「豆乳から摂れる栄養素と牛乳から摂れる栄養素は違うのかな?」
「健康のためには豆乳と牛乳のどっちが良いんだろう……」
豆乳と牛乳のどちらを選ぼうか、迷った経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大豆から作られた豆乳と牛の乳である牛乳は見た目が似ており、どちらも健康に良いとされていますが、違いもあります。
豆乳と牛乳、いずれにも豊富に含まれる栄養素がある一方、片方だけに豊富に含まれるものもあります。
この記事では豆乳と牛乳のカロリーや、含まれる栄養素の共通点や違いをご紹介します。
また豆乳と牛乳を飲む際のポイントも解説するので、生活に取り入れる際の参考にしてくださいね。
1.豆乳と牛乳の基礎知識
「豆乳と牛乳はどこが違うのかな?」
健康に良い飲み物としておなじみの豆乳と牛乳の違いについて、詳しく知らないという方もいらっしゃるでしょう。
豆乳と牛乳の栄養素の違いに触れる前に、豆乳と牛乳がそれぞれどんな飲料なのかを解説します。
1-1.豆乳とは
「豆乳ってどういう飲み物なんだろう?」
「豆乳にはいくつか種類があるみたいだけど、何が違うのかな……」
豆乳が大豆から作られていることは知っていても、種類や製法までは知らないという方は多いのではないでしょうか。
豆乳は簡単にいうと、大豆を搾った液体のことです。
大豆を水に浸してすりつぶし、加熱して搾って出た液体が豆乳です。
一般に豆乳と認識されている製品は日本農林規格(JAS規格)により「豆乳」と「調製豆乳」、「豆乳飲料」の3種類に分けられています[1]。
一般的に「無調整豆乳」と呼ばれているのは、この規格における豆乳のことです。
この規格では、大豆から熱水などを用いてたんぱく質などの成分を溶け出させ、繊維質を除去した乳状の飲料のうち、「大豆固形分」が8%以上のものを「豆乳」と定義しています[1]。
この豆乳は大豆を搾ったそのままで味付けをしていないことから無調整豆乳と呼ばれます。
この記事では、牛乳と比較するにあたって無調整豆乳を取り上げます。
調製豆乳は無調整豆乳に大豆油などの植物油脂や砂糖、食塩などを加えた飲料で、大豆固形分が6%以上のものと定義されます[1]。
調製豆乳では大豆本来の味わいを活かしつつ、より飲みやすくするために油脂や調味料が加えられています。
豆乳飲料は調製豆乳に果汁やコーヒー、ココア、紅茶、牛乳、ナッツなどでさらにフレーバーを足したもので、大豆固形分が4%以上もしくは2%以上のものと定義されます[1]。
豆乳飲料のうち果汁のフレーバーを足した豆乳飲料は大豆固形分が2%以上、それ以外のコーヒーや紅茶などのフレーバーを足した豆乳飲料は大豆固形分が4%以上含まれている必要があります[1]。
豆乳飲料にはさまざまな味があり、好みや気分に合わせて楽しむことができるでしょう。
一口に豆乳といってもさまざまな種類のものがあるのですね。
[1] 農林水産省「 豆乳類の日本農林規格」
1-2.牛乳とは
「牛乳は牛の乳をそのまま飲んでいるということのかな?」
「牛乳にも種類があるのかな……」
一般的に牛乳という場合は牛の乳を指しますが、乳脂肪率や添加原料の有無などによって分類されています。
この分類は厚生省(現:厚生労働省)による「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」(1951年)に基づいたもので、「牛乳」「成分調整牛乳」「特別牛乳」に分けられます。
また成分調整牛乳のなかには成分調整牛乳と「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」「加工乳」「乳飲料」があり、全部で7種類に分類されます[2]。
牛乳は牛から搾ったまま手を加えていない乳「生乳」を殺菌したもので、乳脂肪分を3.0%以上、無脂乳固形分を8.0%以上含んでいることが条件とされています[2]。
牛乳は他の種類と区別するために普通牛乳とも呼ばれます。
私たちが牛乳といってイメージするのがこちらでしょう。
この記事では、豆乳と比較するにあたって普通牛乳を取り上げます
成分調整牛乳は生乳から水分、乳脂肪分、ミネラルなどの成分の一部を除いて殺菌したもので、無脂乳固形分を8.0%以上含みます[2]。
低脂肪牛乳は生乳から乳脂肪分を一部除いて0.5%以上1.5%以下になるようにして殺菌したものです[2]。
無脂肪牛乳は生乳から乳脂肪分をほとんど除いて0.5%未満になるようにして殺菌したものです[2]。
加工乳は生乳にバターや脱脂粉乳といった他の乳製品を添加して、成分を調整したもので、無脂乳固形分を8.0%以上含んでいることが条件です[2]。
添加できるのは乳製品と水に限られており、乳成分を濃くした濃厚な製品や低脂肪の製品などさまざまなバリエーションがあります。
乳飲料は乳固形分を3.0%以上含んでいることが条件で、栄養成分を添加したもの、コーヒーや果汁、香料などで風味を付けたものなどがあります[2]。
加工乳の添加物が乳製品と水に限定されているのに対し、乳製品の添加物には限定がありません。
特別牛乳は、加熱殺菌処理をしなくても飲めると認められた牛乳のことです。
「特別牛乳搾取処理業」の許可を受けた施設で搾られた生乳を処理して製造され、乳脂肪分を3.3%以上、無脂乳固形分を8.5%以上含んでいます[2]。
特別牛乳の製造には厳しい基準をクリアする必要があり、全国の数カ所でしか製造されていません。
牛乳の仲間にはたくさんの種類があるのですね。
[2] 全国飲用牛乳公正取引協議会「 飲用乳ってなに?」
2.豆乳と牛乳のカロリー
「豆乳と牛乳ではどちらが高カロリーなのかな?」
健康や美容のために豆乳や牛乳を飲もうとしている場合、カロリーがどれくらいなのかは特に気になる点ですよね。
