過剰摂取すると、胃腸や肝臓の障害、消化性潰瘍の悪化が見られることが分かっています。

ただし通常の食事をしていて過剰摂取による害が現れたという報告はありません。

大きな心配をする必要はないといえるでしょう。

3-4.ビタミンB6の過不足による影響

ビタミンB6の不足は湿疹や口角炎、舌炎、脂漏性皮膚炎、貧血、免疫力の低下などのさまざまな症状を引き起こします

また成人ではうつ状態や錯乱、脳波の異常、けいれんといった症状が現れる場合もあります。

メモ
脂漏性皮膚炎は頭部や顔など皮脂の分泌が盛んな部位において、皮脂が過剰分泌されることで起こる皮膚炎です。肌の赤みや痒み、皮むけなどの症状が出ます。頭皮に症状が現れた場合はふけのように肌が剥がれます。

ただしビタミンB6が単独で不足することはまれで、多くの場合は他のビタミン不足と同時に起こります。

なお、ビタミンB6の不足はビタミンB6が十分でない食生活を続けていた場合の他、降圧剤の「ヒドララジン」などビタミンB6を阻害する一部の薬の服用を続けていた場合にも起こります。

一方、ビタミンB6を多量に摂取し過ぎた場合、神経の障害や骨の痛みが起こったり、筋肉が弱ったりすることが分かっています。

また男性では精巣の萎縮や精子数の減少が見られます。

しかし通常の食事を摂取していて過剰摂取による健康被害が生じたという報告はないので、心配する必要はあまりないといえるでしょう。

3-5.ビタミンB12の過不足による影響

ビタミンB12が欠乏した場合、「巨赤芽球性貧血」という貧血が起こることが分かっています。

巨赤芽球性貧血とは
ビタミンB12または葉酸の不足により、赤血球の細胞骨格が維持できなくなるために起こる貧血です。動悸や息切れ、疲労感といった貧血の症状の他、消化器官に異常が現れる場合もあります。

またこの他に、手足のしびれや感覚異常、記憶障害、うつ病といった症状が現れる場合もあります。

一方、ビタミンB12を過剰に摂取しても体内で吸収量が調節されるため、過剰摂取による影響が現れた例は確認されていません

3-6.葉酸の過不足による影響

葉酸の不足は、ビタミンB12不足と同様に巨赤芽球性貧血の原因となります。

また葉酸が不足すると動脈硬化のリスクを高める「ホモシステイン」という物質の血中濃度が上昇することが分かっています。

動脈硬化とは
心臓から全身の器官に送られる血液が通る血管「動脈」の壁が厚く硬くなった状態のことです。血管が狭まったり詰まったり裂けたりしやすくなるため、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの原因となります。

さらに、葉酸はDNA合成や細胞の増殖に関わるため、妊婦の葉酸欠乏は胎児の神経管閉鎖障害のリスクを高めるといわれています。

神経管閉鎖障害とは
胎児のときに脳や脊髄などの元となる「神経管」が正常に形成されないことで起こる先天性の異常です。運動や排せつに障害が生じることが多く、重篤な場合には脳が形成されず死に至る無脳症が現れます。

厚生労働省は神経管閉鎖障害を防ぐため、妊娠を計画している方や妊娠の可能性がある方、妊娠初期の方を対象にサプリメントなどから葉酸を1日当たり400μg摂取することを推奨しています[5]。

