「牛乳のカロリーってどのくらいなんだろう?」
牛乳はおなじみの飲み物ですが、栄養価が高いイメージからカロリーを心配される方も多いかもしれません。
牛乳のカロリーは他の飲み物と比べると比較的高めですが、適量であればカロリーの摂り過ぎを心配するほどではありません。
この記事では牛乳と他の飲料のカロリーや、牛乳に豊富に含まれる栄養素についてご紹介します。
牛乳を摂取する際のポイントについても解説するのでぜひ参考にしてくださいね。
1.牛乳のカロリー
「牛乳のカロリーを知りたい!」
ダイエットのためカロリーを気にして牛乳を控えようとしている方もいらっしゃるかもしれませんね。
牛乳類のカロリーは以下のとおりです。
【牛乳類100g当たりのカロリーおよびエネルギー産生栄養素の含有量】
食品名 | カロリー |
---|---|
普通牛乳 | 61kcal |
加工乳(濃厚) | 70kcal |
低脂肪加工乳 | 42kcal |
脱脂乳 | 31kcal |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
一般的な牛乳は「普通牛乳」とも呼ばれます。
生乳(搾ったまま無処理の乳)を殺菌して製造されており、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」において「無脂乳固形分8.0%以上、乳脂肪分3.0%以上」と定義されています[1]。
加工乳は8.0%以上の無脂乳固形分を含み、生乳やバターなどの乳製品を原料として加工した飲料のことです[1]。
製品によりカロリーは異なりますが、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」には乳脂肪分を高くした「濃厚」と反対に乳脂肪分を減らした「低脂肪」の数値が収載されています。
また、牛乳または生乳からほとんどの乳脂肪分を除去したものを脱脂乳といいます。
低脂肪加工乳や脱脂乳は乳脂肪分が除去されている分、カロリーが低くなっているのですね。
この他に乳脂肪分1.5%以上、無脂乳固形分8.0%以上で生乳から水分や乳脂肪分、ミネラルなどの一部を除去した「成分調整牛乳」があります[1]。
これらは製品によって栄養成分が異なるため文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」には収載されていません。
また他の飲料100g当たりのカロリーと比較すると以下のとおりです。
【牛乳とその他の飲料100g当たりのカロリー】
食品名 | カロリー |
---|---|
普通牛乳 | 61kcal |
濃縮還元りんごジュース | 47kcal |
コーラ | 46kcal |
豆乳 | 43kcal |
コーヒー | 4kcal |
緑茶 | 2kcal |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
牛乳と豆乳の栄養成分の違いについて知りたい方は以下の記事をご覧ください。
豆乳と牛乳に含まれる栄養素の違いとは?摂取のポイントも紹介!
このように他の飲料と比べると、牛乳のカロリーは高いと感じてしまうかもしれません。
しかし「他の飲料よりもカロリーが高い牛乳は、太る原因になる」という認識で牛乳の摂取を避けるのは誤りです。
例えば18~29歳の推定必要カロリー(推定エネルギー必要量)は男性の場合2,300~3,050kcal、女性の場合1,700~2,300kcalです[2]。
対して、コップ1杯(200mL)の牛乳のカロリーは126kcalです[1]。
1日に摂取すべきカロリー(エネルギー量)に対し、牛乳から摂取するカロリーが占める割合を考えるとそこまでハイカロリーであるとはいえないでしょう。
また1日の間食から摂るエネルギー量の目安は200kcalとされています[3]。
つまりこれを超えないコップ1杯程度ならば、牛乳はダイエット中だとしても避ける必要のない飲み物であるといえます。
それでも摂取カロリー(エネルギー摂取量)を抑えたいという方は低脂肪加工乳や脱脂乳、乳脂肪分を調整された成分調整牛乳などを飲むのも良いかもしれませんね。
[1] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[2] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[3] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 間食のエネルギー(カロリー)」
【関連情報】 「カロリーとは?体重との関係や摂取カロリーの目安、栄養について解説」についての記事はこちら
2.牛乳に豊富に含まれる栄養素
「牛乳にはどんな栄養素が含まれているのかな?」
「牛乳はカルシウムが豊富」というイメージを持っている方は多いかもしれませんが、その他にどのような栄養素が含まれているかは知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
牛乳にはカルシウムの他、いくつかのビタミン類が豊富に含まれています。
牛乳100g当たりに豊富に含まれる栄養素は以下のとおりです。
【普通牛乳に豊富に含まれる栄養素とその含有量(100g当たり)】
栄養素 | 含有量 |
---|---|
ビタミンB2 | 0.15mg |
ナイアシン | 0.9mg |
パントテン酸 | 0.55mg |
ビタミンB12 | 0.3μg |
カルシウム | 110mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