豆乳の100g当たりのカロリーは43kcalです[3]。
一方、牛乳の100g当たりのカロリーは61kalです[3]。
牛乳のカロリーは豆乳の約1.4倍ということになります。
コーラやオレンジジュースのカロリーが100g当たり46kcalであることを考えると、どちらも低カロリーの飲料ではないことに注意が必要です[3]。
[3] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
3.豆乳と牛乳に豊富に含まれる栄養素
豆乳と牛乳を比べるにあたり、まずはどちらにも豊富に含まれている栄養素をご紹介します。
豆乳にも牛乳にも豊富に含まれる栄養素としては、ナイアシンとパントテン酸が挙げられます。
【豆乳と牛乳に豊富に含まれる栄養素と可食部100g当たりの含有量】
栄養素 | 豆乳(無調整豆乳) | 牛乳(普通牛乳) |
---|---|---|
ナイアシン | 1.4mgNE | 0.9mgNE |
パントテン酸 | 0.28mg | 0.55mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
18歳未満の方は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の「乳児・小児の食事摂取基準」をご確認ください。
また妊娠中・授乳中の方は「妊婦・授乳婦の食事摂取基準」をご確認ください。
それぞれどのような栄養素なのか見てみましょう。
[4] 東京都保健医療局「 栄養成分表示ハンドブック 」
[5] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
3-1.ナイアシン
豆乳と牛乳のいずれにもナイアシンが豊富に含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのナイアシン含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 1.4mgNE |
牛乳 | 0.9mgNE |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ナイアシンは水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。
ナイアシンは数百種類の酵素の補酵素としてはたらくことで、体内のさまざまな機能に関わっています。
糖質・たんぱく質・脂質の代謝によってエネルギーを生み出すはたらきに不可欠です。
二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解する酵素の補酵素でもあるため、お酒をよく飲む方は意識的に摂取すると良いでしょう。
また、DNAの修復や合成、「ステロイドホルモン」や脂肪の構成要素である「脂肪酸」の合成にも関与しています。
ナイアシンはさらに、ビタミンCやビタミンEを利用して活性酸素に対抗するはたらきにも関わっています。
これらの作用から、ナイアシンには皮膚や粘膜の健康維持を助けるはたらきがあるといわれています。
ナイアシンの1日の摂取推奨量は男性では18~49歳で15mgNE、50~74歳で14mgNE、75歳以上で13mgNEです[6]。
女性では18~29歳で11mgNE、30~49歳で12mgNE、50~74歳で11mgNE、75歳以上で10mgNEです[6]。
[6] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-2.パントテン酸
豆乳と牛乳のいずれにもパントテン酸が豊富に含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのパントテン酸含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 0.28mg |
牛乳 | 0.55mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
パントテン酸はビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質の代謝によってエネルギーを生成するはたらきに関わっています。
また動脈硬化を抑えるはたらきのある「善玉コレステロール(HDLコレステロール)」の増加や、副腎皮質ホルモンの合成などに関わっています。
この他に免疫抗体の合成にも関わります。
パントテン酸の1日の摂取目安量は男性では18~49歳で5mg、50歳以上で6mgです[7]。
女性では18歳以上で5mgです[7]。
[7] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4.豆乳のみに豊富に含まれる栄養素
「豆乳にはどんな栄養素が豊富に含まれているのかな?」
豆乳にはたんぱく質や葉酸などのビタミン、カリウムや鉄などのミネラルが豊富に含まれています。
【豆乳に豊富に含まれる主な栄養素とその含有量(可食部100g当たり)】
栄養素 | 豆乳(無調整豆乳) | 牛乳(普通牛乳) |
---|---|---|
たんぱく質 | 3.6g | 3.3g |
ビタミンB6 | 0.06mg | 0.03mg |
葉酸 | 28μg | 5μg |
ビオチン | 3.8μg | 1.8μg |
カリウム | 190mg | 150mg |
マグネシウム | 25mg | 10mg |
鉄 | 1.2mg | 0mg |
銅 | 0.12mg | 0.01mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
それぞれどのような栄養素なのか解説します。