葉酸の不足による不調は食事からの摂取が十分でない場合の他、腸からの吸収が不十分な場合にも起こります。

一方、食事から葉酸を過剰摂取した場合の健康被害は認められていません

ただしサプリメントなどで人工的に合成された葉酸は、過剰摂取すると神経症状を引き起こすことが分かっています。

サプリメントなどの摂り過ぎには注意しておきましょう。

[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-7.パントテン酸の過不足による影響

パントテン酸が不足すると、手足のしびれや灼熱感、頭痛、疲労、不眠などの他、胃の不快感を伴う食欲不振が起こることが分かっています。

また成長が停止したり、副腎が傷つけられたりする場合もあります。

ただしパントテン酸はさまざまな食品に含まれているため、ヒトにおいて欠乏症が起こることはまれです。

また通常の食事をしている方においては過剰摂取による悪影響も確認されていません。

3-8.ビオチンの過不足による影響

ビオチンはさまざまな食品に含まれており、通常の食生活を送っている方では不足の心配はあまりありません。

ただし生の卵白を長期間にわたり多量に摂取した場合は、消化管でのビオチンの吸収が阻害され、ビオチン欠乏症になる場合があります

また、抗けいれん薬を長期間内服している方や長期間透析を受けている方もビオチン欠乏が起こる場合があります。

ビオチンが不足すると食欲不振や吐き気、うつ症状、舌炎、皮膚炎、筋肉痛、結膜炎、脱毛、けいれん、知覚過敏などさまざまな症状が起こることが分かっています。

またビオチンの不足はリウマチ、シェーグレン症候群、クローン病といった免疫不全症や、糖尿病の発症に関与しているといわれています。

メモ
リウマチは関節が炎症を起こし腫れたり変形したりしてしまう病気です。シェーグレン症候群は涙腺や唾液腺などに慢性的な炎症が生じ、唾液や涙の分泌量が低下する病気で、中年女性に多く見られます。クローン病は若い人に多く、口内から肛門まで消化管の至る場所に炎症や潰瘍が生じる病気の一種です。特に小腸と大腸に多く現れます。糖尿病は血糖値が慢性的に高くなる病気です。

一方、ビオチンを過剰に摂取した場合は速やかに尿中に排せつされるため、通常の食事を摂っていて過剰摂取による不調が起こったという報告は確認されていません

ただし妊娠中の哺乳動物に多量のビオチンを投与すると胎盤や卵巣の委縮が起こるという報告があるため、妊娠中に多量に摂取することは避けておきましょう。

3-9.ビタミンCの過不足による影響

ビタミンCが不足すると倦怠感や疲労感、気力低下といった症状が現れるといわれています。

また不足が深刻化なると、「壊血病」という病気を発症する恐れがあります。

壊血病はコラーゲンの合成ができなくなることにより血管がもろくなり、血が出やすくなる病気です。

皮膚の下や歯茎からの出血、貧血の他、疲労感やイライラ、筋肉の減少、呼吸困難、心臓の障害といった症状が現れ、顔色が悪くなることもあります

ビタミンC不足は食生活に偏りがあり野菜や果物の摂取が少ない方の他、アルコール依存症や薬物依存症のある方に多く見られます。

また喫煙や受動喫煙を習慣的にしている方は非喫煙者よりもビタミンCの必要性が高まるといわれているため、ビタミンC不足のリスクが高いといえるでしょう。

一方、通常の食事をしていてビタミンCの過剰摂取による健康への害が生じたという報告は確認されていません

ただしサプリメントによる過剰摂取では吐き気や下痢、腹痛が見られる場合があるため要注意です。

また腎臓の機能が低下していると尿路結石ができやすくなるといわれています。

メモ
尿路結石は腎臓から尿道までの尿路に結石と呼ばれる物質ができる病気です。結石が尿管内の尿の流れを塞ぎ、激しい痛みや血尿などを引き起こします。

4.水溶性ビタミンの食事摂取基準

「水溶性ビタミンをどれくらい摂っていたら健康を保てるんだろう?」

このように気になっている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

厚生労働省は健康な人を対象に、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防を目的として、「食事摂取基準」と呼ばれる1日当たりの栄養素の摂取量の基準を設定しています。

ここでは水溶性ビタミンの食事摂取基準の一部をご紹介しましょう。

本記事では18歳以上の男女の食事摂取基準をご紹介しています。

未成年の方は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の「乳児・小児」の項、妊娠中・授乳中の方は「妊婦・授乳婦」の項をご覧ください。