それでは牛乳に豊富に含まれる栄養素とそのはたらきを見ていきましょう。
また、成人男女の1日当たりの摂取量の目安もご紹介するのでぜひ参考にしてくださいね。
[4] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック」
2-1.ビタミンB2
牛乳にはビタミンB2が豊富に含まれています。
牛乳100g当たりのビタミンB2含有量は0.15mgです[5]。
ビタミンB2は体内でエネルギー代謝の補酵素としてはたらきます。
他にも成長促進、皮膚や粘膜の保護にも関わっている栄養素です。
このため、ビタミンB2が不足すると成長障害や皮膚炎、口内炎などの症状が現れることがあります。
ビタミンB2の推奨量は、男性は18~49歳で1.6mg、50~74歳で1.5mg、75歳以上で1.3mgです[6]。
女性は18~74歳で1.2mg、75歳以上で1.0mgです[6]。
エネルギー消費量が多いという方は、積極的に牛乳などからビタミンB2を摂取してくださいね。
ビタミンB2についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB12が不足する原因とよくある症状は?摂取しやすい食品も紹介
[5] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[6] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.ナイアシン
牛乳にはナイアシンが豊富に含まれています。
牛乳100g当たりのナイアシン含有量は0.9mgNEです[7]。
ナイアシンは水に溶けやすく油に溶けにくい「水溶性のビタミン」で、ビタミンB群の一種です。
ナイアシンは体内のさまざまなはたらきに補酵素として関わっています。
またナイアシンは体内でエネルギーを生み出す過程に関わる他、ビタミンCやビタミンEを介した活性酸素に対抗するはたらきにも関与しています。
またナイアシンは脂肪の構成要素である「脂肪酸」の合成や、脂肪からつくられる「ステロイドホルモン」の合成にも関わっています。
ナイアシンには皮膚や粘膜の健康を保つはたらきがあるといわれています。
ナイアシンの1日当たりの推奨量は、男性の場合、18~49歳で15mgNE、50~74歳で14mgNE、75歳以上で13mgNEです[8]。
また、女性の推奨量は18~29歳で11mgNE、30~49歳で12mgNE、50~74歳で11mgNE、75歳以上で10mgNEです[8]。
ナイアシンはあまり聞かないビタミンかもしれませんが重要な栄養素の一つです。
牛乳などから摂取しておきましょう。
ナイアシンについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ナイアシンはどんなビタミン?はたらきや食事摂取基準、摂取源を紹介
[7] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[8] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-3.パントテン酸
牛乳にはパントテン酸が豊富に含まれています。
牛乳100g当たりのパントテン酸含有量は0.55mgです[9]。
パントテン酸は補酵素の構成要素として体内でさまざまな重要なはたらきをしており、脂肪酸や脂質の代謝に関わっています。
パントテン酸という名称はギリシャ語の「あらゆるところにある酸」という意味の言葉に由来しています。
さまざまな食品に含まれているため、通常の食事をしている方は不足することはほぼありません。
男性の1日当たりの摂取目安量は18~49歳で5mg、50歳以上で6mgです[10]。
また18歳以上の女性の摂取目安量は5mgです[10]。
パントテン酸は不足しにくいといわれる栄養素ですが、牛乳などさまざまな食品からしっかり摂取しておきましょう。
パントテン酸についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
パントテン酸とは?はたらきや摂取目安量、摂取源となる食品を紹介
[9] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[10] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-4.ビタミンB12
牛乳にはビタミンB12が豊富に含まれています。
牛乳100g当たりのビタミンB12含有量は0.3μgです[11]。
ビタミンB12はアミノ酸や脂質の代謝に関わっています。
アミノ酸が欠乏すると、悪性貧血や神経障害を引き起こすとされています。
ビタミンB12の推奨量は、18歳以上の男女共に2.4μgです[12]。
ビタミンB12についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB12を含む食べ物は?過不足の影響と食事摂取基準も解説
[11] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[12] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 アミノ酸」
[13] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-5.カルシウム
牛乳には100g当たり110mgとカルシウムが豊富に含まれています[14]。
カルシウムは必須ミネラルの一種です。
カルシウムはヒトの体に最も多く存在するミネラルで、主に骨や歯を構成しています。