[8] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック」
[9] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
4-1.たんぱく質
豆乳にはたんぱく質が豊富に含まれています。
また、牛乳にもたんぱく質は含まれており、摂取源として利用することができます。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのたんぱく質含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 3.6g |
牛乳 | 3.3g |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
たんぱく質は炭水化物や脂質と並び、体のエネルギー源となる栄養素です。
たんぱく質は筋肉や臓器、肌や髪などの細胞を構成し、体のさまざまな機能を調整するホルモンや酵素の材料にもなります。
なお、大豆に含まれるたんぱく質は体内での利用効率が高い「良質なたんぱく質」です。
たんぱく質は20種類のアミノ酸と呼ばれる物質で構成されており、アミノ酸は体内で合成できないため食事からの摂取が必要な9種類の「必須アミノ酸」と、体内で合成可能な11種類の非必須アミノ酸に分けられます[10]。
たんぱく質を構成する必須アミノ酸が、ヒトにとって望ましい量に対し、どれくらいの割合で含まれているかを表す数値を「アミノ酸スコア」といい、この数値が高いほど体内での利用効率が高いといわれています。
大豆のアミノ酸スコアは最大値の100です[12]。
大豆のたんぱく質は消化・吸収に時間がかかるため、満腹感を得やすく腹持ちが良いという特徴があります。
このため食前に豆乳を摂取することで食欲を抑え、食べ過ぎを防ぐ効果が期待できます。
これ以外にも、大豆のたんぱく質は小腸でのコレステロールの吸収を抑えることで、血中コレステロール濃度を下げるはたらきがあることも分かっています。
大豆のたんぱく質には体にうれしいさまざまな効果が期待できるのですね。
たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は男性では18~64歳で65g、65歳以上で60gです[13]。
女性では18歳以上50gです[13]。
たんぱく質については以下の記事で詳しく解説しています。
たんぱく質とは?体内でのはたらきや食事摂取基準、豊富な食品を紹介
[10] 独立行政法人日本スポーツ振興センター「 たんぱく質‐アミノ酸」
[11] 文部科学省「 日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
[13] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4-2.ビタミンB6
豆乳にはビタミンB6が豊富に含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのビタミンB6含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 0.06mg |
牛乳 | 0.03mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビタミンB6はビタミンB群の一種で、糖質や脂質、たんぱく質からエネルギーをつくり出す際に欠かせない栄養素です。
ビタミンB6は補酵素として、多くの酵素のはたらきをサポートすることで、さまざまな代謝に関わっています。
特にたんぱく質からエネルギーをつくる際の重要な役割を担うため、筋トレなどのためにたんぱく質を多く摂取している方はビタミンB6の必要量が増加します。
ビタミンB6はそれ以外にも、正常な免疫機能の維持や赤血球のヘモグロビンの合成、神経伝達物質の合成などに関わっています。
ビタミンB6の1日の摂取推奨量は18歳以上の男性で1.4mg、18歳以上の女性で1.1mgです[14]。
ビタミンB6については以下の記事で詳しく解説しています。
[14] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4-3.葉酸
豆乳には葉酸が豊富に含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりの葉酸含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 28μg |
牛乳 | 5μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
葉酸はビタミンB群の一種で、赤血球の形成を助けるはたらきを持つ栄養素です。
またDNAやRNA、たんぱく質の合成やアミノ酸の代謝といった多くのはたらきにも関わっています。
さらに葉酸は細胞の分裂や増殖にも深く関与しており、胎児の正常な発達においても重要な役割を担います。
葉酸の1日の摂取推奨量は18歳以上の男女で240μgです[15]。
葉酸については以下の記事で詳しく解説しています。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
[15] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4-4.ビオチン
豆乳にはビオチンが豊富に含まれています。
また、牛乳にも豊富といえるほどではありませんがビオチンが含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのビオチン含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 3.8μg |
牛乳 | 1.8μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビオチンはビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質の代謝によってエネルギーを生み出すはたらきに関わっています。
また抗炎症物質を生成することでアレルギー症状を和らげます。
さらに皮膚や粘膜、髪の毛などの健康を維持するはたらきもあります。
ビオチンの1日の摂取目安量は18歳以上の男女で50μgです[16]。
ビオチンについては以下の記事で詳しく解説しています。
ビオチンとは?はたらきや摂取の目安量、摂取源となる食品を解説
[16] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4-5.カリウム
豆乳にはカリウムが豊富に含まれています。
また牛乳にも、豊富といえるほどではありませんがカリウムが含まれます。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのカリウム含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 190mg |
牛乳 | 150mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
カリウムは必須ミネラルの一種です。
カリウムは主に細胞内液の浸透圧を調節しています。
また神経の興奮や筋肉の収縮、pHバランスの調節などに関わっています。
この他にナトリウムの排せつを促し、血圧を下げるはたらきがあることでも知られています。
日本人は塩分を過剰摂取しがちな傾向にあるので、カリウムは十分に摂取しておくことが重要です。
カリウムの1日の摂取目標量は18歳以上の男性で3,000mg以上、18歳以上の女性で2,600mg以上です[18]。
カリウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
[17] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「 栄養に関する基礎知識」
[18] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4-6.マグネシウム
豆乳にはマグネシウムが豊富に含まれています。
また牛乳からもマグネシウムは摂取可能です。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのマグネシウム含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 25mg |
牛乳 | 10mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
マグネシウムは多くの酵素やエネルギーの代謝に関わる必須ミネラルです。
たんぱく質の合成や筋肉・神経の機能、血糖や血圧の調整など体の幅広いはたらきにかかわっています。
またマグネシウムは血液の循環を正常に維持するのに不可欠です。
さらにカルシウムやリンと共に骨を形成する栄養素でもあります。
マグネシウムの1日の摂取推奨量は男性では18~29歳で340mg、30~64歳で370mg、65~74歳で350mg、75歳以上で320mgです[19]
女性では18~29歳で270mg、30~64歳で290mg、65~74歳で280mg、75歳以上で260mgです[19]。
マグネシウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説
[19] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4-7.鉄
豆乳には鉄が豊富に含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりの鉄含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 1.2mg |
牛乳 | 0mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
鉄は必須ミネラルの一種です。
血液に含まれるたんぱく質「ヘモグロビン」の成分として全身の細胞に酸素を運ぶ役割を担っています。
また筋肉中のたんぱく質「ミオグロビン」の成分として、筋肉での代謝や組織の維持にも深く関わっています。
これ以外にも鉄は体の成長や神経発達、細胞機能、一部のホルモン合成などにも欠かせません。
鉄の1日の摂取推奨量は男性では18~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[20]。
月経の無い女性では18~64歳で6.5mg、65歳以上で6.0mg、月経のある女性では18~49歳で10.5mg、50~64歳で11.0mgです[20]。
鉄については以下の記事で詳しく解説しています。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
[20] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
4-8.銅
豆乳には銅が豊富に含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりの銅含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 0.12mg |
牛乳 | 0.01mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
銅は赤血球のヘモグロビンをつくる際に重要な役割を果たす必須ミネラルです。
鉄を十分に摂取していても、銅がなければ血液をつくれないため注意が必要です。
また銅はたんぱく質と結合することで多くの酵素の成分となり、体内の幅広い化学反応に関わります。
さらに銅には骨の形成を助けるはたらきもあります。
銅の1日の摂取推奨量は男性では18~74歳で0.9mg、75歳以上で0.8mgです[21]
女性では18歳以上で0.7mgです[21]。
[21] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
5.牛乳のみに豊富に含まれる栄養素
「牛乳に豊富に含まれている栄養素にはどのようなものがあるんだろう……」
牛乳はカルシウムの摂取源として有名ですが、ビタミンB2やビタミンB12も豊富に含まれています。
【牛乳に豊富に含まれる主な栄養素とその含有量(可食部100g当たり)】
栄養素 | 豆乳 | 牛乳 |
---|---|---|
ビタミンB2 | 0.02mg | 0.15mg |
ビタミンB12 | 0μg | 0.3μg |
カルシウム | 15mg | 110mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
それぞれどのような栄養素なのか解説します。
[22] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック」
[23] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
5-1.ビタミンB2
牛乳にはビタミンB2が豊富に含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのビタミンB2含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 0.02mg |
牛乳 | 0.15mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビタミンB2はビタミンB群の一種で、糖質や脂質、たんぱく質からエネルギーをつくり出す代謝に関わる補酵素としてはたらきます。
特に脂質の代謝に深く関わっています。
またビタミンB2には成長を促進したり、皮膚や粘膜を保護したりするはたらきもあります。
ビタミンB2の1日の摂取推奨量は男性では18~49歳で1.6mg、50~74歳で1.5mg、75歳以上で1.3mgです[24]。
女性では18~74歳で1.2mg、75歳以上で1.0mgです[24]。
ビタミンB2については以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンB2が手軽に摂れる食べ物は何?効果や食事摂取基準も紹介
[24] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
5-2.ビタミンB12
牛乳にはビタミンB12が豊富に含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのビタミンB12含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 0μg |
牛乳 | 0.3μg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビタミンB12はビタミンB群の一種で、DNAの生成を助ける重要な栄養素です。
またビタミンB12には赤血球の生成を助けるはたらきや、血液細胞や神経を正常に保つはたらきがあります。
ビタミンB12はほとんどの植物性食品に含まれません。
豆乳からは摂取できない栄養素のため、牛乳を選ぶ際の大きなメリットの一つだといえるでしょう。
ビタミンB12の1日の摂取推奨量は18歳以上の男女で2.4μgです[25]。
ビタミンB12については以下の記事で詳しく解説しています。
ビタミンB12が不足する原因とよくある症状は?摂取しやすい食品も紹介
[25] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
5-3.カルシウム
牛乳にはカルシウムが豊富に含まれています。
また豊富といえるほどではありませんが、豆乳にもカルシウムは含まれています。
【豆乳と牛乳の可食部100g当たりのビタミンB2含有量】
食品名 | 含有量 |
---|---|
豆乳 | 15mg |
牛乳 | 110mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
カルシウムは必須ミネラルの一種で、ヒトの体内ではほとんどが骨や歯に存在しています。
残りは筋肉や神経、血液中にあり、筋肉の収縮や血液の凝固作用などの重要な役割を担っています。
心臓の筋肉を正常に動かすためにもカルシウムは必須なため、生命維持の根幹に関わる栄養素だといえるでしょう。
カルシウム不足が長く続くと骨粗しょう症のリスクが高まるため注意が必要です。
なお牛乳や乳製品はカルシウムを多く含むだけでなく、乳糖やカゼインホスホペプチド(CPP)という成分のはたらきによってカルシウムの吸収率が高められていることが分かっています。
このため厚生労働省と農林水産省が健康づくりを目的に作成した「食事バランスガイド」ではカルシウムの供給源として牛乳や乳製品の摂取を推奨しています。
カルシウムの1日の摂取推奨量は男性では18~29歳で800mg、30~74歳で750mg、75歳以上で700mgです[26]。
女性では18~74歳で650mg、75歳以上で600mgです[26]。
カルシウムについては以下の記事で詳しく解説しています。
カルシウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を解説
[26] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2020年版)」
6.豆乳と牛乳を飲む際のポイント
「結局、豆乳と牛乳のどちらを選ぶと良いのかな?」
「豆乳か牛乳を選ぶのに、栄養素以外にもポイントになるものがあるのかな?」
この記事では豆乳と牛乳に含まれる栄養素の違いを解説してきましたが、実際どちらを選べば良いのか迷ってしまうという方もいらっしゃるでしょう。
それぞれに含まれる特徴的な栄養素や成分に触れながら、豆乳と牛乳を飲む際のポイントについて解説します。
6-1.豆乳を飲む際のポイント
豆乳は低カロリーで良質なたんぱく質の摂取源となる食品です。
また大豆のたんぱく質は腹持ちが良く、食べ過ぎを防ぐ効果が期待できます。
このため、豆乳は肥満が気になる方や筋トレを行う方にとって理想的なたんぱく源の一つといえるでしょう。
また豆乳に豊富に含まれる葉酸、鉄、銅は牛乳にはあまり含まれていないため、これらの栄養素を摂りたい場合は豆乳を選びましょう。
豆乳に特徴的な成分としては、栄養素以外にも大豆イソフラボンなどがあります。
大豆イソフラボンは女性ホルモンの「エストロゲン」に似たポリフェノールの一種で、骨粗しょう症や乳がん、前立腺がんなどに対して予防効果が期待されています。
また活性酸素のはたらきを抑える抗酸化作用を有します。
乳がんの発症や再発のリスクを高める可能性も考えられていますが、現在のところ、大豆製品から摂取するイソフラボンが健康に害を及ぼすという事実は確認されていません。
豆乳や大豆製品を適度に摂取している分にはリスクが高まる心配はありません。
大豆イソフラボンについては以下の記事で詳しく解説しています。
大豆イソフラボンとは?はたらきや過剰摂取の影響、摂取目安量を解説
豆乳は健康や美容が気になる方にぴったりな飲み物といえるかもしれませんね。
6-2.牛乳を飲む際のポイント
牛乳は極めて優秀なカルシウムの摂取源です。
牛乳はカルシウムを豊富に含むだけでなく、カルシウムの吸収率が高いという特徴があります。
日本人のカルシウムの摂取量は厚生労働省が行った「令和元年国民健康・栄養調査」によると以下のとおりで、全年代の男女で推奨量を下回っています。
【カルシウムの1日当たりの平均摂取量】
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20~29歳 | 462mg | 408mg |
30~39歳 | 395mg | 406mg |
40~49歳 | 442mg | 441mg |
50~59歳 | 471mg | 472mg |
60~69歳 | 533mg | 539mg |
70~79歳 | 585mg | 574mg |
80歳以上 | 533mg | 490mg |
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成
こうしたカルシウム不足は根深いもので、調査の開始された1945年以来平均摂取量が推奨量に達したことは一度もありません。
牛乳は常に不足してきたカルシウムを摂取するための重要な食品といえるでしょう。
またビタミンB2やビタミンB12も豆乳からの摂取が難しいため、これらを十分摂取したい方は牛乳を選ぶと良いでしょう。
注意点として、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしてしまう場合があります。
これは牛乳に含まれる乳糖という成分を分解する酵素が少なかったりはたらきが弱かったりするためです。
ただし、こうした場合もカルシウムをはじめとした栄養素は吸収されているため心配はありません。
おなかがゴロゴロする方は牛乳を温めて飲む、少しずつ分けて飲む、料理に使うといった対策を取ることで不調を避けることができます。
また牛乳を毎日飲む習慣を付けることで、酵素を活性化できる場合もあります。
それでもゴロゴロしてしまうという方は、乳糖をあらかじめ分解した牛乳や、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を摂るようにしてください。
[27] 一般社団法人日本乳業協会「 カルシウムの吸収を高めるためにはどうしたらよいでしょうか?」
7.豆乳と牛乳の違いについてのまとめ
豆乳は大豆を搾ってつくられる飲料です。
一方、牛乳は牛の生乳を殺菌した飲料です。
豆乳も牛乳もコーラやジュースなどの飲料に比べて特別低カロリーな食品ではありませんが、どちらも多くの栄養素を含んでおり健康の維持や増進のために効果的です。
豆乳に豊富に含まれる特徴的な栄養素には、たんぱく質や葉酸、鉄、銅などがあります。
豆乳のたんぱく質は腹持ちの良さから肥満防止の効果が期待できます。
また豆乳には健康に役立つ大豆イソフラボンなどの成分も含まれています。
牛乳に豊富に含まれる特徴的な栄養素にはカルシウム、ビタミンB2、ビタミンB12などがあります。
牛乳のカルシウムは多く含まれているだけでなく吸収率も高いため、カルシウムの摂取源として優秀です。
体質によっては牛乳に含まれる乳糖を分解できずにおなかがゴロゴロする場合がありますが、栄養素の吸収には影響しないため心配は要りません。
少しずつ分けて飲む、温めて飲む、料理に使うなどの方法で対策することが可能です。
この記事を参考に豆乳と牛乳に含まれる栄養素の違いを理解し、上手に使い分けてくださいね。