日本人の食事摂取基準(2020年版)「乳児・小児」

日本人の食事摂取基準(2020年版)「妊婦・授乳婦」

4-1.ビタミンB1の推奨量

成人のビタミンB1の推奨量は以下の表のとおりです。

推奨量とは
ほとんどの人にとって十分だと考えられる量です。
【ビタミンB1の推奨量】
年齢 男性 女性
18〜29歳 1.4mg 1.1mg
30〜49歳 1.4mg 1.1mg
50〜64歳 1.3mg 1.1mg
65〜74歳 1.3mg 1.1mg
75歳以上 1.2mg 0.9mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

なおビタミンB1の20歳以上の平均摂取量は男性で1.03mg、女性で0.88mgです[6]。

推奨量を満たすビタミンB1を摂取できていない方が多いと思われるので意識して摂取しておきましょう。

[6] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

4-2.ビタミンB2の推奨量

成人のビタミンB2推奨量は以下の表のとおりです。

【ビタミンB2の推奨量】
年齢 男性 女性
18〜29歳 1.6mg 1.2mg
30〜49歳 1.6mg 1.2mg
50〜64歳 1.5mg 1.2mg
65〜74歳 1.5mg 1.2mg
75歳以上 1.3mg 1.0mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

20歳以上のビタミンB2平均摂取量は男性で1.25mg、女性で1.13mgです[7]。

多くの世代で平均摂取量が推奨量を下回っているので意識的に摂取しましょう。

[7] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

4-3.ナイアシンの推奨量および耐容上限量

ナイアシンには耐容上限量が設定されています。

耐容上限量とは
過剰摂取による健康障害の予防を目的として設定された食事摂取基準です。

ナイアシンの過剰摂取による不調は動物性食品に含まれるニコチンアミドと植物性食品に含まれるニコチン酸で異なるため、耐容上限量はそれぞれに対し設定されています。

成人のナイアシンの推奨量および耐容上限量は以下のとおりです。

【ナイアシンの推奨量および耐容上限量】
年齢 男性 女性
推奨量 耐容上限量 推奨量 耐容上限量
ニコチンアミド ニコチン酸 ニコチンアミド ニコチン酸
18〜29歳
15mg
300mg
80mg
11mg
250mg
65mg
30〜49歳
15mg
350mg
85mg
12mg
250mg
65mg
50〜64歳
14mg
350mg
85mg
11mg
250mg
65mg
65〜74歳
14mg
300mg
80mg
11mg
250mg
65mg
75歳以上
13 mg
300mg
75mg
10mg
250mg
60mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

20歳以上のナイアシン平均摂取量は男性で34.5mg、女性で28.6mgです[8]。

多くの方が十分摂取できている栄養素だといえるでしょう。

[8] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

4-4.ビタミンB6の推奨量

成人のビタミンB6の推奨量は以下の表のとおりです。

【ビタミンB6の推奨量】
年齢 男性 女性
18歳以上 1.4mg 1.1mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

20歳以上のビタミンB6の平均摂取量は男性で1.30mg、女性で1.12mgです[9]。

年代別のデータでは平均摂取量が推奨量を超えている層もありますが[9]、十分摂取するよう心掛けておきましょう。

[9] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

4-5.ビタミンB12の推奨量

ビタミンB12の推奨量は以下のとおりです。

【ビタミンB12の推奨量】
年齢 男性 女性
18歳以上 2.4μg 2.4μg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

20歳以上の男性の平均摂取量は7.3μg、同じく女性の平均摂取量は5.9μgです[10]。

一般的には十分摂取されているビタミンだといえますね。

[10] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

4-6.葉酸の推奨量および耐容上限量

葉酸には耐容上限量が設定されています。

葉酸の推奨量および耐容上限量は以下のとおりです。

【葉酸の推奨量および耐容上限量】
年齢 男性 女性
推奨量 耐容上限量 推奨量 耐容上限量
18〜29歳
240μg
900μg
240μg
900μg
30〜49歳
240μg
1,000μg
240μg
1,000μg
50〜64歳
240μg
1,000μg
240μg
1,000μg
65〜74歳
240μg
900μg
240μg
900μg
75歳以上
240μg
900μg
240μg
900μg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

葉酸の20歳以上の平均摂取量は男性で310μg、女性で295μgです[11]。

概ね十分に摂取されているビタミンだといえますが、妊娠を計画している方や妊娠中・授乳婦の方はさらに多くの葉酸を摂取する必要があります。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

葉酸とは?はたらきや食事摂取基準、多く含まれる食品などを紹介

[11] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

4-7.パントテン酸の目安量

パントテン酸には目安量が設定されています。

目安量とは
一定の栄養状態を維持するために十分であると考えられる量です。目安量以上を摂取していれば、不足による不調が起こる心配はほぼないとされています。目安量は推奨量などを設定する十分な科学的根拠がない場合に設定されます。

成人のパントテン酸の目安量は以下のとおりです。

【パントテン酸の目安量】
年齢 男性 女性
18〜29歳 5mg 5mg
30〜49歳 5mg 5mg
50〜64歳 6mg 5mg
65〜74歳 6mg 5mg
75歳以上 6mg 5mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

20歳以上のパントテン酸平均摂取量は男性で6.05mg、女性で5.30mgです[12]。

若い世代では平均摂取量が目安量を下回っているケースも見られるので、しっかり摂取するよう心掛けましょう。

[12] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

4-8.ビオチンの目安量

ビオチンには目安量が設定されています。

成人のビオチン目安量は以下のとおりです。

【ビオチンの目安量】
年齢 男性 女性
18歳以上 50μg 50μg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

なお厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」においてビオチンの平均摂取量は調査されていないため不明です。

4-9.ビタミンCの推奨量

ビタミンCの推奨量は以下のとおりです。

【ビタミンCの推奨量】
年齢 男性 女性
18歳以上 100mg 100mg

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

ビタミンCの平均摂取量は20歳以上の男性で96mg、同じく女性で101mgです[13]。

特に若い世代では大きく推奨量を下回っている層が見られるので、積極的に摂取するよう心掛けましょう。

[13] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査

5.水溶性ビタミンを含む食べ物

「水溶性ビタミンはどんな食べ物に含まれているんだろう?」

このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

栄養バランスの取れた食事を摂りたいものですよね。

この章では、水溶性ビタミンの摂取源となる食品をご紹介しましょう。

【各種の水溶性ビタミンを多く含む食品】
種類 食品
ビタミンB1 豚肉、豆類、ナッツ類など
ビタミンB2 レバー、ハツ、卵、アーモンドなど
ナイアシン 肉類、赤身魚、らっかせいなど
ビタミンB6 赤身魚、レバー、にんにく、ナッツ類など
ビタミンB12 二枚貝、レバー、のりなど
葉酸 レバー、卵、ブロッコリーなど
パントテン酸 レバー、ハツ、魚卵、納豆など
ビオチン レバー、卵、豆類、ナッツ類など
ビタミンC ピーマン、キウイフルーツ、レモンなど

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

5-1.ビタミンB1を含む食べ物

ビタミンB1は動物性食品では豚肉などに多く含まれています

【ビタミンB1を含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
豚ヒレ肉(赤肉)
1.32mg
豚もも肉(赤肉)
0.96mg
生ハム
-
0.92mg
豚ロース肉(赤肉)
0.80mg
豚肩肉(赤肉)
0.75mg
うなぎ
蒲焼き
0.75mg
たらこ(すけとうだら)
0.71mg
ロースハム
-
0.70mg
豚ロース(脂身付き)
0.69mg
イクラ(しろさけ)
-
0.42mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