このため不足すると骨粗しょう症の原因となることが知られています。
またカルシウムの一部は血液や筋肉、神経にも存在し、血液の凝固を促して止血に関わったり、筋肉の興奮を抑えたりしています。
牛乳は特にカルシウム源として優れた食品といえます。
男性の推奨量は18~29歳の場合800mg、30~74歳の場合750mg、75歳以上の場合700mgです[16]。
また女性の推奨量は18~74歳で650mg、75歳以上で600mgです[16]。
カルシウムは不足しがちな栄養素だといわれているので、牛乳などからしっかり摂取しておきましょう。
カルシウムについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
カルシウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を解説
[14] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[15] 国立研究法人 国立循環器病研究センター「 栄養に関する基礎知識」
[16] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3.牛乳を摂取する際のポイント
「牛乳に含まれる栄養素を効率良く摂取するにはどうすれば良いんだろう?」
牛乳のカルシウムは他の食品に含まれるものに比べ体に吸収されやすいといわれています。
そのカルシウムをさらに効率良く摂取する方法があれば知りたいですよね。
牛乳豊富に含まれるカルシウムを効率良く摂取するには、合わせて摂取する栄養素を工夫してみましょう。
この章では牛乳のカルシウムを効率良く摂取する方法に加え、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしてしまう方のための牛乳の飲み方や調理法もご紹介します。
今まで牛乳を飲むのが苦手だったという方も克服できるかもしれませんよ。
ポイント1 合わせて摂取する栄養素を工夫する
牛乳を摂取する際にはビタミンDを合わせて摂取し、リンを摂取し過ぎないことが重要です。
カルシウムの吸収率はビタミンDを一緒に摂取することで高められるといわれています。
ビタミンDは、いわしやさんま、さけなどの魚類、きくらげやしいたけなどのきのこ類、鶏卵などに多く含まれています。
また、日光を浴びることで体内でのビタミンD生成を促すことができます。
リンは肉類やインスタント食品に多く含まれています。
リンはカルシウムやマグネシウムと共に骨や歯を形成しますが、摂り過ぎるとカルシウムの吸収を阻害するため過剰摂取には注意しましょう。
日本人はカルシウムの摂取量が不足している一方、リンを摂り過ぎている傾向にあるといわれています。
リンは通常の食生活で不足するのはまれであるため、牛乳などカルシウムを多く含む食品を積極的に食卓に取り入れたいですね。
ビタミンDについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンDってどんな栄養素?効果と摂取方法について徹底解説!
ポイント2 体質に合わせて摂取の方法を工夫する
牛乳を摂取するとおなががゴロゴロしてしまうという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この「ゴロゴロした感じ」や下痢などの症状は「乳糖不耐症」と呼ばれるものです。
牛乳を飲むとおなかがゴロゴロするという方は以下のような方法を試すと不快な症状を和らげられる可能性があります。
【乳糖不耐の方のための牛乳の飲み方】
- 一度にたくさん飲むのではなく、数回に分けて少しずつ飲む
- 温めて飲む
- 毎日飲む習慣をつける
- 乳糖の含有量が低いミルクを飲む
牛乳を少しずつ飲むことによって乳糖を分解しやすくなります。
また温めると腸への刺激を軽減でき、ラクターゼのはたらきも活発になります。
毎日牛乳を飲み続けると乳糖を分解する腸内細菌が増加するため、乳糖不耐の改善が期待できます。
日本では現在乳糖を含まない牛乳は市販されていませんが、乳糖が少ない「低乳糖牛乳」が市販されていますので試してみてくださいね。
なお、おなかがゴロゴロした場合もカルシウムをはじめとした栄養素は吸収されているため心配いりません。
4.牛乳のカロリーについてのまとめ
牛乳100g当たりのカロリーは61kcalです[17]。
乳飲料で比較すると、普通牛乳は加工乳(濃厚)よりもカロリーが低く、低脂肪牛乳や脱脂乳よりもカロリーが高いです。
また、その他にコーラ、りんごジュース、豆乳、コーヒー、緑茶と比較しても牛乳の方がカロリーが高いことが分かります[17]。
牛乳100kcal当たりに豊富に含まれる栄養素はカルシウム、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB2、ビタミンB12です[18]。
牛乳はカルシウムの含有量が多いだけでなく、吸収率も非常に高い食品です。
牛乳を摂取する際には、カルシウムの吸収を促すビタミンDを積極的に摂り、カルシウムの吸収を阻害するリンの過剰摂取に気を付けると良いでしょう。
牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしてしまう方は、数回に分けたり温めたりして飲むことで改善される可能性があります。
この記事を参考に、牛乳を食卓に取り入れて栄養補給に活かしてくださいね。
[17] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[18] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック」