「塩分不足だとどんな症状が出るんだろう?」
「具合が悪いのは、塩分が足りていないからなのかな……」
塩分不足によって起こる症状について気になる方もいらっしゃるでしょう。
塩分は摂り過ぎが問題になりがちですが、大量に汗をかく夏場などは不足することもあります。
塩分が不足すると頭痛やけいれん、疲労感、吐き気などを引き起こします。
この記事では塩分不足の症状や原因、1日の適切な塩分摂取量、予防法について解説します。
1.塩分とナトリウムの関係
「塩分って、塩のことだよね?」
塩分という言葉を聞くと、塩や食塩を連想する方もいらっしゃるかもしれませんね。
塩分という言葉には厳密な定義はありませんが、一般的に「食塩相当量」のことを指します。
食塩相当量とは、食品中のナトリウムの量を食塩の量に換算した数値のことです。
ナトリウムは必須ミネラルの一種で、食品中では「ナトリウム塩」や「ナトリウムイオン」の形で存在しています。
家庭で調味料として使われる食塩は塩化ナトリウム(NaCl)とも呼ばれ、主にナトリウム(Na)と塩素(Cl)によって構成されます。
このため食品に含まれるナトリウム量を求めることによって、食塩相当量を算出できるのです。
塩分とナトリウムには密接な関係があるのですね。
【関連情報】 「塩分の摂り過ぎには要注意!適切な摂取量と手軽にできる減塩のコツ」についての記事はこちら
2.塩分不足によって起こる症状
塩分は不足よりもむしろ過剰摂取が懸念されており、通常の食生活を送っていれば塩分不足による不調を起こすことはほとんどありません。
しかし大量に発汗した場合など、塩分不足による症状が現れることがあります。
塩分不足によって現れる症状には頭痛やけいれん、疲労感、吐き気などがあります。
熱中症の初期症状である筋肉のこむら返り(熱けいれん)も血液中の塩分濃度が下がることで起こることがあります。
このように血液中のナトリウム濃度が低下した状態を「低ナトリウム血症」といい、大量の水分摂取や腎不全、心不全、肝硬変、利尿薬の使用などによって起こります。
低ナトリウム血症では最初に脳の機能に障害が生じ、反応が鈍ったり錯乱したりします。
さらに悪化すると筋肉のひきつりやけいれん発作が起こる他、最悪の場合は昏睡状態に陥り死に至ることもあります。
暑い時期やスポーツを行うときなど、大量に汗をかく場面では塩分不足にならないよう注意が必要です。
3.塩分不足の原因
「塩分が不足する原因って何だろう?」
通常の食生活を送っていれば、塩分不足を心配する必要はほとんどありません。
しかし何らかの原因により塩分が不足し、不調を引き起こすことがあります。
この章では塩分不足の原因について解説します。
3-1.大量の発汗
大量の発汗が塩分不足の原因になることがあります。
汗にはナトリウムが含まれているため、大量に汗をかくことで体からナトリウムが失われます。
そのときに水だけを補給すると、さらに血中のナトリウム濃度が低下します。
大量に汗をかく場面では塩分を含んだ飲み物の摂取が望ましいでしょう。
3-2.大量の水分摂取
大量に水分を摂取すると塩分不足になる可能性があります。
一度に大量の水を飲むと、体内に多くの水分が入ります。
その結果血液中のナトリウム濃度が低下し、塩分不足による不調を引き起こす可能性があります。
大量に水分を摂取することは控え、こまめに飲むようにしてくださいね。
3-3.病気
病気が塩分不足の原因になる場合があります。
腎不全や肝不全、肝硬変などの病気になると、多くの場合体内でナトリウムより水分を保持するはたらきの方が強くなってしまいます。
体内のナトリウム濃度が低下し、塩分不足の原因となります。
3-4.利尿薬の使用
利尿薬のなかには塩分不足を起こす可能性があるものがあります。
利尿薬は尿中へのナトリウムの排せつを促すため、低ナトリウム血症を引き起こす可能性があります。
特に体内のナトリウム濃度が低下しやすい体質の方や、高齢の方などは注意が必要です。
4.1日の適切な塩分摂取量
「塩分は1日にどれくらい摂ったら良いのかな?」
WHOのガイドラインでは、体の機能を維持するのに必要なナトリウムの量は1日にわずか200〜500mgであるとされています[1]。
通常の食生活を送っていれば、この量が摂れないことはほとんどありません。
むしろ日本人の食生活で問題視されているのは塩分過多です。
WHOのガイドラインはナトリウム摂取量を食塩相当量で1日5g未満にするよう強く推奨していますが、日本人の多くはこれを大きく上回る量の塩分を摂取しています。
このため、厚生労働省は実現可能性の高い目標として成人男性に7.5g未満、成人女性に6.5g未満という目標量を設定しています[1]。
ナトリウムの摂り過ぎは高血圧の大きな原因です。
また口の渇きやむくみの原因となる他、胃がんや食道がんの発症リスクを高めます。
塩分を摂り過ぎないように気をつけたいものですね。
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
5.塩分を適切に摂取するためのポイント
塩分を摂り過ぎず、さらに塩分不足を防ぐためにはどのようなことに気を付けたら良いのか気になりますよね。
この章では、塩分を適切に摂取するためのポイントについて解説します。
ポイント1 カリウムを十分に摂取する
体内の塩分のバランスを調節するために、カリウムを十分に摂取しましょう。
カリウムにはナトリウムを体外に排せつする作用があるため、高血圧の予防や改善効果が期待できます。
また大量の発汗で体内からナトリウムが失われるときには、同時にカリウムも失われています。
カリウムの不足も脱力感や食欲不振などを引き起こす原因の一つです。
カリウムは野菜類や海藻類、豆類などに含まれています。
多くの日本人はカリウムを十分に摂取できていないため、積極的に摂取するよう心掛けましょう。
カリウムについて詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
ポイント2 こまめに水分を摂取する
塩分不足による不調を引き起こさないように、こまめに水分を摂取しましょう。
一度に大量に水分を摂取すると、体内のナトリウム濃度が低下します。
熱中症などの予防のためにも、適度な塩分と共に水分をこまめに摂ることが重要といえるでしょう。
6.塩分不足の症状についてのまとめ
通常の食生活を送っていれば塩分不足による不調を起こすことはほとんどありません。
しかし大量に発汗した場合など、塩分不足による症状が現れることもあります。
塩分不足によって現れる症状には頭痛やけいれん、疲労感、吐き気などがあります。
熱中症の初期症状である熱けいれんも血液の塩分濃度が下がることで起こることがあります。
暑い時期やスポーツ時に大量に汗をかいた場合などは注意しましょう。
その他にも大量の水分摂取や腎不全、心不全、肝硬変、利尿薬の使用などによって血中のナトリウム濃度が低下し、塩分不足の症状を引き起こすことがあります。
しかし塩分は不足よりも過剰摂取の方が問題視されています。
厚生労働省は成人男性に7.5g未満、成人女性に6.5g未満という目標量を設定しています[2]。
1日の適切な摂取量を超えないようにして、カリウムを十分に摂る、こまめに水を飲むといった工夫も取り入れましょう。
塩分が不足したときの症状について理解し、特に夏場は不足しないようにしてくださいね。
[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」