ビタミンB1は植物性食品では豆類やナッツ類などに含まれています

【ビタミンB1を含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
黄大豆(米国産)
乾燥
0.88mg
カシューナッツ
フライ、味付け
0.54mg
ごま
いり
0.49mg
あずき
乾燥
0.46mg
ピスタチオ
いり、味付け
0.43mg
玄米
-
0.41mg
そば(乾麺)
乾燥
0.37mg
発芽玄米
-
0.35mg
えだまめ
0.31mg
そらまめ(未熟豆)
0.30mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

動物性食品からも植物性食品からも比較的摂りやすいビタミンであるといえるでしょう。

5-2.ビタミンB2を含む食べ物

ビタミンB2は内臓肉や乳製品、卵など動物性の食品に比較的多く含まれています

【ビタミンB2を含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
豚レバー
3.60mg
牛レバー
3.00mg
鶏レバー
1.80mg
鶏ハツ
1.10mg
豚ハツ
0.95mg
牛ハツ
0.90mg
うなぎ
蒲焼き
0.74mg
カマンベールチーズ
-
0.48mg
鶏卵
0.37mg
牛ハラミ
0.35mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

また1食当たりの摂取量はやや少なくなりますが、植物性食品からもビタミンB2を摂取することは可能です。

【ビタミンB2を含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
焼きのり
-
2.33mg
アーモンド
いり、無塩
1.04mg
乾燥わかめ
素干し
1.01 mg
納豆
-
0.30 mg
モロヘイヤ
0.42mg
干しひじき
乾燥
0.42mg
マッシュルーム
0.29mg
ヘーゼルナッツ
フライ、味付け
0.28mg
ブロッコリー
0.23mg
エリンギ
0.22mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

植物性食品では焼きのりや納豆など身近な食材に含まれているので、日々の食卓に意識して取り入れると良いでしょう。

5-3.ナイアシンを含む食べ物

ナイアシンは動物性食品では肉類や赤身の魚などから摂取できます

【ナイアシンを含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
たらこ(すけとうだら)
54.0mg
びんながまぐろ
26.0mg
かつお(春獲り)
24.0mg
豚レバー
19.0mg
かつお油漬けフレーク
缶詰め
19.0mg
牛レバー
18.0mg
鶏ささみ
17.0mg
鶏むね肉
生、皮なし
17.0mg
まさば
>生
16.0mg
パルメザンチーズ
-
10.0mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

また植物性食品ではきのこ類や豆類、ナッツ類などから摂取できます

【ナイアシンを含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
らっかせい
いり
28.0mg
焼きのり
-
20.0mg
黄大豆(米国産)
乾燥
10.0mg
玄米
-
8.0mg
アーモンド
いり、無塩
7.5mg
えのきたけ
7.4mg
エリンギ
6.7mg
ぶなしめじ
6.4mg
油揚げ
6.2mg
納豆
-
4.6mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

ナイアシンは野菜にはあまり含まれていませんが、きのこ類や豆類などを取り入れることでしっかり摂取できると考えられますね。

メモ
ナイアシン当量の数値を参照しています。

5-4.ビタミンB6を含む食べ物

ビタミンB6は動物性食品ではレバーや赤身の魚などに多く含まれています

【ビタミンB6を含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
みなみまぐろ(赤身)
1.08mg
びんながまぐろ
0.94mg
牛レバー
0.89mg
天然くろまぐろ(赤身)
0.85mg
かつお(春獲り)
0.76mg
鶏レバー
0.65mg
鶏むね肉
生、皮なし
0.64mg
しろさけ
0.64mg
鶏ささみ
0.62mg
まさば
0.59mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

また1食当たりの摂取量は減ってしまいますが、植物性食品ではナッツ類などから摂取可能です。

【ビタミンB6を含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
にんにく
1.53mg
ピスタチオ
いり、味付け
1.22mg
くるみ
いり
0.49mg
らっかせい
いり
0.46mg
黄大豆(米国産)
乾燥
0.46mg
ししとう
0.39mg
赤ピーマン(パプリカ)
0.37mg
モロヘイヤ
0.35mg
ブロッコリー
0.30mg
納豆
-
0.24mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

バランスの取れた食事を心掛け、ビタミンB6をしっかり摂取しておきましょう。

5-5.ビタミンB12を含む食べ物

ビタミンB12は微生物によって合成され、植物性食品にはほとんど含まれません。

このため主には動物性食品から摂取され、なかでも二枚貝やレバーなどに多く含まれています

【ビタミンB12を含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
しじみ
68.0μg
牛レバー
53.0μg
イクラ(しろさけ)
-
47.0μg
あさり
44.8μg
鶏レバー
44.0μg
あんこう肝
39.0μg
はまぐり
28.0μg
豚レバー
25.0μg
かき(養殖)
23.0μg
たらこ(すけとうだら)
18.0μg
さんま
皮付き、生
16.0μg
まいわし
16.0μg
ほたるいか
14.0μg
まさば
13.0μg
牛ハツ
12.0μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

植物性食品ではのりなどの海藻類から摂取できますが、1食当たりに摂取できる量は動物性食品よりもかなり少ないと考えられるでしょう。

【ビタミンB12を含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
味付けのり
-
67.9μg
焼きのり
-
56.7μg
あおさ
素干し
37.2μg
カットわかめ
乾燥
2.0μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

菜食主義者ではビタミンB12の不足が起こりやすいことが分かっています。

動物性食品からの摂取が難しい場合はサプリメントなどで補うことも検討しましょう。

5-6.葉酸を含む食べ物

葉酸はほうれんそうから発見されたビタミンですが、レバーなどの内臓肉や貝などの動物性食品からも摂取できます

【葉酸を含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
鶏レバー
1,300μg
牛レバー
1,000μg
豚レバー
810μg
鶏卵(全卵)
91μg
カマンベールチーズ
-
47μg
鶏ハツ(心臓)
43μg
うに
360μg
イクラ(しろさけ)
-
100μg
あんこう肝
88μg
ほたて
87μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

また植物性食品では、葉物野菜などに含まれています

【葉酸を含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
焼きのり
-
1,900μg
えだまめ
320μg
モロヘイヤ
250μg
ブロッコリー
220μg
ほうれんそう
210μg
アスパラガス
190μg
ルッコラ
170μg
納豆
-
130μg
あまぐり(中国ぐり)
-
100μg
マンゴー
84μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

さまざまな食品をバランス良く食べ、葉酸をしっかりと摂取しておきましょう。

5-7.パントテン酸を含む食べ物

パントテン酸の名前は、「至るところに存在する酸」という意味のギリシャ語に由来しています。

その名のとおり、さまざまな食品に含まれているのが特徴です。

なかでも動物性食品では内臓肉や魚卵などに多く含まれています

【パントテン酸を含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
鶏レバー
10.00mg
豚レバー
7.19mg
牛レバー
6.40mg
鶏ハツ(心臓)
4.41mg
たらこ(すけとうだら)
3.68mg
豚ハツ(心臓)
2.70mg
イクラ(しろさけ)
-
2.36mg
牛ハツ(心臓)
2.16mg
鶏ささみ
2.07mg
鶏むね肉
皮なし、生
1.92mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

また植物性食品では特定の食品群に多く含まれているというより、まさにさまざまなものに含まれるといえるでしょう。

【パントテン酸を含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
納豆
-
3.63mg
らっかせい
いり
2.20mg
モロヘイヤ
1.83mg
アボカド
1.55mg
黄大豆(米国産)
乾燥
1.49mg
ブロッコリー
1.42mg
えのきたけ
1.40mg
カシューナッツ
フライ、味付け
1.32mg
そば(乾麺)
乾燥
1.15mg
さつまいも
皮なし、生
0.90mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

バランスの良い食生活を送っていれば、知らず知らずのうちにさまざまな食品からパントテン酸を摂取していることになるかもしれませんね。

5-8.ビオチンを含む食べ物

ビオチンは動物性食品ではレバー類や鶏卵、魚介類などに含まれています。

【ビオチンを含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
鶏レバー
230.0μg
豚レバー
80.0μg
牛レバー
76.0μg
鶏卵
卵黄、生
65.0μg
鶏卵
全卵、生
24.0μg
まがれい
22.0μg
あさり
21.6μg
たらこ(すけとうだら)
18.0μg
まいわし
15.0μg
まかじき
13.0μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

また植物性食品では豆類やナッツ類などに含まれています。

【ビオチンを含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
らっかせい
いり
110.0μg
ヘーゼルナッツ
フライ、味付け
82.0μg
焼きのり
-
47.0μg
黄大豆(米国産)
乾燥
34.0μg
まいたけ
24.0μg
キヌア
玄穀
23.0μg
納豆
-
18.2μg
モロヘイヤ
14.0μg
ブロッコリー
13.0μg
えだまめ
11.0μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

これらの食品を食卓に取り入れ、ビオチンを十分摂取しておきましょう。

5-9.ビタミンCを含む食べ物

ビタミンCはレバー類や豚の加工食品、たらこなどの他は、動物性食品に含まれていることはほとんどありません

【ビタミンCを含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
からしめんたいこ
-
76mg
豚ばらベーコン
-
69mg
豚ショルダーハム
-
55mg
焼きちくわ
-
36mg
ウインナーソーセージ
-
32mg
牛レバー
30mg
豚ロースハム
-
25mg
鶏レバー
20mg
豚レバー
20mg
たらこ(すけとうだら)
33mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

一方、植物性食品では野菜や果物に豊富に含まれています。

ビタミンCを多く含む食品として知られるレモンの他に、ピーマンやキウイフルーツ、ブロッコリーなどからビタミンCを摂取できます

【ビタミンCを含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
焼きのり
-
210mg
赤ピーマン(パプリカ)
170mg
黄ピーマン(パプリカ)
150mg
ブロッコリー
140mg
キウイフルーツ(黄肉種)
140mg
レモン
全果、生
100mg
カリフラワー
81mg
青ピーマン
76mg
キウイフルーツ(緑肉種)
71mg
甘がき
70mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

野菜や果物などの植物性食品からビタミンCをしっかりと摂取することを心掛けましょう。

6.水溶性ビタミンについてのまとめ

水溶性ビタミンはその名のとおり水に溶けるビタミンの総称です。

ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチンの8種類のビタミンB群と、ビタミンCが該当します。

水溶性ビタミンのはたらきはそれぞれに異なりますが、ビタミンB群の多くは補酵素としてエネルギー産生栄養素などの代謝に関わっています

また血をつくるはたらきや、皮膚や粘膜の健康維持に関わるものもあります。

ビタミンCはコラーゲンの合成や活性酸素の除去において重要なはたらきを果たします

このように水溶性ビタミンはそれぞれに体の機能を正常に保つ上で欠かせません。

不足するとビタミンによって異なる欠乏症を招き、ときには命に関わる重篤な症状を引き起こしてしまいます。

その一方で水溶性ビタミンの多くは摂り過ぎても尿から排せつされ、不調を招くことはほとんどありません。

ただしサプリメントなどから過剰摂取すると症状が現れるビタミンもあるので、適切な摂取を心掛けましょう。

ビタミンB群は動物性食品に比較的多く含まれています。

特にレバーはビタミンB群を豊富に含む食品だといえるでしょう。

またビタミンB群は豆類やナッツ類などからも摂取できます。

一方ビタミンCは動物性食品にはほとんど含まれず、野菜や果物などが主な摂取源となります。

水溶性ビタミンはいずれも体に不可欠なので、バランスの取れた食事を心掛け、体に必要な栄養素を十分摂取しましょう

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